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魔術戦闘2回戦は新事実と共に
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思えば、俺は昔からよく喧嘩してたな……。幼い時は、些細なことだった。今考えれば、どんだけしょぼいんだよって思えるほどだ。でも、当時は大事な事だったんだろうか。
でもその経験があったお陰で──
「決まったー!! カーミヤくんが、A組代表ナナニスを遂に倒しました!!」
掌打の繰り出し方や相手を後退させる方法が分かっていた。
容易ではない戦いだった。でも、俺は勝てた──。
今年のC組は何かが違う。この場にいる全員がそう思いながらも、やはり勝つのはA組だろうと言う雰囲気は拭えない。それをぶち壊すかのように、俺は倒れるナナニスを見下ろす。
「俺は……勝つ」
そして、そう吐き捨てる。
「私に勝ったんだ。勝ってもらわないと困るわ」
引き攣った笑みを浮かべたナナニスは、弱々しくそう言った。勝気な猫目のようだった目が、今では懐いた飼い猫のような目に見える。
燃ゆる陽光を浴びた緋色の髪をかきあげ、立ち上がろうとするナナニスに、手を差し出す。
一瞬、戸惑ったような表情を見せたナナニスだが、すぐにそれを取り立ち上がる。
「ほんと、ただの覗き魔だって思ってたのに」
「だからあれは事故だって!」
「冗談だってば」
ナナニスは無邪気に笑ってから、フィールドの外へ向かって歩き出す。
「なんだよ」
そう吐き、俺もその後を追う。
「続いては──」
そんな俺たちを見てからイチカが続く闘いのアナウンスを始めた。
***
フィールドの外へ出た俺に、ナナニスはポツリと訊いた。
「ねぇ、最近ね。この学院で不穏な動きがあるって聞いたんだけど。何か知ってる?」
不穏な動き……?
俺の知ってるのは、俺とマリアが使うはずだった部屋が2度襲われたことくらいだ。無言でいると、ナナニスはそう、と呟いてから続ける。
「この学院に外部の者が入ることは、内部の者の手引きがないとほぼ不可能なの」
「どういうことだ?」
「そう言う魔術結界が張ってあるの」
でも俺は──。と考え始めたところで、ある意味内部の者の手引きを受けたな、と納得する。
「で、それがどうした?」
「この前、あなたと始めてあった時、侵入者がいたでしょ? それで私なりに調べて見たの。外部の犯行ではないって踏んだ私は、学院の者について色々調べてみたの」
「そ、それで?」
思いもよらないところで、解決したいと思っていた問題の解へと近づけて興奮気味に訊く。
「結論から言うと、外部の犯行ということよ」
「……」
何も言えなかった。なぜなら、それは矛盾しているからだ。外部の者が入ってこれないという事実に反している。しかし、それを可能とする方法が一つだけある。
「手引きしたものがいるってことか?」
「恐らくね」
ナナニスは、目を瞬かせて答えた。
ってことは……。誰かが俺たちの部屋を襲わせたってことか?
一体誰が? 何のために?
「顔が怖いわよ」
そんな考えを巡らせていると、ナナニスが不意にそう言った。
「俺が……か?」
ナナニスは小さく頷いた。
「私に勝ったんだから、次の試合もあることわすれないでよね?」
「分かってるよ」
口ではそう答える。でも、頭の中では考えがぐちゃぐちゃ混ざりあって何をしたいのかが分からない。
「なぁ、これを聞いたて何か思い当たることはないか?」
「なによ?」
怪訝げな表情を浮かべるナナニスに、俺はあの日見つけた手がかりを口にする。
「鋭い目をした生き物と魔法の杖」
「鋭い目をした生き物が何なのか、ね」
しかしナナニスはそう呟くだけだ。やっぱりそうだよな。俺は、そうか、と答えフィールドに視線をやった。そこでは、死闘と言うほどでは、無いにしろ激しい戦いが繰り広げられていた。ナナニスのような緋色ではないにしろ、派手な赤色をした髪を持つ少年と、薄茶色の髪をした華奢な少女が戦っている。
「ねぇ、それが今回の事件と関係があるの?」
「多分、実行犯だ」
視線の先はフィールドに向けたまま、俺は答えた。
「もしかして……組織だったりするのかしら?」
ナナニスがそう零した瞬間、戦闘に大きな変化が生じた。少年の方が、少女に強打を打ち込んだのだ。
イチカが熱い実況を挟む。
「ねぇ、この事件思ったより根が深い……かも」
ナナニスは不安を抱えたように、小さな声を震わせながら零す。
「関係ねぇーよ。ただ俺が解決したいと思った事件だ。絶対解決してみせる」
強く、まるで自分に言い聞かせるように言った瞬間、戦闘の勝負がついた。──少年の勝ちだ。
それからマリアやイグターの待つ場所へと戻る。マリアとイグターは、おめでとう、と声を掛けてくれる。
「ありがと。でも、まだまだ勝たないと優勝を取れない」
「そうね。私、いっぱい応援するからね!」
ぐっ、とガッツポーズを作りながら言うマリアに俺は小さく微笑みありがとう、とと言う。
「わしも応援してやるよ」
イグターが微笑みながら言う。俺は、それに口角を釣り上げ、不敵に笑い答えた。
眼前で行われていた戦闘はいつの間にか、終わり新たな選手が入場を始めていた。どうやら2年A組と3年B組との試合らしい。後々の相手になるが、当たるのはまだ先だというのはわかっている。次に当たるのは、一試合目で勝利を収めたA組のやつだ。B組を圧倒していて、正直データはあまり取れてない。対して、俺はどうだ? ナナニスとの長期戦で手の内はかなりばれていると考えられる。
魔法がほとんど使えないこと……ばれてないかな?
「何不安げな顔してんだよ」
「……別に」
ニタニタとイヌ顔の男ロッキーが声をかけてくる。視線の先、フィールド内ではなかなか派手な魔法が連発されている。さらに言えば、詠唱もかなり短縮されている。
一年、二年、たったそれだけ。学んできた時間が違うだけでこれほどまでに違うのか、と思ってしまう。それと同時に、勝てるのか? という考えさえも脳裏によぎってしまう。
「大丈夫だよ」
優しい声が、不意に俺の耳をつく。
「ん?」
「きっと大丈夫。だから、心配しなくていいから」
振り返ると、声の主がマリアだとわかる。
「……あ、あぁ」
「お前なら、勝てるッ!」
イグターが続いて声をかける。どうやらかなり心配してくれていたらしい。
「ありがとう。俺、頑張るから」
2人は、力強く頷いた。
二人から少し離れたところに移動した俺は、壁に背中を預けてから小さく息を吐く。自分が思ったよりプレッシャーを感じていたということを理解する。そして、俺はそのことに恐怖を覚えている。
「いい仲間ね」
あげていた視線を少し下ろすと、そこには緋色の頭が写った。
「俺に負けたから、クラスに戻れないか?」
「何よ、覗き魔のくせに」
「だからそれは――」
「ふふ。まぁ、私には私のしたいことがあるの。まぁ、カーミヤくんの言ったこともゼロじゃないけど」
苦笑を浮かべるナナニス。
「まぁ、でも。マリアたちがいてくれてよかったと思う」
「あっそ」
ナナニスはそっけなく、しかしどこか温かみのあるこわねで告げると俺の横から立ち去って行った。
* * *
「さぁ、続いて二回戦が始まります!!」
一回戦すべての試合を終え、C組は二人が二回戦に進出できることになった。そして、イチカの実況が俺の出番を告げる。二回戦の初戦。それが俺の出番だ。
「二回戦第一試合は、一回戦では圧倒的な力でB組代表をねじ伏せたA組の代表リーニ。A組代表ナナニスとの長期戦を制したC組代表カーミヤとの戦いです」
同時に割れんばかりの歓声が轟く。
「それでは、リーニ選手、カーミヤ選手。フィールドに入ってきてください」
ふぅー、と短く息を吐き捨ててから、俺は覚悟を決めてフィールドへと向かう。
「A組との連戦となったカーミヤは、一体どのような戦いをみせてくれるのでしょうか。先ほどナナニスとの闘いの際にはほとんど魔法を使うことはありませんでしたが……、今回はどうでしょうか」
イチカが期待を込めた言葉を俺へと向ける。んな、大したもんじゃねぇーよ。俺は、ただ魔法が使えないだけだよ。
きつく握った拳を朧気に見つめる。
俺は──勝てる。小さくそうこぼし、俺は眼前に立つにリーニとかいうやつを見る。
瞬間、イチカから戦闘開始の声がかかった。
早いな。そう思いつつ、俺はフィールドを蹴り、リーニとの距離を詰める。
灰色に近い黒色のパーマのかかった髪を靡かせたリーニは、詰め寄る俺に不敵な笑みを浮かべる。
なんだ?
疑問に思っている間にリーニとの距離はほとんど無くなる。俺は体勢を横へと崩し、右脚を高くあげる。──回し蹴りだ。
女子だから。そんなこと言ってられるほど、この世界は甘くない。俺はナナニスとの一戦でそれを理解した。
だからこそ、俺はッ。素早く回転させた脚が、確かにリーニの頬をヒットした。感触だってあった。
だが、リーニはその場から姿を消した。
有り得ない。確かに当たったんだ。それを無かったことにしたのか? どうやって? 有り得ないって。
あまりに異様な出来事に、俺は口を閉じることができない。
「その程度?」
「なにっ!?」
慌てて後ろを向く。そこにいるはずがない。しかし、そこから声がした。
前方にいたはずの、蹴りをくれてやった奴が何も無かったかのように背後から声をこぼしたのだ。
一体どうなってんだ。
どれほど頭を動かしても、その答えにたどり着けそうにない。
でも。それでも攻撃をしないと……。
奥歯をギュッと噛み締め、俺は背後に向かってラリアットを決めようと試みる。しかし、結果は煙を切り裂いたように、手ごたえがない。
どう動けばそんな動きができる? どうやれば……。考えれば考えるほどに思考が混雑していく。
まるで、実体のない何かと戦っているような気分だ。ナナニスとの戦いでは感じられなかったが、今はこのフィールドがあまりに広く感じられる。こんなに広ければ逃げ放題だ。なんて考えさえ、浮かんでくる。
その瞬間――
「あまり邪魔をしてほしくないのだけど」
俺の右横から声がした。
そこでようやく気が付いた。
フィールド周辺で応援している者の声や、実況をしているはずのイチカの声がこれっぽっちも聞こえないことを。
でもその経験があったお陰で──
「決まったー!! カーミヤくんが、A組代表ナナニスを遂に倒しました!!」
掌打の繰り出し方や相手を後退させる方法が分かっていた。
容易ではない戦いだった。でも、俺は勝てた──。
今年のC組は何かが違う。この場にいる全員がそう思いながらも、やはり勝つのはA組だろうと言う雰囲気は拭えない。それをぶち壊すかのように、俺は倒れるナナニスを見下ろす。
「俺は……勝つ」
そして、そう吐き捨てる。
「私に勝ったんだ。勝ってもらわないと困るわ」
引き攣った笑みを浮かべたナナニスは、弱々しくそう言った。勝気な猫目のようだった目が、今では懐いた飼い猫のような目に見える。
燃ゆる陽光を浴びた緋色の髪をかきあげ、立ち上がろうとするナナニスに、手を差し出す。
一瞬、戸惑ったような表情を見せたナナニスだが、すぐにそれを取り立ち上がる。
「ほんと、ただの覗き魔だって思ってたのに」
「だからあれは事故だって!」
「冗談だってば」
ナナニスは無邪気に笑ってから、フィールドの外へ向かって歩き出す。
「なんだよ」
そう吐き、俺もその後を追う。
「続いては──」
そんな俺たちを見てからイチカが続く闘いのアナウンスを始めた。
***
フィールドの外へ出た俺に、ナナニスはポツリと訊いた。
「ねぇ、最近ね。この学院で不穏な動きがあるって聞いたんだけど。何か知ってる?」
不穏な動き……?
俺の知ってるのは、俺とマリアが使うはずだった部屋が2度襲われたことくらいだ。無言でいると、ナナニスはそう、と呟いてから続ける。
「この学院に外部の者が入ることは、内部の者の手引きがないとほぼ不可能なの」
「どういうことだ?」
「そう言う魔術結界が張ってあるの」
でも俺は──。と考え始めたところで、ある意味内部の者の手引きを受けたな、と納得する。
「で、それがどうした?」
「この前、あなたと始めてあった時、侵入者がいたでしょ? それで私なりに調べて見たの。外部の犯行ではないって踏んだ私は、学院の者について色々調べてみたの」
「そ、それで?」
思いもよらないところで、解決したいと思っていた問題の解へと近づけて興奮気味に訊く。
「結論から言うと、外部の犯行ということよ」
「……」
何も言えなかった。なぜなら、それは矛盾しているからだ。外部の者が入ってこれないという事実に反している。しかし、それを可能とする方法が一つだけある。
「手引きしたものがいるってことか?」
「恐らくね」
ナナニスは、目を瞬かせて答えた。
ってことは……。誰かが俺たちの部屋を襲わせたってことか?
一体誰が? 何のために?
「顔が怖いわよ」
そんな考えを巡らせていると、ナナニスが不意にそう言った。
「俺が……か?」
ナナニスは小さく頷いた。
「私に勝ったんだから、次の試合もあることわすれないでよね?」
「分かってるよ」
口ではそう答える。でも、頭の中では考えがぐちゃぐちゃ混ざりあって何をしたいのかが分からない。
「なぁ、これを聞いたて何か思い当たることはないか?」
「なによ?」
怪訝げな表情を浮かべるナナニスに、俺はあの日見つけた手がかりを口にする。
「鋭い目をした生き物と魔法の杖」
「鋭い目をした生き物が何なのか、ね」
しかしナナニスはそう呟くだけだ。やっぱりそうだよな。俺は、そうか、と答えフィールドに視線をやった。そこでは、死闘と言うほどでは、無いにしろ激しい戦いが繰り広げられていた。ナナニスのような緋色ではないにしろ、派手な赤色をした髪を持つ少年と、薄茶色の髪をした華奢な少女が戦っている。
「ねぇ、それが今回の事件と関係があるの?」
「多分、実行犯だ」
視線の先はフィールドに向けたまま、俺は答えた。
「もしかして……組織だったりするのかしら?」
ナナニスがそう零した瞬間、戦闘に大きな変化が生じた。少年の方が、少女に強打を打ち込んだのだ。
イチカが熱い実況を挟む。
「ねぇ、この事件思ったより根が深い……かも」
ナナニスは不安を抱えたように、小さな声を震わせながら零す。
「関係ねぇーよ。ただ俺が解決したいと思った事件だ。絶対解決してみせる」
強く、まるで自分に言い聞かせるように言った瞬間、戦闘の勝負がついた。──少年の勝ちだ。
それからマリアやイグターの待つ場所へと戻る。マリアとイグターは、おめでとう、と声を掛けてくれる。
「ありがと。でも、まだまだ勝たないと優勝を取れない」
「そうね。私、いっぱい応援するからね!」
ぐっ、とガッツポーズを作りながら言うマリアに俺は小さく微笑みありがとう、とと言う。
「わしも応援してやるよ」
イグターが微笑みながら言う。俺は、それに口角を釣り上げ、不敵に笑い答えた。
眼前で行われていた戦闘はいつの間にか、終わり新たな選手が入場を始めていた。どうやら2年A組と3年B組との試合らしい。後々の相手になるが、当たるのはまだ先だというのはわかっている。次に当たるのは、一試合目で勝利を収めたA組のやつだ。B組を圧倒していて、正直データはあまり取れてない。対して、俺はどうだ? ナナニスとの長期戦で手の内はかなりばれていると考えられる。
魔法がほとんど使えないこと……ばれてないかな?
「何不安げな顔してんだよ」
「……別に」
ニタニタとイヌ顔の男ロッキーが声をかけてくる。視線の先、フィールド内ではなかなか派手な魔法が連発されている。さらに言えば、詠唱もかなり短縮されている。
一年、二年、たったそれだけ。学んできた時間が違うだけでこれほどまでに違うのか、と思ってしまう。それと同時に、勝てるのか? という考えさえも脳裏によぎってしまう。
「大丈夫だよ」
優しい声が、不意に俺の耳をつく。
「ん?」
「きっと大丈夫。だから、心配しなくていいから」
振り返ると、声の主がマリアだとわかる。
「……あ、あぁ」
「お前なら、勝てるッ!」
イグターが続いて声をかける。どうやらかなり心配してくれていたらしい。
「ありがとう。俺、頑張るから」
2人は、力強く頷いた。
二人から少し離れたところに移動した俺は、壁に背中を預けてから小さく息を吐く。自分が思ったよりプレッシャーを感じていたということを理解する。そして、俺はそのことに恐怖を覚えている。
「いい仲間ね」
あげていた視線を少し下ろすと、そこには緋色の頭が写った。
「俺に負けたから、クラスに戻れないか?」
「何よ、覗き魔のくせに」
「だからそれは――」
「ふふ。まぁ、私には私のしたいことがあるの。まぁ、カーミヤくんの言ったこともゼロじゃないけど」
苦笑を浮かべるナナニス。
「まぁ、でも。マリアたちがいてくれてよかったと思う」
「あっそ」
ナナニスはそっけなく、しかしどこか温かみのあるこわねで告げると俺の横から立ち去って行った。
* * *
「さぁ、続いて二回戦が始まります!!」
一回戦すべての試合を終え、C組は二人が二回戦に進出できることになった。そして、イチカの実況が俺の出番を告げる。二回戦の初戦。それが俺の出番だ。
「二回戦第一試合は、一回戦では圧倒的な力でB組代表をねじ伏せたA組の代表リーニ。A組代表ナナニスとの長期戦を制したC組代表カーミヤとの戦いです」
同時に割れんばかりの歓声が轟く。
「それでは、リーニ選手、カーミヤ選手。フィールドに入ってきてください」
ふぅー、と短く息を吐き捨ててから、俺は覚悟を決めてフィールドへと向かう。
「A組との連戦となったカーミヤは、一体どのような戦いをみせてくれるのでしょうか。先ほどナナニスとの闘いの際にはほとんど魔法を使うことはありませんでしたが……、今回はどうでしょうか」
イチカが期待を込めた言葉を俺へと向ける。んな、大したもんじゃねぇーよ。俺は、ただ魔法が使えないだけだよ。
きつく握った拳を朧気に見つめる。
俺は──勝てる。小さくそうこぼし、俺は眼前に立つにリーニとかいうやつを見る。
瞬間、イチカから戦闘開始の声がかかった。
早いな。そう思いつつ、俺はフィールドを蹴り、リーニとの距離を詰める。
灰色に近い黒色のパーマのかかった髪を靡かせたリーニは、詰め寄る俺に不敵な笑みを浮かべる。
なんだ?
疑問に思っている間にリーニとの距離はほとんど無くなる。俺は体勢を横へと崩し、右脚を高くあげる。──回し蹴りだ。
女子だから。そんなこと言ってられるほど、この世界は甘くない。俺はナナニスとの一戦でそれを理解した。
だからこそ、俺はッ。素早く回転させた脚が、確かにリーニの頬をヒットした。感触だってあった。
だが、リーニはその場から姿を消した。
有り得ない。確かに当たったんだ。それを無かったことにしたのか? どうやって? 有り得ないって。
あまりに異様な出来事に、俺は口を閉じることができない。
「その程度?」
「なにっ!?」
慌てて後ろを向く。そこにいるはずがない。しかし、そこから声がした。
前方にいたはずの、蹴りをくれてやった奴が何も無かったかのように背後から声をこぼしたのだ。
一体どうなってんだ。
どれほど頭を動かしても、その答えにたどり着けそうにない。
でも。それでも攻撃をしないと……。
奥歯をギュッと噛み締め、俺は背後に向かってラリアットを決めようと試みる。しかし、結果は煙を切り裂いたように、手ごたえがない。
どう動けばそんな動きができる? どうやれば……。考えれば考えるほどに思考が混雑していく。
まるで、実体のない何かと戦っているような気分だ。ナナニスとの戦いでは感じられなかったが、今はこのフィールドがあまりに広く感じられる。こんなに広ければ逃げ放題だ。なんて考えさえ、浮かんでくる。
その瞬間――
「あまり邪魔をしてほしくないのだけど」
俺の右横から声がした。
そこでようやく気が付いた。
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