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【最終話】ゆきだるまで、俺は異世界を生きていく
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「成る程、ウルリカ以外は人化できないってわけだな」
聞いた話を簡単に纏めると、こうだ。
この国、シャミーユ王国のエルゲイル辺境伯は性悪で、自分の城の近くに住む奇怪なアイススノーマン族を馬鹿にし、罵っていた。
そしてある日、アイススノーマン族の体に内蔵されている高魔力の魔石、人化に必要な魔石をとある人物に依頼して略奪した。
そしてその高魔力の魔石は今なお私的に運用されている。
もう一度高魔力の魔石を取り込めば人化できるので、エルゲイル辺境伯の城に乗り込んでエルゲイル辺境伯から魔石を俺に奪い返してほしい、と。
ウルリカだけ魔石が奪われていないのは、村長だるまが陳謝し、何とか慈悲を貰ったらしい。
「成る程……よし、やろう」
「飲み込み早っ!?」
何の迷いもなく決断した俺を見て、村長だるまがキレのいいツッコミを入れた。
でも、もう答えは決まっている。
「だって、自分の同族が虐げられてんのに黙ってられないだろ。そいつのことボコるしかねぇよ」
「……しかし、勝てるでしょうか。相手は辺境伯。国の中でも権力者です」
俺の快諾に安心したウルリカだが、再び不安げな表情になる。
「勝てるさ。いや、勝たなくちゃいけない。雪だるまで何が悪い!! ウルリカの必死な表情見てたら分かるって。お前らがどれだけアイススノーマン族に誇りを持っているのか」
「ギンガさん……なら、私も行きます」
俺の返答を聞いたウルリカは、白く小さな手を胸にあてた。
恐らく彼女の中で何かが動いたのだろう。
決意か、あるいは。
「っしゃ!! じゃあ、やるぞウルリカ!!」
-超スキル、『ミニアイススノーマン召喚EX』を使用しますか?-
はい←
いいえ
-超スキル、『ミニアイススノーマン召喚EX』を使用します。-
「超スキルは選択しなきゃいけないのか。……うおお、キタキタ!!」
ミニアイススノーマン召喚を使うと、空から氷塊が十六個降ってきた。
その氷塊が割れ、凍っていたミニアイススノーマンが次々と俺の前に平伏する。
全員赤か緑のリボンを付けていて、見た目もベリーキュート。
「カワイイ……」
そのキュートな見た目に、ウルリカは頬を赤くして呟いた。
子分には申し訳ないが、ウルリカの方がカワイイ。
「よし、お前ら!! 四×四の長方形を作ってくれ!!」
俺がそう命ずると、あっという間にミニアイススノーマンが長方形に整列した。
「乗ってくれ、ウルリカ!! 行くぞっ!!」
「あ、はい……うわわっ!? は、速っ!?」
ドドドドド――!!!
物凄いスピードで俺達を乗せて走るミニアイススノーマン達と共に、俺達はエルゲイル辺境伯の元に向かった。
※※※※※※
「辺境伯、また国の役人が来ておりますが……いかがいたしましょう」
「忙しいと追い返せ、イグノル。どうせ辺境伯領の体勢がとか、そんな話であろう。我の管轄下であるのに口出しなど、まっこと不快な奴等よ」
「承知いたしました。では――」
バタン――!!
突然、執務室の扉が大きな音を立てて、強引に開かれた。
氷塊が、コロコロとエルゲイル辺境伯の元へ転がる。
「……氷? 一体何者でしょう。今日の来客はもう無いハズですが」
「何者だ、人か魔物か。我の城内に無言で立ち入るなど、相応の報いを受ける覚悟はできておるんだろうな? 不快だ、さっさと姿を見せよ愚か者!!」
パキパキとひび割れて、氷が割れる。
轟然と怒鳴る辺境伯の元に現れたのは――
「よお、あんたがエルゲイル辺境伯っておっさんか。へぇ、辺境伯ってだけあって身綺麗だな。黒のコートが素敵だ。でも、高魔力の魔石は返してもらおうか」
「何者だ!! 辺境伯に近づくな!! 貴様、どこから――」
「イグノル、下がっているのだ!! こいつ、只者では無いぞ!!」
「!? ッ――承知しました……」
瞬時に相手のレベルを推し量ったのか、エルゲイルは執事を下がらせた。
「……ふむ、我の記憶が正しければ、白髪褐色の隣にいるのは、低俗なアイススノーマン族ではないか。成る程、唯一人の姿になれる貴様が乗り込んで来ているということは、取り返しに来たのだな?」
「私達は低俗じゃありません。あなたの偏った考えは、多くの人を悲しませる。私はあなたを許さない!!」
「許さん、と? 貴様、誰に許可を得て我に口出ししておる? お前ごときが私に物を言っていいと思うか? ……まぁいい。お前らが欲しいのはこれだろう。ゲートクラフト!!」
宙に丸い円を指で描き、宝箱を生成する。
恐らくあの中に、高魔力の魔石があるっぽいな。
「これが欲しいか? ……だが、これはやらんぞ。お前らにやるのは最悪の未来だけだ」
エルゲイルは、一重で吊り上がった鋭い瞳で、侮蔑に塗れた目を俺達に向けた。
ゴゴゴゴゴゴゴ――
巨大な執事室の左右から紫の魔法陣が輝き、何かが蠢く音がする。
俺達の前に現れたのは――
「これは、ゴーレムか? でけぇな……」
五メートルほどの石の塊、丸い紅目をピカリと光らせたゴーレムが四体、俺達を囲んだ。
くすくすと陰惨な笑みで嘲弄するエルゲイル。
「私は国随一と言っても過言ではない実力の召喚術師。貴様らなど、一ひねりだ。どれ、最後にチャンスをやろう。全身全霊、心からの悔悟を見せるならば許してやる。そうでなければ貴様らを牢にぶち込んで――」
パキン――!!
俺の左側にいるゴーレムを手始めに凍らせてみた。
巨大な石の塊が、あっという間に氷の塊へ。
エルゲイルは口が塞がらないようだ。
「あ、ああ……な……ななな、何者だ貴様!!」
「アイススノーマン様だよ!!」
「ク……何を出鱈目な……おいゴーレム!! その脆弱な者共を砕いて豚のエサにしろ!!」
残り三体のゴーレムがのそのそとこちらへ近づいてくる。
鉄の塊みたいに重そうな拳をグググ……と振り上げ、こちらに狙いを定める。
-超スキル、『液体化EX』を使用しますか?-
はい←
いいえ
-超スキル、『液体化EX』を使用します。-
「……は?」
二体のゴーレムの拳は、何も無い大理石の床を打ち抜いた。
もう一体は、ウルリカへ拳を放ったが、ウルリカは氷の盾に守られ無傷。
ゴーレムのパンチは全く通じなかった。
「危ない危ない……」
液体化を使い水になった体を、人化で再び戻す。
「馬鹿な……馬鹿な!! お前らごときが我がゴーレムの拳を防ぐなど、あってはならない……!!」
「違うな、エルゲイル。ウルリカの氷の厚さは、俺達アイススノーマン族の想いの厚さだ。――だからお前に、俺達の氷を砕くことは絶対できねぇ」
「チクショオ……何をしている!! 早く攻撃しろポンコツ共!! 殺してもいい!!」
「おっと、させないよ。もうお前は終わりだ。――氷銃!!!」
ドンドンドン――!!
ゴーレムの頭部目掛けて、指で氷銃を放つ。
高速で放たれた氷銃は容易くゴーレムの頭部を射抜き、ゴーレムは形を失って魔力の結晶へ変わった。
「……さて」
「ひっ!!」
ゴーレムを瞬殺されたエルゲイルは、完全に怖気づいていた。
「この宝箱は貰っていくぞ」
「まて貴様ぁ!! 辺境伯に盾突きおって、どうなるか分かっているのか――」
「腰抜かしたまま言われても怖くねーよ。……それは後から考えるさ。とにかく、皆を人化させるのが先だ。じゃあなエルゲイル。お前のゴーレム悪くなかったぞ。行こう、ウルリカ」
「はい!! ……これを機に反省してください、辺境伯。私達アイススノーマン族は弱くありません」
「聞いていればゴチャゴチャと偉そうなことを……低俗な雪玉風情がぁ……」
「反省ナシか。執務室を氷塗れにしちゃったし、反省してたら溶かしてやろうと思ったのに。まぁ、これはプレゼントってことで頼むわ。んじゃ、メリークリスマス!!」
「は……? メリ? ……ブッ!!」
聞き慣れない異世界語に困惑するエルゲイルの顔に雪玉を投げた後、俺達は屋敷を後にした。
※※※※※※
「どう? ミニアイススノーマンの乗り心地は。快適か、ウルリカ?」
再びミニアイススノーマンを呼び出して、俺達は帰路を辿っていた。
「はい。とても快適です!!」
「そっか。よかった」
「あの……ギンガさん」
「何だ? 何かあったか?」
ウルリカは少し及び腰になって、遠慮気味な表情で――
「もしよかったら、私達にお力添えいただけないでしょうか!!」
「お力添え?」
「はい。この世界では、私達ミニアイススノーマン族は奇怪な存在として、笑われたり気味悪がられたりしています。私はそれを変えたい。種族なんて関係なく皆が幸せに暮らせる、そんな世界を創りたいんです――!!」
「――――」
言い終えてすぐ、ウルリカの頬が赤らみ、火照る。
「あ、あのっ! 理想論だとは分かっています……でも――!!」
「……分かった。やるよウルリカ。俺は、やってみせる」
「……え? あの、いいんですか……? 私達に協力なんて……あなたの力はアイススノーマンという枠組みから――」
「関係ないね。俺はアイススノーマン族だ。ここに来たばかりだけど、俺はこの種族に誇りを持ってるよ。いいじゃん、皆が幸せに暮らせる世界。ウルリカ、一緒に創ろうよ。俺とお前で、二人の雪だるまで世界を変えようぜ!!」
そう言って、俺はウルリカに手を差し出す。
それを見てウルリカは――
「……嬉しい、です。今まで、本気でこの夢を受け入れてくれる人はいなかったから。私達でこの世界を変えましょう。きっと!!!」
俺の手を握り返し、燦然と輝く柔らかい笑顔で、そう言って微笑んだのだった。
※※※※※※
異世界転移した先は、まさかの雪だるま!!
人から雪だるまになって大パニック!!
でも、俺には夢がある。
二人の雪だるまが共に創ろうと約束した、壮大な理想郷。
その夢を叶えるため、今日も俺は奮闘する。
「ああいいさ、やってやる。創ってやろうじゃないの。雪だるまが、平和で皆が幸せに暮らせる世界を――――!!」
聞いた話を簡単に纏めると、こうだ。
この国、シャミーユ王国のエルゲイル辺境伯は性悪で、自分の城の近くに住む奇怪なアイススノーマン族を馬鹿にし、罵っていた。
そしてある日、アイススノーマン族の体に内蔵されている高魔力の魔石、人化に必要な魔石をとある人物に依頼して略奪した。
そしてその高魔力の魔石は今なお私的に運用されている。
もう一度高魔力の魔石を取り込めば人化できるので、エルゲイル辺境伯の城に乗り込んでエルゲイル辺境伯から魔石を俺に奪い返してほしい、と。
ウルリカだけ魔石が奪われていないのは、村長だるまが陳謝し、何とか慈悲を貰ったらしい。
「成る程……よし、やろう」
「飲み込み早っ!?」
何の迷いもなく決断した俺を見て、村長だるまがキレのいいツッコミを入れた。
でも、もう答えは決まっている。
「だって、自分の同族が虐げられてんのに黙ってられないだろ。そいつのことボコるしかねぇよ」
「……しかし、勝てるでしょうか。相手は辺境伯。国の中でも権力者です」
俺の快諾に安心したウルリカだが、再び不安げな表情になる。
「勝てるさ。いや、勝たなくちゃいけない。雪だるまで何が悪い!! ウルリカの必死な表情見てたら分かるって。お前らがどれだけアイススノーマン族に誇りを持っているのか」
「ギンガさん……なら、私も行きます」
俺の返答を聞いたウルリカは、白く小さな手を胸にあてた。
恐らく彼女の中で何かが動いたのだろう。
決意か、あるいは。
「っしゃ!! じゃあ、やるぞウルリカ!!」
-超スキル、『ミニアイススノーマン召喚EX』を使用しますか?-
はい←
いいえ
-超スキル、『ミニアイススノーマン召喚EX』を使用します。-
「超スキルは選択しなきゃいけないのか。……うおお、キタキタ!!」
ミニアイススノーマン召喚を使うと、空から氷塊が十六個降ってきた。
その氷塊が割れ、凍っていたミニアイススノーマンが次々と俺の前に平伏する。
全員赤か緑のリボンを付けていて、見た目もベリーキュート。
「カワイイ……」
そのキュートな見た目に、ウルリカは頬を赤くして呟いた。
子分には申し訳ないが、ウルリカの方がカワイイ。
「よし、お前ら!! 四×四の長方形を作ってくれ!!」
俺がそう命ずると、あっという間にミニアイススノーマンが長方形に整列した。
「乗ってくれ、ウルリカ!! 行くぞっ!!」
「あ、はい……うわわっ!? は、速っ!?」
ドドドドド――!!!
物凄いスピードで俺達を乗せて走るミニアイススノーマン達と共に、俺達はエルゲイル辺境伯の元に向かった。
※※※※※※
「辺境伯、また国の役人が来ておりますが……いかがいたしましょう」
「忙しいと追い返せ、イグノル。どうせ辺境伯領の体勢がとか、そんな話であろう。我の管轄下であるのに口出しなど、まっこと不快な奴等よ」
「承知いたしました。では――」
バタン――!!
突然、執務室の扉が大きな音を立てて、強引に開かれた。
氷塊が、コロコロとエルゲイル辺境伯の元へ転がる。
「……氷? 一体何者でしょう。今日の来客はもう無いハズですが」
「何者だ、人か魔物か。我の城内に無言で立ち入るなど、相応の報いを受ける覚悟はできておるんだろうな? 不快だ、さっさと姿を見せよ愚か者!!」
パキパキとひび割れて、氷が割れる。
轟然と怒鳴る辺境伯の元に現れたのは――
「よお、あんたがエルゲイル辺境伯っておっさんか。へぇ、辺境伯ってだけあって身綺麗だな。黒のコートが素敵だ。でも、高魔力の魔石は返してもらおうか」
「何者だ!! 辺境伯に近づくな!! 貴様、どこから――」
「イグノル、下がっているのだ!! こいつ、只者では無いぞ!!」
「!? ッ――承知しました……」
瞬時に相手のレベルを推し量ったのか、エルゲイルは執事を下がらせた。
「……ふむ、我の記憶が正しければ、白髪褐色の隣にいるのは、低俗なアイススノーマン族ではないか。成る程、唯一人の姿になれる貴様が乗り込んで来ているということは、取り返しに来たのだな?」
「私達は低俗じゃありません。あなたの偏った考えは、多くの人を悲しませる。私はあなたを許さない!!」
「許さん、と? 貴様、誰に許可を得て我に口出ししておる? お前ごときが私に物を言っていいと思うか? ……まぁいい。お前らが欲しいのはこれだろう。ゲートクラフト!!」
宙に丸い円を指で描き、宝箱を生成する。
恐らくあの中に、高魔力の魔石があるっぽいな。
「これが欲しいか? ……だが、これはやらんぞ。お前らにやるのは最悪の未来だけだ」
エルゲイルは、一重で吊り上がった鋭い瞳で、侮蔑に塗れた目を俺達に向けた。
ゴゴゴゴゴゴゴ――
巨大な執事室の左右から紫の魔法陣が輝き、何かが蠢く音がする。
俺達の前に現れたのは――
「これは、ゴーレムか? でけぇな……」
五メートルほどの石の塊、丸い紅目をピカリと光らせたゴーレムが四体、俺達を囲んだ。
くすくすと陰惨な笑みで嘲弄するエルゲイル。
「私は国随一と言っても過言ではない実力の召喚術師。貴様らなど、一ひねりだ。どれ、最後にチャンスをやろう。全身全霊、心からの悔悟を見せるならば許してやる。そうでなければ貴様らを牢にぶち込んで――」
パキン――!!
俺の左側にいるゴーレムを手始めに凍らせてみた。
巨大な石の塊が、あっという間に氷の塊へ。
エルゲイルは口が塞がらないようだ。
「あ、ああ……な……ななな、何者だ貴様!!」
「アイススノーマン様だよ!!」
「ク……何を出鱈目な……おいゴーレム!! その脆弱な者共を砕いて豚のエサにしろ!!」
残り三体のゴーレムがのそのそとこちらへ近づいてくる。
鉄の塊みたいに重そうな拳をグググ……と振り上げ、こちらに狙いを定める。
-超スキル、『液体化EX』を使用しますか?-
はい←
いいえ
-超スキル、『液体化EX』を使用します。-
「……は?」
二体のゴーレムの拳は、何も無い大理石の床を打ち抜いた。
もう一体は、ウルリカへ拳を放ったが、ウルリカは氷の盾に守られ無傷。
ゴーレムのパンチは全く通じなかった。
「危ない危ない……」
液体化を使い水になった体を、人化で再び戻す。
「馬鹿な……馬鹿な!! お前らごときが我がゴーレムの拳を防ぐなど、あってはならない……!!」
「違うな、エルゲイル。ウルリカの氷の厚さは、俺達アイススノーマン族の想いの厚さだ。――だからお前に、俺達の氷を砕くことは絶対できねぇ」
「チクショオ……何をしている!! 早く攻撃しろポンコツ共!! 殺してもいい!!」
「おっと、させないよ。もうお前は終わりだ。――氷銃!!!」
ドンドンドン――!!
ゴーレムの頭部目掛けて、指で氷銃を放つ。
高速で放たれた氷銃は容易くゴーレムの頭部を射抜き、ゴーレムは形を失って魔力の結晶へ変わった。
「……さて」
「ひっ!!」
ゴーレムを瞬殺されたエルゲイルは、完全に怖気づいていた。
「この宝箱は貰っていくぞ」
「まて貴様ぁ!! 辺境伯に盾突きおって、どうなるか分かっているのか――」
「腰抜かしたまま言われても怖くねーよ。……それは後から考えるさ。とにかく、皆を人化させるのが先だ。じゃあなエルゲイル。お前のゴーレム悪くなかったぞ。行こう、ウルリカ」
「はい!! ……これを機に反省してください、辺境伯。私達アイススノーマン族は弱くありません」
「聞いていればゴチャゴチャと偉そうなことを……低俗な雪玉風情がぁ……」
「反省ナシか。執務室を氷塗れにしちゃったし、反省してたら溶かしてやろうと思ったのに。まぁ、これはプレゼントってことで頼むわ。んじゃ、メリークリスマス!!」
「は……? メリ? ……ブッ!!」
聞き慣れない異世界語に困惑するエルゲイルの顔に雪玉を投げた後、俺達は屋敷を後にした。
※※※※※※
「どう? ミニアイススノーマンの乗り心地は。快適か、ウルリカ?」
再びミニアイススノーマンを呼び出して、俺達は帰路を辿っていた。
「はい。とても快適です!!」
「そっか。よかった」
「あの……ギンガさん」
「何だ? 何かあったか?」
ウルリカは少し及び腰になって、遠慮気味な表情で――
「もしよかったら、私達にお力添えいただけないでしょうか!!」
「お力添え?」
「はい。この世界では、私達ミニアイススノーマン族は奇怪な存在として、笑われたり気味悪がられたりしています。私はそれを変えたい。種族なんて関係なく皆が幸せに暮らせる、そんな世界を創りたいんです――!!」
「――――」
言い終えてすぐ、ウルリカの頬が赤らみ、火照る。
「あ、あのっ! 理想論だとは分かっています……でも――!!」
「……分かった。やるよウルリカ。俺は、やってみせる」
「……え? あの、いいんですか……? 私達に協力なんて……あなたの力はアイススノーマンという枠組みから――」
「関係ないね。俺はアイススノーマン族だ。ここに来たばかりだけど、俺はこの種族に誇りを持ってるよ。いいじゃん、皆が幸せに暮らせる世界。ウルリカ、一緒に創ろうよ。俺とお前で、二人の雪だるまで世界を変えようぜ!!」
そう言って、俺はウルリカに手を差し出す。
それを見てウルリカは――
「……嬉しい、です。今まで、本気でこの夢を受け入れてくれる人はいなかったから。私達でこの世界を変えましょう。きっと!!!」
俺の手を握り返し、燦然と輝く柔らかい笑顔で、そう言って微笑んだのだった。
※※※※※※
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でも、俺には夢がある。
二人の雪だるまが共に創ろうと約束した、壮大な理想郷。
その夢を叶えるため、今日も俺は奮闘する。
「ああいいさ、やってやる。創ってやろうじゃないの。雪だるまが、平和で皆が幸せに暮らせる世界を――――!!」
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