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111 ぼくのせいかも
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結局、ロルフが本当に寝ていたのかどうかはわからない。ぼく、結構大きな声を出したのに。だが相手はロルフである。しっかり者だけど、変なところでうっかりしている彼である。本当に騒ぎに気が付かなかった可能性もある。
一体どうしてそんなに熟睡していたのか。ロルフは騎士じゃないけど。あまりにも危機感が欠けているものだから少し心配になってしまう。
「ロルフは毎日お疲れだから夜中起きないの?」
「そうかもしれません」
神妙な顔で頷くロルフ。
うむうむ。そういうことなら仕方がない。
ロルフは一生懸命お仕事しているので。疲れ切って熟睡しているのだろう。なんにせよ、ぼくのはちみつが無事ならそれでいい。ロルフいわく、ぼくのはちみつは無事らしい。ロルフがきちんと保管していると言っていた。「これまでに俺がはちみつを切らしたことがありましたか?」と堂々とするロルフに、ぼくは口を閉じた。
確かに。はちみつ持ってきてとぼくがお願いして「もうありません」と言われたことはない。だったら大丈夫かもしれない。
安心してしゃきっと背筋を伸ばしたぼくは、身支度を整えた。
※※※
「おはようございます。アル様」
「おはよ」
バッタリ鉢合わせたライアンに挨拶をすれば、なんだか妙な視線を感じた。言いたいことでもあるのか。ちょっと悩むように首を傾げるライアンのことをじっと見上げた。
「ライアン。どうしました?」
ぼくは気の利く五歳児なので。
察してこちらから問い掛ければ、ライアンが「あぁ、いえ」と言葉を濁した。これにはロルフも不思議そうな顔をした。
「どうしたんですか、副団長」
気さくに話しかけるロルフは相変わらずへらへらしている。それにちょっぴり眉を寄せたライアンだが、文句は言わなかった。
やがてぼくに探るような目を向けてきたライアンは、小声で「昨夜、ジョナスに会いましたか?」と予想外の質問をしてきた。
夜中の出来事である。もしかしてジョナスから聞いたのだろうか。
「うん。ジョナスいい人。ぼくをお部屋まで運んでくれました」
事実なので頷いておく。
はちみつのことが心配になってロルフの部屋を訪れたのに、出て来てくれなかったこともあわせて説明すれば、ロルフが慌てたように「アル様!」とぼくを制止しようとする。
何かまずいことでも? とロルフを見上げれば、「また目を離したのか」というライアンの低い声が聞こえてきてびっくりした。どうやら夜中にぼくが勝手に部屋を抜け出してウロウロしたから。ロルフが怒られている。
なんだか悪い気がして、慌ててライアンの手を掴んだ。
「あのね。ロルフは毎日お疲れだから。一回寝たら起きないの。ゆるしてあげて」
「アル様……!」
何やら感極まったかのように、ぼくの隣に膝をついたロルフ。「さすがアル様! すごく優しい!」という熱い声が聞こえてきたので、とりあえずえっへんと胸を張っておいた。
だが、ライアンは冷静だった。
「起きないでどうする。なんでそう呑気なんだ」
「申し訳ありません」
途端に肩を落とすロルフは、見ていて憐れであった。
「ロルフ。元気出してぇ」
ちょっぴり丸くなる背中をペシペシ叩いて励ましておく。ぼくのせいでロルフが怒られている。なんとかしないと。ぼくはロルフの頼れる主人なので。
ロルフは悪くないよとライアンを止めるが、彼は納得がいかないようだ。そもそもぼくが勝手に部屋を出たのが原因だ。
「ごめんね、ロルフ」
「いいんですよ、アル様。俺も悪いですから」
弱々しい表情のロルフをペシペシ励まして、今度はライアンに向き直る。どうして突然ジョナスの話になったのだろうか。
「いえそれが。ジョナスがアル様を部屋までお連れしたと言うものですから」
「はぁい。ジョナスは優しいので。ぼくをベッドまで運んでくれましたぁ」
どうやらジョナスの報告が本当か確認したかっただけみたい。隠すようなことでもないので、正直に答えておいた。
一体どうしてそんなに熟睡していたのか。ロルフは騎士じゃないけど。あまりにも危機感が欠けているものだから少し心配になってしまう。
「ロルフは毎日お疲れだから夜中起きないの?」
「そうかもしれません」
神妙な顔で頷くロルフ。
うむうむ。そういうことなら仕方がない。
ロルフは一生懸命お仕事しているので。疲れ切って熟睡しているのだろう。なんにせよ、ぼくのはちみつが無事ならそれでいい。ロルフいわく、ぼくのはちみつは無事らしい。ロルフがきちんと保管していると言っていた。「これまでに俺がはちみつを切らしたことがありましたか?」と堂々とするロルフに、ぼくは口を閉じた。
確かに。はちみつ持ってきてとぼくがお願いして「もうありません」と言われたことはない。だったら大丈夫かもしれない。
安心してしゃきっと背筋を伸ばしたぼくは、身支度を整えた。
※※※
「おはようございます。アル様」
「おはよ」
バッタリ鉢合わせたライアンに挨拶をすれば、なんだか妙な視線を感じた。言いたいことでもあるのか。ちょっと悩むように首を傾げるライアンのことをじっと見上げた。
「ライアン。どうしました?」
ぼくは気の利く五歳児なので。
察してこちらから問い掛ければ、ライアンが「あぁ、いえ」と言葉を濁した。これにはロルフも不思議そうな顔をした。
「どうしたんですか、副団長」
気さくに話しかけるロルフは相変わらずへらへらしている。それにちょっぴり眉を寄せたライアンだが、文句は言わなかった。
やがてぼくに探るような目を向けてきたライアンは、小声で「昨夜、ジョナスに会いましたか?」と予想外の質問をしてきた。
夜中の出来事である。もしかしてジョナスから聞いたのだろうか。
「うん。ジョナスいい人。ぼくをお部屋まで運んでくれました」
事実なので頷いておく。
はちみつのことが心配になってロルフの部屋を訪れたのに、出て来てくれなかったこともあわせて説明すれば、ロルフが慌てたように「アル様!」とぼくを制止しようとする。
何かまずいことでも? とロルフを見上げれば、「また目を離したのか」というライアンの低い声が聞こえてきてびっくりした。どうやら夜中にぼくが勝手に部屋を抜け出してウロウロしたから。ロルフが怒られている。
なんだか悪い気がして、慌ててライアンの手を掴んだ。
「あのね。ロルフは毎日お疲れだから。一回寝たら起きないの。ゆるしてあげて」
「アル様……!」
何やら感極まったかのように、ぼくの隣に膝をついたロルフ。「さすがアル様! すごく優しい!」という熱い声が聞こえてきたので、とりあえずえっへんと胸を張っておいた。
だが、ライアンは冷静だった。
「起きないでどうする。なんでそう呑気なんだ」
「申し訳ありません」
途端に肩を落とすロルフは、見ていて憐れであった。
「ロルフ。元気出してぇ」
ちょっぴり丸くなる背中をペシペシ叩いて励ましておく。ぼくのせいでロルフが怒られている。なんとかしないと。ぼくはロルフの頼れる主人なので。
ロルフは悪くないよとライアンを止めるが、彼は納得がいかないようだ。そもそもぼくが勝手に部屋を出たのが原因だ。
「ごめんね、ロルフ」
「いいんですよ、アル様。俺も悪いですから」
弱々しい表情のロルフをペシペシ励まして、今度はライアンに向き直る。どうして突然ジョナスの話になったのだろうか。
「いえそれが。ジョナスがアル様を部屋までお連れしたと言うものですから」
「はぁい。ジョナスは優しいので。ぼくをベッドまで運んでくれましたぁ」
どうやらジョナスの報告が本当か確認したかっただけみたい。隠すようなことでもないので、正直に答えておいた。
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