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脱却3
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「……まあ、飲み物くらいなら奢ってやるよ」
「やった~♪ ありがとう!」
今日のところは出来る限り付き合おうと決め、足を街の方へと向けた。
――……。
「本当に入るのか?」
「とーぜん☆」
声を弾ませる唐木に腕を引っ張られて入った場所は、漫画ネットカフェ。
(とことん付き合うとは決めたけど、ココに男二人で入ることになるとは思わなかったな……)
受付けで話をしている唐木の後ろで静かに控える。
出入りする客は俺達と同じで学生率が高い。
(まだ五時前だし、今日が始業式の学校も多いらしいからな。……こんな所知り合いに見られたら最悪だ)
「大河? また変な顔してどうしたのー?」
「……変ってなんだ。それより終わったのか?」
「バッチリ! さっ、行こ行こ~!」
カウンターから離れて二階へ続く階段を上がる。
前を歩く唐木が、仕切られた一角で立ち止まった。
「ソファーで一番広い個室にしてもらったから。十分に寛げると思うよ」
「それはどうも」
「あ! もちろん部屋代は僕も出すから心配しないでね。飲み物だけ大河持ちだけど」
「いいから。早く入れよ」
トンと唐木の背中を押す。
(まったく、しっかりしているというかちゃっかりしているというか……)
とりあえず荷物を下ろして飲み物を取りに行くという唐木に俺の分も頼んだ。
一人になって少し考える。
(唐木の方は良しとして、問題はあと兄貴だよな。俺、殴られたりするのか?)
李煌さんがもう言ってくれてあると切り出しやすいが…。
(ダメだな。李煌さんに頼るようじゃ進歩しない)
適当に持ってきた漫画を適当にパラパラと捲る。
「お待たせ~。一応砂糖とガムシロップ貰って来たけど、大河は入れなかったよね?」
「……いや、糖分欲しいから砂糖だけ入れる」
差し出されたホットコーヒーと砂糖を受け取ると、俺の隣に唐木も腰を落ち着けた。
「何読んでたの?」
「あ? んー……さあ?」
「さあ、って……あ、SFだね。僕もこれ読んだことあるよ」
「そんなに面白いのか?」
俺の膝から漫画を拾った唐木は一度頷いて表紙を開いた。
「面白いよ。はまると最後まで読まないと気がすまなくってさ。――て、やっぱり全然読んでなかったんだね」
「興味ないからな」
「それならわざわざ持って来なくてもいいのに……変なところで真面目だよねー」
唐木はくすくす笑いながら開いたばかりの漫画を閉じてテーブルに置くと、自分の分の飲み物、――香りからしてココアだろう――を飲んで一息ついたようだ。
直ぐに読む漫画を取りに行くのだろうと思っていたが、立ち上がる様子はない。
「――なんでココを選んだんだ? ネットが目的か? ……な訳ないか。パソコンならお前持ってたはずだもんな」
解読していくと、少し困った顔を俺に向けた。
「なんていうか……二人きりになれる場所が良かったんだよ」
「お前……」
「やった~♪ ありがとう!」
今日のところは出来る限り付き合おうと決め、足を街の方へと向けた。
――……。
「本当に入るのか?」
「とーぜん☆」
声を弾ませる唐木に腕を引っ張られて入った場所は、漫画ネットカフェ。
(とことん付き合うとは決めたけど、ココに男二人で入ることになるとは思わなかったな……)
受付けで話をしている唐木の後ろで静かに控える。
出入りする客は俺達と同じで学生率が高い。
(まだ五時前だし、今日が始業式の学校も多いらしいからな。……こんな所知り合いに見られたら最悪だ)
「大河? また変な顔してどうしたのー?」
「……変ってなんだ。それより終わったのか?」
「バッチリ! さっ、行こ行こ~!」
カウンターから離れて二階へ続く階段を上がる。
前を歩く唐木が、仕切られた一角で立ち止まった。
「ソファーで一番広い個室にしてもらったから。十分に寛げると思うよ」
「それはどうも」
「あ! もちろん部屋代は僕も出すから心配しないでね。飲み物だけ大河持ちだけど」
「いいから。早く入れよ」
トンと唐木の背中を押す。
(まったく、しっかりしているというかちゃっかりしているというか……)
とりあえず荷物を下ろして飲み物を取りに行くという唐木に俺の分も頼んだ。
一人になって少し考える。
(唐木の方は良しとして、問題はあと兄貴だよな。俺、殴られたりするのか?)
李煌さんがもう言ってくれてあると切り出しやすいが…。
(ダメだな。李煌さんに頼るようじゃ進歩しない)
適当に持ってきた漫画を適当にパラパラと捲る。
「お待たせ~。一応砂糖とガムシロップ貰って来たけど、大河は入れなかったよね?」
「……いや、糖分欲しいから砂糖だけ入れる」
差し出されたホットコーヒーと砂糖を受け取ると、俺の隣に唐木も腰を落ち着けた。
「何読んでたの?」
「あ? んー……さあ?」
「さあ、って……あ、SFだね。僕もこれ読んだことあるよ」
「そんなに面白いのか?」
俺の膝から漫画を拾った唐木は一度頷いて表紙を開いた。
「面白いよ。はまると最後まで読まないと気がすまなくってさ。――て、やっぱり全然読んでなかったんだね」
「興味ないからな」
「それならわざわざ持って来なくてもいいのに……変なところで真面目だよねー」
唐木はくすくす笑いながら開いたばかりの漫画を閉じてテーブルに置くと、自分の分の飲み物、――香りからしてココアだろう――を飲んで一息ついたようだ。
直ぐに読む漫画を取りに行くのだろうと思っていたが、立ち上がる様子はない。
「――なんでココを選んだんだ? ネットが目的か? ……な訳ないか。パソコンならお前持ってたはずだもんな」
解読していくと、少し困った顔を俺に向けた。
「なんていうか……二人きりになれる場所が良かったんだよ」
「お前……」
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