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第五章 「変化する情勢と共に。」

「リル....俺、リルの事....。」

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 「リル....話があるんだ。」

 「....????俺も、お前に話があるんだ。」

 アランは、ナノと話をした後、足早に自身の部屋に戻り、部屋のソファに腰を下ろしていたリルに震える声でこう話しかけた。

 一方リルは、そんなアランに首を傾げながら、アランをソファへと座るように促した。

 リルは、アランがソファに腰を下ろすと同時に、改まった様子でこう短くアランに告げた。

 「アラン...祖国であるアバルント・フォーズに帰れ。....これは、一国の国王としての命令だ。」

 リルのこの言葉にアランは、口を大きく開け激しく動揺すると、声を荒げて目の前のリルにこう言い放ったのだった。

 「馬鹿言うなよっ!!!!!!なんで急に!!!!....嫌だ、祖国には帰らない!!!....俺は....俺は、お前が好きだ。....大好きだ。 愛しているよ....最初は、この感情に戸惑っていて上手く表現が出来なかった...。でも、今は違う。リル王子....貴方のことが大好きです。...だから、俺の事を貴方の妃にしてください。....お願いします。」

 アランのこの言葉にリルは、小さくため息をつくと

 「アラン...今から、俺が言うことを真剣に聞いてくれ。俺は、アランがナノに呼ばれて席を外している時に、どうすることがアランにとって一番幸せになれるのかを考えていた。俺には、一度も見せてくれなかった本当の笑顔で笑うことが出来るのは、アランが誰の隣にいる時なのか....。すると答えはすぐに出た。お前に嫌われている俺が、悩むまでも無かった....アランは、祖国であるアバルント・フォーズに戻ることが一番幸せになれると....こう考えて。アランもそうだろう???祖国のお母様に対して、届かない手紙を日々綴っているくらい....それぐらい、祖国に帰りたかったのだろう???正直で良い、もう自分の為に嘘はつかなくて良いんだ。俺は、アランが幸せで、毎日最高の笑顔で笑っていてくれるのであれば、それだけで....。」

 と言い、アランにとびきり優しい表情を向けて微笑んでいた。

 そんなリルの様子に、アランは自身の心の中で何かが切れた音に気付いた。

 そして.....その瞬間アランは、ソファを立ち上がると、リルが腰掛けているソファに勢いよく近づいていき、そんなアランの行動に驚いた表情を浮かべているリルをソファに勢いよく押し倒すと、そのままリルの唇を強引に塞いだのだった。

 「っ.....アランっ....なにして....んっ....んんっ!!!」

 「リル....黙ってて。リルは俺の気持ちを、こうでもしないと分かってくれないみたいだから。俺の血...まずいかも知れないし...それに、キスもリルとしかしたことがないから、少し痛いかも知れないけど...我慢して。これは、俺のリルに対する気持ちだから。そして俺と、ナノに仕組まれたものとは、比にならないぐらい深い契約を...。」

 「は???....それってどういう....っ!!!(痛っ....なんだ....っ、鉄の味がする...もしかして、アランが俺の唇を噛んだのか???これは、血の契約....つまり、アランは俺と永遠に生きていきたいってそういう....っ。アラン....。)」

 「っ...ん....んんっ....リル....ちょっ....くちはなし....っ....んっ!!!!(苦しっ...というよりも、痛いっ!!!!何!???....今、唇を強く噛まれた気が....っ、鉄の味....リルが、俺の唇を噛んだってこと???もしかして、血の契約???リルも、俺と血の契約を交わしてくれたの???それは....俺と共に生きていきたいってこと??俺、こんなこと慣れていないから、素直に信じてしまうよ....本当に、リルの気持ちを信じても良いの???っ、リル...大好き、良かった。ナノのお陰だ...それに、リルに噛まれたところは、ジンジンと痛いけど....でも、なんでだろう???リルのキスが優しくて、俺に触れる手も俺を見つめてくれるこの優しい瞳が、唇の痛みを中和してくれるぐらい心地よくて、温かで.....もっとリルのぬくもりに触れていたい....母さん....こんなことを、自分勝手に思ってしまう俺は...欲張りですか???母さんの息子として、よくないことですか???)」

 リルとアランは互いに唇を噛み合い、より色濃い血の契約を交わすと、両者無言のまま更に互いを求め合い、そして欲望のままにこの時間ときを過ごしたのだった。

 「はぁ...ねぇ、リル....様???」

 「ん???様付けって....俺の妃なんだから、様付けはどう考えても可笑しいだろう???(笑)リルで良いよ、どうした...アラン???」

 「....うっ、分かったよ...じゃあ...リル??その...ナノから聞いたんだ....リルが、俺のために命を懸けてくれていたって....俺、そんなこと全然知らなくて....だから、リルに酷い態度をとってばかりいて、本当にごめんなさい。」

 「....。(...っ、たく。ナノの奴は...毎回余計なことを言いやがって。)....アラン????こっちにおいで???俺が、お前を強く抱きしめて....そして、どれだけアランのことを大切に思っているのかを教えてあげる。」

 リルはこう言うと、ベッドに両者向き合う形で横になっているアランに対して、優しく声を掛けたのだった。

 そんなリルの言葉に、アランは頬を赤く染めながら、勢いよくリルに背を向けるとこう呟いた。

 「....嫌です。....いつもリル王子に振り回されているから、今日は....っ、ちょっ!!!!」

 アランの反抗的な様子にリルは、ムラッときてしまい、まだ話をしている途中のアランを、背後からギュッと力強く抱きしめたのだった。

 突然の事に、バタバタと暴れて焦っているアランに対してリルは

 「アラン...大好き。...ずっと、アランをこの手で抱きしめたかった。そして、アランを俺色に染めたかった。....やはり、俺の目に狂いはなかった。その証拠に、アランを抱きしめている今...もの凄く幸せだ。アラン...生まれてきてくれてありがとう。俺の....側に居たいと言ってくれて嬉しかった。...アランが、俺を信じてくれたんだ。俺は、そんなアランを一生守るよ。なにがあっても、俺がアランを守り続けるから....。(あの頃と同じように...。)」

 と言い、アランの首筋に軽くキスを落としたのだった。

 そんなリルの様子に、アランは顔を真っ赤にしながら、リルの方を向くと

 「....リル....俺も、リルに出会えて良かった。.....大好きだよ、リル。でも、リルはモテるから....だから、もし街に可愛い子がいても....絶対に浮気しないでね。(照)」

 と言うと、再度またそっぽを向こうとしたが....アランの言葉に、完全に理性を失ったリルによってそれは見事に阻止され、リルはアランの顎を強引に自身の方に向かせると、息をするまもなく唇を塞いだのだった。

 この日は、最悪で最高に幸せな日として、この二人にとって大事な記念日となり幕を閉じたのだった。

 その頃ナノは....

 「あっ、今声が聞こえた。『....リル、ダメだよ。....もう無理っ...俺、おかしくなりそう....っ!!!!』....えっ....何今の....って、あ~、なるほどなるほど....この感じは上手くいったって事で間違いなさそう。いやぁ、それにしても......アランって、やっぱり可愛いなぁ。....ははっ、いや、これ....ほんとにやばいでしょ....大の大人の男二人が....エロすぎだわ...。(笑)真面目に、これ以上は聞いていられない....しばらくは、二人の声だけ耳からシャットアウトさせておこうっと...。そして、この話題は今度リルと飲みに行くときに話の題材にしたら、きっとリルのことだ。面白い反応を示してくれるんだろうなぁ。はぁ~、楽しみだな~。さぁて、僕も自分の店に戻って、ロファンの服作りを頑張らなくちゃね!」

 と言い、エルミナ国城内から自分のお店へと足を進めたのだった。
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