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1 前世をちょっと思い出した
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前世を思い出す瞬間というのは、実に唐突だ。
ぼくの場合、それはお兄様との食事中だった。夕飯の時間である。嫌いな野菜を上手に避けて大好きなお肉だけをもぐもぐしていた時である。
ぼくは突然思い出してしまった。まさに雷に打たれたような衝撃だった。
びっくりするあまり手にしていたフォークを取り落としてしまった。ガチャンと盛大な音がして、向かいに座るお兄様が眉を寄せた。
「アル? どうかしたのかい?」
フォーク落ちたよ、と優しく指摘してくれるお兄様の顔をまじまじと見つめる。イケメンだなと前々から思ってはいたのだが、単なるイケメンではない。ブロンドの柔らかそうな髪に、優しい色を帯びた碧眼。間違いない。二次元キャラみたいな顔しとる。本の表紙でキメ顔してそう。
頭の中に勢いよく流れてくる情報に、あわあわと混乱する。このイケメンさんは見たことがあるぞ。
ぼくが前世で愛読していたBL小説に出てくるキャラクターだ。見れば見るほどそっくりだ。これって一体どういうことなのか。あれか。転生ってやつだ。だがBL小説世界に転生なんて簡単には信じられない。なんか記憶が混乱しているだけかもしれない。
固まるぼくを心配そうに見守るお兄様。その顔が、ますます記憶の中のキャラクターと重なってしまう。意を決して、ぼくは拳を握りしめた。
「もしかして、お兄様ってリオラ・オルコットですか?」
「アル」
なぜか唖然としたお兄様は、すぐに柔らかく微笑んだ。だがその瞳に困惑の色が浮かんでいることをぼくは見逃さない。
「もしかして私の名前を今覚えたのかい? いつもお兄様としか呼ばないからね。成長したね」
なんかとんでもない馬鹿だと思われている気がする。ぼくが五歳だからって馬鹿にするんじゃない。あとぼくの質問にちゃんとお答えしろ。
「お兄様は、リオラ・オルコットですか?」
「そうだよ。リオラお兄様って呼んでね」
「リオラ」
「急に呼び捨て」
なんてこった。やっぱりあのBL小説のキャラクターと同じ名前だ。「名前覚えてくれたのは嬉しいけど、できればお兄様はつけて欲しいかな」と頬を掻くお兄様は、あのリオラ・オルコットだった。
※※※
リオラ・オルコット、十六歳。公爵家の長男。
ぼくが前世で愛読していたBL小説に登場する悪役令息である。そう、悪役。
こんなのほほんとしていて弱そうなお兄様が悪役だなんて信じられない。リオラは線の細いイケメンだ。病弱設定が付いていてもおかしくはないくらいの弱そうなイケメンだ(なお原作にはリオラが病弱という設定はなかった。こんなに細いのになぜ)。
物語の主人公(もちろん男)に恋をしたリオラお兄様は、彼に振り向いてもらおうとがんばる。それはもうすごくがんばる。しかし上手くいかない。そういう小説だから。
原作で主人公は幼馴染(こちらももちろん男)とくっつく。そういう小説だから。
だがそれに納得いかないリオラお兄様は、この幼馴染にひどい嫌がらせをしてしまう。その結果、リオラお兄様は主人公に嫌われてしまうのだ。可哀想なお兄様。
それだけならまだ良いのだが、これはBL小説である。よくわからんが、なんかこう主人公のイチャイチャを邪魔する奴は徹底的に排除したい感の強い小説だった。流行りのざまぁってやつ?
そんなこんなで物語の都合上、リオラお兄様は破滅する。なにがどうしてそうなったのかは不明だが、最終的にはなんか没落した気がする。ちくしょう、ぼくの記憶力! しっかりしろ!
しかしぼんやりとではあるが、ここがBL小説の世界だと判明したことは大きい。ぼくの今後の人生の役に立つ。ものすごく。
「お兄様! いま好きな子いますか?」
「突然だね」
今が一体どのあたりなのか、把握せねばならない。リオラお兄様はすでに主人公と出会っている。そうであれば、今が主人公の幼馴染に嫌がらせをする前なのか否か。それが重要だ。
もし仮に嫌がらせ前であれば、ぼくは全力でリオラお兄様による嫌がらせを阻止すればいい。そうすればお兄様が主人公に嫌われるという最悪の事態は防げるはず。きっと、たぶん、そうだと信じたい。
「あとお兄様は何歳ですかぁ!」
「私は十六だよ。今日のアルはお喋りだね。楽しいことでもあったのかい?」
十六歳。なんと。原作に突入しておる。てことはまさか嫌がらせ済みではあるまいな。そこからの逆転劇は難しそうだ。どうか嫌がらせ前であってください。ぱっと左手を開いて、五本指をお兄様の方へと突きつける。
「ぼくは五歳です」
「うん。知ってるよ」
「それで? お兄様いま好きな子いますか」
主人公! 主人公! 絶対主人公のこと好きでしょ、お兄様!
わくわくと答えを待っていたが、リオラお兄様は困ったように眉尻を下げて「特にいないよ」と言い放つ。
「嘘です! お兄様はライアンのことが好きなんでしょ!」
「おや。どうしてそう思うんだい? なにかあった?」
記憶を探るように視線を右上にやったお兄様。しまった。前世の記憶を思い出したことは内緒にしないと。ましてやここがBL小説の世界だなんて。
「んっと。ライアンはお兄様の子分」
「子分って、言い方。ライアンはうちの騎士団の副団長だよ」
にこっと微笑んだリオラお兄様。なんか知らんが誤魔化せた気がする。ぼくもにっこにっこと笑っておく。
そうなのだ。
このBL小説の主人公はライアン・サンフォード。二十歳。オルコット公爵家が個人的に所有する私営騎士団の副団長である。騎士団とはいってもごく小さいものだ。公爵家の屋敷の警備が主な仕事である。
ライアンとリオラお兄様の付き合いは長い。騎士団の精鋭としてうちに仕えてきたライアンに、実は昔からこっそりと好意を寄せていたリオラお兄様。歳上のかっこいいお兄さんを目で追ってしまう気持ちはわかるぞ。
どうにかライアンに振り向いてもらおうと奮闘するリオラお兄様であったのだが、ライアンは最終的には同じくうちの騎士団所属の幼馴染くんとくっついてしまう。そしてプライドをズタズタにされたお兄様は、公爵家とそれに仕える騎士という立場を利用して、ライアンの幼馴染騎士くんに嫌がらせしまくるのだ。
結果、方々に嫌われたリオラお兄様は破滅する。
「お兄様! 好きな子いるならちゃんと好きって言わないと! 言葉にしないと伝わらないです」
「そうだね、アル。言葉は大事だね」
「はい!」
よしよし。この調子で、お兄様が嫌がらせなんていう姑息な手段に走らないよう、ぼくがしっかり監督しておかないと。
「お兄様! 好きな子できたらぼくに教えてくださぁい」
「それはいいけど。急にどうして?」
「ぼくがアドバイスします」
「それは。心強いね」
なんだか苦笑したリオラお兄様は、ぼくの言葉を軽く流してしまった。
ぼくの場合、それはお兄様との食事中だった。夕飯の時間である。嫌いな野菜を上手に避けて大好きなお肉だけをもぐもぐしていた時である。
ぼくは突然思い出してしまった。まさに雷に打たれたような衝撃だった。
びっくりするあまり手にしていたフォークを取り落としてしまった。ガチャンと盛大な音がして、向かいに座るお兄様が眉を寄せた。
「アル? どうかしたのかい?」
フォーク落ちたよ、と優しく指摘してくれるお兄様の顔をまじまじと見つめる。イケメンだなと前々から思ってはいたのだが、単なるイケメンではない。ブロンドの柔らかそうな髪に、優しい色を帯びた碧眼。間違いない。二次元キャラみたいな顔しとる。本の表紙でキメ顔してそう。
頭の中に勢いよく流れてくる情報に、あわあわと混乱する。このイケメンさんは見たことがあるぞ。
ぼくが前世で愛読していたBL小説に出てくるキャラクターだ。見れば見るほどそっくりだ。これって一体どういうことなのか。あれか。転生ってやつだ。だがBL小説世界に転生なんて簡単には信じられない。なんか記憶が混乱しているだけかもしれない。
固まるぼくを心配そうに見守るお兄様。その顔が、ますます記憶の中のキャラクターと重なってしまう。意を決して、ぼくは拳を握りしめた。
「もしかして、お兄様ってリオラ・オルコットですか?」
「アル」
なぜか唖然としたお兄様は、すぐに柔らかく微笑んだ。だがその瞳に困惑の色が浮かんでいることをぼくは見逃さない。
「もしかして私の名前を今覚えたのかい? いつもお兄様としか呼ばないからね。成長したね」
なんかとんでもない馬鹿だと思われている気がする。ぼくが五歳だからって馬鹿にするんじゃない。あとぼくの質問にちゃんとお答えしろ。
「お兄様は、リオラ・オルコットですか?」
「そうだよ。リオラお兄様って呼んでね」
「リオラ」
「急に呼び捨て」
なんてこった。やっぱりあのBL小説のキャラクターと同じ名前だ。「名前覚えてくれたのは嬉しいけど、できればお兄様はつけて欲しいかな」と頬を掻くお兄様は、あのリオラ・オルコットだった。
※※※
リオラ・オルコット、十六歳。公爵家の長男。
ぼくが前世で愛読していたBL小説に登場する悪役令息である。そう、悪役。
こんなのほほんとしていて弱そうなお兄様が悪役だなんて信じられない。リオラは線の細いイケメンだ。病弱設定が付いていてもおかしくはないくらいの弱そうなイケメンだ(なお原作にはリオラが病弱という設定はなかった。こんなに細いのになぜ)。
物語の主人公(もちろん男)に恋をしたリオラお兄様は、彼に振り向いてもらおうとがんばる。それはもうすごくがんばる。しかし上手くいかない。そういう小説だから。
原作で主人公は幼馴染(こちらももちろん男)とくっつく。そういう小説だから。
だがそれに納得いかないリオラお兄様は、この幼馴染にひどい嫌がらせをしてしまう。その結果、リオラお兄様は主人公に嫌われてしまうのだ。可哀想なお兄様。
それだけならまだ良いのだが、これはBL小説である。よくわからんが、なんかこう主人公のイチャイチャを邪魔する奴は徹底的に排除したい感の強い小説だった。流行りのざまぁってやつ?
そんなこんなで物語の都合上、リオラお兄様は破滅する。なにがどうしてそうなったのかは不明だが、最終的にはなんか没落した気がする。ちくしょう、ぼくの記憶力! しっかりしろ!
しかしぼんやりとではあるが、ここがBL小説の世界だと判明したことは大きい。ぼくの今後の人生の役に立つ。ものすごく。
「お兄様! いま好きな子いますか?」
「突然だね」
今が一体どのあたりなのか、把握せねばならない。リオラお兄様はすでに主人公と出会っている。そうであれば、今が主人公の幼馴染に嫌がらせをする前なのか否か。それが重要だ。
もし仮に嫌がらせ前であれば、ぼくは全力でリオラお兄様による嫌がらせを阻止すればいい。そうすればお兄様が主人公に嫌われるという最悪の事態は防げるはず。きっと、たぶん、そうだと信じたい。
「あとお兄様は何歳ですかぁ!」
「私は十六だよ。今日のアルはお喋りだね。楽しいことでもあったのかい?」
十六歳。なんと。原作に突入しておる。てことはまさか嫌がらせ済みではあるまいな。そこからの逆転劇は難しそうだ。どうか嫌がらせ前であってください。ぱっと左手を開いて、五本指をお兄様の方へと突きつける。
「ぼくは五歳です」
「うん。知ってるよ」
「それで? お兄様いま好きな子いますか」
主人公! 主人公! 絶対主人公のこと好きでしょ、お兄様!
わくわくと答えを待っていたが、リオラお兄様は困ったように眉尻を下げて「特にいないよ」と言い放つ。
「嘘です! お兄様はライアンのことが好きなんでしょ!」
「おや。どうしてそう思うんだい? なにかあった?」
記憶を探るように視線を右上にやったお兄様。しまった。前世の記憶を思い出したことは内緒にしないと。ましてやここがBL小説の世界だなんて。
「んっと。ライアンはお兄様の子分」
「子分って、言い方。ライアンはうちの騎士団の副団長だよ」
にこっと微笑んだリオラお兄様。なんか知らんが誤魔化せた気がする。ぼくもにっこにっこと笑っておく。
そうなのだ。
このBL小説の主人公はライアン・サンフォード。二十歳。オルコット公爵家が個人的に所有する私営騎士団の副団長である。騎士団とはいってもごく小さいものだ。公爵家の屋敷の警備が主な仕事である。
ライアンとリオラお兄様の付き合いは長い。騎士団の精鋭としてうちに仕えてきたライアンに、実は昔からこっそりと好意を寄せていたリオラお兄様。歳上のかっこいいお兄さんを目で追ってしまう気持ちはわかるぞ。
どうにかライアンに振り向いてもらおうと奮闘するリオラお兄様であったのだが、ライアンは最終的には同じくうちの騎士団所属の幼馴染くんとくっついてしまう。そしてプライドをズタズタにされたお兄様は、公爵家とそれに仕える騎士という立場を利用して、ライアンの幼馴染騎士くんに嫌がらせしまくるのだ。
結果、方々に嫌われたリオラお兄様は破滅する。
「お兄様! 好きな子いるならちゃんと好きって言わないと! 言葉にしないと伝わらないです」
「そうだね、アル。言葉は大事だね」
「はい!」
よしよし。この調子で、お兄様が嫌がらせなんていう姑息な手段に走らないよう、ぼくがしっかり監督しておかないと。
「お兄様! 好きな子できたらぼくに教えてくださぁい」
「それはいいけど。急にどうして?」
「ぼくがアドバイスします」
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なんだか苦笑したリオラお兄様は、ぼくの言葉を軽く流してしまった。
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