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家族2
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「へー。それは知らなかった。大河くん、学校のこと何にも話してくれないんだもん」
「そうかもですねー。相見は自慢したり言いふらすような奴じゃないですから」
「根っからの真面目人間、だからね」
「そうそう! そこがまたイイって、みんな言うんですよー。……あ、最近なんてラブレター貰ってましたからね」
「ラブレター?」
「おい! 唐木っ!!」
俺の声に唐木がまぁまぁと手で制してくる。
「呼び出されたみたいなんですけど、相見、その子と会うのか教えてくれなくて……」
俺に向けて来た李煌さんの視線に、何かプレッシャーを感じた。
それは無言の問いかけか……。
(……はぁ……ダメだ)
諦めるしかない。
俺はガクリと肩を落とし、フゥと息を吐き出して視線をふたりのいない方へ逸らしながら口を開いた。
「……一応、話しだけ聞くつもりだよ」
「おおお」
(何だその反応は! ……ったく)
関心があるのかないのか分からない唐木は置いておくとして、李煌さんは……。
(……あれ? なんか、固まってる?)
何気にデジャブだ。
「李煌さ――」
「そっかそっか。あ、もし彼女が出来たら紹介してね?」
またいつもの李煌さんに戻ったことで、言葉を投げかけるタイミングを失ってしまった。
「じゃあ俺はそろそろ行くよ。二人共、ちゃんと勉強するんだよ? 頑張ってね」
「あ……」
笑顔もいつも通り、だったと思うが、どうもぎこちない気もした。
俺は開きかけた口を閉じて、李煌さんが出て行った扉を見つめた。
(どうしたんだ? 李煌さん……)
何か気に障るようなことを言っただろうか。
眉間に皺を刻みながら、ジュースに手を伸ばす。
「ごめん、相見」
「え?」
「ちょっとはしゃぎ過ぎたかな、って。相見、怒ってるんだろ?」
「……いや、ちょっと李煌さんのことが気になっただけだ。俺は怒ってないよ」
珍しくシュンとする唐木に眉間の皺を消し、俺は小さく笑って安心させた。
「そういうとこ、ホント、惚れるよ」
「あ? ……何言ってんだ。ほら、これ食ったら勉強再開するぞ」
おどけた様子の友人に肩を竦め、チョコの塗られたクッキーの器を押しやった。
これから夕飯までみっちり勉強だ。
糖分をしっかり摂っておいた方がいいだろう。
――……。
「本当に僕が先にもらっちゃっていいの?」
「ああ。俺はリビングの方にいるから、上がったら声かけて」
友達のところから帰って来た悠璃を交えて、夕飯を済ませたところだ。
末っ子も唐木には不思議と懐いた。
結局、魁里は部屋から出て来ないままで、多分今もパソコンに向かっているのだろう。
唐木を先に風呂に入るよう促して、俺はキッチンに立つ李煌さんのところへ向かった。
「手伝うよ」
「うん、ありがとう」
李煌さんの許可を得て、食器を洗う。
リビングでは悠璃がテレビを見て笑い声を上げていた。
隣で明日の朝食の準備をしている李煌さんをチラリと見遣る。
特に変わった様子はない。
食事の時も楽しそうに談笑していたし、俺の思い過しだったのかもしれない。
「そうかもですねー。相見は自慢したり言いふらすような奴じゃないですから」
「根っからの真面目人間、だからね」
「そうそう! そこがまたイイって、みんな言うんですよー。……あ、最近なんてラブレター貰ってましたからね」
「ラブレター?」
「おい! 唐木っ!!」
俺の声に唐木がまぁまぁと手で制してくる。
「呼び出されたみたいなんですけど、相見、その子と会うのか教えてくれなくて……」
俺に向けて来た李煌さんの視線に、何かプレッシャーを感じた。
それは無言の問いかけか……。
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諦めるしかない。
俺はガクリと肩を落とし、フゥと息を吐き出して視線をふたりのいない方へ逸らしながら口を開いた。
「……一応、話しだけ聞くつもりだよ」
「おおお」
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(……あれ? なんか、固まってる?)
何気にデジャブだ。
「李煌さ――」
「そっかそっか。あ、もし彼女が出来たら紹介してね?」
またいつもの李煌さんに戻ったことで、言葉を投げかけるタイミングを失ってしまった。
「じゃあ俺はそろそろ行くよ。二人共、ちゃんと勉強するんだよ? 頑張ってね」
「あ……」
笑顔もいつも通り、だったと思うが、どうもぎこちない気もした。
俺は開きかけた口を閉じて、李煌さんが出て行った扉を見つめた。
(どうしたんだ? 李煌さん……)
何か気に障るようなことを言っただろうか。
眉間に皺を刻みながら、ジュースに手を伸ばす。
「ごめん、相見」
「え?」
「ちょっとはしゃぎ過ぎたかな、って。相見、怒ってるんだろ?」
「……いや、ちょっと李煌さんのことが気になっただけだ。俺は怒ってないよ」
珍しくシュンとする唐木に眉間の皺を消し、俺は小さく笑って安心させた。
「そういうとこ、ホント、惚れるよ」
「あ? ……何言ってんだ。ほら、これ食ったら勉強再開するぞ」
おどけた様子の友人に肩を竦め、チョコの塗られたクッキーの器を押しやった。
これから夕飯までみっちり勉強だ。
糖分をしっかり摂っておいた方がいいだろう。
――……。
「本当に僕が先にもらっちゃっていいの?」
「ああ。俺はリビングの方にいるから、上がったら声かけて」
友達のところから帰って来た悠璃を交えて、夕飯を済ませたところだ。
末っ子も唐木には不思議と懐いた。
結局、魁里は部屋から出て来ないままで、多分今もパソコンに向かっているのだろう。
唐木を先に風呂に入るよう促して、俺はキッチンに立つ李煌さんのところへ向かった。
「手伝うよ」
「うん、ありがとう」
李煌さんの許可を得て、食器を洗う。
リビングでは悠璃がテレビを見て笑い声を上げていた。
隣で明日の朝食の準備をしている李煌さんをチラリと見遣る。
特に変わった様子はない。
食事の時も楽しそうに談笑していたし、俺の思い過しだったのかもしれない。
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