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90 あとはお任せ
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「……それ、全部見なかったことにしてもいいかな」
「リオラお兄様。ダメです。しっかりしてください」
「私にはちょっと荷が重いよ」
「がんばって」
へにゃっと頼りないリオラお兄様は、しきりに視線をうろうろ。なんて頼りないお兄様だろうか。
ぼくとライアンが頑張って説明したのに、リオラお兄様は知らなかったことにしようと無茶な提案をする。面倒事には関わりたくないという強い意志を感じる。情けないと思うよ。
ライアンも困惑している。
「知らなかったことにするのはちょっと」
だよね。
騎士団としては、ノエルだと思っていた人物がノエルではなかったという衝撃の事実を見て見ぬふりはできないだろう。
偽ノエルであるノアお兄さんだけ屋敷に入れないという方法もあるが、それはそれで揉めそうだ。というか、モルガン伯爵家の耳に入る可能性が高い。オルコット公爵家が、モルガン伯爵家の秘密に気がついたと知った時、あちらがどういう態度に出るのか想像ができない。
一時期双子説が世間に広まった際、必死に火消しに回ったモルガン伯爵家である。おそらく穏便な解決は望めない。理由は分からないが、ノエルが双子という件はモルガン伯爵家にとっては絶対に知られてはいけない秘密なのだろう。
渦中のノエルだって、己に双子の弟がいることは知らないらしい。すごく厄介。
「リオラお兄様。どうにかしてくださぁい」
「どうにかって言われても」
どうしろって言うんだよ、と顔を顰めるお兄様はとてもお困りだった。
だが、ライアンが横から口を挟むとすぐに真面目な顔になる。やっぱりリオラお兄様ってライアンのこと好きなんだ。態度が露骨だもん。ぼくの目は誤魔化せないぞ。
お兄様に報告したことで、ぼくの仕事は終わった。ここから先は、お兄様とライアンがどうにかしてくれるような気がする。
しかし、ノアお兄さんが出禁になるのは困るような。
「ノアお兄さん。意地悪だけどいい人です」
「意地悪なの?」
ノアお兄さんいい人アピールをしてみたのだが、リオラお兄様は変なところに食いついた。
「違う。いい人。ちょっぴり意地悪だけど」
「結局、意地悪なの?」
「違いまーす」
ノアお兄さんは、ぼくと遊んでくれる意地悪お兄さんである。でも完全に意地悪というわけでもない。必要以上に気を遣わないところは、ぼくも気楽でいいと思う。時折すごく失礼だけど。
「ぼく、ノアお兄さんとまた遊んであげてもいいです。ぼくは優しいので」
「う、うん」
人には優しくしなさいとお母様にも言われている。それを実行するべくノアお兄さんとも遊んであげようとするが、リオラお兄様は微妙な顔だ。
リオラお兄様は、とても困った顔でぼくを見てくる。何かぼくの前だとやりにくい会話でもあるのだろうか。
ぼくはできた弟なので。お兄様の気持ちを察してロルフの袖を引いた。
「帰るよ、ロルフ」
「この状況を放置して戻るんですか?」
「はーい」
だってリオラお兄様がぼく抜きでライアンとお話したいような雰囲気だから。察しの良いぼくとは違って、ロルフは首を捻っている。そんなロルフの背中を押して、廊下に出る。
あとはリオラお兄様にお任せして、ぼくはいつも通りにロルフと遊んでおこうと思う。それでどうにかなる。はず。
「リオラお兄様。ダメです。しっかりしてください」
「私にはちょっと荷が重いよ」
「がんばって」
へにゃっと頼りないリオラお兄様は、しきりに視線をうろうろ。なんて頼りないお兄様だろうか。
ぼくとライアンが頑張って説明したのに、リオラお兄様は知らなかったことにしようと無茶な提案をする。面倒事には関わりたくないという強い意志を感じる。情けないと思うよ。
ライアンも困惑している。
「知らなかったことにするのはちょっと」
だよね。
騎士団としては、ノエルだと思っていた人物がノエルではなかったという衝撃の事実を見て見ぬふりはできないだろう。
偽ノエルであるノアお兄さんだけ屋敷に入れないという方法もあるが、それはそれで揉めそうだ。というか、モルガン伯爵家の耳に入る可能性が高い。オルコット公爵家が、モルガン伯爵家の秘密に気がついたと知った時、あちらがどういう態度に出るのか想像ができない。
一時期双子説が世間に広まった際、必死に火消しに回ったモルガン伯爵家である。おそらく穏便な解決は望めない。理由は分からないが、ノエルが双子という件はモルガン伯爵家にとっては絶対に知られてはいけない秘密なのだろう。
渦中のノエルだって、己に双子の弟がいることは知らないらしい。すごく厄介。
「リオラお兄様。どうにかしてくださぁい」
「どうにかって言われても」
どうしろって言うんだよ、と顔を顰めるお兄様はとてもお困りだった。
だが、ライアンが横から口を挟むとすぐに真面目な顔になる。やっぱりリオラお兄様ってライアンのこと好きなんだ。態度が露骨だもん。ぼくの目は誤魔化せないぞ。
お兄様に報告したことで、ぼくの仕事は終わった。ここから先は、お兄様とライアンがどうにかしてくれるような気がする。
しかし、ノアお兄さんが出禁になるのは困るような。
「ノアお兄さん。意地悪だけどいい人です」
「意地悪なの?」
ノアお兄さんいい人アピールをしてみたのだが、リオラお兄様は変なところに食いついた。
「違う。いい人。ちょっぴり意地悪だけど」
「結局、意地悪なの?」
「違いまーす」
ノアお兄さんは、ぼくと遊んでくれる意地悪お兄さんである。でも完全に意地悪というわけでもない。必要以上に気を遣わないところは、ぼくも気楽でいいと思う。時折すごく失礼だけど。
「ぼく、ノアお兄さんとまた遊んであげてもいいです。ぼくは優しいので」
「う、うん」
人には優しくしなさいとお母様にも言われている。それを実行するべくノアお兄さんとも遊んであげようとするが、リオラお兄様は微妙な顔だ。
リオラお兄様は、とても困った顔でぼくを見てくる。何かぼくの前だとやりにくい会話でもあるのだろうか。
ぼくはできた弟なので。お兄様の気持ちを察してロルフの袖を引いた。
「帰るよ、ロルフ」
「この状況を放置して戻るんですか?」
「はーい」
だってリオラお兄様がぼく抜きでライアンとお話したいような雰囲気だから。察しの良いぼくとは違って、ロルフは首を捻っている。そんなロルフの背中を押して、廊下に出る。
あとはリオラお兄様にお任せして、ぼくはいつも通りにロルフと遊んでおこうと思う。それでどうにかなる。はず。
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