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16歳
485 報告
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「ティアン!」
「なんですか」
大声で呼べば、ティアンがちょっとだけ眉を寄せる。
俺の自室にて。
俺は先程からずっとあることが気になっていた。ティアンに教えてあげようと声を張り上げる。
「ティアン!」
「だからなんですか」
面倒くさいといった表情をみせる彼の足を綿毛ちゃんがちょびっと踏んでいる。ティアンの片足の上に、前足を乗せてニマニマしている。地味な悪戯だ。
「足踏まれてるよ」
「知ってますよ」
足元に視線を落としたティアンは、綿毛ちゃんのことをじっと観察している。相変わらずにやにやしている綿毛ちゃんは、ティアンの足から動く気配がない。
なんでティアンは綿毛ちゃんを退かさないのだろうか。弱そうな犬だから遠慮しているのかもしれない。俺だったら容赦なく追い払うけどね。動かないティアンに代わって、俺が注意をしておく。
「やめろ、犬。ティアンをいじめるな」
『犬じゃないでーす。いじめてもないでーす』
ぺろっと舌を出す綿毛ちゃんは、なんだかそわそわしている。毛玉の企みに気が付いた俺は、さっと綿毛ちゃんを抱き上げた。
綿毛ちゃんは、まだお父様にしか打ち明けていない俺の夢をティアンに教えたいのだ。小声で「余計なことするな!」と注意するが、綿毛ちゃんは『えー?』と笑うだけで理解しているのかも怪しい。お喋り毛玉め。
綿毛ちゃんをティアンから遠ざける。
不思議そうにしているティアンであったが、詳しく尋ねてはこない。
あの後、お父様は俺がカル先生と一緒に外出することを許可してくれた。とはいえ、護衛としてティアンも連れて行くという条件付きではあるが。
というわけで、今度はティアンにも一から説明しなければならなくなった。お父様の許しがあるので、ティアンもダメとは言わないだろう。だろうけど、やっぱり打ち明けるのには多少の決意が必要。
「……」
しかし、いつまでも黙っておくわけにはいかない。ここはさっさと報告を済ませてしまおう。
「今度、カル先生と一緒にお出かけするから。ティアンもついて来ていいよ」
「カル先生と? 珍しいですね」
珍しいというか、初めてである。
思えば、ティアンも昔はカル先生の授業を俺と一緒に受けていた。俺なんかよりもよっぽど積極的に取り組んでいたことを思い出す。
『お出かけいつにするの? オレも予定あけとくね』
「綿毛ちゃんはお留守番だよ。それに予定なんてないでしょ」
『ひどい』
この毛玉は、毎日俺の隣でごろごろしている。予定なんて皆無だろうが。
それに、喋る犬を連れて行くわけにはいかない。俺はカル先生の授業を見学に行くのだ。犬持参で行くのはどう考えてもおかしいと思う。
だから綿毛ちゃんはお留守番ねと説明するのだが、我儘毛玉は『いやだぁ。オレも行きたい』とうるさい。
カル先生と話し合った結果、俺はヴィアン家のルイスであることは内緒で見学に行くことにした。そうしないと見学先に必要以上に気を使わせてしまいそうだから。そう考えると、護衛としてティアンを引き連れて行くのも微妙な気がするけど、そこは仕方がない。どうにか誤魔化そうと思う。
その前に、まずはティアンの叙任式。
準備も着々と進みつつある。
「俺も見に行っていい?」
特に誘われてはいないのだが、勝手に見に行く気満々でいた。一応、思い出してティアンに確認すれば「見に来てくれるんですか?」と顔を綻ばせた。
「嫌なら見に行かないけど」
「嫌なんて言ってませんけど」
『オレも行きたいぃ』
ここぞとばかりに綿毛ちゃんが存在を主張する。先程からうるさい。
「エリスちゃんも連れて行くね」
「猫はちょっと」
やんわり断ってきたティアンの腕をペシッと叩いておく。「なにするんですか」と文句を言うティアンは、ちょっぴり笑っていた。
「なんですか」
大声で呼べば、ティアンがちょっとだけ眉を寄せる。
俺の自室にて。
俺は先程からずっとあることが気になっていた。ティアンに教えてあげようと声を張り上げる。
「ティアン!」
「だからなんですか」
面倒くさいといった表情をみせる彼の足を綿毛ちゃんがちょびっと踏んでいる。ティアンの片足の上に、前足を乗せてニマニマしている。地味な悪戯だ。
「足踏まれてるよ」
「知ってますよ」
足元に視線を落としたティアンは、綿毛ちゃんのことをじっと観察している。相変わらずにやにやしている綿毛ちゃんは、ティアンの足から動く気配がない。
なんでティアンは綿毛ちゃんを退かさないのだろうか。弱そうな犬だから遠慮しているのかもしれない。俺だったら容赦なく追い払うけどね。動かないティアンに代わって、俺が注意をしておく。
「やめろ、犬。ティアンをいじめるな」
『犬じゃないでーす。いじめてもないでーす』
ぺろっと舌を出す綿毛ちゃんは、なんだかそわそわしている。毛玉の企みに気が付いた俺は、さっと綿毛ちゃんを抱き上げた。
綿毛ちゃんは、まだお父様にしか打ち明けていない俺の夢をティアンに教えたいのだ。小声で「余計なことするな!」と注意するが、綿毛ちゃんは『えー?』と笑うだけで理解しているのかも怪しい。お喋り毛玉め。
綿毛ちゃんをティアンから遠ざける。
不思議そうにしているティアンであったが、詳しく尋ねてはこない。
あの後、お父様は俺がカル先生と一緒に外出することを許可してくれた。とはいえ、護衛としてティアンも連れて行くという条件付きではあるが。
というわけで、今度はティアンにも一から説明しなければならなくなった。お父様の許しがあるので、ティアンもダメとは言わないだろう。だろうけど、やっぱり打ち明けるのには多少の決意が必要。
「……」
しかし、いつまでも黙っておくわけにはいかない。ここはさっさと報告を済ませてしまおう。
「今度、カル先生と一緒にお出かけするから。ティアンもついて来ていいよ」
「カル先生と? 珍しいですね」
珍しいというか、初めてである。
思えば、ティアンも昔はカル先生の授業を俺と一緒に受けていた。俺なんかよりもよっぽど積極的に取り組んでいたことを思い出す。
『お出かけいつにするの? オレも予定あけとくね』
「綿毛ちゃんはお留守番だよ。それに予定なんてないでしょ」
『ひどい』
この毛玉は、毎日俺の隣でごろごろしている。予定なんて皆無だろうが。
それに、喋る犬を連れて行くわけにはいかない。俺はカル先生の授業を見学に行くのだ。犬持参で行くのはどう考えてもおかしいと思う。
だから綿毛ちゃんはお留守番ねと説明するのだが、我儘毛玉は『いやだぁ。オレも行きたい』とうるさい。
カル先生と話し合った結果、俺はヴィアン家のルイスであることは内緒で見学に行くことにした。そうしないと見学先に必要以上に気を使わせてしまいそうだから。そう考えると、護衛としてティアンを引き連れて行くのも微妙な気がするけど、そこは仕方がない。どうにか誤魔化そうと思う。
その前に、まずはティアンの叙任式。
準備も着々と進みつつある。
「俺も見に行っていい?」
特に誘われてはいないのだが、勝手に見に行く気満々でいた。一応、思い出してティアンに確認すれば「見に来てくれるんですか?」と顔を綻ばせた。
「嫌なら見に行かないけど」
「嫌なんて言ってませんけど」
『オレも行きたいぃ』
ここぞとばかりに綿毛ちゃんが存在を主張する。先程からうるさい。
「エリスちゃんも連れて行くね」
「猫はちょっと」
やんわり断ってきたティアンの腕をペシッと叩いておく。「なにするんですか」と文句を言うティアンは、ちょっぴり笑っていた。
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