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15歳
406 ライバル?
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「ちゃんと勉強しているんですね。偉いですね」
「まぁね。俺はもうお兄ちゃんだし」
ティアンは、なにかと俺のことを褒めてくる。褒められて悪い気はしない。
ティアンは、しれっと俺の護衛を続けている。それでいいのかとレナルドに尋ねたのだが、レナルドは特に役目を奪われた件については気にしていないようであった。レナルドは当初から、俺の護衛を面倒くさそうにこなしていた。口には出さないが、おそらく護衛役がティアンに変わってホッとしているのだろう。
今日も朝から勉強する俺に、ティアンは優しい表情を向けてくる。
自分では気が付かないのだが、ティアンによると俺はすごく成長したらしい。身長が伸びたのはもちろん、ちゃんと勉強もするようになったし、乗馬もできるようになった。
そういう細かいところをいちいち褒めてくるティアンに、俺はなんだか照れ臭い気分になる。兄様たちは、あまり俺のことを褒めてはくれない。褒めてと催促すれば適当に褒めてくれるくらいである。ユリスも、俺のことを小馬鹿にしたような態度が多い。
ロニーは、よく俺のことを褒めてくれたんだけどな。俺の護衛役から外れて、あまり会うことがなくなった。副団長として毎日頑張っているようなので、邪魔はできないし。
昔のティアンは、俺のやることなすことに文句をつけていたイメージなので、彼に褒められると初めはちょっと変な感じだった。しかし、それもすぐに慣れた。褒められるのは、好き。
「見てこれ。かっこいいでしょ! 誕生日にもらったの」
そうやってティアンが優しく接してくるものだから、俺は当初感じていた妙な気分を早々に捨てて、あれこれティアンに話しかけるようになった。俺が話しかけると、ティアンは嬉しそうに答えてくれる。だからますます話がはずむのだ。
今日も、アロンにもらった例のかっこいいペンを見せてあげた。いつものように「すごいですね」「かっこいいですね」という言葉を期待してペンを差し出した俺であったが、予想に反してティアンは真顔になった。
「……それ。誰にもらったんですか」
「アロン」
アロンの名前が出た途端、ティアンの表情がくもる。それと同時に、部屋の空気も少しだけ重くなる。俺、なにかまずいこと言った?
「アロン殿と仲良いんですね」
「そりゃあ、まぁ。それなりに」
というか。
俺とアロンがよく遊んでいるのは、ティアンも知っていただろうに。いまさらそんなことを質問してくるなんて。ティアンの思惑が見えないまま、再びペンを差し出す。
「そんなことより。見て、かっこいいでしょ」
「そうですね」
なんだか冷たい反応に、首を捻る。
しかし、ティアンは前々からアロンのことをよく思っていなかった。俺に対して、アロンの悪口のようなことを聞かせてきたことも多々あった。
アロンのことを信じてはいけないと。十歳だった俺に教えてきたのは、確かティアンだったはず。
こいつら、いまだに仲悪いのか。
ティアンが大人になったから、てっきりアロンとの関係も良好になったとばかり。だってアロンは、騎士としてはティアンの先輩なわけだし。性格はちょっと、あれだけど。
「次の誕生日。僕もプレゼント用意するんで」
「うん!」
よくわからんが、ティアンはアロンをライバル視しているらしい。あのクソ野郎となんで張り合う必要があるのかはわからないが、特に不都合もないので放っておこう。横から俺が口を挟んでも、なんだかややこしいことになりそうだし。
『いいなぁ。オレもプレゼントほしいな』
なぜか会話に割り込んでくる綿毛ちゃんは、『オレ、誕生日プレゼントもらったことないけどぉ?』と突然アピールしてくる。
「綿毛ちゃんの誕生日っていつなの?」
『知らなぁい』
「なんで知らないの?」
『なんでって。自分が生まれた日とか。自分ではわからなくない?』
俺の足元を駆ける毛玉は、『なんでもいいからプレゼントほしい。一度はもらってみたい』と鼻息荒く主張している。
「首輪あげたじゃん」
『これは違うくない? オレ、これもらっても嬉しくなかった』
「我儘だな」
そういえば、綿毛ちゃんに初めて首輪をつける時、すごく暴れて大変だった。ユリスとふたりがかりでようやく装着したことを思い出す。毛に埋もれて見えないけど、綿毛ちゃんは一応今も首輪をしている。
綿毛ちゃんがお喋りしたことで、ティアンが静かになった。お喋り毛玉に驚いたティアンは、その後みんなから綿毛ちゃんはそういう生き物だと散々説明されて、渋々納得したようであった。だが、不満なことに変わりはないらしく、綿毛ちゃんがお喋りすると少しだけ距離を取り始める。
「綿毛ちゃんが急に喋るから。ティアンがびっくりしちゃったじゃん」
『ごめんねぇ。ティアンさん。でもオレ単なる毛玉だから。そんなに怖がらないでぇ』
「いえ、はい。大丈夫です」
全然大丈夫ではない顔をするティアンに、俺はそっと綿毛ちゃんを近づけた。こんなもふもふを触らないなんて。人生損していると思うので。
「まぁね。俺はもうお兄ちゃんだし」
ティアンは、なにかと俺のことを褒めてくる。褒められて悪い気はしない。
ティアンは、しれっと俺の護衛を続けている。それでいいのかとレナルドに尋ねたのだが、レナルドは特に役目を奪われた件については気にしていないようであった。レナルドは当初から、俺の護衛を面倒くさそうにこなしていた。口には出さないが、おそらく護衛役がティアンに変わってホッとしているのだろう。
今日も朝から勉強する俺に、ティアンは優しい表情を向けてくる。
自分では気が付かないのだが、ティアンによると俺はすごく成長したらしい。身長が伸びたのはもちろん、ちゃんと勉強もするようになったし、乗馬もできるようになった。
そういう細かいところをいちいち褒めてくるティアンに、俺はなんだか照れ臭い気分になる。兄様たちは、あまり俺のことを褒めてはくれない。褒めてと催促すれば適当に褒めてくれるくらいである。ユリスも、俺のことを小馬鹿にしたような態度が多い。
ロニーは、よく俺のことを褒めてくれたんだけどな。俺の護衛役から外れて、あまり会うことがなくなった。副団長として毎日頑張っているようなので、邪魔はできないし。
昔のティアンは、俺のやることなすことに文句をつけていたイメージなので、彼に褒められると初めはちょっと変な感じだった。しかし、それもすぐに慣れた。褒められるのは、好き。
「見てこれ。かっこいいでしょ! 誕生日にもらったの」
そうやってティアンが優しく接してくるものだから、俺は当初感じていた妙な気分を早々に捨てて、あれこれティアンに話しかけるようになった。俺が話しかけると、ティアンは嬉しそうに答えてくれる。だからますます話がはずむのだ。
今日も、アロンにもらった例のかっこいいペンを見せてあげた。いつものように「すごいですね」「かっこいいですね」という言葉を期待してペンを差し出した俺であったが、予想に反してティアンは真顔になった。
「……それ。誰にもらったんですか」
「アロン」
アロンの名前が出た途端、ティアンの表情がくもる。それと同時に、部屋の空気も少しだけ重くなる。俺、なにかまずいこと言った?
「アロン殿と仲良いんですね」
「そりゃあ、まぁ。それなりに」
というか。
俺とアロンがよく遊んでいるのは、ティアンも知っていただろうに。いまさらそんなことを質問してくるなんて。ティアンの思惑が見えないまま、再びペンを差し出す。
「そんなことより。見て、かっこいいでしょ」
「そうですね」
なんだか冷たい反応に、首を捻る。
しかし、ティアンは前々からアロンのことをよく思っていなかった。俺に対して、アロンの悪口のようなことを聞かせてきたことも多々あった。
アロンのことを信じてはいけないと。十歳だった俺に教えてきたのは、確かティアンだったはず。
こいつら、いまだに仲悪いのか。
ティアンが大人になったから、てっきりアロンとの関係も良好になったとばかり。だってアロンは、騎士としてはティアンの先輩なわけだし。性格はちょっと、あれだけど。
「次の誕生日。僕もプレゼント用意するんで」
「うん!」
よくわからんが、ティアンはアロンをライバル視しているらしい。あのクソ野郎となんで張り合う必要があるのかはわからないが、特に不都合もないので放っておこう。横から俺が口を挟んでも、なんだかややこしいことになりそうだし。
『いいなぁ。オレもプレゼントほしいな』
なぜか会話に割り込んでくる綿毛ちゃんは、『オレ、誕生日プレゼントもらったことないけどぉ?』と突然アピールしてくる。
「綿毛ちゃんの誕生日っていつなの?」
『知らなぁい』
「なんで知らないの?」
『なんでって。自分が生まれた日とか。自分ではわからなくない?』
俺の足元を駆ける毛玉は、『なんでもいいからプレゼントほしい。一度はもらってみたい』と鼻息荒く主張している。
「首輪あげたじゃん」
『これは違うくない? オレ、これもらっても嬉しくなかった』
「我儘だな」
そういえば、綿毛ちゃんに初めて首輪をつける時、すごく暴れて大変だった。ユリスとふたりがかりでようやく装着したことを思い出す。毛に埋もれて見えないけど、綿毛ちゃんは一応今も首輪をしている。
綿毛ちゃんがお喋りしたことで、ティアンが静かになった。お喋り毛玉に驚いたティアンは、その後みんなから綿毛ちゃんはそういう生き物だと散々説明されて、渋々納得したようであった。だが、不満なことに変わりはないらしく、綿毛ちゃんがお喋りすると少しだけ距離を取り始める。
「綿毛ちゃんが急に喋るから。ティアンがびっくりしちゃったじゃん」
『ごめんねぇ。ティアンさん。でもオレ単なる毛玉だから。そんなに怖がらないでぇ』
「いえ、はい。大丈夫です」
全然大丈夫ではない顔をするティアンに、俺はそっと綿毛ちゃんを近づけた。こんなもふもふを触らないなんて。人生損していると思うので。
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