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第2章 「愛のカタチは、複雑である。」
「母親が毒親に...。(愛音視点)」
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「母さん....今少しいいかな。話したいことがあるんだ。」
「....???何かしら???愛音からお母さんに声を掛けることなんて珍しいわね。」
「うん、少し話したいことがあって.....とても大切な事なんだ。」
「はぁ....分かったわ。」
俺は成績、素行、容姿などなど、自分で言うことではないが、人よりも幾分も優れていた。
そんな俺には、何をさせても平凡な弟がいて....母親は、弟より優れている俺のことを、分かりやすく特別扱いしていた。
「愛音は、ほんとに出来がいいわね。拓三は何をやらせても、平凡なみにしか出来なくて....ほんと、誰に似たのかしら????(笑)」
トゲのある言葉が、いつしか母親の口癖になっていた。
ちょうどこの頃からだ....俺が母親の考え方に疑問を覚えたのは....。
平凡ってなんだ....出来が良いってなんだ.....出来が良かったら....誰かよりも優れているからと言って、それが一体何になるって言うんだ????
出来ること出来ないことは、個性なんじゃないのか???
個性に優劣をつけることは、果たして本当に正しいことなんだろうか????
それに何を良いと感じるのかは人それぞれだ....母さんは拓三のことを酷くけなしているが、俺は拓三が羨ましいし、素敵な人間だと思っている。
母さんは俺がすごいって言っているけど....俺は、男が好きなんだよ....母さんは俺の本性を知っても、変わらずに凄い人だって言ってくれるの????
物心ついた時からこう考えていた俺は、今日母親に自身の悩みについて打ち明けようと考えていた。
俺に期待してくれている母親なら、きっと俺のすべてを受け入れてくれると思ったから。
こう思った俺は、リビングにいた母親に勇気を振り絞って声を掛け、話をすることにしたのだった。
「母さん、話って言うのは.....俺の性別についてなんだ。俺はね、今までずっと母さんや父さんのことを考えて自身の中に押し殺していたんだけど....俺は、その.....男の人に惹かれるんだ。つまり...恋愛対象が男性なんだ.....母さんは、分かってくれるよね。」
言いにくそうにこう話をした俺に向かって、母親は優しい笑顔とは裏腹にとても冷たい声色で、目の前に座る俺にこう告げたのだった。
「.....話はそれだけ????....男の人に惹かれるなんて、あなたはまたとんでもない冗談を口にするのね。いくら全てが優れているからといって、そんな気持ちの悪い冗談を言って良いはずがないわ。愛音、貴方はこれからもっともっと自分を磨かなければならないのよ????拓三はもうダメなの...なんの取り柄もないあんな子、羽馬家の恥だわ!!!それくらい、あなたにも分かるでしょ???そのことを理解しているのかしら????....分かったら、もう二度とそんな下品で評価を下げるような発言をしないで頂戴。」
「....っ.....すっ....すみませんでした。」
想定外だった....俺の中で何かが崩れ落ちた気がした。
俺は勇気を出して母親に打ち明けたのに、あろうことか俺のその勇気を冗談だと...下品であると言ったのだ。
母親になら、受け入れて貰えると思っていたのに....俺が自分の性に対して、どれだけ悩み続けていたと思っているんだ。
....そういうことか....俺が欲を張り過ぎたんだ。
拓三よりも親に愛されていたにも関わらず、俺の悩みについてまで理解して貰おうと欲を張ってしまったから、今あるものを壊すことになってしまったんだな....。
そっか....人間とは、欲を張ることにより全てのものを失ってしまう生き物なんだな。
....俺は静かになったリビングで、独りソファに腰を下ろしながら、あふれ出す涙を何度も拭いつつ...幼いながらも我慢という言葉を実体験で覚えたのだった。
俺はこの日以降....自我を抑え、極力人に関わらず、必要以上のことを望まないように、日常生活を送るようになっていった。
本当は.....全てを受け入れてくれる人に、甘やかされたいんだ....誰でもいい、ただ俺に溢れんばかりの愛情を注いでくれる人であれば、それだけで十分だ。
誰か俺に、安らげる時間を与えてくれないだろうか...。
「....???何かしら???愛音からお母さんに声を掛けることなんて珍しいわね。」
「うん、少し話したいことがあって.....とても大切な事なんだ。」
「はぁ....分かったわ。」
俺は成績、素行、容姿などなど、自分で言うことではないが、人よりも幾分も優れていた。
そんな俺には、何をさせても平凡な弟がいて....母親は、弟より優れている俺のことを、分かりやすく特別扱いしていた。
「愛音は、ほんとに出来がいいわね。拓三は何をやらせても、平凡なみにしか出来なくて....ほんと、誰に似たのかしら????(笑)」
トゲのある言葉が、いつしか母親の口癖になっていた。
ちょうどこの頃からだ....俺が母親の考え方に疑問を覚えたのは....。
平凡ってなんだ....出来が良いってなんだ.....出来が良かったら....誰かよりも優れているからと言って、それが一体何になるって言うんだ????
出来ること出来ないことは、個性なんじゃないのか???
個性に優劣をつけることは、果たして本当に正しいことなんだろうか????
それに何を良いと感じるのかは人それぞれだ....母さんは拓三のことを酷くけなしているが、俺は拓三が羨ましいし、素敵な人間だと思っている。
母さんは俺がすごいって言っているけど....俺は、男が好きなんだよ....母さんは俺の本性を知っても、変わらずに凄い人だって言ってくれるの????
物心ついた時からこう考えていた俺は、今日母親に自身の悩みについて打ち明けようと考えていた。
俺に期待してくれている母親なら、きっと俺のすべてを受け入れてくれると思ったから。
こう思った俺は、リビングにいた母親に勇気を振り絞って声を掛け、話をすることにしたのだった。
「母さん、話って言うのは.....俺の性別についてなんだ。俺はね、今までずっと母さんや父さんのことを考えて自身の中に押し殺していたんだけど....俺は、その.....男の人に惹かれるんだ。つまり...恋愛対象が男性なんだ.....母さんは、分かってくれるよね。」
言いにくそうにこう話をした俺に向かって、母親は優しい笑顔とは裏腹にとても冷たい声色で、目の前に座る俺にこう告げたのだった。
「.....話はそれだけ????....男の人に惹かれるなんて、あなたはまたとんでもない冗談を口にするのね。いくら全てが優れているからといって、そんな気持ちの悪い冗談を言って良いはずがないわ。愛音、貴方はこれからもっともっと自分を磨かなければならないのよ????拓三はもうダメなの...なんの取り柄もないあんな子、羽馬家の恥だわ!!!それくらい、あなたにも分かるでしょ???そのことを理解しているのかしら????....分かったら、もう二度とそんな下品で評価を下げるような発言をしないで頂戴。」
「....っ.....すっ....すみませんでした。」
想定外だった....俺の中で何かが崩れ落ちた気がした。
俺は勇気を出して母親に打ち明けたのに、あろうことか俺のその勇気を冗談だと...下品であると言ったのだ。
母親になら、受け入れて貰えると思っていたのに....俺が自分の性に対して、どれだけ悩み続けていたと思っているんだ。
....そういうことか....俺が欲を張り過ぎたんだ。
拓三よりも親に愛されていたにも関わらず、俺の悩みについてまで理解して貰おうと欲を張ってしまったから、今あるものを壊すことになってしまったんだな....。
そっか....人間とは、欲を張ることにより全てのものを失ってしまう生き物なんだな。
....俺は静かになったリビングで、独りソファに腰を下ろしながら、あふれ出す涙を何度も拭いつつ...幼いながらも我慢という言葉を実体験で覚えたのだった。
俺はこの日以降....自我を抑え、極力人に関わらず、必要以上のことを望まないように、日常生活を送るようになっていった。
本当は.....全てを受け入れてくれる人に、甘やかされたいんだ....誰でもいい、ただ俺に溢れんばかりの愛情を注いでくれる人であれば、それだけで十分だ。
誰か俺に、安らげる時間を与えてくれないだろうか...。
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