128 / 637
121 不純な動機
しおりを挟む
僕より先に結婚するのは許さないけれども相手がお兄さんということであれば考えてやらんこともない。君ってそういう趣味だったんだね、意外だね。どうりで彼女作らなかったわけだ。
概ねこのようなことを捲し立てたオーガス兄様は「結婚式には僕も呼んでね」との伝言を俺に託してきた。任せておけ。はじめこそ「だから話を聞いてください」と弱々しく抗議していたティアンも諦めたらしい。「もう知りません」とそっぽを向いている。
ちなみにニックは遠い目をしていた。面倒事には首を突っ込まないスタンスらしい。こういうところセドリックに似ているな。さすが信者。
「ただいま。ブルース兄様」
「おまえどこに行ってた?」
「オーガス兄様のとこ」
自室に戻るなり俺を睨みつけてきたブルース兄様は、いまだにアリアと対面していた。堂々とした佇まいでブルース兄様を鋭く睨め付けるアリアは、どこからどう見ても決闘を申し込みにきたお兄さんだ。
「オーガス兄様がね、結婚式には僕も呼んでねだって」
「おまえが余計な事を言いふらしてきたことはよくわかった」
不機嫌な兄様はアリアをじろじろと凝視している。そして端の方で笑いを堪えているアロンを呼びつけた。
「おい、おまえの妹だろ。どうにかしろ」
「ふっ、いや、ちょっと待ってください」
ついには盛大に笑い出してしまったアロンは、手を叩いて爆笑している。こいつは役に立たない。そう判断したらしいブルース兄様は、自分でアリアをどうにかすることにしたらしい。
「理由を訊いても?」
「ブルース様と結婚できれば、私も大公家の一員です。ものすごい金と権力が手に入ります。本当はオーガス様と結婚したいんですが、彼が伯爵令嬢である私を相手にするとは思えません。だからブルース様で妥協しました」
「妥協するな」
可哀想なブルース兄様!
憐れみの目でぽんぽん背中を叩いてやれば「おまえは庭遊びでもしてこい!」と怒鳴られた。酷過ぎる。ここ俺の部屋なのに。
足元では揉め事大好きわるにゃんこがハイテンションで部屋を徘徊している。
『いいなこいつ! 気に入った』
どうやらアリアのことをお気に召したらしい。楽しそうでなによりだ。
「おいアロン。笑っていないで止めてくれ」
厄介事に顔を顰めたクレイグ団長は、いまだにアロンを頼りにしている。そいつはダメだと思うぞ。なんせクソ野郎なので。
案の定、アロンは笑い転げるばかりで動いてくれない。
「ブルース様が私と結婚すれば、アロン兄さんがブルース様の義理のお兄ちゃんになってくれますよ。オーガス様より断然頼りになるお兄ちゃんができますよ」
「絶対に嫌なんだが」
断固拒否したブルース兄様は、とても疲れた顔をしていた。「こんな奴の話なんて真面目に聞くんじゃなかった」となにやら後悔しているようだ。
「ユリス様も新しいお兄ちゃんとお姉ちゃん、欲しいですよね?」
なぜか俺に問いかけてきたアリアの目は真剣そのものだった。新しいお姉ちゃんは欲しい気もするがアリアだしな。お兄ちゃんにしか見えないし。あと性格もアロンそっくりだし。なんか嫌だ。
ふるふると首を横に振れば、ブルース兄様があり得ないくらいの勢いで乗っかってくる。
「そうだなユリス! 別に欲しくないよな! ということで諦めろ」
冷たく言い放った兄様は、俺の頭を遠慮なしに撫でてくる。よくわからんが褒められてしまった。
「私は諦めませんから」
そう言い捨てたアリアは、きっちりとハンチング帽を被り直して不機嫌そうだ。どうやら本気でブルース兄様と結婚したいらしい。動機は不純だけど。
概ねこのようなことを捲し立てたオーガス兄様は「結婚式には僕も呼んでね」との伝言を俺に託してきた。任せておけ。はじめこそ「だから話を聞いてください」と弱々しく抗議していたティアンも諦めたらしい。「もう知りません」とそっぽを向いている。
ちなみにニックは遠い目をしていた。面倒事には首を突っ込まないスタンスらしい。こういうところセドリックに似ているな。さすが信者。
「ただいま。ブルース兄様」
「おまえどこに行ってた?」
「オーガス兄様のとこ」
自室に戻るなり俺を睨みつけてきたブルース兄様は、いまだにアリアと対面していた。堂々とした佇まいでブルース兄様を鋭く睨め付けるアリアは、どこからどう見ても決闘を申し込みにきたお兄さんだ。
「オーガス兄様がね、結婚式には僕も呼んでねだって」
「おまえが余計な事を言いふらしてきたことはよくわかった」
不機嫌な兄様はアリアをじろじろと凝視している。そして端の方で笑いを堪えているアロンを呼びつけた。
「おい、おまえの妹だろ。どうにかしろ」
「ふっ、いや、ちょっと待ってください」
ついには盛大に笑い出してしまったアロンは、手を叩いて爆笑している。こいつは役に立たない。そう判断したらしいブルース兄様は、自分でアリアをどうにかすることにしたらしい。
「理由を訊いても?」
「ブルース様と結婚できれば、私も大公家の一員です。ものすごい金と権力が手に入ります。本当はオーガス様と結婚したいんですが、彼が伯爵令嬢である私を相手にするとは思えません。だからブルース様で妥協しました」
「妥協するな」
可哀想なブルース兄様!
憐れみの目でぽんぽん背中を叩いてやれば「おまえは庭遊びでもしてこい!」と怒鳴られた。酷過ぎる。ここ俺の部屋なのに。
足元では揉め事大好きわるにゃんこがハイテンションで部屋を徘徊している。
『いいなこいつ! 気に入った』
どうやらアリアのことをお気に召したらしい。楽しそうでなによりだ。
「おいアロン。笑っていないで止めてくれ」
厄介事に顔を顰めたクレイグ団長は、いまだにアロンを頼りにしている。そいつはダメだと思うぞ。なんせクソ野郎なので。
案の定、アロンは笑い転げるばかりで動いてくれない。
「ブルース様が私と結婚すれば、アロン兄さんがブルース様の義理のお兄ちゃんになってくれますよ。オーガス様より断然頼りになるお兄ちゃんができますよ」
「絶対に嫌なんだが」
断固拒否したブルース兄様は、とても疲れた顔をしていた。「こんな奴の話なんて真面目に聞くんじゃなかった」となにやら後悔しているようだ。
「ユリス様も新しいお兄ちゃんとお姉ちゃん、欲しいですよね?」
なぜか俺に問いかけてきたアリアの目は真剣そのものだった。新しいお姉ちゃんは欲しい気もするがアリアだしな。お兄ちゃんにしか見えないし。あと性格もアロンそっくりだし。なんか嫌だ。
ふるふると首を横に振れば、ブルース兄様があり得ないくらいの勢いで乗っかってくる。
「そうだなユリス! 別に欲しくないよな! ということで諦めろ」
冷たく言い放った兄様は、俺の頭を遠慮なしに撫でてくる。よくわからんが褒められてしまった。
「私は諦めませんから」
そう言い捨てたアリアは、きっちりとハンチング帽を被り直して不機嫌そうだ。どうやら本気でブルース兄様と結婚したいらしい。動機は不純だけど。
475
お気に入りに追加
3,136
あなたにおすすめの小説

別れようと彼氏に言ったら泣いて懇願された挙げ句めっちゃ尽くされた
翡翠飾
BL
「い、いやだ、いや……。捨てないでっ、お願いぃ……。な、何でも!何でもするっ!金なら出すしっ、えっと、あ、ぱ、パシリになるから!」
そう言って涙を流しながら足元にすがり付くαである彼氏、霜月慧弥。ノリで告白されノリで了承したこの付き合いに、βである榊原伊織は頃合いかと別れを切り出したが、慧弥は何故か未練があるらしい。
チャライケメンα(尽くし体質)×物静かβ(尽くされ体質)の話。
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

愛する人
斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
「ああ、もう限界だ......なんでこんなことに!!」
応接室の隙間から、頭を抱える夫、ルドルフの姿が見えた。リオンの帰りが遅いことを知っていたから気が緩み、屋敷で愚痴を溢してしまったのだろう。
三年前、ルドルフの家からの申し出により、リオンは彼と政略的な婚姻関係を結んだ。けれどルドルフには愛する男性がいたのだ。
『限界』という言葉に悩んだリオンはやがてひとつの決断をする。


実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!

学園の俺様と、辺境地の僕
そらうみ
BL
この国の三大貴族の一つであるルーン・ホワイトが、何故か僕に構ってくる。学園生活を平穏に過ごしたいだけなのに、ルーンのせいで僕は皆の注目の的となってしまった。卒業すれば関わることもなくなるのに、ルーンは一体…何を考えているんだ?
【全12話になります。よろしくお願いします。】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる