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13 やらかしたかも
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ティアンは十二歳らしい。
うん、やっぱり小学生だ。いや中学生の可能性もあるな。まぁとりあえずそのくらいの年齢だ。
「なにをして遊びますか? ユリス様」
俺よりも高い位置にある頭を見上げていると、ティアンは膝を折って目線を合わせてくる。
「ユリス様?」
怪訝な顔で再度問いかけてくるティアン。どうしたものか。
子供は外で遊んでこいとブルース兄様に追い出された俺の後を、当然のように付いてきたティアン。少し離れていつも通りジャンが佇んでいる。
庭に出たはいいが、この少年をどうするべきか。突然見ず知らずの子供と遊べと言われても。
俺は中身高校生だぞ。小学生との遊び方なんてわからない。困っていると、ティアンが俺の手を取った。
「なんでもいいですよ?」
「じゃあ噴水で遊ぶ」
「それはちょっと」
なんでもいいって言ったのに。
寒いですよと眉尻を下げるティアンは俺の手を引いてさりげなく噴水から遠ざける。
「ユリス様、お庭をみましょう。きれいですよ」
「いい。興味ない」
だだっ広い庭園で立ち尽くす。ギクシャクする俺らを、ジャンが心配そうに見守っている。
「花は嫌いですか」
「好きとか嫌いとかない。興味ない」
「そうですか」
ぱちぱちと目を瞬くティアンは、話題を探すように周囲を見回した。
彼の袖をくいくい引っ張って勢いよく上がる水を指差す。
「噴水」
「だめです」
きっぱりと断言するティアンに、なぜかジャンが顔を青くする。
うーん。やっぱり小学生の相手は難しい。
※※※
ジャンを過度に信用してはならない。
これは俺がユリスに成り代わってから学んだことのひとつだ。
最初のうちはジャンが何も言わないから問題ないと判断していたが、まったくそんなことはなかった。ジャンは俺がなにか間違ったことをやっても止めないどころか手助けまでしてくる始末だ。非常にタチが悪い。
いまだってそうだ。
「おい。これはどういう状況だ」
頭上から静かな怒りを含んだ声が響いてくる。顔を上げなくともわかる。きっとブルース兄様は青筋を浮かべてこちらを睨み付けているに違いない。
事の始まりはティアンとの散歩中に庭で見つけた変な装置だ。
噴水を未練たらしく眺める俺の興味を逸らすためか、ティアンは俺の手を取ってどんどん噴水から離れて行った。そんなときに見つけたのだ。芝生に紛れて設置されている変な機械を。
ぱっと見は掌サイズのマンホールみたいなものだった。芝生に隠れて地面に据えられている。よく観察すると一定の距離を置いてぽつぽつと点在している。なんだこれ?
この世界のマンホール? でもこれ人の出入りは無理だよな?
そんな考えは、隣から覗き込むティアンの反応で打ち消した。
「なんですかね、これ」
「ティアンも知らないの?」
「初めてみました」
どうやら一般的なものではないらしい。ふたり並んで小型マンホール(仮)を覗き込む。
「地雷かな?」
「家の敷地にですか? 危ないですよ、それ」
確かに。じゃあ違うか。
手を伸ばそうとするが、ティアンにさりげなく止められる。
「見なかったことにしましょう」
「え、気になる」
あっさり諦めようとするティアンは、こういうものに興味がないのだろうか。噴水や花の件といいティアンとはつくづく趣味が合わない。
「あ、それは騎士団が設置しているものですよ」
立ち去ろうとするティアンを制止したのは、横から首を伸ばしてきたジャンだった。
「てことはやっぱり地雷」
「いえ、そうではなくて」
一旦言葉を切ったジャンは、俺の横にしゃがみ込んで何やら小型マンホール(仮)をいじり始める。
「えっと、確かここを捻ってですね」
どうやら表面に取っ手が隠されているらしい。それを立てて右に捻ると蓋が開いた。中からは赤色のボタンが出てきた。
「どうぞ。ユリス様」
どうぞ? 押せってことか?
ジャンに促されるまま俺はボタンに手を伸ばす。ティアンも今度は興味深気に覗き込んでいる。
「騎士団が緊急時の伝達用に設置したものです。簡単な魔法が組み込んであるんですよ」
「魔法!」
やっぱりこの世界、魔法が存在するんだ!
いままで存在感が一切なかったからあまり期待していなかったのに。わかりやすくテンションの上がった俺の指が、ボタンに触れる。
横でティアンが目を見開いた。
「え。ちょっと待ってください。緊急用なんですよね? だったら押さないほうがいいんじゃーー」
「え?」
「あ」
カチャリ。軽い手応えで沈み込んだボタンに、ティアンが静かに口元を覆う。
「それ、押して大丈夫だったんですか?」
それから五分もしないうちに、俺らは騎士団に周囲を取り囲まれた。
そして俺は決意した。むやみやたらとジャンを信用するのはやめようと。
うん、やっぱり小学生だ。いや中学生の可能性もあるな。まぁとりあえずそのくらいの年齢だ。
「なにをして遊びますか? ユリス様」
俺よりも高い位置にある頭を見上げていると、ティアンは膝を折って目線を合わせてくる。
「ユリス様?」
怪訝な顔で再度問いかけてくるティアン。どうしたものか。
子供は外で遊んでこいとブルース兄様に追い出された俺の後を、当然のように付いてきたティアン。少し離れていつも通りジャンが佇んでいる。
庭に出たはいいが、この少年をどうするべきか。突然見ず知らずの子供と遊べと言われても。
俺は中身高校生だぞ。小学生との遊び方なんてわからない。困っていると、ティアンが俺の手を取った。
「なんでもいいですよ?」
「じゃあ噴水で遊ぶ」
「それはちょっと」
なんでもいいって言ったのに。
寒いですよと眉尻を下げるティアンは俺の手を引いてさりげなく噴水から遠ざける。
「ユリス様、お庭をみましょう。きれいですよ」
「いい。興味ない」
だだっ広い庭園で立ち尽くす。ギクシャクする俺らを、ジャンが心配そうに見守っている。
「花は嫌いですか」
「好きとか嫌いとかない。興味ない」
「そうですか」
ぱちぱちと目を瞬くティアンは、話題を探すように周囲を見回した。
彼の袖をくいくい引っ張って勢いよく上がる水を指差す。
「噴水」
「だめです」
きっぱりと断言するティアンに、なぜかジャンが顔を青くする。
うーん。やっぱり小学生の相手は難しい。
※※※
ジャンを過度に信用してはならない。
これは俺がユリスに成り代わってから学んだことのひとつだ。
最初のうちはジャンが何も言わないから問題ないと判断していたが、まったくそんなことはなかった。ジャンは俺がなにか間違ったことをやっても止めないどころか手助けまでしてくる始末だ。非常にタチが悪い。
いまだってそうだ。
「おい。これはどういう状況だ」
頭上から静かな怒りを含んだ声が響いてくる。顔を上げなくともわかる。きっとブルース兄様は青筋を浮かべてこちらを睨み付けているに違いない。
事の始まりはティアンとの散歩中に庭で見つけた変な装置だ。
噴水を未練たらしく眺める俺の興味を逸らすためか、ティアンは俺の手を取ってどんどん噴水から離れて行った。そんなときに見つけたのだ。芝生に紛れて設置されている変な機械を。
ぱっと見は掌サイズのマンホールみたいなものだった。芝生に隠れて地面に据えられている。よく観察すると一定の距離を置いてぽつぽつと点在している。なんだこれ?
この世界のマンホール? でもこれ人の出入りは無理だよな?
そんな考えは、隣から覗き込むティアンの反応で打ち消した。
「なんですかね、これ」
「ティアンも知らないの?」
「初めてみました」
どうやら一般的なものではないらしい。ふたり並んで小型マンホール(仮)を覗き込む。
「地雷かな?」
「家の敷地にですか? 危ないですよ、それ」
確かに。じゃあ違うか。
手を伸ばそうとするが、ティアンにさりげなく止められる。
「見なかったことにしましょう」
「え、気になる」
あっさり諦めようとするティアンは、こういうものに興味がないのだろうか。噴水や花の件といいティアンとはつくづく趣味が合わない。
「あ、それは騎士団が設置しているものですよ」
立ち去ろうとするティアンを制止したのは、横から首を伸ばしてきたジャンだった。
「てことはやっぱり地雷」
「いえ、そうではなくて」
一旦言葉を切ったジャンは、俺の横にしゃがみ込んで何やら小型マンホール(仮)をいじり始める。
「えっと、確かここを捻ってですね」
どうやら表面に取っ手が隠されているらしい。それを立てて右に捻ると蓋が開いた。中からは赤色のボタンが出てきた。
「どうぞ。ユリス様」
どうぞ? 押せってことか?
ジャンに促されるまま俺はボタンに手を伸ばす。ティアンも今度は興味深気に覗き込んでいる。
「騎士団が緊急時の伝達用に設置したものです。簡単な魔法が組み込んであるんですよ」
「魔法!」
やっぱりこの世界、魔法が存在するんだ!
いままで存在感が一切なかったからあまり期待していなかったのに。わかりやすくテンションの上がった俺の指が、ボタンに触れる。
横でティアンが目を見開いた。
「え。ちょっと待ってください。緊急用なんですよね? だったら押さないほうがいいんじゃーー」
「え?」
「あ」
カチャリ。軽い手応えで沈み込んだボタンに、ティアンが静かに口元を覆う。
「それ、押して大丈夫だったんですか?」
それから五分もしないうちに、俺らは騎士団に周囲を取り囲まれた。
そして俺は決意した。むやみやたらとジャンを信用するのはやめようと。
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