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第二章 人形の怪
【肆】ー6
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「では行こうか」
突然背を向けた雨月にハッとして声を掛ける。
「あの、もしかして一緒に行くんですか?」
彼が指先を振るう仕草をすると何も無いところに二枚の襖が出現した。どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「俺もそいつに用があってな。何処に行く?」
彼が人形にどんな目的があるのかは分からないが、今は一緒に行くしかないようだ。
「……あの地下室に」
「分かった」
双方が共通して分かる地下室はあの買い手の決まっている廃墟しかない。
それを瞬時に理解した雨月はかざした掌を横に払う。すると襖が左右にサッと開き吸い込まれそうな暗い空間が現れた。ここを通っていけば地下室に出るのだろう。
迷わず先頭を歩き出す雨月に続いて騰蛇を身体に巻き付けた晴明も人形の入った箱を持って歩き出す。
途中で身体が重くなるような圧力が掛かり、グッと息を詰めたところで見覚えのある場所に出た。
「少し負荷がかかったか? すまんな。早めに着くよう道を縮めたせいだ」
後ろを振り向いて気遣ってくれる雨月に平気だと首を振る。
「急いでくれて助かりました」
お礼は終わった後に改めるとして。
暗い空間を騰蛇の炎で照らしてもらい、開けた場所に木箱を置いて邪気祓いに取り掛かった。
護符を貼り付けた桐の箱から距離を取り、印を結ぶ。すると霊符が剥がれ落ち、密閉されていた箱がカタカタと音を立ててひとりでに開いた。
押し込められていた瘴気が一気に溢れ出す――。
晴明は素早く浄化の印を結び、更に真言を唱える。濃度の高い瘴気には印だけでは祓い切れない可能性があるからだ。
突然背を向けた雨月にハッとして声を掛ける。
「あの、もしかして一緒に行くんですか?」
彼が指先を振るう仕草をすると何も無いところに二枚の襖が出現した。どうやら聞き間違いではなかったようだ。
「俺もそいつに用があってな。何処に行く?」
彼が人形にどんな目的があるのかは分からないが、今は一緒に行くしかないようだ。
「……あの地下室に」
「分かった」
双方が共通して分かる地下室はあの買い手の決まっている廃墟しかない。
それを瞬時に理解した雨月はかざした掌を横に払う。すると襖が左右にサッと開き吸い込まれそうな暗い空間が現れた。ここを通っていけば地下室に出るのだろう。
迷わず先頭を歩き出す雨月に続いて騰蛇を身体に巻き付けた晴明も人形の入った箱を持って歩き出す。
途中で身体が重くなるような圧力が掛かり、グッと息を詰めたところで見覚えのある場所に出た。
「少し負荷がかかったか? すまんな。早めに着くよう道を縮めたせいだ」
後ろを振り向いて気遣ってくれる雨月に平気だと首を振る。
「急いでくれて助かりました」
お礼は終わった後に改めるとして。
暗い空間を騰蛇の炎で照らしてもらい、開けた場所に木箱を置いて邪気祓いに取り掛かった。
護符を貼り付けた桐の箱から距離を取り、印を結ぶ。すると霊符が剥がれ落ち、密閉されていた箱がカタカタと音を立ててひとりでに開いた。
押し込められていた瘴気が一気に溢れ出す――。
晴明は素早く浄化の印を結び、更に真言を唱える。濃度の高い瘴気には印だけでは祓い切れない可能性があるからだ。
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