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55 自覚なし
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「今日はジョナスに会いました。抱っこしてもらったの」
「ジョナスに? 遊んでもらったのかい?」
不思議そうな顔をするリオラお兄様に、ぼくはこくこくと頷く。
いつものように、夕食をもぐもぐしながらお兄様に本日の出来事を報告する。ぼくの話を真剣に聞いてくれるお兄様のお皿をチラチラと確認しながら、ぼくはジョナスと遊びたいとの要望も伝えてみる。
お兄様のお皿には、まだデザートの小さいケーキが残っている。そのケーキの行方を気にしながら、ジョナスのことを思い浮かべる。
ジョナスは、とてもいい人。
リオラお兄様の護衛を務める彼は、お兄様が外出する時には必ずと言っていいほど同行する。だから、リオラお兄様とジョナスは仲良し。
「ジョナスのこと気に入ったの?」
どうして? と怪訝な様子のお兄様は、ぼくとジョナスが仲良くなるとは思ってもいなかったらしい。まぁ、ぼくとジョナスには接点がないからな。今日だって、たまたま騎士棟で出会ったから会話をしただけだ。それがなければ、きっとろくに会話する機会なんてなかっただろう。
真剣な顔で野菜を端によけるぼくに、リオラお兄様が「好き嫌いはいけないよ」と注意をしてくる。
「ぼくは美味しいお肉が好きです」
「野菜も食べないとダメだよ」
「……」
「アル?」
聞いてる? とぼくの顔を覗き込んでくるお兄様から、さっと視線を逸らす。野菜は美味しくない。ぼくは美味しい物が好き。
お肉をフォークで突き刺して、口に運ぶ。一生懸命もぐもぐする。視線を感じてお兄様を見上げると、何か言いたそうな顔をしていた。
さっと自分のお皿にのっているデザートを確認する。リオラお兄様、もしかしてぼくのデザート狙っている?
危機を感じたぼくは、そっとお皿を引き寄せる。どうにかお兄様の気をデザートから逸らさないと。
「お兄様」
お肉を飲み込んで、フォークを置く。お兄様の気をひくちょうど良い話題があった。
「ライアンが、リオラお兄様のことちょっぴり怒っていました」
「え? ライアンが?」
目に見えて焦るお兄様。お兄様は、ライアンのことが好き。そんなライアンが怒っていると知れば、リオラお兄様は気になって仕方がないはずだ。案の定、お兄様は「それはどういうこと?」と、前のめりに質問してくる。
「はい。リオラお兄様は、いっつも報告止めてしまうと困っていました」
「止めて?」
そんなことしたっけ? と首を捻るお兄様は、自覚がないらしい。ライアンが苦労するのも理解できる。
大事なことは全部騎士団に報告してほしいというライアンの言葉を伝えてみれば、リオラお兄様が眉を寄せた。
「いつも情報共有はしているけどね」
しれっとそんなことを言うリオラお兄様は、やっぱり抜けている。お肉を全部口に放り込んで、しっかり味わう。
「でもライアンがそう言っているのなら、僕にも悪いところはあったんだろうね。次から気をつけるよ」
「はい」
やけに素直なお兄様。やはりライアンのことが好きなのだ。好きだから、こんなにも無条件でライアンの言葉に従うのだ。
リオラお兄様は、ライアンのことが好き過ぎて暴走する。その結果が破滅なのだ。別に好きな人がいること自体はいいと思う。しかし、限度というものがある。リオラお兄様は、原作内で引き際というものを知らなかった。
ぼくは、お兄様の弟として、お兄様のことをサポートしなければならない。一番いいのはお兄様がライアンのことを諦めてくれることである。だが、お兄様は頑なな性格である。ゆえにぼくは苦労している。
「お兄様。ジョナスのこと好きですか?」
「また突然だね」
緩く苦笑したお兄様は、デザートのケーキに手を伸ばしている。ハッと息を呑むぼく。じっとお兄様のケーキを凝視していれば、ぼくの視線に気がついたお兄様がフォークを彷徨わせている。
「アルの分はあるだろう?」
そっとぼくのお皿を示すお兄様に、渋々と頷く。お兄様がケーキを譲ってくれるのではないかと、ちょっぴり期待していたぼくはガッカリする。しかしお兄様もケーキ食べたいだろうし、そう毎日は譲ってくれないだろうなと納得する。
お兄様の真似をするように、ぼくもケーキを頬張る。「野菜残ってるよ」というお兄様の言葉を無視して、「ジョナスのこと好きですか?」と再度問いかけてみる。
「別に。普通かな」
簡潔な答えをよこしたリオラお兄様は、ジョナスのことは眼中にないらしい。あんなに色っぽいお兄さんなのに。なぜだろうか。ぼくはジョナスのことが結構好き。だって優しくて中性的な雰囲気である。ついつい目が引き寄せられてしまう。また一緒にお話したい。叶うことなら遊びたい。リオラお兄様は、そう思わないのだろうか。
「ジョナス。とってもいい人です。一緒に遊んだら楽しいと思います」
とりあえず、ジョナスの良さをアピールしておく。リオラお兄様がライアン以外に目を向けてくれることを期待して。
しかし、お兄様は「そうだね。いい人だね」と軽く流してしまう。
「ジョナスに? 遊んでもらったのかい?」
不思議そうな顔をするリオラお兄様に、ぼくはこくこくと頷く。
いつものように、夕食をもぐもぐしながらお兄様に本日の出来事を報告する。ぼくの話を真剣に聞いてくれるお兄様のお皿をチラチラと確認しながら、ぼくはジョナスと遊びたいとの要望も伝えてみる。
お兄様のお皿には、まだデザートの小さいケーキが残っている。そのケーキの行方を気にしながら、ジョナスのことを思い浮かべる。
ジョナスは、とてもいい人。
リオラお兄様の護衛を務める彼は、お兄様が外出する時には必ずと言っていいほど同行する。だから、リオラお兄様とジョナスは仲良し。
「ジョナスのこと気に入ったの?」
どうして? と怪訝な様子のお兄様は、ぼくとジョナスが仲良くなるとは思ってもいなかったらしい。まぁ、ぼくとジョナスには接点がないからな。今日だって、たまたま騎士棟で出会ったから会話をしただけだ。それがなければ、きっとろくに会話する機会なんてなかっただろう。
真剣な顔で野菜を端によけるぼくに、リオラお兄様が「好き嫌いはいけないよ」と注意をしてくる。
「ぼくは美味しいお肉が好きです」
「野菜も食べないとダメだよ」
「……」
「アル?」
聞いてる? とぼくの顔を覗き込んでくるお兄様から、さっと視線を逸らす。野菜は美味しくない。ぼくは美味しい物が好き。
お肉をフォークで突き刺して、口に運ぶ。一生懸命もぐもぐする。視線を感じてお兄様を見上げると、何か言いたそうな顔をしていた。
さっと自分のお皿にのっているデザートを確認する。リオラお兄様、もしかしてぼくのデザート狙っている?
危機を感じたぼくは、そっとお皿を引き寄せる。どうにかお兄様の気をデザートから逸らさないと。
「お兄様」
お肉を飲み込んで、フォークを置く。お兄様の気をひくちょうど良い話題があった。
「ライアンが、リオラお兄様のことちょっぴり怒っていました」
「え? ライアンが?」
目に見えて焦るお兄様。お兄様は、ライアンのことが好き。そんなライアンが怒っていると知れば、リオラお兄様は気になって仕方がないはずだ。案の定、お兄様は「それはどういうこと?」と、前のめりに質問してくる。
「はい。リオラお兄様は、いっつも報告止めてしまうと困っていました」
「止めて?」
そんなことしたっけ? と首を捻るお兄様は、自覚がないらしい。ライアンが苦労するのも理解できる。
大事なことは全部騎士団に報告してほしいというライアンの言葉を伝えてみれば、リオラお兄様が眉を寄せた。
「いつも情報共有はしているけどね」
しれっとそんなことを言うリオラお兄様は、やっぱり抜けている。お肉を全部口に放り込んで、しっかり味わう。
「でもライアンがそう言っているのなら、僕にも悪いところはあったんだろうね。次から気をつけるよ」
「はい」
やけに素直なお兄様。やはりライアンのことが好きなのだ。好きだから、こんなにも無条件でライアンの言葉に従うのだ。
リオラお兄様は、ライアンのことが好き過ぎて暴走する。その結果が破滅なのだ。別に好きな人がいること自体はいいと思う。しかし、限度というものがある。リオラお兄様は、原作内で引き際というものを知らなかった。
ぼくは、お兄様の弟として、お兄様のことをサポートしなければならない。一番いいのはお兄様がライアンのことを諦めてくれることである。だが、お兄様は頑なな性格である。ゆえにぼくは苦労している。
「お兄様。ジョナスのこと好きですか?」
「また突然だね」
緩く苦笑したお兄様は、デザートのケーキに手を伸ばしている。ハッと息を呑むぼく。じっとお兄様のケーキを凝視していれば、ぼくの視線に気がついたお兄様がフォークを彷徨わせている。
「アルの分はあるだろう?」
そっとぼくのお皿を示すお兄様に、渋々と頷く。お兄様がケーキを譲ってくれるのではないかと、ちょっぴり期待していたぼくはガッカリする。しかしお兄様もケーキ食べたいだろうし、そう毎日は譲ってくれないだろうなと納得する。
お兄様の真似をするように、ぼくもケーキを頬張る。「野菜残ってるよ」というお兄様の言葉を無視して、「ジョナスのこと好きですか?」と再度問いかけてみる。
「別に。普通かな」
簡潔な答えをよこしたリオラお兄様は、ジョナスのことは眼中にないらしい。あんなに色っぽいお兄さんなのに。なぜだろうか。ぼくはジョナスのことが結構好き。だって優しくて中性的な雰囲気である。ついつい目が引き寄せられてしまう。また一緒にお話したい。叶うことなら遊びたい。リオラお兄様は、そう思わないのだろうか。
「ジョナス。とってもいい人です。一緒に遊んだら楽しいと思います」
とりあえず、ジョナスの良さをアピールしておく。リオラお兄様がライアン以外に目を向けてくれることを期待して。
しかし、お兄様は「そうだね。いい人だね」と軽く流してしまう。
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