41 / 62
脱却
1-11
しおりを挟む
「今まで気持ちを押さえ込ませて、ごめんね。もう大丈夫だから……泣かないでよ」
泣く?
誰が?
(俺、今、泣いてるのか……?)
背中を優しく撫でられ、それはあやしてくれているのだと分かる。
今までずっと家族であり兄弟であることが苦しかった。
いつも傍にいるのに、気持ちを打ち開けられないことがどんなに辛かったか……。
それをこの人は、ちゃんと汲み取ってくれている。
何故だか分からないが、笑いが込み上げて来た。
「――泣いてなんか、ねぇよ……」
「……、そっか。そうだね」
李煌さんはそれ以上何も言わずに、俺の背中を撫で続けた。
きっと、俺の強がりを見抜いたんだろう。
――帰り道。
「そういえば、唐木くんとはどうなの?」
「え……唐木?」
どこか真剣に尋ねて来た李煌さんに首を傾げる。
「あの子、大河くんのこと気に入ってるでしょ」
危うく躓くところだった。
「えっ、何それ……」
あまりの不意打ちに上手く返せなかったことに焦る。
「見てれば分かるんだよ。俺と同じ目、してたから」
「……気のせいじゃないのか?」
今度は平静を装って返すが、李煌さんは首を横に振った。
「大河くんを見る目がさ、優しいんだよ。たぶん同じ気持ちだから分かることなんだろうね」
隣を歩く李煌さんの横顔をちらりと盗み見る。
でも、俺が思っていた表情とは違っていたことに、俺の中で決心がついた。
「李煌さん」
「何?」
「隠すつもりはなかったんだけど、唐木に告白されたんだ」
「……いつ?」
「二ヶ月近く前」
「――……そっか」
李煌さんの少しの沈黙が気になったが、俺は夕陽に照らされた綺麗な横顔を、静かに見つめることしかできなかった。
泣く?
誰が?
(俺、今、泣いてるのか……?)
背中を優しく撫でられ、それはあやしてくれているのだと分かる。
今までずっと家族であり兄弟であることが苦しかった。
いつも傍にいるのに、気持ちを打ち開けられないことがどんなに辛かったか……。
それをこの人は、ちゃんと汲み取ってくれている。
何故だか分からないが、笑いが込み上げて来た。
「――泣いてなんか、ねぇよ……」
「……、そっか。そうだね」
李煌さんはそれ以上何も言わずに、俺の背中を撫で続けた。
きっと、俺の強がりを見抜いたんだろう。
――帰り道。
「そういえば、唐木くんとはどうなの?」
「え……唐木?」
どこか真剣に尋ねて来た李煌さんに首を傾げる。
「あの子、大河くんのこと気に入ってるでしょ」
危うく躓くところだった。
「えっ、何それ……」
あまりの不意打ちに上手く返せなかったことに焦る。
「見てれば分かるんだよ。俺と同じ目、してたから」
「……気のせいじゃないのか?」
今度は平静を装って返すが、李煌さんは首を横に振った。
「大河くんを見る目がさ、優しいんだよ。たぶん同じ気持ちだから分かることなんだろうね」
隣を歩く李煌さんの横顔をちらりと盗み見る。
でも、俺が思っていた表情とは違っていたことに、俺の中で決心がついた。
「李煌さん」
「何?」
「隠すつもりはなかったんだけど、唐木に告白されたんだ」
「……いつ?」
「二ヶ月近く前」
「――……そっか」
李煌さんの少しの沈黙が気になったが、俺は夕陽に照らされた綺麗な横顔を、静かに見つめることしかできなかった。
1
あなたにおすすめの小説
発情期のタイムリミット
なの
BL
期末試験を目前に控えた高校2年のΩ・陸。
抑制剤の効きが弱い体質のせいで、発情期が試験と重なりそうになり大パニック!
「絶対に赤点は取れない!」
「発情期なんて気合で乗り越える!」
そう強がる陸を、幼なじみでクラスメイトのα・大輝が心配する。
だが、勉強に必死な陸の周りには、ほんのり漂う甘いフェロモン……。
「俺に頼れって言ってんのに」
「頼ったら……勉強どころじゃなくなるから!」
試験か、発情期か。
ギリギリのタイムリミットの中で、二人の関係は一気に動き出していく――!
ドタバタと胸きゅんが交錯する、青春オメガバース・ラブコメディ。
*一般的なオメガバースは、発情期中はアルファとオメガを隔離したり、抑制剤や隔離部屋が管理されていたりしていますが、この物語は、日常ラブコメにオメガバース要素を混ぜた世界観になってます。
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
アイドルですがピュアな恋をしています。
雪 いつき
BL
人気アイドルユニットに所属する見た目はクールな隼音(しゅん)は、たまたま入ったケーキ屋のパティシエ、花楓(かえで)に恋をしてしまった。
気のせいかも、と通い続けること数ヶ月。やはりこれは恋だった。
見た目はクール、中身はフレンドリーな隼音は、持ち前の緩さで花楓との距離を縮めていく。じわりじわりと周囲を巻き込みながら。
二十歳イケメンアイドル×年上パティシエのピュアな恋のお話。
ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる
cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。
「付き合おうって言ったのは凪だよね」
あの流れで本気だとは思わないだろおおお。
凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
ルームメイトが釣り系男子だった件について
perari
BL
ネット小説家として活動している僕には、誰にも言えない秘密がある。
それは——クールで無愛想なルームメイトが、僕の小説の主人公だということ。
ずっと隠してきた。
彼にバレないように、こっそり彼を観察しながら執筆してきた。
でも、ある日——
彼は偶然、僕の小説を読んでしまったらしい。
真っ赤な目で僕を見つめながら、彼は震える声でこう言った。
「……じゃあ、お前が俺に優しくしてたのって……好きだからじゃなくて、ネタにするためだったのか?」
【完結】口遊むのはいつもブルージー 〜双子の兄に惚れている後輩から、弟の俺が迫られています〜
星寝むぎ
BL
お気に入りやハートを押してくださって本当にありがとうございます! 心から嬉しいです( ; ; )
――ただ幸せを願うことが美しい愛なら、これはみっともない恋だ――
“隠しごとありの年下イケメン攻め×双子の兄に劣等感を持つ年上受け”
音楽が好きで、SNSにひっそりと歌ってみた動画を投稿している桃輔。ある日、新入生から唐突な告白を受ける。学校説明会の時に一目惚れされたらしいが、出席した覚えはない。なるほど双子の兄のことか。人違いだと一蹴したが、その新入生・瀬名はめげずに毎日桃輔の元へやってくる。
イタズラ心で兄のことを隠した桃輔は、次第に瀬名と過ごす時間が楽しくなっていく――
【完結】期限付きの恋人契約〜あと一年で終わるはずだったのに〜
なの
BL
「俺と恋人になってくれ。期限は一年」
男子校に通う高校二年の白石悠真は、地味で真面目なクラスメイト。
ある日、学年一の人気者・神谷蓮に、いきなりそんな宣言をされる。
冗談だと思っていたのに、毎日放課後を一緒に過ごし、弁当を交換し、祭りにも行くうちに――蓮は悠真の中で、ただのクラスメイトじゃなくなっていた。
しかし、期限の日が近づく頃、蓮の笑顔の裏に隠された秘密が明らかになる。
「俺、後悔しないようにしてんだ」
その言葉の意味を知ったとき、悠真は――。
笑い合った日々も、すれ違った夜も、全部まとめて好きだ。
一年だけのはずだった契約は、運命を変える恋になる。
青春BL小説カップにエントリーしてます。応援よろしくお願いします。
本文は完結済みですが、番外編も投稿しますので、よければお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる