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第二章 「俺の生活。」
「池のほとりの青年。」
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「...はぁ......牛乳臭い...。とうとうやっちゃったなぁ...。でもまぁ、もう限界だったし??それに...王子も俺に冷たい目を向けていたし??......あれだけの事をやったんだ。王子にも、幻滅されて当然だ。...それにしても、マティの取り巻き2人に後片付けを命じられるなんて、ついてない...。」
俺は、ダットとペシュに散々暴言を吐かれた後に、頭から紅茶用のミルクをぶっかけられ、終いには、ハチャメチャになったお茶会用のテラスの片付けを命じられたのだった。
そんなこんなで、渋々掃除を始めた俺の元に、一人の使用人が声をかけてきた。
「リオン様??...後片付けなど、我々使用人に任せてくだされば、やっておきますゆえに、いち王族関係者であるあなた様がそんな事なさらなくても、よろしいのでございますよ??」
なんて悲しそうな顔をした使用人に俺は、にっこりと微笑むと
「いえ...自分でしたことですし...。それに私は、元々庶民の田舎者ですし、今や王族関係者でもなんでもないですから、最後にこれぐらいのことはさせて下さい。」
と言って、手に持っていた雑巾で拭き掃除を再開させたのだった。
そんな俺の様子に、それ以上何も言うことが出来なくなったのか、使用人は、ぺこりと頭を下げると、元の持ち場へと戻っていった。
はぁ、全く...使用人様も懲りないよな...というよりも、心配されたって...やられている時に助けてくれないなら、信用ならないってもんだよな...。(笑)
どうせ、マティ達に虐められている俺の姿をただ見ることしか出来なくて、自分の胸が苦しいから、少しでも楽になりたい一心で、声を掛けて来たんだろうし...煌びやかな世界に裏があるっていうのは、どこに行っても同じなんだな...。
実に、住みにくい世の中だよ...。
俺は、内心呆れながら丁寧に床を拭き終えると、掃除用具を近くを通りかかった使用人に手渡し、
「あの...この度は、大変失礼を致しました。その....マティ様には、また改めて謝罪に来させていただきたいとの旨を、お伝え願えますでしょうか??よろしくお願い致します。すみません...失礼します。」
と言って、何か言いかけていた使用人をそのままに、俺は早く独りになりたかったため、走って城を飛び出したのだった。
俺は必死に走り、そうしてたどり着いた先は、ナノの家ではなく....ある山奥の小さな湖のほとりだった。
闇雲に走った割には、案外いい場所にたどり着いたな。
俺は、こう思いながら、目の前に広がる静かな湖の様子に、アバルントフォーズに居た頃...小さかった頃だが、家の近くにあった湖でよく水浴びをしていたことを思い出し、何のためらいもなく、湖に飛び込んだのだった。
「...ぷはぁ!!!!やっぱり庶民で田舎者には、これが一番似合ってるよ。ほんと...似合いすぎて....うっ....ううっ....うわぁああああああああ!!!!!あの馬鹿王子め!!!!!!何がいけないって言うんだよ!!!!!なんで....嫌がらせするぐらい嫌いなら、なんでわざわざ妃候補になんてしたんだよ!!!!!!意味分かんねぇよ!!!!!!くそっ!!!!!!」
こんなことを言いながら、俺はこれまで溜めてきていた不満を、一気に爆発させたのだった。
そうしてある程度、気分が落ち着いた頃、背後から先程まで感じていなかったはずの強い視線を感じ、恐る恐る後ろを振り返った。
するとそこには...
「...いやぁ、ごめんね???盗み聞きするつもりはなかったんだ。その~、ねぇ~....なんか泣いている声が聞こえるなぁ~って思ったら、湖の中で女の子がずぶ濡れになって泣いているんだもん??流石に、気になっちゃうよね...???(汗)」
と言って、頭を掻いている18歳ぐらいだろうか???
綺麗な顔をした、茶色の髪が印象的な青年が立っていたのだ。
あー、そう言えば余談だが...王子の髪色は金髪だったな。
青年は、どうやら俺の事を男の子だとは気付いていないのか、少し気が抜けているように思える。
まぁ、この際...好都合かもだけどな??
気さくに声を掛けてきた青年に、俺はどうしたらよいものか考えていたが、もしかしたら、王子に頼まれて俺の事を探しに来た輩かもしれない。
とふとこう考えると、口より先に足が動いていた。
俺は、水で濡れた重たいドレスを引き摺りながら、青年から逃げるために湖から勢いよく這い上がり、走って山を下ろうとした。
だが、水で濡れたドレスの重みと青年の足の速さには、農作業で鍛えた俺の足でも敵わないらしい...。
あっという間に追いつかれてしまい、俺は腕を掴まれ、捕まってしまったのだった。
「はぁ....君って、案外やんちゃな女の子なんだね...。でも俺、そういうの嫌いじゃないよ???...って、ごめん。ナンパしてるわけじゃないんだ。誤解しないでね???その...やっぱり、もう夕刻も過ぎ去ってるのにさ....こんな人気の無い湖で泣いているなんて、気になるじゃん???もし良かったら、話聞くよ???」
こう言った青年に俺は、びっくりしてぱっと後ろを振り返り、背後に立っている青年を見つめた。
すると青年は、困った顔で俺の事をじっと見つめていたこともあり、不意に目が合った。
その瞬間、俺はなんだか気恥ずかしくなり、青年からわざとらしく目をそらすと、
「...その...今からお話しすることは、誰にも言わないって、約束していただけませんか???」
と言って、青年の出方を窺うと青年は、にっこりと微笑み
「もちろん、誰にも言わないよ。....ほら、風邪をひいちゃうとあれだし、俺の上着を貸してあげるから、湖の縁に座ってゆっくり話そうか???」
と言い、慣れた手つきで俺の肩を軽く抱くと、そのまま湖の縁まで歩いていき、その場に腰を下ろすと、話をすることになった。
そして、全てを聞き終えた青年は、難しい顔をしたまま俺の方を見ると
「...そんな王子なんて捨ててさ...。俺のところに来なよ??俺の家なら、お母さんも一緒に暮らせるし...仕事も紹介してあげられる。ね???悪い話じゃないだろ??」
と言って、俺の手をさりげなく握ってきた。
何となく思っていたが、もう一度言う。
やっぱり俺は、コイツに男として見られていないんだ...くそっ!都合はいいはずなのに、なんか悔しい...っと言うか納得いかない。
しかも、若干誘われている気がするし...下心見え見えなんだよ!!!
18歳...恐るべし...。
こんな事を内心考えつつ、ちょっとチャラい様子の、青年の手を軽くすり抜け
「...いいお誘いですね。...でも、話を聞いて頂けただけで十分です。ありがとうございます。」
と、100パーセント作り笑いの笑顔で告げた。
俺の軽い拒絶に、若干しょぼくれているのか、悲しい顔をした青年に、俺は少しだけ悪い気がしてしまい、青年に続けてこう質問をした。
「あの...失礼ですが...お名前を聞いても??」
俺のこの質問に、さっきまでしょぼくれていたはずの青年はどこへやら。
一変して、今度は嬉しそうな表情で
「俺の名前は、ロファンっていうんだ。君の名前は???誘い断られちゃったけど、ここで逢ったのも何かの縁だし、名前ぐらいは教えて欲しいなぁ~なんてね。(笑)」
と言い、くしゃりと笑った顔で、目の前に座っている俺を見つめてきたのだった。
俺はどうしようかと迷いながらも、
「私の名前は、リオンです。どうぞよろしくお願いします。」
と声をかけたのだった。
いや、正確には、声を掛けざる負えなかったのだが....名乗らなかったら、こいつまた泣きそうな顔するだろうし...あとあと、面倒くさそうだったからな...。
そんな俺の心情は、全く知らないロファンは、何食わぬ顔で、握手を求めてきたのだった。
さすがの俺も、この要求は焦った。
いくら鈍感そうなロファンでも、このままここで、俺がこいつの手を取り、握手をしてしまっては、今度は本当に俺が男だってコイツにばれるだろうからな....。
かといって、何か行動を起こさなければ、それこそ怪しまれる原因になるし....どうしたものか...。
こう色々考えた末に、俺がロファンとの握手に応じようと、手を差し出した瞬間...
「おい、お前。俺の大事なフィアンセに何をしている。」
という、低く唸るような...聞いただけで、怒っていることが分かる声が聞こえてきた。
その声にとても嫌な予感がしてしまい、俺は恐る恐る後ろを振り返った。
そんな、俺の予想は見事に的中した...。
俺が振り返った先には....王子が額に汗をにじませながら、眉間に皺を寄せてこちらを見つめて立っていた。
この時、俺は知らなかったのだ....。
リル王子が、俺がいなくなった後に、必死で俺の事を探してくれていたなんてこと...。
俺は、ダットとペシュに散々暴言を吐かれた後に、頭から紅茶用のミルクをぶっかけられ、終いには、ハチャメチャになったお茶会用のテラスの片付けを命じられたのだった。
そんなこんなで、渋々掃除を始めた俺の元に、一人の使用人が声をかけてきた。
「リオン様??...後片付けなど、我々使用人に任せてくだされば、やっておきますゆえに、いち王族関係者であるあなた様がそんな事なさらなくても、よろしいのでございますよ??」
なんて悲しそうな顔をした使用人に俺は、にっこりと微笑むと
「いえ...自分でしたことですし...。それに私は、元々庶民の田舎者ですし、今や王族関係者でもなんでもないですから、最後にこれぐらいのことはさせて下さい。」
と言って、手に持っていた雑巾で拭き掃除を再開させたのだった。
そんな俺の様子に、それ以上何も言うことが出来なくなったのか、使用人は、ぺこりと頭を下げると、元の持ち場へと戻っていった。
はぁ、全く...使用人様も懲りないよな...というよりも、心配されたって...やられている時に助けてくれないなら、信用ならないってもんだよな...。(笑)
どうせ、マティ達に虐められている俺の姿をただ見ることしか出来なくて、自分の胸が苦しいから、少しでも楽になりたい一心で、声を掛けて来たんだろうし...煌びやかな世界に裏があるっていうのは、どこに行っても同じなんだな...。
実に、住みにくい世の中だよ...。
俺は、内心呆れながら丁寧に床を拭き終えると、掃除用具を近くを通りかかった使用人に手渡し、
「あの...この度は、大変失礼を致しました。その....マティ様には、また改めて謝罪に来させていただきたいとの旨を、お伝え願えますでしょうか??よろしくお願い致します。すみません...失礼します。」
と言って、何か言いかけていた使用人をそのままに、俺は早く独りになりたかったため、走って城を飛び出したのだった。
俺は必死に走り、そうしてたどり着いた先は、ナノの家ではなく....ある山奥の小さな湖のほとりだった。
闇雲に走った割には、案外いい場所にたどり着いたな。
俺は、こう思いながら、目の前に広がる静かな湖の様子に、アバルントフォーズに居た頃...小さかった頃だが、家の近くにあった湖でよく水浴びをしていたことを思い出し、何のためらいもなく、湖に飛び込んだのだった。
「...ぷはぁ!!!!やっぱり庶民で田舎者には、これが一番似合ってるよ。ほんと...似合いすぎて....うっ....ううっ....うわぁああああああああ!!!!!あの馬鹿王子め!!!!!!何がいけないって言うんだよ!!!!!なんで....嫌がらせするぐらい嫌いなら、なんでわざわざ妃候補になんてしたんだよ!!!!!!意味分かんねぇよ!!!!!!くそっ!!!!!!」
こんなことを言いながら、俺はこれまで溜めてきていた不満を、一気に爆発させたのだった。
そうしてある程度、気分が落ち着いた頃、背後から先程まで感じていなかったはずの強い視線を感じ、恐る恐る後ろを振り返った。
するとそこには...
「...いやぁ、ごめんね???盗み聞きするつもりはなかったんだ。その~、ねぇ~....なんか泣いている声が聞こえるなぁ~って思ったら、湖の中で女の子がずぶ濡れになって泣いているんだもん??流石に、気になっちゃうよね...???(汗)」
と言って、頭を掻いている18歳ぐらいだろうか???
綺麗な顔をした、茶色の髪が印象的な青年が立っていたのだ。
あー、そう言えば余談だが...王子の髪色は金髪だったな。
青年は、どうやら俺の事を男の子だとは気付いていないのか、少し気が抜けているように思える。
まぁ、この際...好都合かもだけどな??
気さくに声を掛けてきた青年に、俺はどうしたらよいものか考えていたが、もしかしたら、王子に頼まれて俺の事を探しに来た輩かもしれない。
とふとこう考えると、口より先に足が動いていた。
俺は、水で濡れた重たいドレスを引き摺りながら、青年から逃げるために湖から勢いよく這い上がり、走って山を下ろうとした。
だが、水で濡れたドレスの重みと青年の足の速さには、農作業で鍛えた俺の足でも敵わないらしい...。
あっという間に追いつかれてしまい、俺は腕を掴まれ、捕まってしまったのだった。
「はぁ....君って、案外やんちゃな女の子なんだね...。でも俺、そういうの嫌いじゃないよ???...って、ごめん。ナンパしてるわけじゃないんだ。誤解しないでね???その...やっぱり、もう夕刻も過ぎ去ってるのにさ....こんな人気の無い湖で泣いているなんて、気になるじゃん???もし良かったら、話聞くよ???」
こう言った青年に俺は、びっくりしてぱっと後ろを振り返り、背後に立っている青年を見つめた。
すると青年は、困った顔で俺の事をじっと見つめていたこともあり、不意に目が合った。
その瞬間、俺はなんだか気恥ずかしくなり、青年からわざとらしく目をそらすと、
「...その...今からお話しすることは、誰にも言わないって、約束していただけませんか???」
と言って、青年の出方を窺うと青年は、にっこりと微笑み
「もちろん、誰にも言わないよ。....ほら、風邪をひいちゃうとあれだし、俺の上着を貸してあげるから、湖の縁に座ってゆっくり話そうか???」
と言い、慣れた手つきで俺の肩を軽く抱くと、そのまま湖の縁まで歩いていき、その場に腰を下ろすと、話をすることになった。
そして、全てを聞き終えた青年は、難しい顔をしたまま俺の方を見ると
「...そんな王子なんて捨ててさ...。俺のところに来なよ??俺の家なら、お母さんも一緒に暮らせるし...仕事も紹介してあげられる。ね???悪い話じゃないだろ??」
と言って、俺の手をさりげなく握ってきた。
何となく思っていたが、もう一度言う。
やっぱり俺は、コイツに男として見られていないんだ...くそっ!都合はいいはずなのに、なんか悔しい...っと言うか納得いかない。
しかも、若干誘われている気がするし...下心見え見えなんだよ!!!
18歳...恐るべし...。
こんな事を内心考えつつ、ちょっとチャラい様子の、青年の手を軽くすり抜け
「...いいお誘いですね。...でも、話を聞いて頂けただけで十分です。ありがとうございます。」
と、100パーセント作り笑いの笑顔で告げた。
俺の軽い拒絶に、若干しょぼくれているのか、悲しい顔をした青年に、俺は少しだけ悪い気がしてしまい、青年に続けてこう質問をした。
「あの...失礼ですが...お名前を聞いても??」
俺のこの質問に、さっきまでしょぼくれていたはずの青年はどこへやら。
一変して、今度は嬉しそうな表情で
「俺の名前は、ロファンっていうんだ。君の名前は???誘い断られちゃったけど、ここで逢ったのも何かの縁だし、名前ぐらいは教えて欲しいなぁ~なんてね。(笑)」
と言い、くしゃりと笑った顔で、目の前に座っている俺を見つめてきたのだった。
俺はどうしようかと迷いながらも、
「私の名前は、リオンです。どうぞよろしくお願いします。」
と声をかけたのだった。
いや、正確には、声を掛けざる負えなかったのだが....名乗らなかったら、こいつまた泣きそうな顔するだろうし...あとあと、面倒くさそうだったからな...。
そんな俺の心情は、全く知らないロファンは、何食わぬ顔で、握手を求めてきたのだった。
さすがの俺も、この要求は焦った。
いくら鈍感そうなロファンでも、このままここで、俺がこいつの手を取り、握手をしてしまっては、今度は本当に俺が男だってコイツにばれるだろうからな....。
かといって、何か行動を起こさなければ、それこそ怪しまれる原因になるし....どうしたものか...。
こう色々考えた末に、俺がロファンとの握手に応じようと、手を差し出した瞬間...
「おい、お前。俺の大事なフィアンセに何をしている。」
という、低く唸るような...聞いただけで、怒っていることが分かる声が聞こえてきた。
その声にとても嫌な予感がしてしまい、俺は恐る恐る後ろを振り返った。
そんな、俺の予想は見事に的中した...。
俺が振り返った先には....王子が額に汗をにじませながら、眉間に皺を寄せてこちらを見つめて立っていた。
この時、俺は知らなかったのだ....。
リル王子が、俺がいなくなった後に、必死で俺の事を探してくれていたなんてこと...。
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