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16歳
497 否定できない
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授業は問題なく進んだ。俺はずっと座ってにこにこしていた。時折シャノンが意味深な視線を向けてきたが、意味はわからない。知らない奴が部屋にいることが物珍しいのだろう。
カル先生の授業は、普段の俺相手のものより若干スムーズに進んでいる。俺の時は中断することが多いのに。
そうして終わった授業であるが、帰る段階になって再びブランシェが姿を現した。そんなまめに見に来なくても。俺が信頼されていないということだろうか。
ブランシェに挨拶するカル先生の後ろで、シャノンが俺の袖を引いた。「ん?」と顔を向ければ、きらきらとした好奇心旺盛な瞳がじっと俺を見据えていた。
「ルイス様。また次回もいらしてくださいね」
「いいんですか?」
ブランシェの方を気にしながら尋ねるが、シャノンは「もちろん」と緩く笑う。
「ルイス様なら大歓迎です」
「ありがとうございます」
あっさり受け入れてもらえて俺も嬉しくなる。年下の子に懐かれるのは嫌いじゃない。しかしシャノンは女の子なので、ジェフリー相手の時のようにぐいぐいいくわけにもいかないから少し難しい。
とにかく丁寧に接しておけば大丈夫だろう。
シャノンの言葉に、ブランシェも深く頷いている。君は俺のことを警戒していたんじゃないのか?
スピネット子爵家を後にして馬車に乗り込んだ俺は、開放感から深く息を吐いていた。
「疲れた」
「お疲れさまです」
なんだかティアンの顔を久しぶりに見た気がする。実際には数時間程度しか離れていなかったのだが、とにかく疲れた。
あんなに言いたいことを押し込めて、ずっとにこにこしていることが大変だとは思わなかった。
馬車の中で盛大に伸びをしていると、同じく疲れた顔をしたカル先生が「ルイス様は黙っていればそれなりに見えますね」と、唐突に毒を吐く。今のはどう聞いても俺の悪口。「どういう意味だ!」と精一杯に突っかかればカル先生が苦笑した。
「ブランシェ様。絶対にあなたのことを誤解していますよ」
「誤解?」
首を捻るティアン。
だが、俺にも少しばかり心当たりがある。
シャノンが俺のことをルイス様呼びしてきたことといい、ブランシェがやけに俺を気にしていたことといい。
「多分だけど。俺が美少年すぎてびっくりしたんだよ」
ふふんと胸を張れば、ティアンが「うわぁ」と露骨に引いてみせた。
「久しぶりに聞きました。そのセリフ。なんか懐かしいですね」
「そう?」
予想外の反応を返してくるティアン。
俺が美少年なのは昔も今も変わらないもん。「相変わらずの自己評価の高さで」と、褒めているのか貶しているのかわからない口振りでティアンが緩く首を振った。
そのどこか馬鹿にするような素振りに、意外にもカル先生が口を挟んできた。
「それが。あながちルイス様の言葉を否定できない状況でして」
「はい?」
額を押さえて小さく唸るカル先生は、言いにくそうに言葉を探す。
「その。色々ありまして。どうやらルイス様のことを物静か? 儚げな? それこそ美少年だと思っているような感じで」
「物静か」
真顔で繰り返すティアンは、失礼な目線を送ってくる。カル先生のあやふやな物言いも気になるが、とりあえずは「これが物静か?」と目を瞬くティアンの肩を思い切り叩いておいた。
「なにするんですか」
「失礼だぞ! 俺は美少年だもん!」
「いや美少年に異議があるわけではなく」
もごもご言い訳するティアンに、頬を膨らませる。「ルイス様って大人しくできたんですね」と、失礼を重ねるティアンのことをもう一度叩いておいた。
カル先生の授業は、普段の俺相手のものより若干スムーズに進んでいる。俺の時は中断することが多いのに。
そうして終わった授業であるが、帰る段階になって再びブランシェが姿を現した。そんなまめに見に来なくても。俺が信頼されていないということだろうか。
ブランシェに挨拶するカル先生の後ろで、シャノンが俺の袖を引いた。「ん?」と顔を向ければ、きらきらとした好奇心旺盛な瞳がじっと俺を見据えていた。
「ルイス様。また次回もいらしてくださいね」
「いいんですか?」
ブランシェの方を気にしながら尋ねるが、シャノンは「もちろん」と緩く笑う。
「ルイス様なら大歓迎です」
「ありがとうございます」
あっさり受け入れてもらえて俺も嬉しくなる。年下の子に懐かれるのは嫌いじゃない。しかしシャノンは女の子なので、ジェフリー相手の時のようにぐいぐいいくわけにもいかないから少し難しい。
とにかく丁寧に接しておけば大丈夫だろう。
シャノンの言葉に、ブランシェも深く頷いている。君は俺のことを警戒していたんじゃないのか?
スピネット子爵家を後にして馬車に乗り込んだ俺は、開放感から深く息を吐いていた。
「疲れた」
「お疲れさまです」
なんだかティアンの顔を久しぶりに見た気がする。実際には数時間程度しか離れていなかったのだが、とにかく疲れた。
あんなに言いたいことを押し込めて、ずっとにこにこしていることが大変だとは思わなかった。
馬車の中で盛大に伸びをしていると、同じく疲れた顔をしたカル先生が「ルイス様は黙っていればそれなりに見えますね」と、唐突に毒を吐く。今のはどう聞いても俺の悪口。「どういう意味だ!」と精一杯に突っかかればカル先生が苦笑した。
「ブランシェ様。絶対にあなたのことを誤解していますよ」
「誤解?」
首を捻るティアン。
だが、俺にも少しばかり心当たりがある。
シャノンが俺のことをルイス様呼びしてきたことといい、ブランシェがやけに俺を気にしていたことといい。
「多分だけど。俺が美少年すぎてびっくりしたんだよ」
ふふんと胸を張れば、ティアンが「うわぁ」と露骨に引いてみせた。
「久しぶりに聞きました。そのセリフ。なんか懐かしいですね」
「そう?」
予想外の反応を返してくるティアン。
俺が美少年なのは昔も今も変わらないもん。「相変わらずの自己評価の高さで」と、褒めているのか貶しているのかわからない口振りでティアンが緩く首を振った。
そのどこか馬鹿にするような素振りに、意外にもカル先生が口を挟んできた。
「それが。あながちルイス様の言葉を否定できない状況でして」
「はい?」
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「その。色々ありまして。どうやらルイス様のことを物静か? 儚げな? それこそ美少年だと思っているような感じで」
「物静か」
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「なにするんですか」
「失礼だぞ! 俺は美少年だもん!」
「いや美少年に異議があるわけではなく」
もごもご言い訳するティアンに、頬を膨らませる。「ルイス様って大人しくできたんですね」と、失礼を重ねるティアンのことをもう一度叩いておいた。
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