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29 お礼
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自室の戸棚に隠してあったきらきらの石を全部引っ張り出す。あちこちに隠しているのだが、ぼくはお利口さんなので。ひとつ残らず隠し場所はきっちり覚えているのだ。
そうして持ってきた石をテーブルの上に全部並べて、真剣に見つめる。
「あの、アル様。石がどうかしましたか?」
「どれが一番大きいのか考えてる」
「大きいの?」
なんでまたそんなことを、と。首を捻るロルフに昨日のことを説明してあげる。
意地悪ノエルお兄さんによって閉じ込められたぼく。しかし、それをライアンが颯爽と救ってくれた。そのお礼に、ライアンに一番大きなきらきらの石をあげると約束したのだ。
「ライアン。きっと石をすごく楽しみにしていると思うから。はやく持って行ってあげようと思う」
「副団長って石が好きなんですか?」
「うん。きらきらだから好きだよ、きっと」
「へー。意外ですね」
大きいと思われる石ふたつを手に取って、見比べる。どちらが大きいのか。微妙なところだ。
「ロルフ。これどっちが大きいと思う?」
「えぇ? どっちでも良いと思います」
「もう! 真剣に考えて」
ほら! と両手にそれぞれ握った石をロルフの前に差し出す。腕を組んで、真剣に石を凝視するロルフは「右、いや左か?」とすごくお悩みだ。
ぼくも一緒に考えてみるが、それぞれ形が違うので、ぱっと見では判断できない。持った感覚で判断しようと試みるが、これも難しい。
「どっちが重いかわかんないから。きらきらしている方をあげよう」
「そうですね」
光を浴びてきらきら輝く石は、ガラスのような繊細さだ。庭を散歩していると、たまに発見できる。綺麗なので、見つけるたびに持ち帰ってコレクションしているのだ。
ぼくが片手で持てるくらいの大きさの石を選んで、取り分ける。これが一番きらきらに見えるので、ライアンへのお礼はこの石にしよう。このまま渡すのも味気ないので、きれいにラッピングしよう。
「ロルフ! リボンください」
「リボンですか」
少々お待ちくださいと立ち上がるロルフは、部屋から出て行く。ぼくの部屋にリボンはないから、どこかへ取りに行くのだろう。しかし、廊下に出たはずのロルフは、なぜか秒で戻ってきた。
「……えっと。アル様をひとりにするわけには」
頬を掻きながら、困ったように告げられた言葉に、ぼくはきょとんとする。
そういえば、ぼくがノエルによって閉じ込められた事件の際、ロルフはぼくから目を離したことをライアンに怒られていた。だから気にしているらしいと理解したが、さすが屋敷内は大丈夫だと思う。それに、今はトラブルメーカーであるノエルもいない。
「ぼくはここで待っているので、大丈夫です」
「本当ですか?」
「はい! 任せてくださぁい!」
全力で大丈夫アピールをすれば、ロルフは「すぐに戻ってきますから!」と大慌てで廊下へと飛び出していく。廊下を走るの、あんまり良くないと思うけどな。
宣言通り、すぐに戻ってきたロルフは肩で息をしていた。そんなに頑張らなくても。なんだか気軽にリボンほしいとわがまま言って、申し訳ないな。
「ロルフ。ごくろう」
「これくらいお安いご用ですよ!」
どや顔でリボンを差し出すロルフから受け取って、早速きらきらの石に巻きつける。それっぽく結んで、なんとなくプレゼントっぽくなった。ちょっと、いびつだけど。
「よし! 完璧」
「さすがアル様ですね」
ばーんと石を頭上に掲げてお披露目すれば、ロルフがぱちぱちと拍手してくれた。
あとはこれをライアンに渡すだけである。
「ライアン。喜んでくれるかな」
「絶対に喜んでくれますよ」
そうだといいな。
そうしてロルフとにこにこしていたぼくであるが、唐突にリッキーのことを思い出して動きを止める。
そういえば、昨日のぼく救出現場にはリッキーも居たな。なのにライアンにだけお礼を渡すのはちょっとおかしいかもしれない。リッキーが落ち込んでしまう。慌てて、石コレクションの中から、同じくらいの大きさの石を探し出す。
不思議そうな顔をするロルフに「リッキーにもあげます」と伝えれば、ロルフは「アル様はお優しいですね」と、ぼくを褒めてくる。
いそいそとリッキーの分も用意して、今度こそ準備バッチリである。
「ライアンとリッキー。お揃いになってしまう」
そっくりなふたつの石を見比べる。しかし、ふたりは秘密の恋人同士。お揃いでも別にいいかも。でも、リオラお兄様に知られたら、お兄様が破滅行動する可能性もなくはない。
「……リオラお兄様には内緒にしてね」
「ん? わかりました」
いまいち理解していない顔で頷くロルフに、ぼくはちょっぴり不安になる。
「あのね、ロルフ。ライアンとリッキーがお付き合いしていること。リオラお兄様には絶対に秘密だよ」
「……お付き合い?」
「そう。ふたりは内緒の恋人なの」
「そうですかね?」
首を捻るロルフは、一緒に居るライアンとリッキーを見ても、なんとも思わないらしい。すごく仲良しだと思わないのか? あれは絶対、お付き合いしているに違いない。
そうして持ってきた石をテーブルの上に全部並べて、真剣に見つめる。
「あの、アル様。石がどうかしましたか?」
「どれが一番大きいのか考えてる」
「大きいの?」
なんでまたそんなことを、と。首を捻るロルフに昨日のことを説明してあげる。
意地悪ノエルお兄さんによって閉じ込められたぼく。しかし、それをライアンが颯爽と救ってくれた。そのお礼に、ライアンに一番大きなきらきらの石をあげると約束したのだ。
「ライアン。きっと石をすごく楽しみにしていると思うから。はやく持って行ってあげようと思う」
「副団長って石が好きなんですか?」
「うん。きらきらだから好きだよ、きっと」
「へー。意外ですね」
大きいと思われる石ふたつを手に取って、見比べる。どちらが大きいのか。微妙なところだ。
「ロルフ。これどっちが大きいと思う?」
「えぇ? どっちでも良いと思います」
「もう! 真剣に考えて」
ほら! と両手にそれぞれ握った石をロルフの前に差し出す。腕を組んで、真剣に石を凝視するロルフは「右、いや左か?」とすごくお悩みだ。
ぼくも一緒に考えてみるが、それぞれ形が違うので、ぱっと見では判断できない。持った感覚で判断しようと試みるが、これも難しい。
「どっちが重いかわかんないから。きらきらしている方をあげよう」
「そうですね」
光を浴びてきらきら輝く石は、ガラスのような繊細さだ。庭を散歩していると、たまに発見できる。綺麗なので、見つけるたびに持ち帰ってコレクションしているのだ。
ぼくが片手で持てるくらいの大きさの石を選んで、取り分ける。これが一番きらきらに見えるので、ライアンへのお礼はこの石にしよう。このまま渡すのも味気ないので、きれいにラッピングしよう。
「ロルフ! リボンください」
「リボンですか」
少々お待ちくださいと立ち上がるロルフは、部屋から出て行く。ぼくの部屋にリボンはないから、どこかへ取りに行くのだろう。しかし、廊下に出たはずのロルフは、なぜか秒で戻ってきた。
「……えっと。アル様をひとりにするわけには」
頬を掻きながら、困ったように告げられた言葉に、ぼくはきょとんとする。
そういえば、ぼくがノエルによって閉じ込められた事件の際、ロルフはぼくから目を離したことをライアンに怒られていた。だから気にしているらしいと理解したが、さすが屋敷内は大丈夫だと思う。それに、今はトラブルメーカーであるノエルもいない。
「ぼくはここで待っているので、大丈夫です」
「本当ですか?」
「はい! 任せてくださぁい!」
全力で大丈夫アピールをすれば、ロルフは「すぐに戻ってきますから!」と大慌てで廊下へと飛び出していく。廊下を走るの、あんまり良くないと思うけどな。
宣言通り、すぐに戻ってきたロルフは肩で息をしていた。そんなに頑張らなくても。なんだか気軽にリボンほしいとわがまま言って、申し訳ないな。
「ロルフ。ごくろう」
「これくらいお安いご用ですよ!」
どや顔でリボンを差し出すロルフから受け取って、早速きらきらの石に巻きつける。それっぽく結んで、なんとなくプレゼントっぽくなった。ちょっと、いびつだけど。
「よし! 完璧」
「さすがアル様ですね」
ばーんと石を頭上に掲げてお披露目すれば、ロルフがぱちぱちと拍手してくれた。
あとはこれをライアンに渡すだけである。
「ライアン。喜んでくれるかな」
「絶対に喜んでくれますよ」
そうだといいな。
そうしてロルフとにこにこしていたぼくであるが、唐突にリッキーのことを思い出して動きを止める。
そういえば、昨日のぼく救出現場にはリッキーも居たな。なのにライアンにだけお礼を渡すのはちょっとおかしいかもしれない。リッキーが落ち込んでしまう。慌てて、石コレクションの中から、同じくらいの大きさの石を探し出す。
不思議そうな顔をするロルフに「リッキーにもあげます」と伝えれば、ロルフは「アル様はお優しいですね」と、ぼくを褒めてくる。
いそいそとリッキーの分も用意して、今度こそ準備バッチリである。
「ライアンとリッキー。お揃いになってしまう」
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「……リオラお兄様には内緒にしてね」
「ん? わかりました」
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「あのね、ロルフ。ライアンとリッキーがお付き合いしていること。リオラお兄様には絶対に秘密だよ」
「……お付き合い?」
「そう。ふたりは内緒の恋人なの」
「そうですかね?」
首を捻るロルフは、一緒に居るライアンとリッキーを見ても、なんとも思わないらしい。すごく仲良しだと思わないのか? あれは絶対、お付き合いしているに違いない。
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