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100 副団長は大変
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お喋りする鳥さんを捕まえてこいと無茶振りされたライアンは、お母様相手に「無理ですよ」と小声で言い返していた。
ライアンの地味な抗議を聞き流したお母様にお休みの挨拶をして、部屋を出る。廊下で待機していたロルフが「どうでした?」と屈んできた。
「お母様がお喋りする鳥さん、どうにかしてくれるって言いました」
「よかったですね!」
一緒に喜んでくれるロルフと手を合わせてにこにこしていれば、ぼくの後から廊下に出てきたライアンが「どうにかするのは俺なんですけど」と苦言を呈してきた。
「どういう意味ですか?」
首を捻るロルフに、事の顛末を説明する。
お母様からの無茶振りを知ったロルフは、ライアンに憐れむような目を向けていた。
「頑張ってください、副団長」
そんな雑な励ましをするロルフは、ライアンに背中を向けて「戻りましょう、アル様」とぼくを促す。
はぁいとお返事して部屋に戻ろうとするのだが、ぼくの行き先を塞ぐようにライアンがまわり込んできた。
「アル様」
「なんですか」
片膝をついてぼくの顔を覗き込んでくるライアンは、真剣な表情だった。
「お喋りする鳥とやらを諦める気はありませんか?」
「ありません!」
きっぱり宣言すれば、ロルフが「ですよね。ずっと欲しいって言っていましたからね」と呑気に相槌を打っている。
「アル様。そのお喋りする鳥とやらは一体どこにいるのですか?」
「うーん?」
ライアンに問われて、考える。
野生のオウムってどこにいるんだろうか。ここは異世界。なんかその辺にいそうだけど。いないのだろうか。
そもそもこの世界のことは、五歳のぼくよりもライアンの方がずっとよく知っているはずである。そんなライアンがわからないと言うのであれば、ここらには生息していない可能性が高い。思えば、リオラお兄様だって苦戦した末に諦めたのだ。
オウムも存在はするのだろう。
だが、リオラお兄様だって書物で知識として知っただけかもしれない。ぼくの知る限り、ここには動物園のような施設もない。
「……どこにいるんだろう?」
ロルフに「知ってる?」と問い掛ければ、彼は元気よく「知りません!」と答えてきた。
ロルフも知らないのか。ふむふむ。
「ライアン。がんばって」
考えることを放棄したぼくは、すべてをライアンに任せることにした。任されたライアンが「無茶ですよ」と苦い顔をしている。
「ぼく、ちょっとなら待てます。明日までじゃなくてもいいです」
「そんなこと言われても」
面倒な事に巻き込まれたと言わんばかりに頭を抱えるライアンに「おやすみ」と手を振っておく。
そうして急いで部屋に戻れば、ロルフが「副団長も大変ですね」と肩をすくめた。
お喋りする鳥さんのことは全面的にライアンに任せようと思う。
「ロルフ! はちみつミルクは?」
「もう寝る時間ですよ」
「ダメ! 持ってきて」
はやくはやくと彼を急かせば、渋々といった様子で部屋を出ていくロルフ。ぼくのはちみつは無事だろうか。はちみつ多めね、と部屋を出ていくロルフの背中に声をかけたが、彼は「はいはい」という適当な返事をしただけでいまいち信用に欠ける。
そうして戻ってきたロルフが持ってきたミルクは、やっぱりはちみつ少なめだった。甘さが全然足りない。ぼくのはちみつなのに。ぼくが満足に食べられないなんて絶対におかしいと思う。
ライアンの地味な抗議を聞き流したお母様にお休みの挨拶をして、部屋を出る。廊下で待機していたロルフが「どうでした?」と屈んできた。
「お母様がお喋りする鳥さん、どうにかしてくれるって言いました」
「よかったですね!」
一緒に喜んでくれるロルフと手を合わせてにこにこしていれば、ぼくの後から廊下に出てきたライアンが「どうにかするのは俺なんですけど」と苦言を呈してきた。
「どういう意味ですか?」
首を捻るロルフに、事の顛末を説明する。
お母様からの無茶振りを知ったロルフは、ライアンに憐れむような目を向けていた。
「頑張ってください、副団長」
そんな雑な励ましをするロルフは、ライアンに背中を向けて「戻りましょう、アル様」とぼくを促す。
はぁいとお返事して部屋に戻ろうとするのだが、ぼくの行き先を塞ぐようにライアンがまわり込んできた。
「アル様」
「なんですか」
片膝をついてぼくの顔を覗き込んでくるライアンは、真剣な表情だった。
「お喋りする鳥とやらを諦める気はありませんか?」
「ありません!」
きっぱり宣言すれば、ロルフが「ですよね。ずっと欲しいって言っていましたからね」と呑気に相槌を打っている。
「アル様。そのお喋りする鳥とやらは一体どこにいるのですか?」
「うーん?」
ライアンに問われて、考える。
野生のオウムってどこにいるんだろうか。ここは異世界。なんかその辺にいそうだけど。いないのだろうか。
そもそもこの世界のことは、五歳のぼくよりもライアンの方がずっとよく知っているはずである。そんなライアンがわからないと言うのであれば、ここらには生息していない可能性が高い。思えば、リオラお兄様だって苦戦した末に諦めたのだ。
オウムも存在はするのだろう。
だが、リオラお兄様だって書物で知識として知っただけかもしれない。ぼくの知る限り、ここには動物園のような施設もない。
「……どこにいるんだろう?」
ロルフに「知ってる?」と問い掛ければ、彼は元気よく「知りません!」と答えてきた。
ロルフも知らないのか。ふむふむ。
「ライアン。がんばって」
考えることを放棄したぼくは、すべてをライアンに任せることにした。任されたライアンが「無茶ですよ」と苦い顔をしている。
「ぼく、ちょっとなら待てます。明日までじゃなくてもいいです」
「そんなこと言われても」
面倒な事に巻き込まれたと言わんばかりに頭を抱えるライアンに「おやすみ」と手を振っておく。
そうして急いで部屋に戻れば、ロルフが「副団長も大変ですね」と肩をすくめた。
お喋りする鳥さんのことは全面的にライアンに任せようと思う。
「ロルフ! はちみつミルクは?」
「もう寝る時間ですよ」
「ダメ! 持ってきて」
はやくはやくと彼を急かせば、渋々といった様子で部屋を出ていくロルフ。ぼくのはちみつは無事だろうか。はちみつ多めね、と部屋を出ていくロルフの背中に声をかけたが、彼は「はいはい」という適当な返事をしただけでいまいち信用に欠ける。
そうして戻ってきたロルフが持ってきたミルクは、やっぱりはちみつ少なめだった。甘さが全然足りない。ぼくのはちみつなのに。ぼくが満足に食べられないなんて絶対におかしいと思う。
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