秋良のシェアハウス。(ワケあり)

日向 ずい

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阿久津ルート(主に秋良目線。)

阿久津さんの過去

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 俺は阿久津さんと向き合う形で小さい机を挟んで向かい合って座っていた。
 俺は、阿久津さんに
「...あの...阿久津さん...単刀直入に聞きます...その...過去に何かあったんですか...??...さっきの水樹くんに対しても明らかにいつもの阿久津さんからは、考えられないような...。」
そう言って言葉に困っていると阿久津さんは、一息置いてから口を開いた。
「...その...もう隠しておく必要も無いし言っておくことにする...ハァ......俺は、昔...弟の巧(たく)を殺してしまった...。」
「...えっ...。」
俺は、あまりに突然だったため言葉が出てこなかった...。
そんな俺のことは、特に気にした様子もなく阿久津さんは、淡々と語り出した。
「...俺の家族は...どこか変だった...。そのせいもあってか、あの頃の俺は、グレてて...ろくに家にも帰ってなかった...いや......正確には、わざと帰らなかったんだ...俺の親は、俺たちに暴力を...俺は、殴られるのが嫌だったからいつも親が帰ってくる時間は、外に出ていることにしていた。...でも、そのせいでいつも巧(たく)が親のストレスのはけ口になっていたんだ...巧のあざは、日に日に大きくなっていった...あの時に俺が止めていれば巧は、この世を去ることもなかったのかもしれない......ある日、いつものように俺は学校から帰って自室にカバンを置いてから遊びに行こうと思って、部屋のドアを開けたんだ......そしたら...目の前には、血の水溜りが出来ていた...目の前で...巧が...首を切って...倒れていた......(泣)...巧は、血だらけの手で遺書を握っていた...遺書には『...俺は、もう耐えられない...りゅーにーちゃん...こんな...悪い弟でごめんなさい...でも、りゅーにーちゃんのことは、永遠に大好きだから...だから、俺が死んだことで母さんと父さんが間違いに気づいてくれたらりゅーにーちゃんも、夜に外に出ていかなくてよくなるよね。だから、りゅーにーちゃんは、これからの人生を俺の分まで楽しんでね。今までありがとう。さよなら...。』って書いてあったんだ...あいつは...俺が、毎夜出ていっていた理由を知っていたんだ......でも、何も言わなかったんだ...あの時、巧も連れて家を出ていれば...巧は、死ななかったのかもしれない......俺が...俺が巧を殺したんだ...。巧は、俺にとって宝物だった...でも、家族写真なんて...俺の家族は1枚もとってくれたことがなかった...だから、もう巧の顔を見る事も出来ないんだ...。それで俺は、虎太郎が秋良の写真をなんの考えもなく奪ったから激しく怒ってしまったんだと思う...。...あの頃の俺の後悔を思い出して...。」
と言って俺の目の前では、ずっと俯いて自分を責めている阿久津さんに、俺は...気がついたら言葉を発していた。
「...その...阿久津さんは、悪くない...だから、ずっと自分を責めるのはやめてください...弟さんもきっとずっと阿久津さんがこんな調子だと安心して天国に行けないかもですし......だから、その...これからは...俺で良かったら、阿久津さんの弟に...。」
と言った瞬間、阿久津さんに抱き締められていた。俺は、一瞬何が起こったのか理解出来なかったが、すぐに
「...えっ...その...阿久津さん!??」
と言ってじたばたと阿久津さんから逃れようとすると阿久津さんは
「...秋良...もう少し...このままで......いさせてくれないか...。」
と言ってすすり泣く音が耳元で聞こえて...俺は...ただ黙って阿久津さんの背中をさすっていた。
しばらくの間、阿久津のすすり泣く音が暗い部屋に響き渡るのであった...。
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