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16 察した

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「お兄様の恋人をはやく見つけてあげないと。お兄様が破滅しちゃう」
「リオラ様が破滅……?」

 ごくりと息を呑んだロルフは、ようやく事の重大さを理解してくれたらしい。恋人できないリオラお兄様が、将来的に暴走して破滅すると教えてあげる。

 ぼくの話をふむふむ頷きながら聞いていたロルフは、「わかりました」と顔を上げる。

「じゃあ今日もやりますか。リオラ様の恋人探しごっこ」
「遊びじゃないの! 何回言ったらわかるの!」
「はいはい。お兄様に素敵な恋人が見つかるといいですね」
「もうっ! ロルフめ!」

 訂正しよう。こいつは何にも理解していない。

 遊びだと決めつけてくる失礼従者に文句を言おうとして、思い出した。そういえば、ロルフはリオラお兄様のことが好きだった。でもあっさりと振られてしまった。付き合わないよ、とリオラお兄様に言われた時のロルフは、目が死んでいた。

 もしかして、自分の失恋を認めたくはないのか?

 そうだとしたら辻褄があう。要するに、ロルフはいまだにお兄様に対して未練たらたらで、それにも関わらず主人であるぼくが、お兄様の新しい恋人探しを嬉々として行なっていることが不満なのだ。

 ロルフとしては、ぼくの一連の行為をごっこ遊びと位置付けることで、必死に平静を保っているのだろう。なんてこった。

 そりゃ、自分がリオラお兄様に振られたのに、主人であるぼくが必死にリオラお兄様の新しい恋人探しをしたら、ロルフとしては複雑な感情になるだろう。ぼくとしたことが。

 破滅回避に躍起になるあまり、従者であるロルフの気持ちをこれっぽっちも考えていなかった。

 これではロルフが怒って当たり前である。けれども、彼は優秀なので。ぼくに直接文句を言わずに、ごっこ遊びとみなすことで、遠回しにぼくに抗議していたに違いない。なんてこった。気が付くのがすんごく遅くなってしまった。

 ロルフを見上げると、彼は不満たらたら顔であった。

 ぼくの鈍さに激おこなのかもしれない。

「ロルフ」

 そっと名前を呼べば、ロルフはぼくと目線を合わせるべく膝を折ってくれる。

「はい、なんですか。アル様」
「ロルフのことも応援してるんだけど」
「応援? ありがとうございます」

 小首を傾げながらお礼を述べてくるロルフ。

 ふむ。どうするべきか。ぼくとしては、ロルフのことも応援したい。けれども一度きっぱりと振られているロルフに、チャンスはないと思われる。だが、それを正直に伝えることも憚られる。

「でもその。ロルフだけの応援はできないから」
「はぁ」

 気の抜けた返事をしてくるロルフは、話をいまいち理解していない気がする。

「お兄様は、ロルフとはお付き合いできないって」
「……」

 変な顔して黙り込んだロルフ。改めて残酷な事実を告げられて、びっくりしているようだ。

「だからえっと。ロルフの新しい恋人さんも別で探してあげるから。それでいい?」
「よくないです」

 きっぱり断言したロルフは、ちょっと不機嫌になってしまった。やはり無神経だったかな。でもリオラお兄様の破滅回避のためには、お兄様に幸せになってもらわないといけない。一度振られたロルフをもう一度お兄様に紹介しても、お兄様がストレスでどうにかなっちゃうかもしれない。

 ぼくとしては、嫌がるお兄様とロルフを無理矢理くっつけるわけにもいかないのだ。

「恋人ってあれだから。ロルフだけががんばってもどうにもならないんだよ。だから諦めて」
「前提からして間違っているのですが」

 やれやれと肩をすくめるロルフは、なんだか呆れ顔であった。けれども、話を聞く限り、お兄様の新しい恋人探しを手伝ってくれるというので、ある程度は吹っ切れたのだろうか。

 お兄様の恋人探しの合間に、ロルフの恋人さんも探してあげようと思う。
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