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80 作戦会議
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「作戦会議しまぁす。ロルフも参加したい?」
「他のメンバーは誰がいるんですか?」
「今のところぼくひとりです」
「じゃあ俺も参加します!」
張り切るロルフは、そそくさとぼくの隣にやってくる。その手には、寝る前のあったかミルク。いそいそと受け取って、口をつける。やっぱりはちみつ足りない。
じとっとロルフのことを半眼で見つめてやるが、ロルフは「それで? 何についての作戦会議ですか」と、ぼくの不満に気がついてくれない。
「はちみつ少ないです」
「いいじゃないですか」
「よくない。甘くない」
「甘いですって。虫歯になりますよ」
ならないもん。
ムスッと頬を膨らませるぼくであったが、今は作戦会議の方が大事であることを思い出す。ぼくは大人な五歳児なので仕方がない。今日のところは折れてやろうと思う。ロルフは、ぼくの心の広さに感謝するべきだ。
作戦会議なので、ロルフにも椅子を勧める。普段はぼくと同じテーブルにつかないロルフだが、勧められて遠慮するような性格でもない。迷うことなく着席した彼は、心なしかわくわくしているように見える。一体何の会議だと思っているのだろうか。そんなに面白いものでもないけどな。
首を捻りつつも、ロルフが積極的なのはありがたい。背筋を伸ばしてロルフを見据える。
「ノエルお兄さんがふたりいることを証明します」
「あぁ、ノエル様の」
一気に気が抜けた顔をするロルフは、途端にやる気をなくしてしまったように見える。
「その件は、ライアン副団長に任せておけばいいじゃないですか」
「ダメです。それだといつまで経っても解決しません」
今までの様子を見るに、ノエルは慎重な性格だ。ここでいうノエルとは、意地悪ノエルのことだ。どうやら本物と思われる優しいノエルと鉢合わせしないように最大限の注意を払っているらしい。優しいノエルが、偽ノエルの存在を知っているのかは定かではない。でも偽ノエルの振る舞いを見る限り、優しいノエルお兄さんは、自分にそっくりの人物が居ることを知らないのではないかと思えてくる。
そこで、それを確かめるために行動すべきだ。
「ノエルお兄さんをふたりとも呼び出します」
「なるほど。ふたり同時に姿を確認するってわけですか。確かにそれが一番確実ですけど」
渋るロルフは、そう上手くいくのかと心配している。意地悪ノエルが慎重なので、綿密に計画を立てなければならない。ここがこの作戦の一番大事なところ。
「ノエルお兄さんは、雨の日には来ません」
それは意地悪ノエルも知っていることだ。この間顔を合わせた時、彼は「あいつ」とやらが雨の日に来ないとこぼしていた。意地悪ノエルが唯一ボロを出した瞬間だった。そこを利用しようと思う。
「次の雨の日に、優しいほうのノエルお兄さんをどうにかしてここに連れてきます」
そうすれば、のこのこやって来るであろう意地悪ノエルと鉢合わせさせられる。
完璧だと思われる提案に、けれどもロルフは「うーん」と渋い顔をする。
「そんなに上手くいきますか?」
「いかないの?」
首を傾げれば、ロルフは作戦の問題点と思われるところを挙げていく。
いわく、意地悪ノエルが優しいノエルの行動を把握している可能性がある、ということだ。
「本物のノエル様が、雨の日に来ないことをどうやって知ったんですか? どこからか情報がもれています。ノエル様を無理矢理ここに呼び出したところで、ここに来たという情報がもれる可能性があります」
確かに? そうかもしれない。
意地悪ノエルは、優しいノエルと鉢合わせしないようにと細心の注意を払っている。であれば、優しいノエルがうちに来たことが即座に伝わる可能性もある。それだと、意地悪ノエルがやって来ない。
「じゃあ作戦はロルフが考えて」
「え」
途端にやる気をなくしたぼくは、ミルクを飲むことに集中する。「えー」と不満たらたらロルフは、「そんなこと言われましても」と頬を掻く。
とにかく、偽ノエルの存在を明らかにしなければならない。
「他のメンバーは誰がいるんですか?」
「今のところぼくひとりです」
「じゃあ俺も参加します!」
張り切るロルフは、そそくさとぼくの隣にやってくる。その手には、寝る前のあったかミルク。いそいそと受け取って、口をつける。やっぱりはちみつ足りない。
じとっとロルフのことを半眼で見つめてやるが、ロルフは「それで? 何についての作戦会議ですか」と、ぼくの不満に気がついてくれない。
「はちみつ少ないです」
「いいじゃないですか」
「よくない。甘くない」
「甘いですって。虫歯になりますよ」
ならないもん。
ムスッと頬を膨らませるぼくであったが、今は作戦会議の方が大事であることを思い出す。ぼくは大人な五歳児なので仕方がない。今日のところは折れてやろうと思う。ロルフは、ぼくの心の広さに感謝するべきだ。
作戦会議なので、ロルフにも椅子を勧める。普段はぼくと同じテーブルにつかないロルフだが、勧められて遠慮するような性格でもない。迷うことなく着席した彼は、心なしかわくわくしているように見える。一体何の会議だと思っているのだろうか。そんなに面白いものでもないけどな。
首を捻りつつも、ロルフが積極的なのはありがたい。背筋を伸ばしてロルフを見据える。
「ノエルお兄さんがふたりいることを証明します」
「あぁ、ノエル様の」
一気に気が抜けた顔をするロルフは、途端にやる気をなくしてしまったように見える。
「その件は、ライアン副団長に任せておけばいいじゃないですか」
「ダメです。それだといつまで経っても解決しません」
今までの様子を見るに、ノエルは慎重な性格だ。ここでいうノエルとは、意地悪ノエルのことだ。どうやら本物と思われる優しいノエルと鉢合わせしないように最大限の注意を払っているらしい。優しいノエルが、偽ノエルの存在を知っているのかは定かではない。でも偽ノエルの振る舞いを見る限り、優しいノエルお兄さんは、自分にそっくりの人物が居ることを知らないのではないかと思えてくる。
そこで、それを確かめるために行動すべきだ。
「ノエルお兄さんをふたりとも呼び出します」
「なるほど。ふたり同時に姿を確認するってわけですか。確かにそれが一番確実ですけど」
渋るロルフは、そう上手くいくのかと心配している。意地悪ノエルが慎重なので、綿密に計画を立てなければならない。ここがこの作戦の一番大事なところ。
「ノエルお兄さんは、雨の日には来ません」
それは意地悪ノエルも知っていることだ。この間顔を合わせた時、彼は「あいつ」とやらが雨の日に来ないとこぼしていた。意地悪ノエルが唯一ボロを出した瞬間だった。そこを利用しようと思う。
「次の雨の日に、優しいほうのノエルお兄さんをどうにかしてここに連れてきます」
そうすれば、のこのこやって来るであろう意地悪ノエルと鉢合わせさせられる。
完璧だと思われる提案に、けれどもロルフは「うーん」と渋い顔をする。
「そんなに上手くいきますか?」
「いかないの?」
首を傾げれば、ロルフは作戦の問題点と思われるところを挙げていく。
いわく、意地悪ノエルが優しいノエルの行動を把握している可能性がある、ということだ。
「本物のノエル様が、雨の日に来ないことをどうやって知ったんですか? どこからか情報がもれています。ノエル様を無理矢理ここに呼び出したところで、ここに来たという情報がもれる可能性があります」
確かに? そうかもしれない。
意地悪ノエルは、優しいノエルと鉢合わせしないようにと細心の注意を払っている。であれば、優しいノエルがうちに来たことが即座に伝わる可能性もある。それだと、意地悪ノエルがやって来ない。
「じゃあ作戦はロルフが考えて」
「え」
途端にやる気をなくしたぼくは、ミルクを飲むことに集中する。「えー」と不満たらたらロルフは、「そんなこと言われましても」と頬を掻く。
とにかく、偽ノエルの存在を明らかにしなければならない。
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