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「アル様、見てください。綺麗な石が落ちていますよ」
「それはぼくのきらきらです! 横取りしないでください」
さっとしゃがんで、きらきらの石を拾う。ノエルと一緒に庭に出てみたはいいが、何をして遊べばいいのかわからない。それはノエルの方も同じらしく、ロルフもまじえて三人で意味もなく庭を散歩する。
その道中、きらきらの石を見つけたノエルが得意そうに教えてきたのだ。ここはぼくが毎日遊ぶ庭なので。ここに落ちているきらきらの石は、全部ぼくのものだ。ノエルには渡さない。
素早くポケットに押し込めて、ノエルを見上げる。楽しそうに微笑むノエルは、ぼくにきらきらの石を奪われても怒らない。それどころか、微笑ましいものでも見るかのような視線を向けてくる。なんだその穏やかな雰囲気は。
ノエルは、ぼくのことをアル様と呼ぶ。先日はアルくん呼びだったのに。
もしかして、ノエルなりにこの間の閉じ込め事件はまずかったと反省したのだろうか? それで心を入れ替えたとか?
いいや、ありえない。そもそも反省するくらいなら、はじめからあんなことしなければよかったのだ。だが、本性を現す気配のないノエルに、ぼくは戸惑う。もしかしてロルフがいるから?
先日の事件は、ぼくが完全にひとりになった瞬間を狙っていた。ロルフがべったり張り付いているから、ノエルも外面を捨てるわけにはいかないのだろうか。
きらきらの石を、ポケットから取り出す。首を傾げるノエルに突きつけてみれば、彼は「綺麗ですね」とにこにこだ。
「ほしいですか?」
ちょっと尋ねてみれば、ノエルは「え」と意外そうな顔をする。
「僕はいいですよ。それはアル様が見つけたものですからね」
正確には、先に発見したのはノエルだ。なんだこの優しいお兄さん。おまえ、ノエルじゃないだろ。こわい。
そろそろとノエルから距離をとる。
警戒するぼくは、ロルフの服の裾をガッチリ掴んで身を守る。
そんなぼくの行動に、ノエルがぱちぱちと目を瞬いている。だが、ぼくの行動を人見知りだと捉えたのだろうか。「突然知らない人と遊べと言われても、困りますよね」と苦笑する。
まぁ、困っているのは事実だけど。
だがそれは人見知りというわけではない。頑なに本性を見せないノエルを警戒しているだけだ。
ノエルの口から、あの事件に対する謝罪の言葉は出てこない。謝ってくれれば、ぼくもちょっとは考える。今後は意地悪しないと約束してくれるのであれば、仲良くしてやらないこともない。
じっとノエルのことを見つめるが、彼がこの間の件に触れる様子は一切ない。どうやら本気でなかったことにしようとしているらしい。そうはさせるか。
「ノエルお兄さん! ぼくは騙されません!」
「え? 騙される? なんの話ですか」
「とぼけないでくださぁい!」
こうなったら意地でもノエルの本性を暴いてやる。そしてリオラお兄様に告げ口するのだ。
ぱっと身を翻したぼくは、庭の一角にある花壇へと走っていく。ロルフとノエルが慌てて追いかけてくるのを確認して、花壇のすみに隠していたお目当てのものを手に取った。
「ノエルお兄さんめ!」
「ちょ!」
事前にロルフと一緒に作っておいた、ぼくお手製泥団子を投げつけてやる。驚いたノエルが、大慌てで避けている。ロルフが「あー、ダメですよ。アル様」とやんわり止めに入るが、それくらいで止まるぼくではない。
べちゃっと、狙いが外れて地面に落下する泥団子。無残な姿になった泥の塊に、ぼくは拳を握りしめる。
「避けないでください!」
「なぜですか?」
「ぼくが不愉快になるので」
「はぁ、そうですか」
頷きつつも、ノエルは納得いかないような顔をしている。納得いかないのは、ぼくの方だ。なんだその呆れたような目は。
「それはぼくのきらきらです! 横取りしないでください」
さっとしゃがんで、きらきらの石を拾う。ノエルと一緒に庭に出てみたはいいが、何をして遊べばいいのかわからない。それはノエルの方も同じらしく、ロルフもまじえて三人で意味もなく庭を散歩する。
その道中、きらきらの石を見つけたノエルが得意そうに教えてきたのだ。ここはぼくが毎日遊ぶ庭なので。ここに落ちているきらきらの石は、全部ぼくのものだ。ノエルには渡さない。
素早くポケットに押し込めて、ノエルを見上げる。楽しそうに微笑むノエルは、ぼくにきらきらの石を奪われても怒らない。それどころか、微笑ましいものでも見るかのような視線を向けてくる。なんだその穏やかな雰囲気は。
ノエルは、ぼくのことをアル様と呼ぶ。先日はアルくん呼びだったのに。
もしかして、ノエルなりにこの間の閉じ込め事件はまずかったと反省したのだろうか? それで心を入れ替えたとか?
いいや、ありえない。そもそも反省するくらいなら、はじめからあんなことしなければよかったのだ。だが、本性を現す気配のないノエルに、ぼくは戸惑う。もしかしてロルフがいるから?
先日の事件は、ぼくが完全にひとりになった瞬間を狙っていた。ロルフがべったり張り付いているから、ノエルも外面を捨てるわけにはいかないのだろうか。
きらきらの石を、ポケットから取り出す。首を傾げるノエルに突きつけてみれば、彼は「綺麗ですね」とにこにこだ。
「ほしいですか?」
ちょっと尋ねてみれば、ノエルは「え」と意外そうな顔をする。
「僕はいいですよ。それはアル様が見つけたものですからね」
正確には、先に発見したのはノエルだ。なんだこの優しいお兄さん。おまえ、ノエルじゃないだろ。こわい。
そろそろとノエルから距離をとる。
警戒するぼくは、ロルフの服の裾をガッチリ掴んで身を守る。
そんなぼくの行動に、ノエルがぱちぱちと目を瞬いている。だが、ぼくの行動を人見知りだと捉えたのだろうか。「突然知らない人と遊べと言われても、困りますよね」と苦笑する。
まぁ、困っているのは事実だけど。
だがそれは人見知りというわけではない。頑なに本性を見せないノエルを警戒しているだけだ。
ノエルの口から、あの事件に対する謝罪の言葉は出てこない。謝ってくれれば、ぼくもちょっとは考える。今後は意地悪しないと約束してくれるのであれば、仲良くしてやらないこともない。
じっとノエルのことを見つめるが、彼がこの間の件に触れる様子は一切ない。どうやら本気でなかったことにしようとしているらしい。そうはさせるか。
「ノエルお兄さん! ぼくは騙されません!」
「え? 騙される? なんの話ですか」
「とぼけないでくださぁい!」
こうなったら意地でもノエルの本性を暴いてやる。そしてリオラお兄様に告げ口するのだ。
ぱっと身を翻したぼくは、庭の一角にある花壇へと走っていく。ロルフとノエルが慌てて追いかけてくるのを確認して、花壇のすみに隠していたお目当てのものを手に取った。
「ノエルお兄さんめ!」
「ちょ!」
事前にロルフと一緒に作っておいた、ぼくお手製泥団子を投げつけてやる。驚いたノエルが、大慌てで避けている。ロルフが「あー、ダメですよ。アル様」とやんわり止めに入るが、それくらいで止まるぼくではない。
べちゃっと、狙いが外れて地面に落下する泥団子。無残な姿になった泥の塊に、ぼくは拳を握りしめる。
「避けないでください!」
「なぜですか?」
「ぼくが不愉快になるので」
「はぁ、そうですか」
頷きつつも、ノエルは納得いかないような顔をしている。納得いかないのは、ぼくの方だ。なんだその呆れたような目は。
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