2 / 7
一章 理不尽な別れと新たな出会い
エクリルの歴史
しおりを挟む
簡単に自分史をまとめようと思う。
この俺エクリル・マドムウェルは、ヒレーヌ村という北の田舎に生まれた。
優しく慈悲深い両親に恵まれ、申し分ない愛情を受けて育った。
そして、小規模な村で村人同士の距離が近いということもあり友達も沢山いた。
地形的にそこまで頻繁にモンスターが出現することもなく、すくすくと成長していったのだ。
ヒレーヌ村は本当にのどかで、俺は親や友達と思う存分大自然を遊びまわったし、冒険や探検も沢山した。
そんな中で、こんな楽しい冒険を最高の仲間達とできたらどれだけ幸せだろうかと、子供ながらに思うようになっていった。
村の友達や親に、
「俺は絶対世界一の冒険者になる!!」
なんて言ったりしてたっけ。
けど、そんな俺の人生が傾いたのは『デュミナス』の発現が起きた十四の時だ。
デュミナスとは何か、簡単に話しておこう。
デュミナスとは、一般に十~十四歳の頃に発現する特殊スキルのことだ。
時期に差はあれど、ほとんどの人間は十四歳までにデュミナスが発現する。
何故デュミナスなどどいう特殊スキルが人に備わるのかは諸説あるが、現在最も有力とされている説は、モンスターなどの外敵から身を守る為に発現するというものだ。
この世界には友好的なモンスターもいれば、人間や他のモンスターに牙をむくモンスターもいる。
街を破壊しようとしたり、無実の人々を襲ったりするモンスターは人間の天敵だ。
中には、国総動員で撃退しなければいけないほどの恐ろしいモンスターも存在する。
それらに対抗するための進化というのが、デュミナスが備わった理由とされている。
話を戻そう。俺の人生がデュミナスの発現により傾いてしまった、という話だ。
何故俺の人生は傾いたのか。それは、一言で言うと『デュミナスガチャ』を外したからだ。
人間に備わるデュミナスの能力は様々だ。戦闘向きのデュミナスもあれば、サポート向きなど多岐に渡る。
俺はその中でいわゆるハズレを引いてしまったのだ。
いや、ハズレを引いたというより使い手である俺との相性が悪かったんだ。
俺のデュミナスは『飛行』。
飛行と聞けば、一見大当たりのデュミナスに思うかもしれない。
空を自由に飛べるのだし、それを生かして攻撃やサポートができるのではないかと。
しかし、俺は飛行を上手く扱うことができなかった。
飛行といえども鳥みたいに羽で飛ぶわけじゃない。体から湧き出るエネルギーを動力に飛ぶのだ。
俺は元々小柄で、体力もあまりなかった。なので動力となるエネルギーが少なく、あまり長く飛べない。
そして、俺はあまり力がないので剣を振り回したりしながら飛ぶことは難しい。
つまり、俺は空を少し飛べるのはいいものの、攻撃手段が殆どない。
攻撃手段が殆どないというのは冒険者にとっては致命的なのだ。
親が『飛行』の弱さに気づいた時の反応は忘れられない。
俺があまりに冒険者冒険者というので、親は俺に期待していた。この子はすごい冒険者になってくれるのではないかと。
けど『飛行』に苦戦する俺を見て、両親はとても落ち込んだ。
それを子に悟られぬようにしていたつもりだったのか知らないが、両親の笑顔を沢山見てきた俺には表情の曇りなどすぐに分かった。
「そ、空を飛べるなんていい能力じゃないか、エクリル! こりゃあヒレーヌ村から英雄が誕生するかもしれないなぁ。なぁ、母さん?」
「そ、そうね父さん。ま、まぁ、別に冒険者じゃなくても、あなたの好きなようにやればいいのよ、エクリル。危険なモンスターも沢山いるし、別に無理して冒険者になる必要なんてないんだから」
なんて慰められた時には、ひどく心が抉られたもんだ。
そして村の皆はというと、もはや俺に気を遣って『飛行』というデュミナスについてあまり触れてこなかった。
多分、
「あ、こいつハズレ引いたな」
って思われてたんだろうな。
それが何よりも一番心を抉ったな。冒険者冒険者と豪語していただけに、恥ずかしさと悔しさで眠れない夜もあった。
俺はひたすら空を飛んで、飛んで、飛んで、何かできやしないかと探した。
この能力を活かす方法は必ずある。他の皆をいつか見返してやるんだって思ってひたすら飛んでたんだ。
でも、結局何もできないまま時間だけが過ぎ、十七になったころ親に負い目を感じていた俺は半ば無理やり村を出た。
そして辿り着いた大都市レンザスでキルフェン、エリク、マーガレット達と出会ってパーティーを組んだ。
俺はパーティーをサポートしようと、『飛行』でできる限りのことをやった。
モンスターの討伐や依頼が成功したら、撤退の為街まで皆を運んだ。
モンスターに勝てないと分かれば皆を安全な場所まで連れて緊急離脱した。
事前に作戦を立てることが求められたときは、偵察に一人で出向いた。
――けどその仕事は『瞬間移動』という上位互換のハイグレードデュミナスに奪われ、パーティーを追放された。
これが俺の歴史だ。
※
「クソ、これからどうすれば……」
パーティーを追放された俺は途方に暮れていた。
俺は今や無職になったのだ。これからどう食い繋いでいけばいいのだろうか。
ソロで冒険者をやっていくのは正直自信がない。
「一からパーティーを組んでくれる所を探すか……? ……あ、」
俺はとある重要なことを思いだした。
あいつらと共に住んでいた場所、レンザスの宿に俺の荷物がある。
帰り道に別れたせいで気が付かなかった。
「荷物なしでどうするってんだよ……何やってんだか俺は。もう一回あの部屋に行くのか……正直顔を合わせるのは気まずいけど、仕方ねぇ」
サッと荷物を取って風のように消えよう。
俺は再びレンザスの宿舎に向かうことにした。
この俺エクリル・マドムウェルは、ヒレーヌ村という北の田舎に生まれた。
優しく慈悲深い両親に恵まれ、申し分ない愛情を受けて育った。
そして、小規模な村で村人同士の距離が近いということもあり友達も沢山いた。
地形的にそこまで頻繁にモンスターが出現することもなく、すくすくと成長していったのだ。
ヒレーヌ村は本当にのどかで、俺は親や友達と思う存分大自然を遊びまわったし、冒険や探検も沢山した。
そんな中で、こんな楽しい冒険を最高の仲間達とできたらどれだけ幸せだろうかと、子供ながらに思うようになっていった。
村の友達や親に、
「俺は絶対世界一の冒険者になる!!」
なんて言ったりしてたっけ。
けど、そんな俺の人生が傾いたのは『デュミナス』の発現が起きた十四の時だ。
デュミナスとは何か、簡単に話しておこう。
デュミナスとは、一般に十~十四歳の頃に発現する特殊スキルのことだ。
時期に差はあれど、ほとんどの人間は十四歳までにデュミナスが発現する。
何故デュミナスなどどいう特殊スキルが人に備わるのかは諸説あるが、現在最も有力とされている説は、モンスターなどの外敵から身を守る為に発現するというものだ。
この世界には友好的なモンスターもいれば、人間や他のモンスターに牙をむくモンスターもいる。
街を破壊しようとしたり、無実の人々を襲ったりするモンスターは人間の天敵だ。
中には、国総動員で撃退しなければいけないほどの恐ろしいモンスターも存在する。
それらに対抗するための進化というのが、デュミナスが備わった理由とされている。
話を戻そう。俺の人生がデュミナスの発現により傾いてしまった、という話だ。
何故俺の人生は傾いたのか。それは、一言で言うと『デュミナスガチャ』を外したからだ。
人間に備わるデュミナスの能力は様々だ。戦闘向きのデュミナスもあれば、サポート向きなど多岐に渡る。
俺はその中でいわゆるハズレを引いてしまったのだ。
いや、ハズレを引いたというより使い手である俺との相性が悪かったんだ。
俺のデュミナスは『飛行』。
飛行と聞けば、一見大当たりのデュミナスに思うかもしれない。
空を自由に飛べるのだし、それを生かして攻撃やサポートができるのではないかと。
しかし、俺は飛行を上手く扱うことができなかった。
飛行といえども鳥みたいに羽で飛ぶわけじゃない。体から湧き出るエネルギーを動力に飛ぶのだ。
俺は元々小柄で、体力もあまりなかった。なので動力となるエネルギーが少なく、あまり長く飛べない。
そして、俺はあまり力がないので剣を振り回したりしながら飛ぶことは難しい。
つまり、俺は空を少し飛べるのはいいものの、攻撃手段が殆どない。
攻撃手段が殆どないというのは冒険者にとっては致命的なのだ。
親が『飛行』の弱さに気づいた時の反応は忘れられない。
俺があまりに冒険者冒険者というので、親は俺に期待していた。この子はすごい冒険者になってくれるのではないかと。
けど『飛行』に苦戦する俺を見て、両親はとても落ち込んだ。
それを子に悟られぬようにしていたつもりだったのか知らないが、両親の笑顔を沢山見てきた俺には表情の曇りなどすぐに分かった。
「そ、空を飛べるなんていい能力じゃないか、エクリル! こりゃあヒレーヌ村から英雄が誕生するかもしれないなぁ。なぁ、母さん?」
「そ、そうね父さん。ま、まぁ、別に冒険者じゃなくても、あなたの好きなようにやればいいのよ、エクリル。危険なモンスターも沢山いるし、別に無理して冒険者になる必要なんてないんだから」
なんて慰められた時には、ひどく心が抉られたもんだ。
そして村の皆はというと、もはや俺に気を遣って『飛行』というデュミナスについてあまり触れてこなかった。
多分、
「あ、こいつハズレ引いたな」
って思われてたんだろうな。
それが何よりも一番心を抉ったな。冒険者冒険者と豪語していただけに、恥ずかしさと悔しさで眠れない夜もあった。
俺はひたすら空を飛んで、飛んで、飛んで、何かできやしないかと探した。
この能力を活かす方法は必ずある。他の皆をいつか見返してやるんだって思ってひたすら飛んでたんだ。
でも、結局何もできないまま時間だけが過ぎ、十七になったころ親に負い目を感じていた俺は半ば無理やり村を出た。
そして辿り着いた大都市レンザスでキルフェン、エリク、マーガレット達と出会ってパーティーを組んだ。
俺はパーティーをサポートしようと、『飛行』でできる限りのことをやった。
モンスターの討伐や依頼が成功したら、撤退の為街まで皆を運んだ。
モンスターに勝てないと分かれば皆を安全な場所まで連れて緊急離脱した。
事前に作戦を立てることが求められたときは、偵察に一人で出向いた。
――けどその仕事は『瞬間移動』という上位互換のハイグレードデュミナスに奪われ、パーティーを追放された。
これが俺の歴史だ。
※
「クソ、これからどうすれば……」
パーティーを追放された俺は途方に暮れていた。
俺は今や無職になったのだ。これからどう食い繋いでいけばいいのだろうか。
ソロで冒険者をやっていくのは正直自信がない。
「一からパーティーを組んでくれる所を探すか……? ……あ、」
俺はとある重要なことを思いだした。
あいつらと共に住んでいた場所、レンザスの宿に俺の荷物がある。
帰り道に別れたせいで気が付かなかった。
「荷物なしでどうするってんだよ……何やってんだか俺は。もう一回あの部屋に行くのか……正直顔を合わせるのは気まずいけど、仕方ねぇ」
サッと荷物を取って風のように消えよう。
俺は再びレンザスの宿舎に向かうことにした。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

転生しても山あり谷あり!
tukisirokou
ファンタジー
「転生前も山あり谷ありの人生だったのに転生しても山あり谷ありの人生なんて!!」
兎にも角にも今世は
“おばあちゃんになったら縁側で日向ぼっこしながら猫とたわむる!”
を最終目標に主人公が行く先々の困難を負けずに頑張る物語・・・?
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

パークラ認定されてパーティーから追放されたから田舎でスローライフを送ろうと思う
ユースケ
ファンタジー
俺ことソーマ=イグベルトはとある特殊なスキルを持っている。
そのスキルはある特殊な条件下でのみ発動するパッシブスキルで、パーティーメンバーはもちろん、自分自身の身体能力やスキル効果を倍増させる優れもの。
だけどその条件がなかなか厄介だった。
何故ならその条件というのが────

おばさん、異世界転生して無双する(꜆꜄꜆˙꒳˙)꜆꜄꜆オラオラオラオラ
Crosis
ファンタジー
新たな世界で新たな人生を_(:3 」∠)_
【残酷な描写タグ等は一応保険の為です】
後悔ばかりの人生だった高柳美里(40歳)は、ある日突然唯一の趣味と言って良いVRMMOのゲームデータを引き継いだ状態で異世界へと転移する。
目の前には心血とお金と時間を捧げて作り育てたCPUキャラクター達。
そして若返った自分の身体。
美男美女、様々な種族の|子供達《CPUキャラクター》とアイテムに天空城。
これでワクワクしない方が嘘である。
そして転移した世界が異世界であると気付いた高柳美里は今度こそ後悔しない人生を謳歌すると決意するのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる