129 / 637
122 なんかムカつく
しおりを挟む
「あ、兄さんにも縁談きてたよ。そろそろ身を固めた方がいいんじゃない?」
「断っておいてくれ」
アリアを軽くあしらったアロン。それにアリアが目を丸くした。こいつらいつまで俺の部屋に居座るつもりだよ。ブルース兄様も早く出て行ってくれないかな。部屋が狭くなる。
「珍しい。いつもなら縁談がきたらすぐに教えろってうるさいのに」
「アロン、縁談好きなの?」
アリアの裾を引いて尋ねれば、彼女は「好きというか」と小首を傾げる。
「好みの可愛い女の子をキープしておいて遊んでんだよ」
「最低だね」
「でしょ?」
妹の言葉を否定しないアロンは「別にいいじゃないですか」と開き直っている。いいわけあるか。
「俺にはユリス様がいるので。その手の話は全部断っておいてくれ」
「は?」
突然出てきた俺の名前。それに反応したのはブルース兄様だった。
「おいアロン。どういう意味だ」
「ブルース様。弟さんを俺にください」
「断る」
ありがとう、ブルース兄様。
アロンしつこいんだよね。きっぱり断ってやってくれ。アリアが「マジ? あの女好きのクソが?」と驚愕している。妹から兄への評価が酷いな。
「残念でしたね、ブルース様。ユリス様は俺と結婚してくれると言いましたよ」
んなこと言ってない。そっと首を左右に振って否定すれば、ブルース兄様が「そんなことは言っていないようだが?」と強気に出る。頑張れ! ブルース兄様!
『おまえがアロンと結婚して、ブルースがアリアと結婚すれば完璧じゃないか』
わるにゃんこがうるさい。
なにが完璧なんだ。どうやらこいつはヴィアン家を滅茶苦茶にしたいらしい。
睨み合うアロンとブルース兄様。このふたりが言い争っているのはいつものことだ。
クレイグ団長は眉間を押さえて黙り込んでいる。ジャンは毎度のごとくオドオドしているし、ティアンは俺をこの部屋から連れ出そうと奮闘している。どうやら大人の揉め事を俺に見せたくはないらしい。だが俺は見たい。意地でもこの場に留まるつもりである。あとここ俺の部屋な。
「じゃあ縁談の方はお断りしておくね」
肩をすくめたアリアであったが、それにアロンが待ったをかける。
「一応、相手が誰かだけ教えて」
「クソ野郎め」
俺がいるからお断りすると言ったくせに。相手を確認しようとするあたりは流石アロンだ。
「キャンベル・リベラだよ。男爵令嬢の」
「ん?」
なんか聞き覚えのある名前だな。どこで聞いたんだっけ? 思い出そうと頑張っていると、これまで興味なさそうにしていたアロンが「ちょっと待った!」と大声を出す。びっくりするからやめて。
「おいおい、それって」
ブルース兄様も顔を引き攣らせている。
「その縁談! 受けてたちます!」
「俺はどうした」
俺がいるから断ると言ったくせに。忘れたんか?
ころりと意見を変えたアロンに抗議すれば、彼は申し訳なさそうな顔で「ユリス様のことはもちろん大事ですよ。でも俺にはやらなければならないことができたので」ともっともらしいセリフを述べている。
「やらなきゃいけないことって?」
「全力でオーガス様を揶揄ってきます」
「やめてあげなよ」
思い出した。キャンベルはオーガス兄様の好きな子だ。彼女をめぐってオーガス兄様が一方的にブルース兄様を責め立てていたのは記憶に新しい。そのせいでセドリックが解任されたんだっけ。
どうやらオーガス兄様が彼女からのブルース兄様宛の縁談を勝手にお断りした結果、キャンベルはアロンへと縁談相手を変更したらしい。状況は最悪だ。
案の定、アロンはオーガス兄様で遊ぶ気満々だ。なんだか面白くない。一転して楽しそうなアロンの服の裾を引っ張って「俺はどうした?」と再度問いかけるが軽くあしらわれてしまう。クソ野郎め。
「……ユリス様はアロン殿のことがお好きなんですか?」
げしげしとアロンの足を蹴っていれば、ティアンが微妙な顔で俺をみてくる。
「いや別に」
「ではなぜアロン殿を執拗に蹴っているのですか」
「なんかムカつくから」
「なぜ?」
うざいな、こいつ。
急にどうした?
「アロン殿のことが嫌いなら、彼がキャンベル嬢との縁談を受け入れてもどうでもいいじゃないですか」
「嫌いとは言ってない」
単にクソ野郎だな、と思っているだけで。
もしかしてティアンってアロンのこと嫌いなんか? わかるよ、このお兄さん到底いい大人ではないからな。
なぜか機嫌を悪くしたティアンは「そんなクソ野郎相手にするだけ無駄ですよ」とそっぽを向いてしまう。
「先程から聞いていれば。俺への悪口酷くないですか?」
偉そうに腕を組んだアロンの足をもう一度蹴ってやった。
「断っておいてくれ」
アリアを軽くあしらったアロン。それにアリアが目を丸くした。こいつらいつまで俺の部屋に居座るつもりだよ。ブルース兄様も早く出て行ってくれないかな。部屋が狭くなる。
「珍しい。いつもなら縁談がきたらすぐに教えろってうるさいのに」
「アロン、縁談好きなの?」
アリアの裾を引いて尋ねれば、彼女は「好きというか」と小首を傾げる。
「好みの可愛い女の子をキープしておいて遊んでんだよ」
「最低だね」
「でしょ?」
妹の言葉を否定しないアロンは「別にいいじゃないですか」と開き直っている。いいわけあるか。
「俺にはユリス様がいるので。その手の話は全部断っておいてくれ」
「は?」
突然出てきた俺の名前。それに反応したのはブルース兄様だった。
「おいアロン。どういう意味だ」
「ブルース様。弟さんを俺にください」
「断る」
ありがとう、ブルース兄様。
アロンしつこいんだよね。きっぱり断ってやってくれ。アリアが「マジ? あの女好きのクソが?」と驚愕している。妹から兄への評価が酷いな。
「残念でしたね、ブルース様。ユリス様は俺と結婚してくれると言いましたよ」
んなこと言ってない。そっと首を左右に振って否定すれば、ブルース兄様が「そんなことは言っていないようだが?」と強気に出る。頑張れ! ブルース兄様!
『おまえがアロンと結婚して、ブルースがアリアと結婚すれば完璧じゃないか』
わるにゃんこがうるさい。
なにが完璧なんだ。どうやらこいつはヴィアン家を滅茶苦茶にしたいらしい。
睨み合うアロンとブルース兄様。このふたりが言い争っているのはいつものことだ。
クレイグ団長は眉間を押さえて黙り込んでいる。ジャンは毎度のごとくオドオドしているし、ティアンは俺をこの部屋から連れ出そうと奮闘している。どうやら大人の揉め事を俺に見せたくはないらしい。だが俺は見たい。意地でもこの場に留まるつもりである。あとここ俺の部屋な。
「じゃあ縁談の方はお断りしておくね」
肩をすくめたアリアであったが、それにアロンが待ったをかける。
「一応、相手が誰かだけ教えて」
「クソ野郎め」
俺がいるからお断りすると言ったくせに。相手を確認しようとするあたりは流石アロンだ。
「キャンベル・リベラだよ。男爵令嬢の」
「ん?」
なんか聞き覚えのある名前だな。どこで聞いたんだっけ? 思い出そうと頑張っていると、これまで興味なさそうにしていたアロンが「ちょっと待った!」と大声を出す。びっくりするからやめて。
「おいおい、それって」
ブルース兄様も顔を引き攣らせている。
「その縁談! 受けてたちます!」
「俺はどうした」
俺がいるから断ると言ったくせに。忘れたんか?
ころりと意見を変えたアロンに抗議すれば、彼は申し訳なさそうな顔で「ユリス様のことはもちろん大事ですよ。でも俺にはやらなければならないことができたので」ともっともらしいセリフを述べている。
「やらなきゃいけないことって?」
「全力でオーガス様を揶揄ってきます」
「やめてあげなよ」
思い出した。キャンベルはオーガス兄様の好きな子だ。彼女をめぐってオーガス兄様が一方的にブルース兄様を責め立てていたのは記憶に新しい。そのせいでセドリックが解任されたんだっけ。
どうやらオーガス兄様が彼女からのブルース兄様宛の縁談を勝手にお断りした結果、キャンベルはアロンへと縁談相手を変更したらしい。状況は最悪だ。
案の定、アロンはオーガス兄様で遊ぶ気満々だ。なんだか面白くない。一転して楽しそうなアロンの服の裾を引っ張って「俺はどうした?」と再度問いかけるが軽くあしらわれてしまう。クソ野郎め。
「……ユリス様はアロン殿のことがお好きなんですか?」
げしげしとアロンの足を蹴っていれば、ティアンが微妙な顔で俺をみてくる。
「いや別に」
「ではなぜアロン殿を執拗に蹴っているのですか」
「なんかムカつくから」
「なぜ?」
うざいな、こいつ。
急にどうした?
「アロン殿のことが嫌いなら、彼がキャンベル嬢との縁談を受け入れてもどうでもいいじゃないですか」
「嫌いとは言ってない」
単にクソ野郎だな、と思っているだけで。
もしかしてティアンってアロンのこと嫌いなんか? わかるよ、このお兄さん到底いい大人ではないからな。
なぜか機嫌を悪くしたティアンは「そんなクソ野郎相手にするだけ無駄ですよ」とそっぽを向いてしまう。
「先程から聞いていれば。俺への悪口酷くないですか?」
偉そうに腕を組んだアロンの足をもう一度蹴ってやった。
473
お気に入りに追加
3,136
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。

婚約破棄?しませんよ、そんなもの
おしゃべりマドレーヌ
BL
王太子の卒業パーティーで、王太子・フェリクスと婚約をしていた、侯爵家のアンリは突然「婚約を破棄する」と言い渡される。どうやら真実の愛を見つけたらしいが、それにアンリは「しませんよ、そんなもの」と返す。
アンリと婚約破棄をしないほうが良い理由は山ほどある。
けれどアンリは段々と、そんなメリット・デメリットを考えるよりも、フェリクスが幸せになるほうが良いと考えるようになり……
「………………それなら、こうしましょう。私が、第一王妃になって仕事をこなします。彼女には、第二王妃になって頂いて、貴方は彼女と暮らすのです」
それでフェリクスが幸せになるなら、それが良い。
<嚙み痕で愛を語るシリーズというシリーズで書いていきます/これはスピンオフのような話です>

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる