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151 開けたらダメ
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仕事をするオーガス兄様を横目にごろごろする俺。どうやらティアンと俺がプチ喧嘩したと思い込んでいるらしいオーガス兄様は「気が済んだら帰ってね」と言ったきり特に口出ししてこない。平和である。
遊び相手もいなくて暇な俺は、ごろごろしながら兄様の部屋をあさるが面白いものは出てこない。マジで仕事関係の物しか出てこない。つまらない長男である。
ドアの向こうにはティアンとジャンがいる。ティアンが「オーガス様のお邪魔になるでしょうが!」としきりに俺に声をかけてくる。どっちかっていうとティアンの大声の方がお邪魔だと思うけど。
肝心のオーガス兄様は「そろそろ許してあげたら? 時には自分が折れてあげるのも大事だよ」とよくわからないアドバイスをよこしてくる。今折れるべきはブルース兄様とタイラーだ。俺ではない。
「そういえばさ、あれどうした?」
忙しそうに書類を捲りながら、オーガス兄様が突然俺の知らない話を始める。はて? あれとは一体?
黙っていれば「え? まさかなかったことにしてる?」とちょっと引かれてしまった。だからあれってなんだよ。
「ほら、あの魔導書みたいな怪しい本。あれどこにやったの?」
魔導書? なんそれ。ファンタジーじゃん。
「僕にも見せて欲しいんだけど。てかあれ取ってきたの僕だよね? さも君が見つけてきたみたいに我が物顔で独占してるけどさ」
「俺のだもん」
「あ、はい。すみません」
よくわからんが、魔導書的なものがあるらしい。マジでよくわからんが俺の物だと主張しておこう。ガチでなにがなにやらわからんけど。
本物ユリスなら知っているだろうが、あいつは激ヤバな性格である。頼らないと決意した直後に頼るのもな。そんなわくわくする物を隠し持っているなんて。わるにゃんこめ。
こりゃあ、あとで部屋の中を捜索せねば。俺も魔導書に興味ある。存在感が薄過ぎてすっかり忘れていたが、この世界にも一応魔法はあるからね。誰も使ってないけどね。魔導書的なものがあればもっと本格的な魔法が使えるかもしれない。
そうして呑気にしていた俺とオーガス兄様であったが、廊下からブルース兄様の低い声が聞こえてきたことで態度が一変した。
「兄上。ここを開けてください」
「ん?」
目を瞬いたオーガス兄様は「なんでブルース?」ときょとんとしている。
「開けないでね?」
今にも立ち上がりそうなオーガス兄様に念押しするが、どこまで事態を把握できているか不明である。よくよく見張っておかねばならない。
「兄上」
ドアの向こうからブルース兄様の舌打ちが聞こえたと思った次の瞬間。
ガンッ、とすごい音がした。思わずオーガス兄様とふたりで顔を見合わせる。どうやらブルース兄様がドアを蹴り上げたらしい。そんなんだからお母様に「あの子ちょっと乱暴なところあるでしょ? ユリスは真似しちゃダメよ」なんて言われるんだ。
「え、ちょっと待った! 今開けるから!」
なんだと⁉︎
「ダメ! 絶対ダメ!」
ブルース兄様の剣幕にビビったオーガス兄様がドアの方へと走っていく。その腰に後ろから勢いよくしがみついて引き止めれば、オーガス兄様が変な顔をする。
「君なにしたの? まさかブルースと喧嘩したの?」
「違う。そうじゃない」
「とりあえず一旦話し合おう?」
「ダメェ!」
絶対ダメ! とありったけの大声で叫んでやる。なにやらドアの向こうがざわざわしている。ついでにオーガス兄様も青い顔をしている。だが俺は譲らないぞ。籠城すると決めたのだ。
「えっと? うぅん? あ! そうだ」
ぱんっと手を打ったオーガス兄様が引き攣った笑みを浮かべる。
「ユリス? 美味しいお菓子あるけど食べる?」
「食べる!」
「そうかそうか。じゃあ厨房に取りに行こうね」
む! その手にはのらないぞ。
「じゃあいらない!」
お菓子を餌にドアを開けるつもりである。なんて卑怯な手だ。そういうことならいりません! と突っぱねてやればオーガス兄様があわあわと焦り始める。
「君がお菓子に釣られないなんて。よっぽどのことが?」
ようやく理解してくれてなによりだ。
遊び相手もいなくて暇な俺は、ごろごろしながら兄様の部屋をあさるが面白いものは出てこない。マジで仕事関係の物しか出てこない。つまらない長男である。
ドアの向こうにはティアンとジャンがいる。ティアンが「オーガス様のお邪魔になるでしょうが!」としきりに俺に声をかけてくる。どっちかっていうとティアンの大声の方がお邪魔だと思うけど。
肝心のオーガス兄様は「そろそろ許してあげたら? 時には自分が折れてあげるのも大事だよ」とよくわからないアドバイスをよこしてくる。今折れるべきはブルース兄様とタイラーだ。俺ではない。
「そういえばさ、あれどうした?」
忙しそうに書類を捲りながら、オーガス兄様が突然俺の知らない話を始める。はて? あれとは一体?
黙っていれば「え? まさかなかったことにしてる?」とちょっと引かれてしまった。だからあれってなんだよ。
「ほら、あの魔導書みたいな怪しい本。あれどこにやったの?」
魔導書? なんそれ。ファンタジーじゃん。
「僕にも見せて欲しいんだけど。てかあれ取ってきたの僕だよね? さも君が見つけてきたみたいに我が物顔で独占してるけどさ」
「俺のだもん」
「あ、はい。すみません」
よくわからんが、魔導書的なものがあるらしい。マジでよくわからんが俺の物だと主張しておこう。ガチでなにがなにやらわからんけど。
本物ユリスなら知っているだろうが、あいつは激ヤバな性格である。頼らないと決意した直後に頼るのもな。そんなわくわくする物を隠し持っているなんて。わるにゃんこめ。
こりゃあ、あとで部屋の中を捜索せねば。俺も魔導書に興味ある。存在感が薄過ぎてすっかり忘れていたが、この世界にも一応魔法はあるからね。誰も使ってないけどね。魔導書的なものがあればもっと本格的な魔法が使えるかもしれない。
そうして呑気にしていた俺とオーガス兄様であったが、廊下からブルース兄様の低い声が聞こえてきたことで態度が一変した。
「兄上。ここを開けてください」
「ん?」
目を瞬いたオーガス兄様は「なんでブルース?」ときょとんとしている。
「開けないでね?」
今にも立ち上がりそうなオーガス兄様に念押しするが、どこまで事態を把握できているか不明である。よくよく見張っておかねばならない。
「兄上」
ドアの向こうからブルース兄様の舌打ちが聞こえたと思った次の瞬間。
ガンッ、とすごい音がした。思わずオーガス兄様とふたりで顔を見合わせる。どうやらブルース兄様がドアを蹴り上げたらしい。そんなんだからお母様に「あの子ちょっと乱暴なところあるでしょ? ユリスは真似しちゃダメよ」なんて言われるんだ。
「え、ちょっと待った! 今開けるから!」
なんだと⁉︎
「ダメ! 絶対ダメ!」
ブルース兄様の剣幕にビビったオーガス兄様がドアの方へと走っていく。その腰に後ろから勢いよくしがみついて引き止めれば、オーガス兄様が変な顔をする。
「君なにしたの? まさかブルースと喧嘩したの?」
「違う。そうじゃない」
「とりあえず一旦話し合おう?」
「ダメェ!」
絶対ダメ! とありったけの大声で叫んでやる。なにやらドアの向こうがざわざわしている。ついでにオーガス兄様も青い顔をしている。だが俺は譲らないぞ。籠城すると決めたのだ。
「えっと? うぅん? あ! そうだ」
ぱんっと手を打ったオーガス兄様が引き攣った笑みを浮かべる。
「ユリス? 美味しいお菓子あるけど食べる?」
「食べる!」
「そうかそうか。じゃあ厨房に取りに行こうね」
む! その手にはのらないぞ。
「じゃあいらない!」
お菓子を餌にドアを開けるつもりである。なんて卑怯な手だ。そういうことならいりません! と突っぱねてやればオーガス兄様があわあわと焦り始める。
「君がお菓子に釣られないなんて。よっぽどのことが?」
ようやく理解してくれてなによりだ。
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