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16歳
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「アリアってパーティー参加してた?」
ふと気になって尋ねると「ルイス様までそんなこと言う」とアリアが拗ねたように唇を尖らせた。
「え、ごめん。でも見なかったから」
キャンベルの姿は見た。オーガス兄様の隣でにこにこしてた。でも早々に会場からは姿を消していた。
「みんなして私に興味なさすぎじゃないですか?」
「そんなことないけど」
まぁ、俺は後半ほとんど中庭にいたから。アリアとは入れ違いになったのだろうか。
「せっかくおしゃれしたのに」
「そうなの?」
なんだか悪いことをしたかもしれない。ごめんねと謝れば、「ルイス様は悪くないですよ。悪いのはブルース様です」との強気な言葉。これにユリスがニヤッとした。
「ブルースがなにをしたんだ」
途端に前のめりになるユリス。綿毛ちゃんも尻尾を振って『ブルースくん。なにしたの?』と興味津々だ。
「私とブルース様って、形だけの結婚じゃないですか」
「うん」
結婚に興味のないブルース兄様であったが、お母様が結婚しろとうるさかった。そこでアリアと形だけの結婚という方法を取ったことは俺もユリスも知っている。
「でも公の場では夫婦らしく振舞おうって約束してたんで。私すごく張り切っておしゃれしたんですよ! ブルース様の妻っぽくキスのひとつでもしてやろうと思ってたのに」
「キスする必要はなくない?」
なにがどうなったらパーティーの場でキスする流れになるんだよ。俺の指摘に、アリアは「だってその方が面白いじゃないですか」と開き直る。ふむふむ頷くユリスも、その方が面白いと考えていそうだ。
ブルース兄様はみんなに振り回されて大変だな。
「でも! ブルース様、私のこと無視ですよ! 無視!」
「あ、あぁー」
そう言えばブルース兄様。パーティーの間はずっと屈強な男たちに囲まれていた。アリアもその現場を目撃したらしい。ブルース兄様の隣に並んで夫婦っぽく振舞おうと計画していたのに、肝心のブルース兄様があれじゃなぁ。アリアが文句を言いたくなる気持ちもわかる。
「自分が結婚してること忘れてるんじゃないですか、あの人」
拗ねたように呟くアリアを励まそうと綿毛ちゃんを渡してあげる。アリアちゃんは犬猫が好き。よく撫でている。
俺から綿毛ちゃんを受け取ったアリアは、膝にのせて撫で始める。
「私なんのために行ったのかわかんないんですけど」
「ごめんね、うちの兄様が」
ルイス様が謝る必要はないですよ、と眉尻を下げるアリアは深く息を吐く。
「ブルース兄様はそういうの興味ないからね」
でもアリアも恋愛に興味があるようには見えない。昔からブルース兄様と結婚したいとは言っていたけど、あれは兄様のことが好きって言うより兄様の権力目当てみたいな感じだった。
その点について聞けば、アリアが「それはそうですけど」と頬杖をつく。
「でも存在自体忘れられるのは腹が立ちません? 絶対自分が結婚してること忘れてますよ! 私のこと単なる居候だと思ってそう」
「そんなことはないと思うけど」
でもどうだろうか。
アリアとブルース兄様が一緒にいる場面はあまり見ない。アリアはアリアで自由に生活している。
「そのうち別の女を口説き始めたらどうしよう」
私の妻としての立場が、と真面目な顔で心配を始めるアリアに、ユリスが「その時は僕に任せろ」と安請け合いをしている。
「ルイス様」
「ん?」
「ブルース様に、自分が結婚してること覚えてますって聞いてきてくださいよ」
「えー?」
俺が?
なんでみんな俺に頼むんだよ。
でも「お願いします!」と手を合わせてくるアリアがちょっぴり憐れで頷いてしまう。
「それと公の場では夫婦っぽく振る舞うっていう約束はもうなかったことにするのかも」
「はいはい」
綿毛ちゃんが『任せておいてぇ』と張り切っている。綿毛ちゃんはお願いされてないだろ。
そうして重い腰を上げた俺は、ブルース兄様の部屋に向かう。
「兄様ぁ!」
アリアはやることがあるとかで自分の部屋に戻ってしまった。ユリスも面倒という顔で去って行った。みんなひどい。
「ねー、アリアがね」
「俺の荷物は?」
くるりと振り返ったブルース兄様の怪訝な顔に、あっと声をあげる。
「階段に置いてきちゃった!」
「なんでそんなところに」
なにがどうなったら階段に放置することになるんだ、と頬を引き攣らせるブルース兄様の言葉を聞き流して、階段へと駆け戻る。律儀についてきた綿毛ちゃんが『オレも忘れてたぁ』とへらへら笑っている。
今度こそバッグを手に戻れば、兄様が「ありがとう。助かった」とお礼を言う。そのままバッグを開けて中身の片付けに取り掛かる兄様は「ん?」と目を細めた。
「なんか中身がぐちゃぐちゃに」
「それね。ユリスが中見てたから」
「なんでだよ」
「兄様が怪しいもの持ってないか確認してた」
「持ってるわけないだろ。そんなもの」
ため息を吐く兄様は、「それで?」と首を傾げる。
「アリアがなんだ」
どうやらきちんと俺の言葉を聞いていたらしい。律儀に問いかけてくるあたり流石ブルース兄様だ。
ふと気になって尋ねると「ルイス様までそんなこと言う」とアリアが拗ねたように唇を尖らせた。
「え、ごめん。でも見なかったから」
キャンベルの姿は見た。オーガス兄様の隣でにこにこしてた。でも早々に会場からは姿を消していた。
「みんなして私に興味なさすぎじゃないですか?」
「そんなことないけど」
まぁ、俺は後半ほとんど中庭にいたから。アリアとは入れ違いになったのだろうか。
「せっかくおしゃれしたのに」
「そうなの?」
なんだか悪いことをしたかもしれない。ごめんねと謝れば、「ルイス様は悪くないですよ。悪いのはブルース様です」との強気な言葉。これにユリスがニヤッとした。
「ブルースがなにをしたんだ」
途端に前のめりになるユリス。綿毛ちゃんも尻尾を振って『ブルースくん。なにしたの?』と興味津々だ。
「私とブルース様って、形だけの結婚じゃないですか」
「うん」
結婚に興味のないブルース兄様であったが、お母様が結婚しろとうるさかった。そこでアリアと形だけの結婚という方法を取ったことは俺もユリスも知っている。
「でも公の場では夫婦らしく振舞おうって約束してたんで。私すごく張り切っておしゃれしたんですよ! ブルース様の妻っぽくキスのひとつでもしてやろうと思ってたのに」
「キスする必要はなくない?」
なにがどうなったらパーティーの場でキスする流れになるんだよ。俺の指摘に、アリアは「だってその方が面白いじゃないですか」と開き直る。ふむふむ頷くユリスも、その方が面白いと考えていそうだ。
ブルース兄様はみんなに振り回されて大変だな。
「でも! ブルース様、私のこと無視ですよ! 無視!」
「あ、あぁー」
そう言えばブルース兄様。パーティーの間はずっと屈強な男たちに囲まれていた。アリアもその現場を目撃したらしい。ブルース兄様の隣に並んで夫婦っぽく振舞おうと計画していたのに、肝心のブルース兄様があれじゃなぁ。アリアが文句を言いたくなる気持ちもわかる。
「自分が結婚してること忘れてるんじゃないですか、あの人」
拗ねたように呟くアリアを励まそうと綿毛ちゃんを渡してあげる。アリアちゃんは犬猫が好き。よく撫でている。
俺から綿毛ちゃんを受け取ったアリアは、膝にのせて撫で始める。
「私なんのために行ったのかわかんないんですけど」
「ごめんね、うちの兄様が」
ルイス様が謝る必要はないですよ、と眉尻を下げるアリアは深く息を吐く。
「ブルース兄様はそういうの興味ないからね」
でもアリアも恋愛に興味があるようには見えない。昔からブルース兄様と結婚したいとは言っていたけど、あれは兄様のことが好きって言うより兄様の権力目当てみたいな感じだった。
その点について聞けば、アリアが「それはそうですけど」と頬杖をつく。
「でも存在自体忘れられるのは腹が立ちません? 絶対自分が結婚してること忘れてますよ! 私のこと単なる居候だと思ってそう」
「そんなことはないと思うけど」
でもどうだろうか。
アリアとブルース兄様が一緒にいる場面はあまり見ない。アリアはアリアで自由に生活している。
「そのうち別の女を口説き始めたらどうしよう」
私の妻としての立場が、と真面目な顔で心配を始めるアリアに、ユリスが「その時は僕に任せろ」と安請け合いをしている。
「ルイス様」
「ん?」
「ブルース様に、自分が結婚してること覚えてますって聞いてきてくださいよ」
「えー?」
俺が?
なんでみんな俺に頼むんだよ。
でも「お願いします!」と手を合わせてくるアリアがちょっぴり憐れで頷いてしまう。
「それと公の場では夫婦っぽく振る舞うっていう約束はもうなかったことにするのかも」
「はいはい」
綿毛ちゃんが『任せておいてぇ』と張り切っている。綿毛ちゃんはお願いされてないだろ。
そうして重い腰を上げた俺は、ブルース兄様の部屋に向かう。
「兄様ぁ!」
アリアはやることがあるとかで自分の部屋に戻ってしまった。ユリスも面倒という顔で去って行った。みんなひどい。
「ねー、アリアがね」
「俺の荷物は?」
くるりと振り返ったブルース兄様の怪訝な顔に、あっと声をあげる。
「階段に置いてきちゃった!」
「なんでそんなところに」
なにがどうなったら階段に放置することになるんだ、と頬を引き攣らせるブルース兄様の言葉を聞き流して、階段へと駆け戻る。律儀についてきた綿毛ちゃんが『オレも忘れてたぁ』とへらへら笑っている。
今度こそバッグを手に戻れば、兄様が「ありがとう。助かった」とお礼を言う。そのままバッグを開けて中身の片付けに取り掛かる兄様は「ん?」と目を細めた。
「なんか中身がぐちゃぐちゃに」
「それね。ユリスが中見てたから」
「なんでだよ」
「兄様が怪しいもの持ってないか確認してた」
「持ってるわけないだろ。そんなもの」
ため息を吐く兄様は、「それで?」と首を傾げる。
「アリアがなんだ」
どうやらきちんと俺の言葉を聞いていたらしい。律儀に問いかけてくるあたり流石ブルース兄様だ。
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