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227 蒸し返すな
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「やっぱり意味がわかりません!」
帰り際、再び話を蒸し返してきたティアンは、やはりお子様である。
おそらく、自分の目でユリスが増えている状況を確認して一旦は納得したのだろう。しかし時間が経つにつれて、やっぱりおかしいと思い直したらしい。なにその時間差。驚くなら最初にもう全部驚いておけよ。なんで帰り際になって蒸し返すんだよ。タイミングも最悪だ。
ショック(?)から立ち直って、俺の部屋にお邪魔していたマーティーが、「やっぱりそうだよな!」とティアンにつられて立ち上がる。
そのまま果敢に挑もうとしたマーティーであるが、本物ユリスにひと睨みされて、すとんと座り直した。諦めが早いな。
「文句があるなら僕が聞くが?」
まったく聞くつもりのない、強気の姿勢で本物ユリスが腕を組む。それを見たマーティーは「いや、なんでもない。大丈夫だ」と急にお利口さんになってしまう。弱虫マーティーめ。
「文句と言いますか。相談くらいしてくれても良くないですか? なんでずっと黙っていたんですか」
僕ってそんなに頼りないですか? と、落ち込むティアンに、俺は出端を挫かれる。てっきり俺のことを偽物だなんだと騒ぐと思っていたのに。理解しろ! とごり押しするつもりで掲げた拳を、そっと下ろす。なにその文句。予想外である。
きょとんとする俺に、ティアンが目を伏せる。
「……せめてひと言くらい、なにか言ってくれてもよかったじゃないですか」
「ティアン」
ひと言って具体的になに? この状況をひと言でお伝えするのは無理があると思う。どうしても説明長くなるけどな。とんでもない無茶振りをしてくるティアンに、俺は思考が停止する。
「……ひと言では、ちょっと、伝えきれないと思う」
とりあえず、その事実だけをお伝えしておけば、ティアンが変な顔をする。「誰もひと言で説明しろなんて言ってないですよ」と、不満そうな表情を作った彼は、「なんだこいつ」とでも言いたそうな感じである。いや言ったよ? 絶対に言った。俺はこの耳でしっかり聞いた。
「もういいです!」
ふんっとそっぽを向いたティアンは、怒ったように本物ユリスとマーティーにさよならの挨拶をしている。俺は? 俺にも挨拶しろよ。
「さようなら!」
いかにも怒っています、といった感じで、ティアンが去って行く。状況から見て、俺に対してキレていた。なぜだろうか。
困ってマーティーに助けを求めれば、彼は「相談してくれなかったことが不満なのでは?」とわかったような口を利く。
「なんで?」
詳しく訊ねれば、マーティーが考えるように小首を傾げる。どうやら思いつきを口にしただけで、明確に答えがわかっているわけではないらしい。
「自分だけ、仲間外れにされたからじゃないか?」
「仲間外れ?」
そんなつもりはなかったけどな。マーティーに教えたのもその場の流れだし。あと俺が黙っておくのがそろそろ限界だったというのもある。マーティーはベイビーだからな。少しくらいおかしな話をしても、大丈夫だと思ったのだ。
けれども、ティアンはそれでも不満らしい。
「難しい」
ぼそっと呟けば、じっと俺らの様子を見ていたタイラーが「俺はティアンの気持ちもわかりますね」と苦笑する。
「なんで?」
「肝心な時に頼ってもらえないのは、ちょっと悲しいですよね。ティアンもそういう気持ちなのでは?」
「うーん」
できれば俺にも頼って欲しかったですね、と便乗してくるタイラー。確かにそうかもな。
でも、こちらにも簡単には相談できない事情があった。ティアンはその辺りをまったく考慮していない。何でもかんでも、誰にでも相談できるわけではない。
うんうん考えていると、魔導書を閉じた本物ユリスが、こちらを向いた。
「……あいつは、おまえのなんだ?」
なんだってなに。ブルース兄様が用意した遊び相手ですけど?
けれども、本物ユリスは納得しない。何か特別な関係なのかとしつこく訊いてくる。だから遊び相手だって言ってるでしょうが。毎日のように俺とティアンが遊ぶの見てただろ。なんで今さらとぼけた発言をするのか。
ふむ、と黙り込んだ本物ユリスは、「あいつも大変だな」と変なことを言う。大変なのは、俺の方ですが?
帰り際、再び話を蒸し返してきたティアンは、やはりお子様である。
おそらく、自分の目でユリスが増えている状況を確認して一旦は納得したのだろう。しかし時間が経つにつれて、やっぱりおかしいと思い直したらしい。なにその時間差。驚くなら最初にもう全部驚いておけよ。なんで帰り際になって蒸し返すんだよ。タイミングも最悪だ。
ショック(?)から立ち直って、俺の部屋にお邪魔していたマーティーが、「やっぱりそうだよな!」とティアンにつられて立ち上がる。
そのまま果敢に挑もうとしたマーティーであるが、本物ユリスにひと睨みされて、すとんと座り直した。諦めが早いな。
「文句があるなら僕が聞くが?」
まったく聞くつもりのない、強気の姿勢で本物ユリスが腕を組む。それを見たマーティーは「いや、なんでもない。大丈夫だ」と急にお利口さんになってしまう。弱虫マーティーめ。
「文句と言いますか。相談くらいしてくれても良くないですか? なんでずっと黙っていたんですか」
僕ってそんなに頼りないですか? と、落ち込むティアンに、俺は出端を挫かれる。てっきり俺のことを偽物だなんだと騒ぐと思っていたのに。理解しろ! とごり押しするつもりで掲げた拳を、そっと下ろす。なにその文句。予想外である。
きょとんとする俺に、ティアンが目を伏せる。
「……せめてひと言くらい、なにか言ってくれてもよかったじゃないですか」
「ティアン」
ひと言って具体的になに? この状況をひと言でお伝えするのは無理があると思う。どうしても説明長くなるけどな。とんでもない無茶振りをしてくるティアンに、俺は思考が停止する。
「……ひと言では、ちょっと、伝えきれないと思う」
とりあえず、その事実だけをお伝えしておけば、ティアンが変な顔をする。「誰もひと言で説明しろなんて言ってないですよ」と、不満そうな表情を作った彼は、「なんだこいつ」とでも言いたそうな感じである。いや言ったよ? 絶対に言った。俺はこの耳でしっかり聞いた。
「もういいです!」
ふんっとそっぽを向いたティアンは、怒ったように本物ユリスとマーティーにさよならの挨拶をしている。俺は? 俺にも挨拶しろよ。
「さようなら!」
いかにも怒っています、といった感じで、ティアンが去って行く。状況から見て、俺に対してキレていた。なぜだろうか。
困ってマーティーに助けを求めれば、彼は「相談してくれなかったことが不満なのでは?」とわかったような口を利く。
「なんで?」
詳しく訊ねれば、マーティーが考えるように小首を傾げる。どうやら思いつきを口にしただけで、明確に答えがわかっているわけではないらしい。
「自分だけ、仲間外れにされたからじゃないか?」
「仲間外れ?」
そんなつもりはなかったけどな。マーティーに教えたのもその場の流れだし。あと俺が黙っておくのがそろそろ限界だったというのもある。マーティーはベイビーだからな。少しくらいおかしな話をしても、大丈夫だと思ったのだ。
けれども、ティアンはそれでも不満らしい。
「難しい」
ぼそっと呟けば、じっと俺らの様子を見ていたタイラーが「俺はティアンの気持ちもわかりますね」と苦笑する。
「なんで?」
「肝心な時に頼ってもらえないのは、ちょっと悲しいですよね。ティアンもそういう気持ちなのでは?」
「うーん」
できれば俺にも頼って欲しかったですね、と便乗してくるタイラー。確かにそうかもな。
でも、こちらにも簡単には相談できない事情があった。ティアンはその辺りをまったく考慮していない。何でもかんでも、誰にでも相談できるわけではない。
うんうん考えていると、魔導書を閉じた本物ユリスが、こちらを向いた。
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けれども、本物ユリスは納得しない。何か特別な関係なのかとしつこく訊いてくる。だから遊び相手だって言ってるでしょうが。毎日のように俺とティアンが遊ぶの見てただろ。なんで今さらとぼけた発言をするのか。
ふむ、と黙り込んだ本物ユリスは、「あいつも大変だな」と変なことを言う。大変なのは、俺の方ですが?
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