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121 不純な動機
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僕より先に結婚するのは許さないけれども相手がお兄さんということであれば考えてやらんこともない。君ってそういう趣味だったんだね、意外だね。どうりで彼女作らなかったわけだ。
概ねこのようなことを捲し立てたオーガス兄様は「結婚式には僕も呼んでね」との伝言を俺に託してきた。任せておけ。はじめこそ「だから話を聞いてください」と弱々しく抗議していたティアンも諦めたらしい。「もう知りません」とそっぽを向いている。
ちなみにニックは遠い目をしていた。面倒事には首を突っ込まないスタンスらしい。こういうところセドリックに似ているな。さすが信者。
「ただいま。ブルース兄様」
「おまえどこに行ってた?」
「オーガス兄様のとこ」
自室に戻るなり俺を睨みつけてきたブルース兄様は、いまだにアリアと対面していた。堂々とした佇まいでブルース兄様を鋭く睨め付けるアリアは、どこからどう見ても決闘を申し込みにきたお兄さんだ。
「オーガス兄様がね、結婚式には僕も呼んでねだって」
「おまえが余計な事を言いふらしてきたことはよくわかった」
不機嫌な兄様はアリアをじろじろと凝視している。そして端の方で笑いを堪えているアロンを呼びつけた。
「おい、おまえの妹だろ。どうにかしろ」
「ふっ、いや、ちょっと待ってください」
ついには盛大に笑い出してしまったアロンは、手を叩いて爆笑している。こいつは役に立たない。そう判断したらしいブルース兄様は、自分でアリアをどうにかすることにしたらしい。
「理由を訊いても?」
「ブルース様と結婚できれば、私も大公家の一員です。ものすごい金と権力が手に入ります。本当はオーガス様と結婚したいんですが、彼が伯爵令嬢である私を相手にするとは思えません。だからブルース様で妥協しました」
「妥協するな」
可哀想なブルース兄様!
憐れみの目でぽんぽん背中を叩いてやれば「おまえは庭遊びでもしてこい!」と怒鳴られた。酷過ぎる。ここ俺の部屋なのに。
足元では揉め事大好きわるにゃんこがハイテンションで部屋を徘徊している。
『いいなこいつ! 気に入った』
どうやらアリアのことをお気に召したらしい。楽しそうでなによりだ。
「おいアロン。笑っていないで止めてくれ」
厄介事に顔を顰めたクレイグ団長は、いまだにアロンを頼りにしている。そいつはダメだと思うぞ。なんせクソ野郎なので。
案の定、アロンは笑い転げるばかりで動いてくれない。
「ブルース様が私と結婚すれば、アロン兄さんがブルース様の義理のお兄ちゃんになってくれますよ。オーガス様より断然頼りになるお兄ちゃんができますよ」
「絶対に嫌なんだが」
断固拒否したブルース兄様は、とても疲れた顔をしていた。「こんな奴の話なんて真面目に聞くんじゃなかった」となにやら後悔しているようだ。
「ユリス様も新しいお兄ちゃんとお姉ちゃん、欲しいですよね?」
なぜか俺に問いかけてきたアリアの目は真剣そのものだった。新しいお姉ちゃんは欲しい気もするがアリアだしな。お兄ちゃんにしか見えないし。あと性格もアロンそっくりだし。なんか嫌だ。
ふるふると首を横に振れば、ブルース兄様があり得ないくらいの勢いで乗っかってくる。
「そうだなユリス! 別に欲しくないよな! ということで諦めろ」
冷たく言い放った兄様は、俺の頭を遠慮なしに撫でてくる。よくわからんが褒められてしまった。
「私は諦めませんから」
そう言い捨てたアリアは、きっちりとハンチング帽を被り直して不機嫌そうだ。どうやら本気でブルース兄様と結婚したいらしい。動機は不純だけど。
概ねこのようなことを捲し立てたオーガス兄様は「結婚式には僕も呼んでね」との伝言を俺に託してきた。任せておけ。はじめこそ「だから話を聞いてください」と弱々しく抗議していたティアンも諦めたらしい。「もう知りません」とそっぽを向いている。
ちなみにニックは遠い目をしていた。面倒事には首を突っ込まないスタンスらしい。こういうところセドリックに似ているな。さすが信者。
「ただいま。ブルース兄様」
「おまえどこに行ってた?」
「オーガス兄様のとこ」
自室に戻るなり俺を睨みつけてきたブルース兄様は、いまだにアリアと対面していた。堂々とした佇まいでブルース兄様を鋭く睨め付けるアリアは、どこからどう見ても決闘を申し込みにきたお兄さんだ。
「オーガス兄様がね、結婚式には僕も呼んでねだって」
「おまえが余計な事を言いふらしてきたことはよくわかった」
不機嫌な兄様はアリアをじろじろと凝視している。そして端の方で笑いを堪えているアロンを呼びつけた。
「おい、おまえの妹だろ。どうにかしろ」
「ふっ、いや、ちょっと待ってください」
ついには盛大に笑い出してしまったアロンは、手を叩いて爆笑している。こいつは役に立たない。そう判断したらしいブルース兄様は、自分でアリアをどうにかすることにしたらしい。
「理由を訊いても?」
「ブルース様と結婚できれば、私も大公家の一員です。ものすごい金と権力が手に入ります。本当はオーガス様と結婚したいんですが、彼が伯爵令嬢である私を相手にするとは思えません。だからブルース様で妥協しました」
「妥協するな」
可哀想なブルース兄様!
憐れみの目でぽんぽん背中を叩いてやれば「おまえは庭遊びでもしてこい!」と怒鳴られた。酷過ぎる。ここ俺の部屋なのに。
足元では揉め事大好きわるにゃんこがハイテンションで部屋を徘徊している。
『いいなこいつ! 気に入った』
どうやらアリアのことをお気に召したらしい。楽しそうでなによりだ。
「おいアロン。笑っていないで止めてくれ」
厄介事に顔を顰めたクレイグ団長は、いまだにアロンを頼りにしている。そいつはダメだと思うぞ。なんせクソ野郎なので。
案の定、アロンは笑い転げるばかりで動いてくれない。
「ブルース様が私と結婚すれば、アロン兄さんがブルース様の義理のお兄ちゃんになってくれますよ。オーガス様より断然頼りになるお兄ちゃんができますよ」
「絶対に嫌なんだが」
断固拒否したブルース兄様は、とても疲れた顔をしていた。「こんな奴の話なんて真面目に聞くんじゃなかった」となにやら後悔しているようだ。
「ユリス様も新しいお兄ちゃんとお姉ちゃん、欲しいですよね?」
なぜか俺に問いかけてきたアリアの目は真剣そのものだった。新しいお姉ちゃんは欲しい気もするがアリアだしな。お兄ちゃんにしか見えないし。あと性格もアロンそっくりだし。なんか嫌だ。
ふるふると首を横に振れば、ブルース兄様があり得ないくらいの勢いで乗っかってくる。
「そうだなユリス! 別に欲しくないよな! ということで諦めろ」
冷たく言い放った兄様は、俺の頭を遠慮なしに撫でてくる。よくわからんが褒められてしまった。
「私は諦めませんから」
そう言い捨てたアリアは、きっちりとハンチング帽を被り直して不機嫌そうだ。どうやら本気でブルース兄様と結婚したいらしい。動機は不純だけど。
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