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さぁ! お出かけだ! と意気込んだのも束の間。
「そういえばちゃんと紹介したことなかったな」
気の利くエドワードは、本日も余計な気を利かせた。なんと団長と副団長を呼び寄せて僕に挨拶させようとしてくる。やめろよ。
「あ、いや。挨拶なんて、お気になさらず」
僕はただの愛人だから。そんな近衛騎士に紹介なんてしなくていいから。
だがエドワードは団長ヴィクターと副団長ギルの前に僕を突き出した。
「おまえたちにはリアの顔を覚えておいて欲しい」
そんなことを言って僕の背中をぐいぐい押してくるエドワードは壊滅的に空気が読めていない。顔を覚えろとか嫌な命令するんじゃない。マジで覚えられると僕がものすごく困る。僕がリアムだとバレてしまう。
どこの世界に自分のセフレの顔を部下に覚えさせる奴がいるんだよ。普通、愛人とかセフレってもっとこう隠すもんじゃないの? なにを堂々と紹介してんだ。これだからお坊ちゃんは。恋愛に慣れていないなんてもんじゃない。浮かれ具合が酷すぎるぞ。
さりげなく顔を俯けて、直視されるのを防ぐ。本当は背中を向けて走り去りたいくらいだが、そんなことしたらエドワードがまたわけわからんキレ方をすると思われる。僕に逃げ道はなかった。
「初めまして、リア様。近衛騎士の団長を任されております。ヴィクターです」
「副団長のギルといいます。どうぞお見知りおきを」
ひぇ!
やめて。マジでやめて。
だがここで無視をすると空気がおかしくなる。んんっと咳払いをして、なるべく小声で「リアです」と挨拶しておいた。よくよく考えたら顔だけでなく声でバレる可能性もあったよ。僕すごくピンチだ。こんな時にこそザックに助けて欲しいのだが、彼は僕から視線を外しており頑なに助けてくれない。なんて薄情な奴だ。
人見知りしているフリをしてエドワードの背中に隠れておく。エドワードが怪訝な顔をしているが「ちょっと、僕人見知りだから」と言って押し通した。「人見知り?」とスコットが首を捻っている。別にいいだろ。僕だって知らない人はちょっと怖いと思う時くらいある。まぁ、ヴィクターとギルは知らない人ではないけれど。むしろギルにはここ最近毎日のように怒られているけれど。
「そろそろ出発いたしますか?」
ようやくここでザックが助け舟を出してくれた。動くのが遅すぎる。だが助かった。お忍び用の馬車は屋根がついており外から中の様子は伺えないようになっている。だが一般的な荷馬車に似せた作りになっており街中で悪目立ちすることもあるまい。
その乗り口前に立ったザックが目隠し用の布を捲り上げて準備をしている。頷いたエドワードが僕の手を取る。そのままふたりで馬車に乗り込む。それにスコットも続いた。他の騎士やザックはそれぞれ馬で追いかけるらしい。
目隠し用の布を下ろせば、外とは遮断される。これでひとまずは僕の顔をジロジロ見られる危険はなくなった。こっそりと胸を撫で下ろしていた僕だが、向かいの席に座ったエドワードが急にぶっ込んできた。
「ギル。さっき紹介した副団長のことだが。知り合いか?」
「ん? 初めて会うけど」
なにその質問。
え? もうバレたの? いくらなんでも早過ぎるって。バクバクと音を立て始める心臓。だがエドワードは「そうか」とあっさり引き下がった。
「いや、彼がリアのことをじっと見ていたから。顔見知りなのかと思っただけだ」
副団長、僕のことガン見してたのか?
バレてないよね? もしかして怪しまれているのか。
だが今はエドワードだ。
「僕は可愛いからね。それで見てたんじゃない?」
あり得そうな答えを出しておけば、エドワードが「それもそうだな」と納得してくれる。なにやらスコットが「相変わらずすごい自信ですね」と呆れているが気にしない。だって僕が可愛いのは事実だもん。
「そういえばちゃんと紹介したことなかったな」
気の利くエドワードは、本日も余計な気を利かせた。なんと団長と副団長を呼び寄せて僕に挨拶させようとしてくる。やめろよ。
「あ、いや。挨拶なんて、お気になさらず」
僕はただの愛人だから。そんな近衛騎士に紹介なんてしなくていいから。
だがエドワードは団長ヴィクターと副団長ギルの前に僕を突き出した。
「おまえたちにはリアの顔を覚えておいて欲しい」
そんなことを言って僕の背中をぐいぐい押してくるエドワードは壊滅的に空気が読めていない。顔を覚えろとか嫌な命令するんじゃない。マジで覚えられると僕がものすごく困る。僕がリアムだとバレてしまう。
どこの世界に自分のセフレの顔を部下に覚えさせる奴がいるんだよ。普通、愛人とかセフレってもっとこう隠すもんじゃないの? なにを堂々と紹介してんだ。これだからお坊ちゃんは。恋愛に慣れていないなんてもんじゃない。浮かれ具合が酷すぎるぞ。
さりげなく顔を俯けて、直視されるのを防ぐ。本当は背中を向けて走り去りたいくらいだが、そんなことしたらエドワードがまたわけわからんキレ方をすると思われる。僕に逃げ道はなかった。
「初めまして、リア様。近衛騎士の団長を任されております。ヴィクターです」
「副団長のギルといいます。どうぞお見知りおきを」
ひぇ!
やめて。マジでやめて。
だがここで無視をすると空気がおかしくなる。んんっと咳払いをして、なるべく小声で「リアです」と挨拶しておいた。よくよく考えたら顔だけでなく声でバレる可能性もあったよ。僕すごくピンチだ。こんな時にこそザックに助けて欲しいのだが、彼は僕から視線を外しており頑なに助けてくれない。なんて薄情な奴だ。
人見知りしているフリをしてエドワードの背中に隠れておく。エドワードが怪訝な顔をしているが「ちょっと、僕人見知りだから」と言って押し通した。「人見知り?」とスコットが首を捻っている。別にいいだろ。僕だって知らない人はちょっと怖いと思う時くらいある。まぁ、ヴィクターとギルは知らない人ではないけれど。むしろギルにはここ最近毎日のように怒られているけれど。
「そろそろ出発いたしますか?」
ようやくここでザックが助け舟を出してくれた。動くのが遅すぎる。だが助かった。お忍び用の馬車は屋根がついており外から中の様子は伺えないようになっている。だが一般的な荷馬車に似せた作りになっており街中で悪目立ちすることもあるまい。
その乗り口前に立ったザックが目隠し用の布を捲り上げて準備をしている。頷いたエドワードが僕の手を取る。そのままふたりで馬車に乗り込む。それにスコットも続いた。他の騎士やザックはそれぞれ馬で追いかけるらしい。
目隠し用の布を下ろせば、外とは遮断される。これでひとまずは僕の顔をジロジロ見られる危険はなくなった。こっそりと胸を撫で下ろしていた僕だが、向かいの席に座ったエドワードが急にぶっ込んできた。
「ギル。さっき紹介した副団長のことだが。知り合いか?」
「ん? 初めて会うけど」
なにその質問。
え? もうバレたの? いくらなんでも早過ぎるって。バクバクと音を立て始める心臓。だがエドワードは「そうか」とあっさり引き下がった。
「いや、彼がリアのことをじっと見ていたから。顔見知りなのかと思っただけだ」
副団長、僕のことガン見してたのか?
バレてないよね? もしかして怪しまれているのか。
だが今はエドワードだ。
「僕は可愛いからね。それで見てたんじゃない?」
あり得そうな答えを出しておけば、エドワードが「それもそうだな」と納得してくれる。なにやらスコットが「相変わらずすごい自信ですね」と呆れているが気にしない。だって僕が可愛いのは事実だもん。
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