48 / 78
第3章 エルフとの会談
始まる会談
しおりを挟む「では、我々エルフと――」
「私たち人との」
「「会談を」」
ファムソーとサーニャの宣言により、会談が始められらた。
場所は神樹に1番近い、大広間。
普段はエルフの族長会議等で使われている、外交にもおあつらい向きの場所というわけだ。
円卓に向かい合わせに座るサーニャとファムソー。
サーニャの後ろにはコータとルーストが控えている。対して、ファムソーの後ろにはネーロスタと男性エルフが控えていた。
「まず先月、人の国にて起こった問題について、です」
「その件はこちらも把握しておりませんでした。見た目、名前を受け調査した所、ハイエルフ族の者だと言うことが分かりました」
「ハイエルフ族、というのはエルフの祖先となったものだと聞き及んでいるのですが」
サーニャはファムソーに訊く。ファムソーは小さく頷き、口を開く。
「その通りです。過去の大戦のことについては言うまでもなく、ご存知だと思いますが、そこで活躍したのがハイエルフ族です」
「文献にはエルフとしか書かれていなかったので、それについては初めて知りました」
「知らなくても当然だと思いますよ。話を戻しますと、大戦中ハイエルフはかなりの力を保持しており魔族とも対等に戦えたほどらしいのです」
「そうらしいですね」
「ですので、他種と馴れ合うことを嫌っています」
「私たちとの会談ですら気に食わない、ということですか?」
サーニャが厳しい目を向けた。ファムソーは少し俯き加減で頷く。
「ですが、しっかりと話はつけております」
ファムソーは顔を上げてそう言った。瞬間、ネーロスタが少し動いた。2人の会話しか無い空間で、その音はやけに大きく皆の耳に入った。
視線が集まるネーロスタ。その顔は、申し訳ない、というもので溢れているわけではなかった。
何か言いたそうな、驚きを感じたような、そんな表情だった。
「別段、和平条約が結ばれているわけではない。だが、不法に入国し犯罪行為を犯した。これを見過ごすわけにはいかない」
サーニャは依然として厳しい目のまま、ファムソーを睨めつける。
「分かっております。それについては謝罪と補償金をお支払いさせていただくつもりです」
「補償金より、私たちとしてはエルフ種との和平条約の締結と貿易関係を結びたいと考えている」
「和平条約は分かります。ですが、貿易関係ですか?」
「えぇ。昨日、歓迎の儀式をして頂き、そこで出された料理や並べられていた特産品を拝見して思いました。私たち人の国では食べたことの無い物などの輸入をしたいのです」
「分かりました。それならば我々は人手を要求します」
「人手?」
ファムソーの言葉に、サーニャはこれまでで1番鋭い目を向けた。
「そう怖い目をしないでくださいよ」
「人手、というのは奴隷をくれ、と言っているようなものだが?」
「それは違います。我々は魔法に長けている分、それに頼った文化となっています。ですが、それだけは同じような方向でしか発展せず、限界が見えつつあります」
「では、文化発展のために人を貸してほしい、ということですか?」
「その通りです。ですので、しっかりとした体制を整えて迎え入れたいと考えております」
「分かりました。それではゴード王にそのように伝えます」
サーニャの言葉を聞いたファムソーは、椅子から立ち上がった。
よろしくお願いします、とでも言うのだろうか。だが、ファムソーが言葉を発するよりも前にコータは違和感を感じた。
しかし、それを言葉にする前に違う音が洩れた。
「うぅ」
苦悶に満ちた声音が、サーニャの目の前で零れた。一瞬で起こったそれに、サーニャは対応するどころか金縛りにあったかの如く動けなくなってしまった。
「サーニャ様!」
そんなサーニャのもとへ、コータは急いで駆け寄る。そして、彼女の背に手を回しその場で体をかがめさせる。
「こっちに来てください」
サーニャは四つん這いでルーストの元へと移動させる。その間も、サーニャの後ろで強い警戒を放つ。
「お願いします」
「分かりました」
ルーストにそう告げ、コータは仰向けに倒れたファムソーに駆け寄る。その心臓部には矢が刺さっている。
周囲に目を向けるが、誰かが居そうな気配は無い。
「お父さん!!」
「ネーロスタさん。落ち着いて」
倒れ、口端から血をこぼしているファムソーの横で。泣き崩れているネーロスタに、声をかける。だが、ネーロスタにその声は届いていない。
父親の心臓部に突き刺さった矢を虚ろに見て、涙を零して叫んでいる。
「ネーロスタさん!」
コータが呼びかける。しかし、やはり何も変化は起きない。困ったコータは、ネーロスタの肩に手をかけ後ろへと倒す。
そして、ファムソーに近寄る。
「何をする!」
背後で泣き叫ぶネーロスタに代わり、同席していた男性の護衛者がコータに、短剣を向けた。
「息の確認もしてないやつが偉そうにするな」
コータはその男性に強い視線をくれてから、ファムソーの口元に耳を近づけた。だが、そこから息の根は聞こえてこない。
「まずい」
手元には月の宝刀しかない。冒険者バッグは使わないと、判断して部屋に置いてきたままだった。
「ポーションですか?」
そんなコータに闇の歪んだ空間を作り出したルーストが訊いた。
「はい」
「これを」
コータがそう答えると、ルーストは空間魔法でポーションを取り出してコータに投げた。それを受け取ったコータは、コルクの蓋をあけてファムソーの口に流し込む。
――鑑定
コータは心の中で言う。すると、視界に文字が浮かび上がる。
【ファムソー Lv15 状態:死】
表示された文字は、これ以上どうすることも出来ない状態であることを示すものだった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
全校転移!異能で異世界を巡る!?
小説愛好家
ファンタジー
全校集会中に地震に襲われ、魔法陣が出現し、眩い光が体育館全体を呑み込み俺は気絶した。
目覚めるとそこは大聖堂みたいな場所。
周りを見渡すとほとんどの人がまだ気絶をしていてる。
取り敢えず異世界転移だと仮定してステータスを開こうと試みる。
「ステータスオープン」と唱えるとステータスが表示された。「『異能』?なにこれ?まぁいいか」
取り敢えず異世界に転移したってことで間違いなさそうだな、テンプレ通り行くなら魔王討伐やらなんやらでめんどくさそうだし早々にここを出たいけどまぁ成り行きでなんとかなるだろ。
そんな感じで異世界転移を果たした主人公が圧倒的力『異能』を使いながら世界を旅する物語。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。
クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~
いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。
他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。
「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。
しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。
1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化!
自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働!
「転移者が世界を良くする?」
「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」
追放された少年の第2の人生が、始まる――!
※本作品は他サイト様でも掲載中です。
伯爵令嬢アンマリアのダイエット大作戦
未羊
ファンタジー
気が付くとまん丸と太った少女だった?!
痩せたいのに食事を制限しても運動をしても太っていってしまう。
一体私が何をしたというのよーっ!
驚愕の異世界転生、始まり始まり。
前世は最悪だったのに神の世界に行ったら神々全員&転生先の家族から溺愛されて幸せ!?しかも最強➕契約した者、創られた者は過保護すぎ!他者も!?
a.m.
ファンタジー
主人公柳沢 尊(やなぎさわ たける)は最悪な人生だった・・耐えられず心が壊れ自殺してしまう。
気が付くと神の世界にいた。
そして目の前には、多数の神々いて「柳沢尊よ、幸せに出来なくてすまなかった転生の前に前の人生で壊れてしまった心を一緒に治そう」
そうして神々たちとの生活が始まるのだった...
もちろん転生もします
神の逆鱗は、尊を傷つけること。
神「我々の子、愛し子を傷つける者は何であろうと容赦しない!」
神々&転生先の家族から溺愛!
成長速度は遅いです。
じっくり成長させようと思います。
一年一年丁寧に書いていきます。
二年後等とはしません。
今のところ。
前世で味わえなかった幸せを!
家族との思い出を大切に。
現在転生後···· 0歳
1章物語の要点······神々との出会い
1章②物語の要点······家族&神々の愛情
現在1章③物語の要点······?
想像力が9/25日から爆発しまして増えたための変えました。
学校編&冒険編はもう少し進んでから
―――編、―――編―――編まだまだ色んなのを書く予定―――は秘密
処女作なのでお手柔らかにお願いします。文章を書くのが下手なので誤字脱字や比例していたらコメントに書いていただけたらすぐに直しますのでお願いします。(背景などの細かいところはまだ全く書けないのですいません。)主人公以外の目線は、お気に入り100になり次第別に書きますのでそちらの方もよろしくお願いします。(詳細は200)
感想お願いいたします。
❕只今話を繋げ中なためしおりの方は注意❕
目線、詳細は本編の間に入れました
2020年9月毎日投稿予定(何もなければ)
頑張ります
(心の中で読んでくださる皆さんに物語の何か案があれば教えてほしい~~🙏)と思ってしまいました。人物、魔物、物語の流れなど何でも、皆さんの理想に追いつくために!
旧 転生したら最強だったし幸せだった
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる