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118 しまった!
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リオラお兄様は、シャルお兄さんはガストン団長であると言って譲らない。
お顔を見せろと強気に迫っている。それに困ったシャルお兄さんは、ついに「仕事がありますので」と早口に言って逃走した。
あ、ちょっと! とリオラお兄様が手を伸ばしていたが、シャルお兄さんは無視して逃げた。
そうして微妙に気まずい空気になる室内にて。
ぼくはリオラお兄様を見上げていた。
「リオラお兄様が無茶言うから。シャルお兄さん逃げちゃった」
シャルお兄さんかわいそうと大声で抗議しておく。だが、リオラお兄様は「あれはガストン団長だよ」と譲らない。どうしてそんなに頑ななのか。
しかしどうしようかな。
シャルお兄さんがリオラお兄様と恋人になれば全部解決だったのに。あっさり失恋してしまった。
これではお兄様が破滅へと突き進んでしまう。
「リオラお兄様。リッキーはいい人です」
リオラお兄様がリッキーに嫌がらせしなければ平和にいくのに。一応リッキーの良さを説明するが、リオラお兄様はきょとんとした顔で「なんで突然リッキー?」と聞いてくる。
「リッキーはライアンの幼馴染で、とってもいい人」
「うん。そうなんだ」
鈍い反応をするお兄様は、ちらちらとジョナスに視線をやっている。だが、ジョナスは楽しそうに微笑んでいるだけで口出ししてこない。
結局、お兄様はぼくに向き直る。
「あのね、アル」
「リッキーはいい人でーす!」
「あ、うん。わかったから」
わかったわかったとぼくを制するリオラお兄様に、拳を握りしめた。
「だからリッキーに意地悪しないでくださぁい」
「……は?」
ぽかんとするお兄様は、「え、私が?」と己の顔を指さしてきょろきょろし始める。その困惑しきった表情に、今度はぼくがぽかんとする。
え、まだリッキーへの嫌がらせしてないの?
それともぼくにバレたことに驚いているだけ?
しばらく様子を窺っていると、リオラお兄様が「なんの話?」とロルフに問いかけた。突然話を向けられたロルフは、背筋を伸ばして「あー、えっと」と頼りなく眉尻を下げている。
「俺にもよくわからないんですけど」
そんな前置きをするロルフに、ぼくは半眼となる。ロルフには、リオラお兄様破滅の件について何度も説明している。なんでわからないとか言うのか。さてはぼくの話を真面目に聞いていなかったな。
「リオラ様が、リッキーさんに嫌がらせして。えー。それでなんでしたっけ?」
助けを求められたので、ロルフに駆け寄って「お兄様はライアンに嫌われるの」と耳打ちする。片膝をついてぼくの声に耳を傾けるロルフは、ふむふむ言いながらぼくの言葉を繰り返した。
「なんかリオラ様が副団長に嫌われるそうです!」
自信満々に言い切ったロルフの横で、ぼくもうんうん頷いておく。だが、肝心のリオラお兄様はぎゅっと眉間に皺を寄せた。
「……いや、ちょっと意味がわからないよ」
なんでだよ。
呆然とするお兄様に、ぼくはロルフとそっと顔を見合わせた。
あまりに衝撃的な内容だから理解が追いつかないのかもしれない。もう一度丁寧に説明するが、それでもリオラお兄様は「わからない」と首を左右に振ってしまう。
「そもそもどうして私がリッキーに嫌がらせなんてしないといけないんだい?」
「リッキーがライアンとお付き合いするからです」
「え」
絶句するリオラお兄様を見て、しまった! と慌てて口を押さえる。だがもう遅かった。
「え。あのふたり付き合ってんの?」
信じられないと目を見開くお兄様を前にして、ぼくはゆっくりと頷いておいた。
お顔を見せろと強気に迫っている。それに困ったシャルお兄さんは、ついに「仕事がありますので」と早口に言って逃走した。
あ、ちょっと! とリオラお兄様が手を伸ばしていたが、シャルお兄さんは無視して逃げた。
そうして微妙に気まずい空気になる室内にて。
ぼくはリオラお兄様を見上げていた。
「リオラお兄様が無茶言うから。シャルお兄さん逃げちゃった」
シャルお兄さんかわいそうと大声で抗議しておく。だが、リオラお兄様は「あれはガストン団長だよ」と譲らない。どうしてそんなに頑ななのか。
しかしどうしようかな。
シャルお兄さんがリオラお兄様と恋人になれば全部解決だったのに。あっさり失恋してしまった。
これではお兄様が破滅へと突き進んでしまう。
「リオラお兄様。リッキーはいい人です」
リオラお兄様がリッキーに嫌がらせしなければ平和にいくのに。一応リッキーの良さを説明するが、リオラお兄様はきょとんとした顔で「なんで突然リッキー?」と聞いてくる。
「リッキーはライアンの幼馴染で、とってもいい人」
「うん。そうなんだ」
鈍い反応をするお兄様は、ちらちらとジョナスに視線をやっている。だが、ジョナスは楽しそうに微笑んでいるだけで口出ししてこない。
結局、お兄様はぼくに向き直る。
「あのね、アル」
「リッキーはいい人でーす!」
「あ、うん。わかったから」
わかったわかったとぼくを制するリオラお兄様に、拳を握りしめた。
「だからリッキーに意地悪しないでくださぁい」
「……は?」
ぽかんとするお兄様は、「え、私が?」と己の顔を指さしてきょろきょろし始める。その困惑しきった表情に、今度はぼくがぽかんとする。
え、まだリッキーへの嫌がらせしてないの?
それともぼくにバレたことに驚いているだけ?
しばらく様子を窺っていると、リオラお兄様が「なんの話?」とロルフに問いかけた。突然話を向けられたロルフは、背筋を伸ばして「あー、えっと」と頼りなく眉尻を下げている。
「俺にもよくわからないんですけど」
そんな前置きをするロルフに、ぼくは半眼となる。ロルフには、リオラお兄様破滅の件について何度も説明している。なんでわからないとか言うのか。さてはぼくの話を真面目に聞いていなかったな。
「リオラ様が、リッキーさんに嫌がらせして。えー。それでなんでしたっけ?」
助けを求められたので、ロルフに駆け寄って「お兄様はライアンに嫌われるの」と耳打ちする。片膝をついてぼくの声に耳を傾けるロルフは、ふむふむ言いながらぼくの言葉を繰り返した。
「なんかリオラ様が副団長に嫌われるそうです!」
自信満々に言い切ったロルフの横で、ぼくもうんうん頷いておく。だが、肝心のリオラお兄様はぎゅっと眉間に皺を寄せた。
「……いや、ちょっと意味がわからないよ」
なんでだよ。
呆然とするお兄様に、ぼくはロルフとそっと顔を見合わせた。
あまりに衝撃的な内容だから理解が追いつかないのかもしれない。もう一度丁寧に説明するが、それでもリオラお兄様は「わからない」と首を左右に振ってしまう。
「そもそもどうして私がリッキーに嫌がらせなんてしないといけないんだい?」
「リッキーがライアンとお付き合いするからです」
「え」
絶句するリオラお兄様を見て、しまった! と慌てて口を押さえる。だがもう遅かった。
「え。あのふたり付き合ってんの?」
信じられないと目を見開くお兄様を前にして、ぼくはゆっくりと頷いておいた。
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