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123 そういえばイケメンだったな
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アリアお姉さんは伝えたいことだけ伝えると颯爽と帰ってしまった。フットワークが異常に軽いお姉さんだった。
ブルース兄様は酷く疲れていた。しきりに眉間を揉みながらクレイグ団長を従えて部屋に戻って行った。ようやく俺の部屋を取り戻すことに成功した。よかったよかった。
しれっと俺の部屋に戻ってきていたセドリックは無関心を貫いている。相変わらず職務範囲外のことについては冷たい。あの惨状をよく涼しい顔で流せるよな。
「セドリックは仕事戻んなくていいの?」
「お気遣いなく」
どうやらしばらく俺の護衛を続けるらしい。ブルース兄様が新しい護衛を用意すると言っていたが、どうかこのまま有耶無耶になってほしい。
ジャンは部屋を荒らしまわっている。どうやら俺の隠しお菓子を探しているらしい。アリアお姉さんへのおもてなしとして戸棚からクッキーを取り出して見せたことがショックだったようだ。だが残念。的外れな場所ばかり探している。
ニヤニヤしていると、アロンに呼ばれた。こいつはなぜか俺の部屋に引き続き居座っている。ブルース兄様と一緒に帰れよ。
仕方がなく返事をしてやれば、アロンが片膝をついて俺の目を覗き込んでくる。
「俺のこと好きなんですか? 結婚してくれるってことでいいですか?」
「そんなことは言ってない」
「あれ? さっきティアンとそんな話してませんでしたか?」
都合よく解釈したらしいアロンは、なんだか上機嫌に俺の手を取ってくる。
「何度でも言いますけど、俺はユリス様のこと好きですよ」
「何回も聞いた」
「俺、諦め悪いんです」
なにこの空気。なにやらアロンがマジである。いつものへらへらした笑みではなく、なんかこう柔らかく笑っている。まるで好きな子を見つめるような熱の籠った目である。
え? マジで?
ちらりとセドリックに目を向けるが、彼は相変わらずの無関心。ジャンはなにやら隠しお菓子を探し出すフリをして必死にこちらを見ないようにしている。おいおい。
困った末にティアンをみるが、なんだか不機嫌を引きずっている。つんとあらぬ方向を見ている。誰か助けろよ。
「ユリス様」
妙に甘い声で呼ばれて、おそるおそるアロンに視線を戻す。ここぞとばかりにイケメンオーラを発揮した彼は、見慣れたクソ野郎ではなかった。
なんかキラキラしてる。王子様っぽい。
くすりと笑ったアロンは、そういえば出会った当初はずっとこんな感じで猫被っていたなと思い出す。そうだよ。こいつはこんな感じで優しい王子様みたいな奴だった。最近はクソみたいな行動が目に余って忘れていたけど。
「俺のこと、そろそろ好きになってくださいね?」
ひぇ。なにこいつ。
緩くはにかんだアロンは己の口元で人差し指を立てると軽くウインクをしてみせた。その悪戯っぽい仕草になんだか胸がざわざわする。
なにこの突然のイケメンオーラ。そういやこいつイケメンだったな?
いきなりの出来事にあわあわしていると、アロンがなぜか顔を近づけてくる。
俺の顎にそっと手を添えた彼は、なんだか熱っぽいような悲しいような瞳で、俺の目をじっと覗き込んでくる。
「アロン?」
いつになく真剣な雰囲気である。居た堪れなくておずおずとアロンの名前を呼んでみるが、彼は困ったように眉尻を下げるだけで手を離してくれない。
そこからは一瞬だった。
ちょっと目を伏せたアロンが視線を合わせてきたと思ったら、突然近づいてくる顔。そして唇にそっと触れた柔らかな感触。
え? 俺いまキスされた?
背後でティアンが騒いでいる。立ち尽くす俺に構わず、さっさと立ち上がったアロンは内緒話でもするかのように唇の前に人差し指を立ててみせた。
「俺、本気ですからね?」
え、な、なんか、うん。
なんかすっげぇ顔が熱い気がする。
ブルース兄様は酷く疲れていた。しきりに眉間を揉みながらクレイグ団長を従えて部屋に戻って行った。ようやく俺の部屋を取り戻すことに成功した。よかったよかった。
しれっと俺の部屋に戻ってきていたセドリックは無関心を貫いている。相変わらず職務範囲外のことについては冷たい。あの惨状をよく涼しい顔で流せるよな。
「セドリックは仕事戻んなくていいの?」
「お気遣いなく」
どうやらしばらく俺の護衛を続けるらしい。ブルース兄様が新しい護衛を用意すると言っていたが、どうかこのまま有耶無耶になってほしい。
ジャンは部屋を荒らしまわっている。どうやら俺の隠しお菓子を探しているらしい。アリアお姉さんへのおもてなしとして戸棚からクッキーを取り出して見せたことがショックだったようだ。だが残念。的外れな場所ばかり探している。
ニヤニヤしていると、アロンに呼ばれた。こいつはなぜか俺の部屋に引き続き居座っている。ブルース兄様と一緒に帰れよ。
仕方がなく返事をしてやれば、アロンが片膝をついて俺の目を覗き込んでくる。
「俺のこと好きなんですか? 結婚してくれるってことでいいですか?」
「そんなことは言ってない」
「あれ? さっきティアンとそんな話してませんでしたか?」
都合よく解釈したらしいアロンは、なんだか上機嫌に俺の手を取ってくる。
「何度でも言いますけど、俺はユリス様のこと好きですよ」
「何回も聞いた」
「俺、諦め悪いんです」
なにこの空気。なにやらアロンがマジである。いつものへらへらした笑みではなく、なんかこう柔らかく笑っている。まるで好きな子を見つめるような熱の籠った目である。
え? マジで?
ちらりとセドリックに目を向けるが、彼は相変わらずの無関心。ジャンはなにやら隠しお菓子を探し出すフリをして必死にこちらを見ないようにしている。おいおい。
困った末にティアンをみるが、なんだか不機嫌を引きずっている。つんとあらぬ方向を見ている。誰か助けろよ。
「ユリス様」
妙に甘い声で呼ばれて、おそるおそるアロンに視線を戻す。ここぞとばかりにイケメンオーラを発揮した彼は、見慣れたクソ野郎ではなかった。
なんかキラキラしてる。王子様っぽい。
くすりと笑ったアロンは、そういえば出会った当初はずっとこんな感じで猫被っていたなと思い出す。そうだよ。こいつはこんな感じで優しい王子様みたいな奴だった。最近はクソみたいな行動が目に余って忘れていたけど。
「俺のこと、そろそろ好きになってくださいね?」
ひぇ。なにこいつ。
緩くはにかんだアロンは己の口元で人差し指を立てると軽くウインクをしてみせた。その悪戯っぽい仕草になんだか胸がざわざわする。
なにこの突然のイケメンオーラ。そういやこいつイケメンだったな?
いきなりの出来事にあわあわしていると、アロンがなぜか顔を近づけてくる。
俺の顎にそっと手を添えた彼は、なんだか熱っぽいような悲しいような瞳で、俺の目をじっと覗き込んでくる。
「アロン?」
いつになく真剣な雰囲気である。居た堪れなくておずおずとアロンの名前を呼んでみるが、彼は困ったように眉尻を下げるだけで手を離してくれない。
そこからは一瞬だった。
ちょっと目を伏せたアロンが視線を合わせてきたと思ったら、突然近づいてくる顔。そして唇にそっと触れた柔らかな感触。
え? 俺いまキスされた?
背後でティアンが騒いでいる。立ち尽くす俺に構わず、さっさと立ち上がったアロンは内緒話でもするかのように唇の前に人差し指を立ててみせた。
「俺、本気ですからね?」
え、な、なんか、うん。
なんかすっげぇ顔が熱い気がする。
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