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42 仲良し
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「ライアン! ライアンどこですかぁ!?」
「あの、アル様」
困ったようにぼくの肩に手を置くノエル。ノエルが本当は優しいお兄さんなのでは? とのちょっとした可能性に気がついたぼく。今までノエルに対して色々と冷たい対応をして悪かったと思う。
とはいえ、ノエルがぼくを物置に閉じ込めたことは紛れもない事実である。だから完全に信じることはできないが、ノエルがぼくに意地悪しない以上、ノエルと仲良くしてやってもいいと思い直した。
その第一歩として、ノエルにライアンを紹介してあげようと思う。
原作でも、ライアンはノエルと面識があった。引き合わせても問題はないだろう。そのためにライアンを探して騎士棟にやってきたのだが、肝心のライアンの姿が見えない。
ロルフも一緒になって探してくれているが、一体どこに行ったのか。ひたすらライアンの名前を連呼するぼくに、ノエルは困惑している。無理にライアンを探さなくても大丈夫と遠慮するノエル。
「遠慮しないで。ライアンはいい人」
言ってから、ここ最近のライアンの態度を思い浮かべて「ちょっぴり悪い人だけど」と言い直す。ライアンは、シャルお兄さんとガストン団長が同一人物であるというとんでもない大嘘をついている。
「ライアンは、副団長です。背が高いお兄さんです。そんでもって、幼馴染のリッキーとお付き合いしています」
リッキーはうちの騎士ですと説明すれば、ノエルが「え? あ、はい」と戸惑った声を出す。その横では、ロルフが堪えきれないといった様子で吹き出している。ロルフは、すぐに笑ってしまう。失礼な従者である。
ロルフに構っている余裕はない。再びノエルに向き直って、「ライアンとも仲良くしてあげてください」とお願いする。
「それは、もちろんですけど」
へにゃっと眉尻を下げるノエルの手を取って駆け出す。周りにいた騎士たちが、慌ただしく動きまわっているのは、きっとライアンを探しているからだろう。「副団長はどこ行った!」という怒声がちらほら聞こえてくる。
そんな中、ようやくライアンが姿を見せた。肩で大きく息をするライアンは、大慌てで来たらしい。
「お待たせしました、アル様」
「ライアン。お疲れですか?」
汗を拭うライアンに、ぼくはポケットに入れていたハンカチを差し出した。このハンカチをポケットに入れたのはロルフだけど。ロルフは、ぼくのお世話係でもあるので。
恐縮しつつもハンカチを受け取ったライアンは爽やかにお礼を述べてくる。そのライアンが落ち着くのを待って、ぼくはノエルの背中を押した。
「ライアン。紹介します。ノエルお兄さんです」
「ノエル・モルガンです」
やや引き攣った笑みを浮かべるノエルは、ライアン相手にどう接すればいいのか迷っているらしい。まぁ、伯爵家の息子であるノエルが、うちの騎士と仲良くする理由なんてないもんな。普通だったら、会話だってしないに違いない。
戸惑いを隠さないノエルは、それきり口を閉じてしまう。ライアンもライアンで困っているような雰囲気だ。しきりにロルフへと視線をやっている。
「ライアン! ノエルお兄さんと仲良くしてください」
「はい。もちろんですよ」
さすがライアン。爽やかに笑う彼は、余裕のあるお兄さんだ。リオラお兄様が惚れるだけのことはある。
「リオラお兄様は、ライアンのこと好き」
思い出したついでに、お兄様とライアンの関係もノエルに教えてあげる。目を瞬いたノエルは、「あ、えっと。はい。なんというか」と、挙動不審になる。
「アル様? そこまでにしておきましょうね」
やんわり止めに入るライアンは、苦笑していた。そのままノエルに「お気になさらず」と曖昧に微笑んでいる。「あ、はい」とぼんやり頷くノエルは、困惑しているらしい。
突然、オルコット公爵家の恋愛事情について聞かされて、面食らってしまったのだろう。慌てて「今のはみんなに内緒です」と口止めしておく。
こくんと頷くノエルは、やっぱり困った顔をしていた。
「あの、アル様」
困ったようにぼくの肩に手を置くノエル。ノエルが本当は優しいお兄さんなのでは? とのちょっとした可能性に気がついたぼく。今までノエルに対して色々と冷たい対応をして悪かったと思う。
とはいえ、ノエルがぼくを物置に閉じ込めたことは紛れもない事実である。だから完全に信じることはできないが、ノエルがぼくに意地悪しない以上、ノエルと仲良くしてやってもいいと思い直した。
その第一歩として、ノエルにライアンを紹介してあげようと思う。
原作でも、ライアンはノエルと面識があった。引き合わせても問題はないだろう。そのためにライアンを探して騎士棟にやってきたのだが、肝心のライアンの姿が見えない。
ロルフも一緒になって探してくれているが、一体どこに行ったのか。ひたすらライアンの名前を連呼するぼくに、ノエルは困惑している。無理にライアンを探さなくても大丈夫と遠慮するノエル。
「遠慮しないで。ライアンはいい人」
言ってから、ここ最近のライアンの態度を思い浮かべて「ちょっぴり悪い人だけど」と言い直す。ライアンは、シャルお兄さんとガストン団長が同一人物であるというとんでもない大嘘をついている。
「ライアンは、副団長です。背が高いお兄さんです。そんでもって、幼馴染のリッキーとお付き合いしています」
リッキーはうちの騎士ですと説明すれば、ノエルが「え? あ、はい」と戸惑った声を出す。その横では、ロルフが堪えきれないといった様子で吹き出している。ロルフは、すぐに笑ってしまう。失礼な従者である。
ロルフに構っている余裕はない。再びノエルに向き直って、「ライアンとも仲良くしてあげてください」とお願いする。
「それは、もちろんですけど」
へにゃっと眉尻を下げるノエルの手を取って駆け出す。周りにいた騎士たちが、慌ただしく動きまわっているのは、きっとライアンを探しているからだろう。「副団長はどこ行った!」という怒声がちらほら聞こえてくる。
そんな中、ようやくライアンが姿を見せた。肩で大きく息をするライアンは、大慌てで来たらしい。
「お待たせしました、アル様」
「ライアン。お疲れですか?」
汗を拭うライアンに、ぼくはポケットに入れていたハンカチを差し出した。このハンカチをポケットに入れたのはロルフだけど。ロルフは、ぼくのお世話係でもあるので。
恐縮しつつもハンカチを受け取ったライアンは爽やかにお礼を述べてくる。そのライアンが落ち着くのを待って、ぼくはノエルの背中を押した。
「ライアン。紹介します。ノエルお兄さんです」
「ノエル・モルガンです」
やや引き攣った笑みを浮かべるノエルは、ライアン相手にどう接すればいいのか迷っているらしい。まぁ、伯爵家の息子であるノエルが、うちの騎士と仲良くする理由なんてないもんな。普通だったら、会話だってしないに違いない。
戸惑いを隠さないノエルは、それきり口を閉じてしまう。ライアンもライアンで困っているような雰囲気だ。しきりにロルフへと視線をやっている。
「ライアン! ノエルお兄さんと仲良くしてください」
「はい。もちろんですよ」
さすがライアン。爽やかに笑う彼は、余裕のあるお兄さんだ。リオラお兄様が惚れるだけのことはある。
「リオラお兄様は、ライアンのこと好き」
思い出したついでに、お兄様とライアンの関係もノエルに教えてあげる。目を瞬いたノエルは、「あ、えっと。はい。なんというか」と、挙動不審になる。
「アル様? そこまでにしておきましょうね」
やんわり止めに入るライアンは、苦笑していた。そのままノエルに「お気になさらず」と曖昧に微笑んでいる。「あ、はい」とぼんやり頷くノエルは、困惑しているらしい。
突然、オルコット公爵家の恋愛事情について聞かされて、面食らってしまったのだろう。慌てて「今のはみんなに内緒です」と口止めしておく。
こくんと頷くノエルは、やっぱり困った顔をしていた。
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