兄貴による俺のための指導法

日向 ずい

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第1章 「俺と兄貴の日常。壊れだす関係。」

「俺と兄貴。」

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 俺は、どこにでもいる普通の男子高校生だ。

 可愛い彼女がいて、勉強も運動もそこそこ出来て、そして容姿も中の上だ。

 バレンタインでも、俺は一定数の女子からチョコレートをもらうことができ、クラスの男子からは羨ましがられている。

 一見充実しているように見える俺の日常生活だが、俺には耐えきれないほどのある深刻な悩みがある。

 友達からは、可愛い美人の巨乳彼女がいるし、容姿端麗のくせして何処に悩みの種があるんだよ!!!と鋭い指摘を受けるが、そんなことは関係ない。

 ストレスはストレス。

 嫌なことは、どれだけ恵まれていても嫌だし、耐えられない。

 そう...その悩みの種とは....「ただいま~。」と言い、俺はかったるいと思いながらも玄関で革靴を脱ぎ、自分の部屋がある2階に向かうため、階段へと足を進めていた。

 すると目の前には、俺のストレスの原因を作り出した張本人である兄貴が、2階へと続く階段の前で仁王立ちをして、俺のことをとおせんぼしていた。

 俺はいつものことにイライラして、目の前に立ち塞がる兄貴に鋭くガンを飛ばすと、

 「何???俺疲れてるんだけど...。毎回毎回よく飽きないよね???....言いたいことがあるならさ、はっきり言いなよ。いい大人が、みっともないんじゃないの???」

 と言って、兄貴の様子を伺った。

 すると兄貴は、俺の顔を綺麗な茶色の瞳で見つめると薄く微笑み

 「ん???何って....拓三を怒らせて暇つぶししてんの。おまえさ...どうでもいいんだけど、彼女とあんまり遊びすぎんなよ???あんまり頻繁にやってたら、勃つもんも、いざというときに勃たなくなって困ることになるぞ???」

 と言い、俺の下腹部辺りをさらっと触ると、鼻で軽く笑い、ガンを飛ばし続ける俺を馬鹿にしたような顔を向けて、玄関で靴を履くとそのまま会社に向かっていったのだった。

 俺は、兄貴がいなくなった途端、気持ちが悪くなりそのまま階段を駆け上がり、自室へと駆け込んだのだった。

 兄貴はいつもそうだ。

 俺のことをからかうのがそんなに楽しいのか、何かにつけて俺に絡んでくる。

 正直、本当にもうやめて欲しいと思っているぐらい、俺の精神は限界寸前だった。

 俺は、こんな兄貴が大嫌いだ。

 いや....なにも、昔からこんな感じだったわけじゃない。

 兄貴が変わってしまったのは、俺が高校に入学してから暫くして、初めての彼女が出来た頃からだった。

 兄貴は、生まれてから今までずっと彼女がいないんだ。

 ....いや、いないんじゃない。

 わざと作らないんだと思う。

 だって、兄貴は俺よりも容姿端麗で、さらに頭、運動神経すべてにおいて恵まれているやつなんだから。

 そんな兄貴を、世の女性がほったらかしにしておくわけがない。

 過去に言い寄ってくる女性は、数えきれないほどいたに違いない。

 俺に彼女がいることが、妬ましいのなら兄貴も彼女を作ればいいだけの話だと俺は思っていた。

 だって、そうだろ???

 兄貴は、俺以上にモテるんだ。

 可愛い子なんて、五万と手に入るだろうし....どうして俺を毎日毎日からかっては、ケラケラ笑って飽きずに突っかかってくるんだろうか。

 はぁ....何回考えてみても兄貴の考えていることが、俺にはまったく理解できない。

 これが頭のいい兄貴と、中ぐらいの俺との差なのかな???

 あー!!!!!なんかイライラしてきた。

 くそっ、あんな意地悪兄貴のことなんてもう考えるのはやめよ!!!

 イライラして、自分の寿命縮めるだけだし....。

 というよりも、兄貴めっ!!!

 さっき兄貴が触ったところ、あいつ...俺が弱い場所だって知ってて、わざと触ったな....。

 そのせいか、さっきから興奮して悔しいが勃っちまったじゃねぇーかよ!!!!

 だぁー!!!!これ...一回抜かないと駄目なやつだ。

 はぁ、毎回兄貴に触られた後で自分を慰めるのは....なんだか兄貴に負けた気がして、納得いかねぇ....。

 まぁ、とりあえず始末するか...。

 ...俺が兄貴を嫌う理由は、兄貴が俺に突っかかってくることも確かなのだが、もうひとつは....兄貴に触れられることで、何故か自然と興奮している俺の知らない俺がいて、そいつを知らず知らずのうちに呼び覚ましちまうってことだ。

 そんなことを考えながら、俺は今日も兄貴に絡まれた後の後処理を行うのだった。

 正直言うと....兄貴とは、高校に入学する前の仲の良い兄弟に戻りたい。

 だけど、きっと兄貴はそれを望んじゃいないんだろうな....。
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