270 / 586
11歳
258 落ち着けない
しおりを挟む
「いいですか。勝手にうろうろしないでくださいね」
「わかったか、ユリス」
「ふざけるな。気をつけるべきはおまえの方だろ」
「なんだと!」
偉そうに言い聞かせてくるアロンの言葉に起因して、俺とユリスが睨み合う。それをのんびり眺めていたアロンであるが、横からタイラーが「見ていないで止めてくださいよ」と、文句を言っている。
「はいはい、喧嘩しない」
パンパンと手を叩いたタイラーは、俺らの注目を集めると、腰に手をあてた。
「いいですか。学園内では勝手にうろうろしないこと。知らない人に絡みに行かないこと」
知らない人に絡みに行ったことなんてないけどな。適当に聞き流していると「ルイス様に言っているんですよ」と、なぜか名指しされてしまった。
「誰彼かまわず話しかけるんですから、まったく。知らない人にはついて行ったらダメですよ」
俺がいつそんなことしたよ。まったく心当たりがない。
戸惑っていると、タイラーが眉間に皺を寄せる。最近、マジで表情がブルース兄様に似てきた気がする。口煩い兄様に似る必要なんてないのに。
「ルイス様。知らない人にお菓子あげると言われたらどうしますよ」
「お菓子だけもらって、ついて行かないから大丈夫」
「なにも大丈夫ではありませんよ。もらったらダメに決まっているでしょ」
眉を吊り上げるタイラー。冗談だって。流石に不審者からお菓子受け取ったりはしないから安心して欲しい。
大丈夫と言い聞かせて、ようやくタイラーが納得するかと思いきや。
「でもルイス様って、うちの妹がヴィアン家に侵入した時、怪しいお兄さんとわかっていながらお菓子要求した前科がありますよね」
アロンが余計なことを言い始める。再びタイラーが口を開こうとするのを制止するため、慌てて「ティアンに会えるの楽しみだね!」と話題を逸らしておく。
ね? と横に立っていたユリスの腕を掴めば、「いや別に。そんなに楽しみではない」と酷い答えが返ってきた。なんて冷たいお子様だ。そこは普通に楽しみと答えておけばいいだろ。
午後になり。
アロンの案内に従い、再び馬車で少し移動した。マジで学園は近くにあるらしく、そこまで時間はかからなかった。
どうやら本気で俺に学園内を見せたいらしい。そんなことで俺が勉強のやる気を出すわけがないのに。相変わらずブルース兄様は真面目である。
けれども、異世界の学校とかめっちゃ興味ある。わくわくと抑えきれない興奮に、とりあえずその場で盛大に飛び跳ねておく。それを見たクレイグ団長が、なにやら頬を引き攣らせている。
「ルイス様?」
ぴょんぴょん跳ねながら、クレイグ団長の顔を見上げる。困った表情をした団長は「落ち着いてください」と控えめに声をかけてくる。
「落ち着いてる!」
「どこがですか。とりあえず跳ねるのやめましょうよ」
そんなことを言ったタイラーが、俺の両肩に手を置いて、ジャンプを阻止してくる。動きを制限されてしまった俺は、代わりに「行くぞぉ!」と大声で叫んでおくことにする。
「ちょ、だから落ち着いてくださいって」
俺の口を塞ごうとしてくるタイラーを振り切って、ユリスの手を取る。そのままぶんぶん振りまわせば、「やめろ。僕を巻き込むな」と冷たい目を向けられてしまった。
今は授業中なのだろうか。そもそもこの学園の仕組みがよくわからない。
でっかい門を馬車に乗ったままくぐって、学園内に到着する。
真っ先に駆けおりた俺に、慌ててタイラーと団長が寄ってくる。ヴィアン家の屋敷に負けないくらい広大な敷地に、でっかい建物。マジでファンタジー世界の魔法学校みたいな外観だ。まぁ、学ぶのは魔法ではなく一般的な学問ではあるのだが。
「ルイス様。少しお待ちくださいね」
今にも駆け出そうとする俺であったが、馬をおりたロニーに優しく言われて、ぴたりと足を止める。
言われた通りに、その場で静かに待機していれば、「なんでロニーさんの言うことは素直にきくんですか」とタイラーがぐちぐち言っている。
なにを言っているのだ、こいつは。ロニーに迷惑をかけるわけにはいかないだろうが。
「わかったか、ユリス」
「ふざけるな。気をつけるべきはおまえの方だろ」
「なんだと!」
偉そうに言い聞かせてくるアロンの言葉に起因して、俺とユリスが睨み合う。それをのんびり眺めていたアロンであるが、横からタイラーが「見ていないで止めてくださいよ」と、文句を言っている。
「はいはい、喧嘩しない」
パンパンと手を叩いたタイラーは、俺らの注目を集めると、腰に手をあてた。
「いいですか。学園内では勝手にうろうろしないこと。知らない人に絡みに行かないこと」
知らない人に絡みに行ったことなんてないけどな。適当に聞き流していると「ルイス様に言っているんですよ」と、なぜか名指しされてしまった。
「誰彼かまわず話しかけるんですから、まったく。知らない人にはついて行ったらダメですよ」
俺がいつそんなことしたよ。まったく心当たりがない。
戸惑っていると、タイラーが眉間に皺を寄せる。最近、マジで表情がブルース兄様に似てきた気がする。口煩い兄様に似る必要なんてないのに。
「ルイス様。知らない人にお菓子あげると言われたらどうしますよ」
「お菓子だけもらって、ついて行かないから大丈夫」
「なにも大丈夫ではありませんよ。もらったらダメに決まっているでしょ」
眉を吊り上げるタイラー。冗談だって。流石に不審者からお菓子受け取ったりはしないから安心して欲しい。
大丈夫と言い聞かせて、ようやくタイラーが納得するかと思いきや。
「でもルイス様って、うちの妹がヴィアン家に侵入した時、怪しいお兄さんとわかっていながらお菓子要求した前科がありますよね」
アロンが余計なことを言い始める。再びタイラーが口を開こうとするのを制止するため、慌てて「ティアンに会えるの楽しみだね!」と話題を逸らしておく。
ね? と横に立っていたユリスの腕を掴めば、「いや別に。そんなに楽しみではない」と酷い答えが返ってきた。なんて冷たいお子様だ。そこは普通に楽しみと答えておけばいいだろ。
午後になり。
アロンの案内に従い、再び馬車で少し移動した。マジで学園は近くにあるらしく、そこまで時間はかからなかった。
どうやら本気で俺に学園内を見せたいらしい。そんなことで俺が勉強のやる気を出すわけがないのに。相変わらずブルース兄様は真面目である。
けれども、異世界の学校とかめっちゃ興味ある。わくわくと抑えきれない興奮に、とりあえずその場で盛大に飛び跳ねておく。それを見たクレイグ団長が、なにやら頬を引き攣らせている。
「ルイス様?」
ぴょんぴょん跳ねながら、クレイグ団長の顔を見上げる。困った表情をした団長は「落ち着いてください」と控えめに声をかけてくる。
「落ち着いてる!」
「どこがですか。とりあえず跳ねるのやめましょうよ」
そんなことを言ったタイラーが、俺の両肩に手を置いて、ジャンプを阻止してくる。動きを制限されてしまった俺は、代わりに「行くぞぉ!」と大声で叫んでおくことにする。
「ちょ、だから落ち着いてくださいって」
俺の口を塞ごうとしてくるタイラーを振り切って、ユリスの手を取る。そのままぶんぶん振りまわせば、「やめろ。僕を巻き込むな」と冷たい目を向けられてしまった。
今は授業中なのだろうか。そもそもこの学園の仕組みがよくわからない。
でっかい門を馬車に乗ったままくぐって、学園内に到着する。
真っ先に駆けおりた俺に、慌ててタイラーと団長が寄ってくる。ヴィアン家の屋敷に負けないくらい広大な敷地に、でっかい建物。マジでファンタジー世界の魔法学校みたいな外観だ。まぁ、学ぶのは魔法ではなく一般的な学問ではあるのだが。
「ルイス様。少しお待ちくださいね」
今にも駆け出そうとする俺であったが、馬をおりたロニーに優しく言われて、ぴたりと足を止める。
言われた通りに、その場で静かに待機していれば、「なんでロニーさんの言うことは素直にきくんですか」とタイラーがぐちぐち言っている。
なにを言っているのだ、こいつは。ロニーに迷惑をかけるわけにはいかないだろうが。
384
お気に入りに追加
3,020
あなたにおすすめの小説
彼の至宝
まめ
BL
十五歳の誕生日を迎えた主人公が、突如として思い出した前世の記憶を、本当にこれって前世なの、どうなのとあれこれ悩みながら、自分の中で色々と折り合いをつけ、それぞれの幸せを見つける話。
妹を侮辱した馬鹿の兄を嫁に貰います
ひづき
BL
妹のべルティシアが馬鹿王子ラグナルに婚約破棄を言い渡された。
フェルベードが怒りを露わにすると、馬鹿王子の兄アンセルが命を持って償うと言う。
「よし。お前が俺に嫁げ」
結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、転生特典(執事)と旅に出たい
オオトリ
BL
とある教会で、今日一組の若い男女が結婚式を挙げようとしていた。
今、まさに新郎新婦が手を取り合おうとしたその時―――
「ちょっと待ったー!」
乱入者の声が響き渡った。
これは、とある事情で異世界転生した主人公が、結婚式当日に「ちょっと待った」されたので、
白米を求めて 俺TUEEEEせずに、執事TUEEEEな旅に出たい
そんなお話
※主人公は当初女性と婚約しています(タイトルの通り)
※主人公ではない部分で、男女の恋愛がお話に絡んでくることがあります
※BLは読むことも初心者の作者の初作品なので、タグ付けなど必要があれば教えてください
※完結しておりますが、今後番外編及び小話、続編をいずれ追加して参りたいと思っています
※小説家になろうさんでも同時公開中
ハッピーエンドのために妹に代わって惚れ薬を飲んだ悪役兄の101回目
カギカッコ「」
BL
ヤられて不幸になる妹のハッピーエンドのため、リバース転生し続けている兄は我が身を犠牲にする。妹が飲むはずだった惚れ薬を代わりに飲んで。
ハイスペックストーカーに追われています
たかつきよしき
BL
祐樹は美少女顔負けの美貌で、朝の通勤ラッシュアワーを、女性専用車両に乗ることで回避していた。しかし、そんなことをしたバチなのか、ハイスペック男子の昌磨に一目惚れされて求愛をうける。男に告白されるなんて、冗談じゃねぇ!!と思ったが、この昌磨という男なかなかのハイスペック。利用できる!と、判断して、近づいたのが失敗の始まり。とある切っ掛けで、男だとバラしても昌磨の愛は諦めることを知らず、ハイスペックぶりをフルに活用して迫ってくる!!
と言うタイトル通りの内容。前半は笑ってもらえたらなぁと言う気持ちで、後半はシリアスにBLらしく萌えると感じて頂けるように書きました。
完結しました。
【完結】気が付いたらマッチョなblゲーの主人公になっていた件
白井のわ
BL
雄っぱいが大好きな俺は、気が付いたら大好きなblゲーの主人公になっていた。
最初から好感度MAXのマッチョな攻略対象達に迫られて正直心臓がもちそうもない。
いつも俺を第一に考えてくれる幼なじみ、優しいイケオジの先生、憧れの先輩、皆とのイチャイチャハーレムエンドを目指す俺の学園生活が今始まる。
好きな人がカッコ良すぎて俺はそろそろ天に召されるかもしれない
豆ちよこ
BL
男子校に通う棚橋学斗にはとってもとっても気になる人がいた。同じクラスの葛西宏樹。
とにかく目を惹く葛西は超絶カッコいいんだ!
神様のご褒美か、はたまた気紛れかは知らないけど、隣同士の席になっちゃったからもう大変。ついつい気になってチラチラと見てしまう。
そんな学斗に、葛西もどうやら気付いているようで……。
□チャラ王子攻め
□天然おとぼけ受け
□ほのぼのスクールBL
タイトル前に◆◇のマークが付いてるものは、飛ばし読みしても問題ありません。
◆…葛西視点
◇…てっちゃん視点
pixivで連載中の私のお気に入りCPを、アルファさんのフォントで読みたくてお引越しさせました。
所々修正と大幅な加筆を加えながら、少しづつ公開していこうと思います。転載…、というより筋書きが同じの、新しいお話になってしまったかも。支部はプロット、こちらが本編と捉えて頂けたら良いかと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる