39 / 94
39 外面
しおりを挟む
「アル様、見てください。綺麗な石が落ちていますよ」
「それはぼくのきらきらです! 横取りしないでください」
さっとしゃがんで、きらきらの石を拾う。ノエルと一緒に庭に出てみたはいいが、何をして遊べばいいのかわからない。それはノエルの方も同じらしく、ロルフもまじえて三人で意味もなく庭を散歩する。
その道中、きらきらの石を見つけたノエルが得意そうに教えてきたのだ。ここはぼくが毎日遊ぶ庭なので。ここに落ちているきらきらの石は、全部ぼくのものだ。ノエルには渡さない。
素早くポケットに押し込めて、ノエルを見上げる。楽しそうに微笑むノエルは、ぼくにきらきらの石を奪われても怒らない。それどころか、微笑ましいものでも見るかのような視線を向けてくる。なんだその穏やかな雰囲気は。
ノエルは、ぼくのことをアル様と呼ぶ。先日はアルくん呼びだったのに。
もしかして、ノエルなりにこの間の閉じ込め事件はまずかったと反省したのだろうか? それで心を入れ替えたとか?
いいや、ありえない。そもそも反省するくらいなら、はじめからあんなことしなければよかったのだ。だが、本性を現す気配のないノエルに、ぼくは戸惑う。もしかしてロルフがいるから?
先日の事件は、ぼくが完全にひとりになった瞬間を狙っていた。ロルフがべったり張り付いているから、ノエルも外面を捨てるわけにはいかないのだろうか。
きらきらの石を、ポケットから取り出す。首を傾げるノエルに突きつけてみれば、彼は「綺麗ですね」とにこにこだ。
「ほしいですか?」
ちょっと尋ねてみれば、ノエルは「え」と意外そうな顔をする。
「僕はいいですよ。それはアル様が見つけたものですからね」
正確には、先に発見したのはノエルだ。なんだこの優しいお兄さん。おまえ、ノエルじゃないだろ。こわい。
そろそろとノエルから距離をとる。
警戒するぼくは、ロルフの服の裾をガッチリ掴んで身を守る。
そんなぼくの行動に、ノエルがぱちぱちと目を瞬いている。だが、ぼくの行動を人見知りだと捉えたのだろうか。「突然知らない人と遊べと言われても、困りますよね」と苦笑する。
まぁ、困っているのは事実だけど。
だがそれは人見知りというわけではない。頑なに本性を見せないノエルを警戒しているだけだ。
ノエルの口から、あの事件に対する謝罪の言葉は出てこない。謝ってくれれば、ぼくもちょっとは考える。今後は意地悪しないと約束してくれるのであれば、仲良くしてやらないこともない。
じっとノエルのことを見つめるが、彼がこの間の件に触れる様子は一切ない。どうやら本気でなかったことにしようとしているらしい。そうはさせるか。
「ノエルお兄さん! ぼくは騙されません!」
「え? 騙される? なんの話ですか」
「とぼけないでくださぁい!」
こうなったら意地でもノエルの本性を暴いてやる。そしてリオラお兄様に告げ口するのだ。
ぱっと身を翻したぼくは、庭の一角にある花壇へと走っていく。ロルフとノエルが慌てて追いかけてくるのを確認して、花壇のすみに隠していたお目当てのものを手に取った。
「ノエルお兄さんめ!」
「ちょ!」
事前にロルフと一緒に作っておいた、ぼくお手製泥団子を投げつけてやる。驚いたノエルが、大慌てで避けている。ロルフが「あー、ダメですよ。アル様」とやんわり止めに入るが、それくらいで止まるぼくではない。
べちゃっと、狙いが外れて地面に落下する泥団子。無残な姿になった泥の塊に、ぼくは拳を握りしめる。
「避けないでください!」
「なぜですか?」
「ぼくが不愉快になるので」
「はぁ、そうですか」
頷きつつも、ノエルは納得いかないような顔をしている。納得いかないのは、ぼくの方だ。なんだその呆れたような目は。
「それはぼくのきらきらです! 横取りしないでください」
さっとしゃがんで、きらきらの石を拾う。ノエルと一緒に庭に出てみたはいいが、何をして遊べばいいのかわからない。それはノエルの方も同じらしく、ロルフもまじえて三人で意味もなく庭を散歩する。
その道中、きらきらの石を見つけたノエルが得意そうに教えてきたのだ。ここはぼくが毎日遊ぶ庭なので。ここに落ちているきらきらの石は、全部ぼくのものだ。ノエルには渡さない。
素早くポケットに押し込めて、ノエルを見上げる。楽しそうに微笑むノエルは、ぼくにきらきらの石を奪われても怒らない。それどころか、微笑ましいものでも見るかのような視線を向けてくる。なんだその穏やかな雰囲気は。
ノエルは、ぼくのことをアル様と呼ぶ。先日はアルくん呼びだったのに。
もしかして、ノエルなりにこの間の閉じ込め事件はまずかったと反省したのだろうか? それで心を入れ替えたとか?
いいや、ありえない。そもそも反省するくらいなら、はじめからあんなことしなければよかったのだ。だが、本性を現す気配のないノエルに、ぼくは戸惑う。もしかしてロルフがいるから?
先日の事件は、ぼくが完全にひとりになった瞬間を狙っていた。ロルフがべったり張り付いているから、ノエルも外面を捨てるわけにはいかないのだろうか。
きらきらの石を、ポケットから取り出す。首を傾げるノエルに突きつけてみれば、彼は「綺麗ですね」とにこにこだ。
「ほしいですか?」
ちょっと尋ねてみれば、ノエルは「え」と意外そうな顔をする。
「僕はいいですよ。それはアル様が見つけたものですからね」
正確には、先に発見したのはノエルだ。なんだこの優しいお兄さん。おまえ、ノエルじゃないだろ。こわい。
そろそろとノエルから距離をとる。
警戒するぼくは、ロルフの服の裾をガッチリ掴んで身を守る。
そんなぼくの行動に、ノエルがぱちぱちと目を瞬いている。だが、ぼくの行動を人見知りだと捉えたのだろうか。「突然知らない人と遊べと言われても、困りますよね」と苦笑する。
まぁ、困っているのは事実だけど。
だがそれは人見知りというわけではない。頑なに本性を見せないノエルを警戒しているだけだ。
ノエルの口から、あの事件に対する謝罪の言葉は出てこない。謝ってくれれば、ぼくもちょっとは考える。今後は意地悪しないと約束してくれるのであれば、仲良くしてやらないこともない。
じっとノエルのことを見つめるが、彼がこの間の件に触れる様子は一切ない。どうやら本気でなかったことにしようとしているらしい。そうはさせるか。
「ノエルお兄さん! ぼくは騙されません!」
「え? 騙される? なんの話ですか」
「とぼけないでくださぁい!」
こうなったら意地でもノエルの本性を暴いてやる。そしてリオラお兄様に告げ口するのだ。
ぱっと身を翻したぼくは、庭の一角にある花壇へと走っていく。ロルフとノエルが慌てて追いかけてくるのを確認して、花壇のすみに隠していたお目当てのものを手に取った。
「ノエルお兄さんめ!」
「ちょ!」
事前にロルフと一緒に作っておいた、ぼくお手製泥団子を投げつけてやる。驚いたノエルが、大慌てで避けている。ロルフが「あー、ダメですよ。アル様」とやんわり止めに入るが、それくらいで止まるぼくではない。
べちゃっと、狙いが外れて地面に落下する泥団子。無残な姿になった泥の塊に、ぼくは拳を握りしめる。
「避けないでください!」
「なぜですか?」
「ぼくが不愉快になるので」
「はぁ、そうですか」
頷きつつも、ノエルは納得いかないような顔をしている。納得いかないのは、ぼくの方だ。なんだその呆れたような目は。
1,120
お気に入りに追加
2,323
あなたにおすすめの小説
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
兄たちが溺愛するのは当たり前だと思ってました
不知火
BL
温かい家族に包まれた1人の男の子のお話
爵位などを使った設定がありますが、わたしの知識不足で実際とは異なった表現を使用している場合がございます。ご了承ください。追々、しっかり事実に沿った設定に変更していきたいと思います。
【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした
エウラ
BL
どうしてこうなったのか。
僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。
なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい?
孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。
僕、頑張って大きくなって恩返しするからね!
天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。
突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。
不定期投稿です。
本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。
BL漫画の世界に転生しちゃったらお邪魔虫役でした
かゆ
BL
授業中ぼーっとしていた時に、急に今いる世界が前世で弟がハマっていたBL漫画の世界であることに気付いてしまった!
BLなんて嫌だぁぁ!
...まぁでも、必要以上に主人公達と関わらなければ大丈夫かな
「ボソッ...こいつは要らないのに....」
えぇ?! 主人公くん、なんでそんなに俺を嫌うの?!
-----------------
*R18っぽいR18要素は多分ないです!
忙しくて更新がなかなかできませんが、構想はあるので完結させたいと思っております。
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
悪役側のモブになっても推しを拝みたい。【完結】
瑳来
BL
大学生でホストでオタクの如月杏樹はホストの仕事をした帰り道、自分のお客に刺されてしまう。
そして、気がついたら自分の夢中になっていたBLゲームのモブキャラになっていた!
……ま、推しを拝めるからいっか! てな感じで、ほのぼのと生きていこうと心に決めたのであった。
ウィル様のおまけにて完結致しました。
長い間お付き合い頂きありがとうございました!
転生令息の、のんびりまったりな日々
かもめ みい
BL
3歳の時に前世の記憶を思い出した僕の、まったりした日々のお話。
※ふんわり、緩やか設定な世界観です。男性が女性より多い世界となっております。なので同性愛は普通の世界です。不思議パワーで男性妊娠もあります。R15は保険です。
痛いのや暗いのはなるべく避けています。全体的にR15展開がある事すらお約束できません。男性妊娠のある世界観の為、ボーイズラブ作品とさせて頂いております。こちらはムーンライトノベル様にも投稿しておりますが、一部加筆修正しております。更新速度はまったりです。
※無断転載はおやめください。Repost is prohibited.
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる