58 / 141
58 嫌いなの?
しおりを挟む
ライアンは、すぐに戻ってきた。ついでにノエルも戻ってきた。手ぶらで帰ってきたノエルは、ぼくが捕まえたダンゴムシを見るなり「すごいですね」と、にこにこしている。
「アル様の勝ちですね」
なんだろう。すごく忖度されている気がする。
わざとらしい拍手をしてくるノエルに、ぼくのやる気が萎んでしまう。もっと真剣に遊んでほしい。
パンパンと手を払って、ノエルの隣に並ぶ。じっとノエルのことを観察しているライアンは、警戒しているらしい。でも今日のノエルは優しいお兄さんだからな。警戒しても無意味だと思う。
「ノエルお兄さん。本当に双子じゃないですか?」
「この間からどうしたんです? 僕に兄弟はいませんよ」
不思議そうに首を傾げるノエルに、ライアンが腕を組む。捕まえたダンゴムシを全部花壇に逃してやれば、ノエルが「手を洗いましょうか」と背中を押してくる。
渋々手を洗うぼく。ロルフが用意してくれたハンカチで手を拭いて、ふと顔を上げる。難しい顔でノエルを観察するライアン。ノエルはその視線に気が付いていないみたいだけど。
「ライアン」
「なんですか、アル様」
ちょいちょいと袖を引けば、ライアンが腰を屈めてくれる。
「ジョナスどこですか?」
「ジョナス? なんでまた」
予想外の名前に面食らったライアンは、「彼に何の用が?」と問いかけてくる。
「ジョナスと遊ぶ約束しました。いつ遊べますか?」
「ジョナスとですか」
片眉を持ち上げるライアンは、「あいつがそんなことを?」と、不思議そうにしている。どうやらジョナスがぼくと遊ぶ約束をしたことが信じられないらしい。まぁ、ジョナスは子供好きっていうイメージはないよな。中性的な雰囲気で、大人っぽい。無邪気に子供と遊ぶような人ではないだろう。どちらかといえば、物静かで子供の相手が苦手そうだ。
「ノエルお兄さんにも紹介してあげます。ジョナスのこと」
「誰ですか?」
「リオラお兄様の護衛の騎士さん」
「へー」
騎士と聞くなり、ノエルがわかりやすく興味を失った。この前ライアンを紹介した時もそうだったけど、ノエルはあまり騎士に興味がないようだ。興味ないというか、一線を引いているというか。ノエルも一応は貴族のお坊ちゃんだからね。
「ジョナス、いい人」
とりあえずいい人アピールをしておく。
だってジョナスと遊びたいから。
「ジョナスのところへ行きまぁす」
ビシッと右手をあげて宣言すれば、ノエルとライアンが「え?」と声を揃えた。ロルフも半眼で不満そう。みんな、なんでそんなにジョナスのことを避けるのか。楽しいお兄さんなのに。
ノエルの手を取って、騎士棟目指して駆け出す。だが、彼はリオラお兄様の護衛さんなので、もしかしたらリオラお兄様の部屋にいる可能性もある。やっぱりお兄様の部屋に行こうとくるっと方向転換するぼくに、ノエルがたたらを踏む。
「ジョナスどこですか?」
ライアンを見上げると、彼は眉をちょっぴり寄せて嫌そうな様子だ。そんなにぼくをジョナスに会わせたくないのか? なんで?
ノエルと手を繋いだまま、片手でライアンをつつく。ジョナスの居場所を教えるんだ。「ジョナスどこ」と繰り返すぼくに、ライアンが苦い顔をする。
「お兄様の部屋?」
「うーん」
唸るライアンは、「そうかもしれませんね」と煮え切らない返事。
「ライアンはジョナスのこと嫌いですか?」
ジョナスの名前が出た途端にみんな挙動がおかしくなる。もしかして嫌われているのかと不思議に思うぼくに、ライアンは「そういうわけでは」と苦笑する。
「ジョナスはちょっと」
「ちょっと?」
ちょっとなんだ。
はっきり言ってよ。
言葉を濁すライアンは、「今日は俺と遊びましょうか」と愉快な提案をしてくる。なるほど。もしかしてライアン、ぼくと一緒に遊びたかったのかな。それでジョナスのところへ案内するのを渋っていたのだろう。
「いいですよ。じゃあライアンも一緒に遊びます」
いいよね? とノエルに確認すれば「もちろんいいですよ」と即答。そうと決まれば早速遊ぶ。ロルフも手招きして、ぼくは勢いよく駆け出した。
「アル様の勝ちですね」
なんだろう。すごく忖度されている気がする。
わざとらしい拍手をしてくるノエルに、ぼくのやる気が萎んでしまう。もっと真剣に遊んでほしい。
パンパンと手を払って、ノエルの隣に並ぶ。じっとノエルのことを観察しているライアンは、警戒しているらしい。でも今日のノエルは優しいお兄さんだからな。警戒しても無意味だと思う。
「ノエルお兄さん。本当に双子じゃないですか?」
「この間からどうしたんです? 僕に兄弟はいませんよ」
不思議そうに首を傾げるノエルに、ライアンが腕を組む。捕まえたダンゴムシを全部花壇に逃してやれば、ノエルが「手を洗いましょうか」と背中を押してくる。
渋々手を洗うぼく。ロルフが用意してくれたハンカチで手を拭いて、ふと顔を上げる。難しい顔でノエルを観察するライアン。ノエルはその視線に気が付いていないみたいだけど。
「ライアン」
「なんですか、アル様」
ちょいちょいと袖を引けば、ライアンが腰を屈めてくれる。
「ジョナスどこですか?」
「ジョナス? なんでまた」
予想外の名前に面食らったライアンは、「彼に何の用が?」と問いかけてくる。
「ジョナスと遊ぶ約束しました。いつ遊べますか?」
「ジョナスとですか」
片眉を持ち上げるライアンは、「あいつがそんなことを?」と、不思議そうにしている。どうやらジョナスがぼくと遊ぶ約束をしたことが信じられないらしい。まぁ、ジョナスは子供好きっていうイメージはないよな。中性的な雰囲気で、大人っぽい。無邪気に子供と遊ぶような人ではないだろう。どちらかといえば、物静かで子供の相手が苦手そうだ。
「ノエルお兄さんにも紹介してあげます。ジョナスのこと」
「誰ですか?」
「リオラお兄様の護衛の騎士さん」
「へー」
騎士と聞くなり、ノエルがわかりやすく興味を失った。この前ライアンを紹介した時もそうだったけど、ノエルはあまり騎士に興味がないようだ。興味ないというか、一線を引いているというか。ノエルも一応は貴族のお坊ちゃんだからね。
「ジョナス、いい人」
とりあえずいい人アピールをしておく。
だってジョナスと遊びたいから。
「ジョナスのところへ行きまぁす」
ビシッと右手をあげて宣言すれば、ノエルとライアンが「え?」と声を揃えた。ロルフも半眼で不満そう。みんな、なんでそんなにジョナスのことを避けるのか。楽しいお兄さんなのに。
ノエルの手を取って、騎士棟目指して駆け出す。だが、彼はリオラお兄様の護衛さんなので、もしかしたらリオラお兄様の部屋にいる可能性もある。やっぱりお兄様の部屋に行こうとくるっと方向転換するぼくに、ノエルがたたらを踏む。
「ジョナスどこですか?」
ライアンを見上げると、彼は眉をちょっぴり寄せて嫌そうな様子だ。そんなにぼくをジョナスに会わせたくないのか? なんで?
ノエルと手を繋いだまま、片手でライアンをつつく。ジョナスの居場所を教えるんだ。「ジョナスどこ」と繰り返すぼくに、ライアンが苦い顔をする。
「お兄様の部屋?」
「うーん」
唸るライアンは、「そうかもしれませんね」と煮え切らない返事。
「ライアンはジョナスのこと嫌いですか?」
ジョナスの名前が出た途端にみんな挙動がおかしくなる。もしかして嫌われているのかと不思議に思うぼくに、ライアンは「そういうわけでは」と苦笑する。
「ジョナスはちょっと」
「ちょっと?」
ちょっとなんだ。
はっきり言ってよ。
言葉を濁すライアンは、「今日は俺と遊びましょうか」と愉快な提案をしてくる。なるほど。もしかしてライアン、ぼくと一緒に遊びたかったのかな。それでジョナスのところへ案内するのを渋っていたのだろう。
「いいですよ。じゃあライアンも一緒に遊びます」
いいよね? とノエルに確認すれば「もちろんいいですよ」と即答。そうと決まれば早速遊ぶ。ロルフも手招きして、ぼくは勢いよく駆け出した。
882
お気に入りに追加
2,307
あなたにおすすめの小説

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした
和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。
そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。
* 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵
* 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

その捕虜は牢屋から離れたくない
さいはて旅行社
BL
敵国の牢獄看守や軍人たちが大好きなのは、鍛え上げられた筋肉だった。
というわけで、剣や体術の訓練なんか大嫌いな魔導士で細身の主人公は、同僚の脳筋騎士たちとは違い、敵国の捕虜となっても平穏無事な牢屋生活を満喫するのであった。

せっかく美少年に転生したのに女神の祝福がおかしい
拓海のり
BL
前世の記憶を取り戻した途端、海に放り込まれたレニー。【腐女神の祝福】は気になるけれど、裕福な商人の三男に転生したので、まったり気ままに異世界の醍醐味を満喫したいです。神様は出て来ません。ご都合主義、ゆるふわ設定。
途中までしか書いていないので、一話のみ三万字位の短編になります。
他サイトにも投稿しています。

美形×平凡のBLゲームに転生した平凡騎士の俺?!
元森
BL
「嘘…俺、平凡受け…?!」
ある日、ソーシード王国の騎士であるアレク・シールド 28歳は、前世の記憶を思い出す。それはここがBLゲーム『ナイトオブナイト』で美形×平凡しか存在しない世界であること―――。そして自分は主人公の友人であるモブであるということを。そしてゲームのマスコットキャラクター:セーブたんが出てきて『キミを最強の受けにする』と言い出して―――?!
隠し攻略キャラ(俺様ヤンデレ美形攻め)×気高い平凡騎士受けのハチャメチャ転生騎士ライフ!

実はαだった俺、逃げることにした。
るるらら
BL
俺はアルディウス。とある貴族の生まれだが今は冒険者として悠々自適に暮らす26歳!
実は俺には秘密があって、前世の記憶があるんだ。日本という島国で暮らす一般人(サラリーマン)だったよな。事故で死んでしまったけど、今は転生して自由気ままに生きている。
一人で生きるようになって数十年。過去の人間達とはすっかり縁も切れてこのまま独身を貫いて生きていくんだろうなと思っていた矢先、事件が起きたんだ!
前世持ち特級Sランク冒険者(α)とヤンデレストーカー化した幼馴染(α→Ω)の追いかけっ子ラブ?ストーリー。
!注意!
初のオメガバース作品。
ゆるゆる設定です。運命の番はおとぎ話のようなもので主人公が暮らす時代には存在しないとされています。
バースが突然変異した設定ですので、無理だと思われたらスッとページを閉じましょう。
!ごめんなさい!
幼馴染だった王子様の嘆き3 の前に
復活した俺に不穏な影1 を更新してしまいました!申し訳ありません。新たに更新しましたので確認してみてください!
悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
*
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、ぷよった段々を反省しました。BLゲームの世界で推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる