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11歳
249 おやつあげたい
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デニスは、ユリスとお付き合いをするべくやって来たらしい。責任とってと連呼するデニスは、とてもしつこかった。逃げまわるユリスの後を、執拗に追いかけまわしている。
ユリスを追いかけるデニスの後をついて行く俺。
途中、廊下ですれ違ったブルース兄様が、眉間に皺を寄せて変な顔をしていた。けれども口は出してこない。デニスが「こんにちは! お兄様!」と元気に挨拶していた。
困った顔をしながら俺を追いかけるロニーは、早々にこの追いかけっこから離脱したいようだった。
そうして散々逃げまわったユリスは、俺を指さす。
「あいつと付き合えばいいだろ。お似合いだぞ」
「絶対に嫌! なんであんなお子様をぼくが相手にしなくちゃいけないのさ」
ふたりして好き放題言い過ぎだろ。誰がお子様だ。こっちは精神年齢的には君らよりもずっと年上ですが?
ユリスに駆け寄ったデニスは、遠慮なしにその腕をとる。「僕と結婚して?」と、小首を傾げるデニスは、可愛い顔してた。
密着するふたりをじっと眺めていれば、ロニーが俺の肩に手を置いてくる。
「ルイス様。お部屋に戻りましょう」
どうやら本気で巻き込まれたくないらしい。「え、俺を見捨てないでくださいよ」と、タイラーがロニーに縋っている。それを無言で振り払って、ロニーは俺の手をとってくる。
「じゃあ猫と遊ぼう」
「いいですね」
「うわ、つめた。マジで冷たい。後輩を見捨てないでくださいよ」
ぐちぐち言ってるタイラーをガン無視するロニーを見上げる。いつもは優しい長髪男子くんなのに珍しい。今日は機嫌でも悪いのかな?
タイラーを見捨てて自室に戻った俺らは、猫と遊ぶ。余談だが、最近お母様が白猫のことをエリスちゃんと呼んでいる。俺の名前がいつの間にかルイスになっていたため、代わりに猫をエリスちゃんと呼び始めたのだ。
そんでもって、お母様はよく猫におやつをあげている。そんなんだから、いつの間にか白猫が自分の名前をエリスちゃんだと認識し始めた。エリスちゃん呼びすると、おやつがもらえると思っているのか、擦り寄ってくる。
本日も、エリスと呼べば寄ってきた白猫を捕まえて、もふもふする。
おやつを寄越せとにゃあにゃあ鳴くので、猫用にとジャンが用意してくれたおやつをちょっとだけ与えてやる。
「美味しいか?」
「にゃー」
にゃーにゃー鳴く猫は、もっと寄越せと主張しているらしい。でもあんまりあげるとダメってジャンが言うしな。
白猫とおやつを交互に見て、次にジャンを盗み見る。こちらに背中を向けていて、俺のことは見ていない。
「ほら、食べろ」
「ダメですよ、ルイス様」
こっそり追加のおやつをあげると、ロニーが止めに入る。
「嫌だ。あとちょっとあげる」
「ダメですよ?」
どうやらロニーも、猫におやつをたくさんあげることには反対らしい。でも俺はあげたい。おやつあげるの楽しい。正直、猫のお世話の中で、食べ物あげるのが一番好き。
隙をみてこっそりあげたりしているのだが、ジャンに気付かれると苦い顔をされてしまうのだ。
「おやつのあげすぎは良くないですよ?」
「うーん」
確かに、健康面を考えるとそうなのだろう。手に握った猫のおやつと、白猫を見比べる。猫には長生きして欲しい。であれば、健康は大切だ。迷った末に、おやつをあげるのは諦めた。
しかし、握っていたおやつを無駄にするわけにもいかない。ぱっと自分の口に放り込もうとすれば、ロニーが全力で止めてくる。俺の腕を握って放さないロニーは、珍しく真剣な顔だった。
「ルイス様? ダメですよ」
「なんで」
俺は知っている。この猫用おやつは、うちの料理人が手作りしていることを。日持ちするように乾燥させてあるらしい。どんな味かすごく気になる。
けれどもロニーは折れてくれない。俺におやつをとられると思ったらしい白猫も、すごく大声で鳴いている。
「なんでもお口に入れたらいけません」
「でも猫はいっつも食べてる」
「それは猫ちゃん専用なので。ルイス様はいけません」
ロニーがここまで粘るなんて珍しい。これ以上、彼に迷惑はかけられない。
ここは諦めよう。わかったと力を抜けば、ロニーが俺の手から猫のおやつを奪っていく。
それを寄越せとアピールしている白猫を抱き上げて、顔を埋めておく。すごくもふもふ。
「おやつは諦めろ」
言い聞かせるが、猫は鳴くばかりで、俺の言葉を理解しているのかよくわからない。こいつも黒猫ユリスみたいに喋ればいいのに。
ユリスを追いかけるデニスの後をついて行く俺。
途中、廊下ですれ違ったブルース兄様が、眉間に皺を寄せて変な顔をしていた。けれども口は出してこない。デニスが「こんにちは! お兄様!」と元気に挨拶していた。
困った顔をしながら俺を追いかけるロニーは、早々にこの追いかけっこから離脱したいようだった。
そうして散々逃げまわったユリスは、俺を指さす。
「あいつと付き合えばいいだろ。お似合いだぞ」
「絶対に嫌! なんであんなお子様をぼくが相手にしなくちゃいけないのさ」
ふたりして好き放題言い過ぎだろ。誰がお子様だ。こっちは精神年齢的には君らよりもずっと年上ですが?
ユリスに駆け寄ったデニスは、遠慮なしにその腕をとる。「僕と結婚して?」と、小首を傾げるデニスは、可愛い顔してた。
密着するふたりをじっと眺めていれば、ロニーが俺の肩に手を置いてくる。
「ルイス様。お部屋に戻りましょう」
どうやら本気で巻き込まれたくないらしい。「え、俺を見捨てないでくださいよ」と、タイラーがロニーに縋っている。それを無言で振り払って、ロニーは俺の手をとってくる。
「じゃあ猫と遊ぼう」
「いいですね」
「うわ、つめた。マジで冷たい。後輩を見捨てないでくださいよ」
ぐちぐち言ってるタイラーをガン無視するロニーを見上げる。いつもは優しい長髪男子くんなのに珍しい。今日は機嫌でも悪いのかな?
タイラーを見捨てて自室に戻った俺らは、猫と遊ぶ。余談だが、最近お母様が白猫のことをエリスちゃんと呼んでいる。俺の名前がいつの間にかルイスになっていたため、代わりに猫をエリスちゃんと呼び始めたのだ。
そんでもって、お母様はよく猫におやつをあげている。そんなんだから、いつの間にか白猫が自分の名前をエリスちゃんだと認識し始めた。エリスちゃん呼びすると、おやつがもらえると思っているのか、擦り寄ってくる。
本日も、エリスと呼べば寄ってきた白猫を捕まえて、もふもふする。
おやつを寄越せとにゃあにゃあ鳴くので、猫用にとジャンが用意してくれたおやつをちょっとだけ与えてやる。
「美味しいか?」
「にゃー」
にゃーにゃー鳴く猫は、もっと寄越せと主張しているらしい。でもあんまりあげるとダメってジャンが言うしな。
白猫とおやつを交互に見て、次にジャンを盗み見る。こちらに背中を向けていて、俺のことは見ていない。
「ほら、食べろ」
「ダメですよ、ルイス様」
こっそり追加のおやつをあげると、ロニーが止めに入る。
「嫌だ。あとちょっとあげる」
「ダメですよ?」
どうやらロニーも、猫におやつをたくさんあげることには反対らしい。でも俺はあげたい。おやつあげるの楽しい。正直、猫のお世話の中で、食べ物あげるのが一番好き。
隙をみてこっそりあげたりしているのだが、ジャンに気付かれると苦い顔をされてしまうのだ。
「おやつのあげすぎは良くないですよ?」
「うーん」
確かに、健康面を考えるとそうなのだろう。手に握った猫のおやつと、白猫を見比べる。猫には長生きして欲しい。であれば、健康は大切だ。迷った末に、おやつをあげるのは諦めた。
しかし、握っていたおやつを無駄にするわけにもいかない。ぱっと自分の口に放り込もうとすれば、ロニーが全力で止めてくる。俺の腕を握って放さないロニーは、珍しく真剣な顔だった。
「ルイス様? ダメですよ」
「なんで」
俺は知っている。この猫用おやつは、うちの料理人が手作りしていることを。日持ちするように乾燥させてあるらしい。どんな味かすごく気になる。
けれどもロニーは折れてくれない。俺におやつをとられると思ったらしい白猫も、すごく大声で鳴いている。
「なんでもお口に入れたらいけません」
「でも猫はいっつも食べてる」
「それは猫ちゃん専用なので。ルイス様はいけません」
ロニーがここまで粘るなんて珍しい。これ以上、彼に迷惑はかけられない。
ここは諦めよう。わかったと力を抜けば、ロニーが俺の手から猫のおやつを奪っていく。
それを寄越せとアピールしている白猫を抱き上げて、顔を埋めておく。すごくもふもふ。
「おやつは諦めろ」
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