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73 びっくり
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「ノエルお兄さん。これ可愛いと思いますか?」
リオラお兄様が去った後、ぼくは例の可愛くない置き物をノエルに見せてみた。昨日意地悪ノエルには見せたが、こっちの優しいノエルにはご紹介がまだだった。
変な顔で置き物を凝視したノエルは、やがて困惑気味に「これは何ですか?」と首を捻ってしまう。リオラお兄様いわく、鳥さんらしい。教えてあげれば、ノエルは「違いますよ! 鳥じゃないですよ!」と強めに否定してくる。そこはぼくも同意見。正直、ロルフと一緒に考えたがどう見ても鳥には見えない。
「リオラお兄様は、これ可愛いって言っています」
先程のリオラお兄様の発言を聞いていたノエルは、お兄様が消えた扉に視線を投げている。しかし、すぐに顔をぼくに向けると「リオラ様は変わった趣味をお持ちですね」と苦笑する。
ノエルは賢い子として知られているが、所詮は十歳児。時折びっくりするくらいストレートな物言いをする。原作でもそうだった。普段は良い子なのに、何かきっかけがあれば暴走する。そして主人公であるライアンとリッキーを巻き込んでしまうのだ。
今だって、ぼくから置き物を奪ったノエルは、しげしげと観察を始める。ちょっと重いのだが大丈夫だろうか。うっかり落としはしないだろうかとハラハラ見守っていると、ノエルがどんっと勢いよく置き物をテーブルに置いた。扱い方が雑でびっくり。
「これは可愛くないです。目が怖いですね。もうちょっと笑った顔にした方がいいと思います」
「ふむふむ」
真面目な顔で、置き物の評価をするノエルは、最後に「だからこれは全然ダメです。僕は好きじゃないです。あと鳥でもないと思います」と言い切った。ストレートだな。リオラお兄様が聞いたら泣いちゃうかもしれない。
だが、ノエルは原作小説でもこんな感じだった。基本的には良い子なのだが、場をかき乱すというか何というか。ノエルが登場するたびに、毎度事件が起こっていた。今のノエルには、原作小説で大暴れしていたあの独特な気配を感じる。すごく嫌な予感がする。
置き物の頭をペシペシ叩くノエルは、「これはきっと呪いの人形ですよ」と突拍子もないことを主張し始める。このお子様は一体何を言っているのだろうか。困惑するぼくの隣で、ロルフが必死に笑いを堪えている。
だが、ノエルの暴走は止まらない。ぼくとしては、ようやく本性を見せたかという感じだが、それにしても突っ走りすぎだと思う。突然どうしたというのか。
おそらく、オルコット公爵家に通い始めて時間が経った今、ようやくうちに慣れてきたのだろう。これまでグッと我慢していたものが、置き物をきっかけに出てきたのだと思う。
「これをどうにかした方がいいと思います」
「どうにかって?」
見当もつかないぼくは、ノエルを見上げることしかできない。怯む様子のないノエルは、自信満々に腰に手を当てる。
「処分した方がいいですね」
「リオラお兄様にもらった物なのに?」
「リオラ様も騙されているんですよ。これは絶対に良くない物です。だってそういう顔をしています。不気味です」
それはそうだけど。
置き物を処分すると意気込むノエルに、ぼくは困ってしまう。
リオラお兄様が悲しむから、一応は部屋に飾っておいたほうがいいと思う。確かに不気味ではあるが、実害はないのだから問題はないはずだ。しかし、ノエルは頑なだ。良くない物だと言い張っている。
「僕たちで処分してしまいましょう。見たところ木製なので燃やせば大丈夫ですよ」
何も大丈夫ではない。
物騒なノエルに、ぼくは思わずロルフを視界に入れる。どうにかしてと目線で助けを求めれば、ロルフが咳き込みながら何度も頷いた。どうやら笑いを堪えているうちに咽せてしまったらしい。大丈夫?
リオラお兄様が去った後、ぼくは例の可愛くない置き物をノエルに見せてみた。昨日意地悪ノエルには見せたが、こっちの優しいノエルにはご紹介がまだだった。
変な顔で置き物を凝視したノエルは、やがて困惑気味に「これは何ですか?」と首を捻ってしまう。リオラお兄様いわく、鳥さんらしい。教えてあげれば、ノエルは「違いますよ! 鳥じゃないですよ!」と強めに否定してくる。そこはぼくも同意見。正直、ロルフと一緒に考えたがどう見ても鳥には見えない。
「リオラお兄様は、これ可愛いって言っています」
先程のリオラお兄様の発言を聞いていたノエルは、お兄様が消えた扉に視線を投げている。しかし、すぐに顔をぼくに向けると「リオラ様は変わった趣味をお持ちですね」と苦笑する。
ノエルは賢い子として知られているが、所詮は十歳児。時折びっくりするくらいストレートな物言いをする。原作でもそうだった。普段は良い子なのに、何かきっかけがあれば暴走する。そして主人公であるライアンとリッキーを巻き込んでしまうのだ。
今だって、ぼくから置き物を奪ったノエルは、しげしげと観察を始める。ちょっと重いのだが大丈夫だろうか。うっかり落としはしないだろうかとハラハラ見守っていると、ノエルがどんっと勢いよく置き物をテーブルに置いた。扱い方が雑でびっくり。
「これは可愛くないです。目が怖いですね。もうちょっと笑った顔にした方がいいと思います」
「ふむふむ」
真面目な顔で、置き物の評価をするノエルは、最後に「だからこれは全然ダメです。僕は好きじゃないです。あと鳥でもないと思います」と言い切った。ストレートだな。リオラお兄様が聞いたら泣いちゃうかもしれない。
だが、ノエルは原作小説でもこんな感じだった。基本的には良い子なのだが、場をかき乱すというか何というか。ノエルが登場するたびに、毎度事件が起こっていた。今のノエルには、原作小説で大暴れしていたあの独特な気配を感じる。すごく嫌な予感がする。
置き物の頭をペシペシ叩くノエルは、「これはきっと呪いの人形ですよ」と突拍子もないことを主張し始める。このお子様は一体何を言っているのだろうか。困惑するぼくの隣で、ロルフが必死に笑いを堪えている。
だが、ノエルの暴走は止まらない。ぼくとしては、ようやく本性を見せたかという感じだが、それにしても突っ走りすぎだと思う。突然どうしたというのか。
おそらく、オルコット公爵家に通い始めて時間が経った今、ようやくうちに慣れてきたのだろう。これまでグッと我慢していたものが、置き物をきっかけに出てきたのだと思う。
「これをどうにかした方がいいと思います」
「どうにかって?」
見当もつかないぼくは、ノエルを見上げることしかできない。怯む様子のないノエルは、自信満々に腰に手を当てる。
「処分した方がいいですね」
「リオラお兄様にもらった物なのに?」
「リオラ様も騙されているんですよ。これは絶対に良くない物です。だってそういう顔をしています。不気味です」
それはそうだけど。
置き物を処分すると意気込むノエルに、ぼくは困ってしまう。
リオラお兄様が悲しむから、一応は部屋に飾っておいたほうがいいと思う。確かに不気味ではあるが、実害はないのだから問題はないはずだ。しかし、ノエルは頑なだ。良くない物だと言い張っている。
「僕たちで処分してしまいましょう。見たところ木製なので燃やせば大丈夫ですよ」
何も大丈夫ではない。
物騒なノエルに、ぼくは思わずロルフを視界に入れる。どうにかしてと目線で助けを求めれば、ロルフが咳き込みながら何度も頷いた。どうやら笑いを堪えているうちに咽せてしまったらしい。大丈夫?
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