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16歳
491 はいはい
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思わず半眼になる俺に構わず、アロンはグリシャのことを睨みつけている。
「なんでこいつに優しくする必要があるんですか」
「だってグリシャは真面目だから」
「はぁ!?」
真面目という単語に勢いよく反応したアロンは、「誰が真面目ですって?」とグリシャに挑むような視線を向けている。
「このギャンブル好きのどこが真面目だって言うんですか!」
「ギャンブル……?」
予想外の言葉に面食らっていると、当のグリシャが「それと仕事と何の関係があるんですか」とアロンに淡々と言い返している。
ギャンブル好きは否定しない感じですか?
マジで?
こっそりと綿毛ちゃんを抱き上げれば、空気の読めない毛玉が『賭け事やるのぉ?』と無邪気に首に突っ込みに行く。
「えぇ、その。趣味程度ですが」
「やるんだ」
あっさり認めたグリシャは、「それがなにか?」と開き直る。
別に悪いというわけではないけど。なんか真面目なグリシャとは結び付かないので驚いた。困惑していると、アロンが「ルイス様。人を見かけで判断したらダメですよ」ともっともらしく肩をすくめる。
うん。そうだね。アロンにしてはまともなことを言う。
口を閉じる俺。
グリシャは「私は仕事がありますので」と、わざとらしくアロンを見据えてから去って行った。アロンが隠しもせずに舌打ちした。アロンは誰とでも仲悪くなるな。ある意味すごい。なんでそんなに喧嘩腰なのだろうか。
お父様の部屋に向かうらしいグリシャの背中を眺めていると、アロンの鋭い視線を感じた。
「ティアンになにか言われましたか?」
「え」
なぜ急にティアン。
探るようなアロンの目に、思わず綿毛ちゃんを抱きしめる。もふもふ毛玉は黙っている。
「特になにも」
「本当に? 叙任式の後、なにか言われたんじゃないですか? 終わった後、ふたりで庭園を歩いていましたよね」
なんで知ってるんだよ、そんなこと。
アロンは結構なんでも知っている。油断できない。
「好きって言われました?」
固まる俺に、アロンが目を細める。なにも後ろめたいことなんてないのに、さっと目を反射的に逸らした。それなのに、アロンは「どうなんですか」とうるさい。
「そんなこと言われてないもん」
ティアンに好きなんて言われてない。
アロンはなにを言い出すのか。ティアンが俺にそんなこと言うわけないだろ。
つんとそっぽを向けば、アロンが「え? 言われてないんですか?」と意外そうに目を見開く。予想が外れたみたいな顔だ。
「ふーん。そうですか」
ひとりで呻るアロンは、顎に手をやって考え込む。やがてどうでもよさそうに肩をすくめた。
「まぁティアンの事はどうでもいいんですよ」
「アロンが始めたのに」
『ねー』
なんて勝手な奴。綿毛ちゃんとひそひそ言い合っていれば、一瞬だけ不機嫌顔を見せたアロンが周囲をさっと確認した。なにその怪しい動き。つられて俺も視線を走らせるが、誰もいない。グリシャはお父様の部屋に引っ込んでしまったし。
「俺はルイス様のこと好きですよ」
「はいはい」
「真面目に聞いてください」
そんなこと言われても。
アロンの好きはなんか軽いんだもん。俺が綿毛ちゃんやエリスちゃんに向ける好きに似ている気がする。
「アロンも仕事に戻りなよ。きっとブルース兄様が探してるよ」
「ブルース様のことはどうでもいいんですよ」
「どうでもはよくないよ。兄様が可哀想だろ」
『そうだそうだぁ。ブルースくんが可哀想だよ』
綿毛ちゃんと一緒になって背中を押せば、アロンが途端にやる気のない表情を作った。
なんだその顔は。
「なんでこいつに優しくする必要があるんですか」
「だってグリシャは真面目だから」
「はぁ!?」
真面目という単語に勢いよく反応したアロンは、「誰が真面目ですって?」とグリシャに挑むような視線を向けている。
「このギャンブル好きのどこが真面目だって言うんですか!」
「ギャンブル……?」
予想外の言葉に面食らっていると、当のグリシャが「それと仕事と何の関係があるんですか」とアロンに淡々と言い返している。
ギャンブル好きは否定しない感じですか?
マジで?
こっそりと綿毛ちゃんを抱き上げれば、空気の読めない毛玉が『賭け事やるのぉ?』と無邪気に首に突っ込みに行く。
「えぇ、その。趣味程度ですが」
「やるんだ」
あっさり認めたグリシャは、「それがなにか?」と開き直る。
別に悪いというわけではないけど。なんか真面目なグリシャとは結び付かないので驚いた。困惑していると、アロンが「ルイス様。人を見かけで判断したらダメですよ」ともっともらしく肩をすくめる。
うん。そうだね。アロンにしてはまともなことを言う。
口を閉じる俺。
グリシャは「私は仕事がありますので」と、わざとらしくアロンを見据えてから去って行った。アロンが隠しもせずに舌打ちした。アロンは誰とでも仲悪くなるな。ある意味すごい。なんでそんなに喧嘩腰なのだろうか。
お父様の部屋に向かうらしいグリシャの背中を眺めていると、アロンの鋭い視線を感じた。
「ティアンになにか言われましたか?」
「え」
なぜ急にティアン。
探るようなアロンの目に、思わず綿毛ちゃんを抱きしめる。もふもふ毛玉は黙っている。
「特になにも」
「本当に? 叙任式の後、なにか言われたんじゃないですか? 終わった後、ふたりで庭園を歩いていましたよね」
なんで知ってるんだよ、そんなこと。
アロンは結構なんでも知っている。油断できない。
「好きって言われました?」
固まる俺に、アロンが目を細める。なにも後ろめたいことなんてないのに、さっと目を反射的に逸らした。それなのに、アロンは「どうなんですか」とうるさい。
「そんなこと言われてないもん」
ティアンに好きなんて言われてない。
アロンはなにを言い出すのか。ティアンが俺にそんなこと言うわけないだろ。
つんとそっぽを向けば、アロンが「え? 言われてないんですか?」と意外そうに目を見開く。予想が外れたみたいな顔だ。
「ふーん。そうですか」
ひとりで呻るアロンは、顎に手をやって考え込む。やがてどうでもよさそうに肩をすくめた。
「まぁティアンの事はどうでもいいんですよ」
「アロンが始めたのに」
『ねー』
なんて勝手な奴。綿毛ちゃんとひそひそ言い合っていれば、一瞬だけ不機嫌顔を見せたアロンが周囲をさっと確認した。なにその怪しい動き。つられて俺も視線を走らせるが、誰もいない。グリシャはお父様の部屋に引っ込んでしまったし。
「俺はルイス様のこと好きですよ」
「はいはい」
「真面目に聞いてください」
そんなこと言われても。
アロンの好きはなんか軽いんだもん。俺が綿毛ちゃんやエリスちゃんに向ける好きに似ている気がする。
「アロンも仕事に戻りなよ。きっとブルース兄様が探してるよ」
「ブルース様のことはどうでもいいんですよ」
「どうでもはよくないよ。兄様が可哀想だろ」
『そうだそうだぁ。ブルースくんが可哀想だよ』
綿毛ちゃんと一緒になって背中を押せば、アロンが途端にやる気のない表情を作った。
なんだその顔は。
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