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16歳
454 警戒してほしい
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ジェフリーがお泊まりしたいって、とデニスに伝えたところ「僕も泊まる!」という元気なお返事があった。ユリスが「はぁ?」と難しい顔をしたが、デニスは何ひとつ気にしていない。ひとり先走って無邪気に喜んでいる。
一応、ブルース兄様にも報告すれば「わかった」というシンプルな頷きが返ってきた。こちらはアロンの反応がちょっと面倒だった。
「俺はどうなるんですか!」
「どうもならないよ」
「なんでですか!」
「なんでってなに? どうにもならなくない?」
勢いよく立ち上がるアロンは、「絶対にダメです。早々に帰ってもらいましょう」と冷たいことを言い放つ。
ブルース兄様に助けを求めるが、兄様はアロンを軽く睨むだけで積極的には止めてくれない。首を突っ込むのが面倒なのだろう。忙しそうに書類を確認している。兄様の助けは期待できないので、自分で頑張ることにする。
「アロン。ジェフリーはまだ子供だから。あんまりいじめたらダメだよ」
「あれは子供扱いしない方がいいですよ」
「まだ十四歳だよ。俺より年下」
ムスッとするアロンは、「年は関係ないですよ」とぶつぶつ言い始める。
「ルイス様への下心が丸わかりなんですよ!」
「下心?」
なんそれ。ジェフリーってそんなにわかりやすいか? 首を傾げていると、アロンがますます声を荒げる。
「さっきも明らかにルイス様に甘えてたじゃないですか! べたべた触りやがって! 腹が立つんですよ!」
「そんなこと言われても」
ジェフリーはまだ小さい子だから。甘えてもいいだろ。それに、ジェフリーはちょっと複雑な生い立ちだ。甘えてもいい存在があまりいなかった。そんな彼が、俺に甘えてくれるというのであれば嬉しい話だと思う。だが、アロンは納得しない。
「とにかく! ダメなものはダメなんです!」
しかし、ブルース兄様と俺の注目を集めて少しだけ気後れしたらしい。こほんと咳払いをして半眼になるアロンは、多少譲歩する気になったらしい。
「泊まってもいいですけど。一緒に寝たらダメですよ」
「……うん」
「なんですか今の間は! 絶対にダメですよ!」
「はいはい」
「ちょっと!」
そんな感じでお泊まり会が決まったが、なぜかティアンも不満そうな様子だった。ジェフリーがみんなに警戒されている。彼がなにをしたって言うんだ。
ジェフリーが割り当てられた客室に引っ込んでいる間に、ティアンが綿毛ちゃんを捕まえて「ジェフリー様をよく見ておいてくれる?」と変なお願いをしている。意味不明だが、綿毛ちゃんはあんまり役に立たないと思うぞ。
『えー、どうしようかなぁ?』
案の定、ニヤニヤと悪い顔をする綿毛ちゃんに、ティアンが表情を消す。珍しくお怒りらしい。それを見て、毛玉が勝手に大慌てする。
『冗談だよ? オレに任せなよ! 子どもの世話は得意だよぉ』
途端に尻尾を振る綿毛ちゃんは、やる気をアピールしているらしい。だが、綿毛ちゃんが見張るようなことはない。なんでそんなにジェフリーを警戒するのか。
「ジェフリーがなにをしたって言うんだ」
「ルイス様は警戒心がなさすぎでは?」
「そんなことない」
相手はジェフリーだ。そもそも警戒する必要がない。けれども、ティアンは怖い顔。どうやらこいつも基本的にはアロンと同意見らしい。
「ジェフリー様は、ルイス様のこと好きでしょ?」
「……」
「見ててわかりますよ。アロン殿への対抗心を隠そうともしていない。僕のことも意識していますよね」
だからこちらも警戒しているんです、と静かに語るティアンに、俺は「うーん」と曖昧な態度を取る。
ジェフリーが俺のことを好きというのは事実だ。実際に告白もされているし。これまでは、ずっとひとりで考えていたのに。それを突然ティアンに指摘されて、少しドキッとする。
「僕だって、嫌だと思うことはありますよ。今まさに、ちょっと嫌な気分です」
「それは、なんで?」
ちょっぴり目を見開いたティアンは「なんでって」と言葉を濁す。
なにかを言いたそうな顔だ。続きを待っていれば、ティアンの視線がジャンと綿毛ちゃんに向く。ハッと耳を立てた綿毛ちゃんが、くるっと壁の方を向く。ジャンもそれを真似している。すごくわざとらしい態度だ。
『オレらのことはお気になさらず。居ないものと思ってくれていいよ』
綿毛ちゃんと一緒にこくこく頷いているジャン。これにティアンが「無理ですよ!」と声を荒げている。
「とにかく! なにかあれば綿毛ちゃんがどうにかしてくださいね」
『オレ、責任重大だねぇ』
ケラケラ笑う綿毛ちゃんは、あんまりやる気がなかった。ティアンも心配そうに毛玉を凝視している。
「ジェフリーと夜中にお菓子食べよー」
「いけません」
すかさず否定してくるティアンに、「しまった」と口元を覆う。内緒にしておけばよかった。まぁ、いいや。ティアンもわざわざ見回りに来ないだろうし。こうなったらジュースも飲んじゃおう。寝る前に、厨房にお邪魔してこっそりとってこようと思う。ジェフリーと一緒に真夜中パーティーだ。
一応、ブルース兄様にも報告すれば「わかった」というシンプルな頷きが返ってきた。こちらはアロンの反応がちょっと面倒だった。
「俺はどうなるんですか!」
「どうもならないよ」
「なんでですか!」
「なんでってなに? どうにもならなくない?」
勢いよく立ち上がるアロンは、「絶対にダメです。早々に帰ってもらいましょう」と冷たいことを言い放つ。
ブルース兄様に助けを求めるが、兄様はアロンを軽く睨むだけで積極的には止めてくれない。首を突っ込むのが面倒なのだろう。忙しそうに書類を確認している。兄様の助けは期待できないので、自分で頑張ることにする。
「アロン。ジェフリーはまだ子供だから。あんまりいじめたらダメだよ」
「あれは子供扱いしない方がいいですよ」
「まだ十四歳だよ。俺より年下」
ムスッとするアロンは、「年は関係ないですよ」とぶつぶつ言い始める。
「ルイス様への下心が丸わかりなんですよ!」
「下心?」
なんそれ。ジェフリーってそんなにわかりやすいか? 首を傾げていると、アロンがますます声を荒げる。
「さっきも明らかにルイス様に甘えてたじゃないですか! べたべた触りやがって! 腹が立つんですよ!」
「そんなこと言われても」
ジェフリーはまだ小さい子だから。甘えてもいいだろ。それに、ジェフリーはちょっと複雑な生い立ちだ。甘えてもいい存在があまりいなかった。そんな彼が、俺に甘えてくれるというのであれば嬉しい話だと思う。だが、アロンは納得しない。
「とにかく! ダメなものはダメなんです!」
しかし、ブルース兄様と俺の注目を集めて少しだけ気後れしたらしい。こほんと咳払いをして半眼になるアロンは、多少譲歩する気になったらしい。
「泊まってもいいですけど。一緒に寝たらダメですよ」
「……うん」
「なんですか今の間は! 絶対にダメですよ!」
「はいはい」
「ちょっと!」
そんな感じでお泊まり会が決まったが、なぜかティアンも不満そうな様子だった。ジェフリーがみんなに警戒されている。彼がなにをしたって言うんだ。
ジェフリーが割り当てられた客室に引っ込んでいる間に、ティアンが綿毛ちゃんを捕まえて「ジェフリー様をよく見ておいてくれる?」と変なお願いをしている。意味不明だが、綿毛ちゃんはあんまり役に立たないと思うぞ。
『えー、どうしようかなぁ?』
案の定、ニヤニヤと悪い顔をする綿毛ちゃんに、ティアンが表情を消す。珍しくお怒りらしい。それを見て、毛玉が勝手に大慌てする。
『冗談だよ? オレに任せなよ! 子どもの世話は得意だよぉ』
途端に尻尾を振る綿毛ちゃんは、やる気をアピールしているらしい。だが、綿毛ちゃんが見張るようなことはない。なんでそんなにジェフリーを警戒するのか。
「ジェフリーがなにをしたって言うんだ」
「ルイス様は警戒心がなさすぎでは?」
「そんなことない」
相手はジェフリーだ。そもそも警戒する必要がない。けれども、ティアンは怖い顔。どうやらこいつも基本的にはアロンと同意見らしい。
「ジェフリー様は、ルイス様のこと好きでしょ?」
「……」
「見ててわかりますよ。アロン殿への対抗心を隠そうともしていない。僕のことも意識していますよね」
だからこちらも警戒しているんです、と静かに語るティアンに、俺は「うーん」と曖昧な態度を取る。
ジェフリーが俺のことを好きというのは事実だ。実際に告白もされているし。これまでは、ずっとひとりで考えていたのに。それを突然ティアンに指摘されて、少しドキッとする。
「僕だって、嫌だと思うことはありますよ。今まさに、ちょっと嫌な気分です」
「それは、なんで?」
ちょっぴり目を見開いたティアンは「なんでって」と言葉を濁す。
なにかを言いたそうな顔だ。続きを待っていれば、ティアンの視線がジャンと綿毛ちゃんに向く。ハッと耳を立てた綿毛ちゃんが、くるっと壁の方を向く。ジャンもそれを真似している。すごくわざとらしい態度だ。
『オレらのことはお気になさらず。居ないものと思ってくれていいよ』
綿毛ちゃんと一緒にこくこく頷いているジャン。これにティアンが「無理ですよ!」と声を荒げている。
「とにかく! なにかあれば綿毛ちゃんがどうにかしてくださいね」
『オレ、責任重大だねぇ』
ケラケラ笑う綿毛ちゃんは、あんまりやる気がなかった。ティアンも心配そうに毛玉を凝視している。
「ジェフリーと夜中にお菓子食べよー」
「いけません」
すかさず否定してくるティアンに、「しまった」と口元を覆う。内緒にしておけばよかった。まぁ、いいや。ティアンもわざわざ見回りに来ないだろうし。こうなったらジュースも飲んじゃおう。寝る前に、厨房にお邪魔してこっそりとってこようと思う。ジェフリーと一緒に真夜中パーティーだ。
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