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74 暴走中
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ノエルに言われるがままに、置き物を持って外に出る。あまり積極的ではないぼくだが、ノエルがうるさい。「これは絶対に良くない物ですよ!」と言い張っている。確かに不気味で、なんだか呪われそうな見た目をしているけどさ。今のところ実害はない。夜中に目が合うとちょっぴり怖いくらいだ。
ひたすらロルフに視線を向けるぼく。助けてもらいたいのだが、笑いをかみ殺している彼は、ノエルを止める気配がない。どうやら危険なことをしなければ見守る姿勢を貫くつもりらしい。そんな頼りないロルフに、ぼくは頬を膨らませる。
意気揚々と外に出たノエルは、なんだか視線を彷徨わせている。どうやら置き物退治に相応しい場所を探しているらしい。やがて、屋敷から少し離れた場所にたどり着いた。いつの日か、意地悪ノエルがぼくを閉じ込めた小屋の近くだ。思わず小屋の方角を確認してしまう。今日のノエルは、あの日とは別人だから大丈夫。それにロルフも一緒だ。
迷いなく進むノエルに、とことこついていく。やがて人気のない庭の一角にたどり着いた。周囲に誰もいないことを念入りに確認して、ノエルは草の生えた地面を指さした。
「ここで燃やしましょう」
「燃やしちゃうの?」
それは騒ぎにならない? 大丈夫?
不安になるぼくだが、どうやらノエルは火種を持っていないらしい。どうやって燃やそうかと考えている。その様子に、ぼくはホッと胸を撫で下ろす。
ここは魔法が存在しない世界だ。ファンタジーっぽい世界観だが、摩訶不思議な力はなく、どちらかと言えば剣や馬が活躍するような世界である。
「火がないと燃やせないですね」
「はーい。諦めまぁす」
きっぱりと宣言するぼく。だが、ノエルは諦められないようだ。どうにか方法を探っている。
そんなノエルの横で、ぼくはロルフとお喋りする。突然のノエルの奇行に驚くロルフは、横目でノエルの行動を監視しつつも、ぼくとのんびり会話してくれる。話題は自然とあの置き物になる。
「あれ、燃やしたらリオラお兄様が悲しい気持ちになると思うの」
「アル様はお優しいですね! さすがです!」
前のめりに褒めてくれるロルフに、ぼくはニコッと笑顔になる。
それにしても、リオラお兄様はどこであんな置き物を入手してきたのか。逆にどんな手段で見つけたのか気になる。
「わかりました!」
そんな中、突然響いたノエルの大声に、ぼくとロルフはビクッと肩を揺らす。急いでノエルに視線を戻せば、彼は地面に転がった置き物を前にして偉そうに仁王立ちしていた。
「燃やすのは無理なので、埋めちゃいましょう!」
「埋めちゃうの?」
またもや予想外の提案をしてくるノエルに、ぼくはふるふると震える。どうやらノエルは、この置き物を処分しないと気が済まないらしい。正直、この置き物にたいした意味はないと思う。放置していても問題はないと思う。
だが、ノエルは頑なだ。
こういうノエルの暴走行為が、原作小説では重宝されていた。物語が盛り上がりをみせるからね。
だがここは、ぼくにとっては現実世界。トラブルなんてごめんである。盛り上がったところで、ぼくが迷惑かけられるだけだ。どうにかノエルを止めないと。
「あの、ノエルお兄さん」
「ここに穴を掘りましょう」
「ノエルお兄さん?」
人の話を聞かないノエルは、スコップを探しに小屋の方へと走って行ってしまう。置いていかれたぼくは、ロルフと顔を見合わせる。
「ノエルお兄さん。暴走中でーす」
「ですね」
苦笑するロルフと一緒に、とりあえずノエルの帰りを待つ。やがてスコップを片手に戻ってきたノエルは、早速地面を掘り始める。
そのやる気は、一体どこから出てくるのだろうか。すごく謎だ。
「アル様も手伝ってください」
「……ぼくも?」
手伝えと言われても。
スコップはノエルが一本しか持ってこなかった。なので「ノエルお兄さん、がんばってくださぁい」と両手をあげて応援しておく。
はやく穴掘りに飽きてくれないかなぁ。
これだからお子様の相手は嫌なんだ。
ひたすらロルフに視線を向けるぼく。助けてもらいたいのだが、笑いをかみ殺している彼は、ノエルを止める気配がない。どうやら危険なことをしなければ見守る姿勢を貫くつもりらしい。そんな頼りないロルフに、ぼくは頬を膨らませる。
意気揚々と外に出たノエルは、なんだか視線を彷徨わせている。どうやら置き物退治に相応しい場所を探しているらしい。やがて、屋敷から少し離れた場所にたどり着いた。いつの日か、意地悪ノエルがぼくを閉じ込めた小屋の近くだ。思わず小屋の方角を確認してしまう。今日のノエルは、あの日とは別人だから大丈夫。それにロルフも一緒だ。
迷いなく進むノエルに、とことこついていく。やがて人気のない庭の一角にたどり着いた。周囲に誰もいないことを念入りに確認して、ノエルは草の生えた地面を指さした。
「ここで燃やしましょう」
「燃やしちゃうの?」
それは騒ぎにならない? 大丈夫?
不安になるぼくだが、どうやらノエルは火種を持っていないらしい。どうやって燃やそうかと考えている。その様子に、ぼくはホッと胸を撫で下ろす。
ここは魔法が存在しない世界だ。ファンタジーっぽい世界観だが、摩訶不思議な力はなく、どちらかと言えば剣や馬が活躍するような世界である。
「火がないと燃やせないですね」
「はーい。諦めまぁす」
きっぱりと宣言するぼく。だが、ノエルは諦められないようだ。どうにか方法を探っている。
そんなノエルの横で、ぼくはロルフとお喋りする。突然のノエルの奇行に驚くロルフは、横目でノエルの行動を監視しつつも、ぼくとのんびり会話してくれる。話題は自然とあの置き物になる。
「あれ、燃やしたらリオラお兄様が悲しい気持ちになると思うの」
「アル様はお優しいですね! さすがです!」
前のめりに褒めてくれるロルフに、ぼくはニコッと笑顔になる。
それにしても、リオラお兄様はどこであんな置き物を入手してきたのか。逆にどんな手段で見つけたのか気になる。
「わかりました!」
そんな中、突然響いたノエルの大声に、ぼくとロルフはビクッと肩を揺らす。急いでノエルに視線を戻せば、彼は地面に転がった置き物を前にして偉そうに仁王立ちしていた。
「燃やすのは無理なので、埋めちゃいましょう!」
「埋めちゃうの?」
またもや予想外の提案をしてくるノエルに、ぼくはふるふると震える。どうやらノエルは、この置き物を処分しないと気が済まないらしい。正直、この置き物にたいした意味はないと思う。放置していても問題はないと思う。
だが、ノエルは頑なだ。
こういうノエルの暴走行為が、原作小説では重宝されていた。物語が盛り上がりをみせるからね。
だがここは、ぼくにとっては現実世界。トラブルなんてごめんである。盛り上がったところで、ぼくが迷惑かけられるだけだ。どうにかノエルを止めないと。
「あの、ノエルお兄さん」
「ここに穴を掘りましょう」
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「ノエルお兄さん。暴走中でーす」
「ですね」
苦笑するロルフと一緒に、とりあえずノエルの帰りを待つ。やがてスコップを片手に戻ってきたノエルは、早速地面を掘り始める。
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「アル様も手伝ってください」
「……ぼくも?」
手伝えと言われても。
スコップはノエルが一本しか持ってこなかった。なので「ノエルお兄さん、がんばってくださぁい」と両手をあげて応援しておく。
はやく穴掘りに飽きてくれないかなぁ。
これだからお子様の相手は嫌なんだ。
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