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脱却
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「ごめんね! 別にそこだけを見てたわけじゃないよっ? 大河くんの綺麗な泳ぎ方とか凄く安心して見ていられたし!」
「……」
「そのっ、筋肉がどうのこうのって話は個人的思考に基づいた身勝手な感想でっ」
(――……何が言いたいの? この人)
じゃあそれ以外は、何処から生まれた感想なのだろう……。
(李煌さんって、たまにボケ入るよな……けど……)
そんなところも愛おしく思う。
「そんなに慌てなくても、大丈夫だよ。ここでの俺も、ちゃんと見てもらえたなら満足だし」
そう笑みを向けると、隣からホッと息を吐く音が聞こえた。
「うん。ちゃんと見てたよ。まさか、あんなに人気があるなんて知らなかったな~」
「あっ……あれこそ、周りが身勝手に騒ぎ立ててるだけで……俺は関係ないから」
「当人が良く言うよー。関係ないわけないでしょ? 人に魅力を感じさせるって、凄いことだよ」
また、顔が赤くなりそうだ。
「魅力なら李煌さんだって……――」
「ん?」
李煌さんに魅力があるのは前から分かっていたことじゃないか。
今更過ぎる……。
「――いや、俺は李煌さんの気が惹ければそれでいいから」
「………」
この沈黙が、照れ臭いが少しばかり心地良い。
不思議と不安は感じなかった。
緊張が解けたのも、きっと李煌さんのお蔭なんだろう。
今なら、あの時の答えを聞かせてくれる気がした。
「李煌さん、返事、貰ってもいい……?」
傍らの、厚手の服を着ていても華奢だと分かる肩がピクリと震えた。
俺は気付かない振りをして続ける。
「李煌さんの誕生日、十月の終わりだったでしょ」
「? ……うん」
「本当はプレゼント用意するつもりでいたんだけど、返事聞いてから、ちゃんと贈りたいって思って。その時の状況に似合った物を贈りたかったんだ」
「……そうだったんだね。俺の誕生日の時は、大河くんのパーティーのことで頭いっぱいだったし、大河くんもそっちに気を取られて忘れちゃってるのかなって、諦めたんだ」
「ごめん」
「ううん。……でもやっぱり、ちょっとだけガッカリした……かな」
誕生日プレゼントは毎年お互いにあげている。
李煌さんに至っては家族全員に、だが。
俺は李煌さんにしかあげたことがない。
この先も、そのつもりだ。
静かに吸い込んだ空気を、またゆっくり静かに吐き出す……。
「李煌さん。聞かせてくれ。どんな言葉でも受け止めるから」
ゆっくりと向けられた視線が、俺と絡み合う。
目の前の瞳が揺れているのは、水面が映り込んでいるからなのか……。
「うん、待たせてごめんね。本当のところ、まだ少しだけ迷いがないわけじゃないんだ」
「……」
「でも、でもね……。どんなに時間が経っても、大河くんへの気持ちは変わらないって思ったし、思い切ってみてもいいんじゃないかなって」
(……それって……っ)
俺は静かに息を呑み、告げられる言葉を待った。
「……うん、俺で良ければ付き合ってみる?」
「――っ」
聞いた瞬間に、俺は李煌さんを腕の中に閉じ込めた。
「……」
「そのっ、筋肉がどうのこうのって話は個人的思考に基づいた身勝手な感想でっ」
(――……何が言いたいの? この人)
じゃあそれ以外は、何処から生まれた感想なのだろう……。
(李煌さんって、たまにボケ入るよな……けど……)
そんなところも愛おしく思う。
「そんなに慌てなくても、大丈夫だよ。ここでの俺も、ちゃんと見てもらえたなら満足だし」
そう笑みを向けると、隣からホッと息を吐く音が聞こえた。
「うん。ちゃんと見てたよ。まさか、あんなに人気があるなんて知らなかったな~」
「あっ……あれこそ、周りが身勝手に騒ぎ立ててるだけで……俺は関係ないから」
「当人が良く言うよー。関係ないわけないでしょ? 人に魅力を感じさせるって、凄いことだよ」
また、顔が赤くなりそうだ。
「魅力なら李煌さんだって……――」
「ん?」
李煌さんに魅力があるのは前から分かっていたことじゃないか。
今更過ぎる……。
「――いや、俺は李煌さんの気が惹ければそれでいいから」
「………」
この沈黙が、照れ臭いが少しばかり心地良い。
不思議と不安は感じなかった。
緊張が解けたのも、きっと李煌さんのお蔭なんだろう。
今なら、あの時の答えを聞かせてくれる気がした。
「李煌さん、返事、貰ってもいい……?」
傍らの、厚手の服を着ていても華奢だと分かる肩がピクリと震えた。
俺は気付かない振りをして続ける。
「李煌さんの誕生日、十月の終わりだったでしょ」
「? ……うん」
「本当はプレゼント用意するつもりでいたんだけど、返事聞いてから、ちゃんと贈りたいって思って。その時の状況に似合った物を贈りたかったんだ」
「……そうだったんだね。俺の誕生日の時は、大河くんのパーティーのことで頭いっぱいだったし、大河くんもそっちに気を取られて忘れちゃってるのかなって、諦めたんだ」
「ごめん」
「ううん。……でもやっぱり、ちょっとだけガッカリした……かな」
誕生日プレゼントは毎年お互いにあげている。
李煌さんに至っては家族全員に、だが。
俺は李煌さんにしかあげたことがない。
この先も、そのつもりだ。
静かに吸い込んだ空気を、またゆっくり静かに吐き出す……。
「李煌さん。聞かせてくれ。どんな言葉でも受け止めるから」
ゆっくりと向けられた視線が、俺と絡み合う。
目の前の瞳が揺れているのは、水面が映り込んでいるからなのか……。
「うん、待たせてごめんね。本当のところ、まだ少しだけ迷いがないわけじゃないんだ」
「……」
「でも、でもね……。どんなに時間が経っても、大河くんへの気持ちは変わらないって思ったし、思い切ってみてもいいんじゃないかなって」
(……それって……っ)
俺は静かに息を呑み、告げられる言葉を待った。
「……うん、俺で良ければ付き合ってみる?」
「――っ」
聞いた瞬間に、俺は李煌さんを腕の中に閉じ込めた。
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