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154 面白いことになった

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 籠城するつもりがオーガス兄様に裏切られた。酷すぎる。長男のくせに弟を売るとは何事だ。

 俺を裏切ったのはオーガス兄様だけではない。アロンもだ。クソ野郎め。近々、俺の子分その3にしてやろうと思っていたのだがやめた。裏切りクソ野郎はいらん。

 突然、キャンベルと結婚すると宣言したアロン。その瞬間、オーガス兄様が素早く動いた。止める暇もなく鍵を開けてアロンに掴みかかろうとしていた。オーガス兄様はキャンベルのことがとても好きみたいだ。キャンベルと俺、どっちが大事なのか一度問い詰めたい。

 ドアの向こうには怖い顔をしたブルース兄様がいた。慌てて逃げ回ったがアロンに捕まった。酷い裏切りだ。

「なにをしてるんだ、この馬鹿」
「馬鹿じゃないもん」

 アロンによってブルース兄様の前に引きずり出される。眉間に皺を寄せた兄様は間違いなく怒っていた。

 そもそも兄様に告げ口するなんて卑怯だ。黙って事の成り行きを見守っているタイラーを睨み付けてやるが、ブルース兄様の額に青筋が浮かんだためにやめた。まるで俺が悪いみたいである。犯人は本物ユリスなのに。

 その真犯人はなぜかジャンの腕の中でにやにやしている。おかしい。部屋に置いてきたはずなのに、なんでジャンが持っているんだ。

「花瓶で頭殴るとかなに考えてんだ」
「え? マジで言ってる? なんで君とキャンベルが結婚なんてとんでもない話になってんの?」
「……兄上、その件は後にしてくれませんか」

 いきなり俺に説教を始めたブルース兄様であったが、隣ではそれに負けない声量でオーガス兄様がアロンに詰め寄っている。じっとオーガス兄様に注目していれば、ブルース兄様が決まりが悪そうに声をかける。しかしオーガス兄様は止まらない。それを煽るようにアロンが畳み掛けている。

「キャンベル嬢から俺に縁談がきまして。結婚してもいいですか?」
「絶対ダメ! ブルースはまだ許せるけど君はダメ」
「なぜです?」
「君と結婚させられるキャンベルが可哀想だろ!」

 それは同意だな。
 アロンはクソ野郎だしな。

 しかしそれにアロンが怪訝な顔をする。

「可哀想? よくわかりませんね」

 どうやら己がクソ野郎だという自覚がないらしい。タチ悪いな。

 じっとオーガス兄様とアロンの争いを眺めていれば、「おい」とブルース兄様に肩を掴まれた。

「……オーガス兄様も大変だね」
「大変っていうか、いや、今は兄上のことはどうでもいい」

 気を取り直すように咳払いをしたブルース兄様が、なにやら俺を睨み付けてくる。

「いいか? 相手がタイラーだろうとこれはダメだ」
「今すぐ断れ! なんでよりによって君なんだよ! 一番の悪手だろ!」

 オーガス兄様の絶叫に釣られて視線を向ければ、ブルース兄様が「あっちじゃなくてこっちを見ろ」と無茶を言う。

「だからいいか? 暴力はダメだ。なにか不満があるなら話し合いで解決しろ」
「話し合いでは無理だった」
「話し合いって、まさかあのストレス主張のことか? あんなの話し合いとは言わん」

「今すぐ断れ! 君らの結婚は認めない!」
「なんで俺とキャンベル嬢の話にオーガス様が首を突っ込んでくるんですか」

 アロンとオーガス兄様の口論がヒートアップしていく。ついつい目を向ければ、ブルース兄様が小さく舌打ちした。

「あいつらうるせぇな」

 本当だよ。長男がすげぇうるさい。

「そこまで言うならオーガス様もキャンベル嬢に結婚申し込めばいいじゃないですか。そんな受け身でどうしますよ」

 なにやらアロンがオーガス兄様を焚き付けている。それに焦ったのはブルース兄様だ。

「おいアロン! 余計なことを言うな」

 しかしもはやオーガス兄様の耳にブルース兄様の言葉は入っていなかった。

「そこまで言うなら! そうする! 君にキャンベルは譲らない!」

 なんか面白いことになった。
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