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第1章 「始まりの日」
「私は新入社員です。」
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「初めまして。私の名前は、鈴風 青花と申します。この会社では、まだまだ分からないことが沢山あるので、多くの知識を取り入れながら、仕事に励んで参りたいと思います。」
私は、こう言うと目の前に佇んでいる部長クラスの方々に深くお辞儀をし、自分の席へと戻った。
今日は、入社式の日だ。
これから研修期間を経て、自分の所属部署と直属の上司が決まる。
私は胸をドキドキさせながら、これから体験する仕事を楽しみに、社長を含めたお偉い方々の話へと軽く耳を傾けていた。
研修期間は、実に充実していた。
そうそう、まだ説明はしていなかったけど、私が入社した会社は、食品関係の会社だ。
入社のきっかけはなんと言っても、この会社が出している、あるお菓子に感動をうけたからで…つまりは、この会社に入れば、そのお菓子が食べ放題だと思ったからである。
まぁ、それ目当てということは、面接の際、口が裂けても言えなかったが…。
そんなことはさておき、研修期間では、お菓子を実際に作っている工場を見学しに行ったり、新作のお菓子を開発している部署の見学に行ったりと、私の心をときめかせるものばかりであった。
楽しい楽しい研修期間は、あっという間に終わりを告げ、気がつけば入社から3ヶ月が経とうとしていた。
人間関係には、恵まれているところがあり、研修期間中には、友達と呼べる子を2人作ることが出来た。
研修期間中は、みんなでどの部署に行きたいかを話したり、仕事終わりにご飯を食べに行ったりと、こちらの方も実に充実していた。
こんな楽しい日々が、ずっと続くと思っていた。
そう…あの日が来るまでは…。
「はじめまして。本日からこの商品開発部署でお世話になります。鈴風 青花と申します。分からないことだらけですが、精一杯頑張りたいと考えていますので、これからよろしくお願いいたします。」
「はい、こちらこそよろしくね。私は部長の中島と言います。みんな優しいから、分からないことは、近くの人に気軽に聞いてね。」
中島と名乗った部長に対して、私は軽く頷き、「はい!」と短く返事をすると、部長の次の言葉を待った。
部長も、私が考えていることがわかったのか、薄く微笑むと
「じゃあ、早速だけど君の上司を紹介するね。…おーい、橘(たちばな)~!!ちょっといいかぁ!!」
と部署全体に響く声でこう言うと、しばらくして駆け足で、こちらに向かってくる男の人が見えた。
お世辞にも、カッコイイとは言えない人が、徐々にこちらへと足を進めてくる。
この人が私の上司なのか…。
私の気分が、ジェットコースターのごとく急降下したのも、目の前の男の容姿を見れば、納得がいくだろう。
フレームが壊れたメガネをかけ、背は盛っても170cmないと思われ、極めつけは服が酷くよれているのだ…。
部長と何かを話して、数回頷くヨレヨレ男をじっと見つめながら、大きくため息を吐きたくなるのを、必死にこらえていると……。
何故か、ヨレヨレ男は部長に軽く笑いかけ、私に
「新入社員の子だね、名前は鈴風さんだっけ???大変だと思うけど、これから頑張ってね。」
と声をかけ、ポカンとする私を置き去りにして、そのまま自分の席に戻っていった。
私は不思議に思い、じっとヨレヨレ男のことを見ていた部長に
「あのぉ…私の上司は……」
と恐る恐る話しかけると、部長はハッとした顔をして、
「あっ、ごめんね。…なんか橘は、今お手洗いに行っているらしくてね。多分、すぐ帰ってくると思うんだけど……あっ、そうそう、さっきの人は課長の山上(やまがみ)さんだよ!見た目はアレだけど、仕事はバリバリだから、何かわからないことがあれば、聞くといいよ。」
と言い、私に笑いかけてきた。
私は、部長に合わせて軽く微笑むと、先ほど山上さんに思ったことを、申し訳なく思い、心の中でこっそり謝ったのだった。
そうして数分後……遠くから、駆け足でこちらに向かってくる男の人が目に入った。
遠目に分かったが、あれは選ばれし人間だと思った。
何故かと言うと…身長は180cm越え、少し筋肉質で、鼻筋はすっと通った整った顔をしていたからだ。
もしやもしやこの人が…と思っていると、案の定目の前にいる部長が待ちくたびれたとばかりに
「はぁ…橘さん、新入社員の鈴風さんがお待ちかねだよ???全く、綺麗好きなのはいい事だけど、人を待たせるのはよくないよ???」
とこう声をかけた。
声をかけられた男の人は、薄く微笑みを浮かべると
「すみません、部長。一生懸命、我慢はしているのですが…なかなか…。……あっ、この子が私の部下になる子かな???」
と言い、部長に数回頭を下げると、隣で事の行く末を見守っていた私に気が付き、嬉しそうに笑顔を向けてきた。
私が、どう接したら良いのか分からず、困っていると、部長は
「そうだよ、君の部下になる鈴風 青花さんだ。あまり困らせないように気をつけるんだぞ?」
と軽く釘を刺すと、部長があとは2人でと男の人に声をかけ、会議があるとの事で、部屋を出ていった。
残された私は、隣に佇んでいる男の人に目を向け、言葉を待っていると
「ったく、部長はぁ。……あっ、ごめんね、今の忘れて。(笑)自己紹介が遅くなりました。私は主任の橘 琥珀(たちばな こはく)と言います。これから色々大変だと思うけど、よろしくね。」
と橘さんは自己紹介をしてきた。
私は慌てて頭を下げると、
「こちらこそ、挨拶が遅くなりました。鈴風 青花です。よろしくお願いします。」
と改めて自分の名前を名乗ったのだった。
このイケメン上司との仕事を楽しみにしていた私だが……それは最初の頃だけで、これから起こる様々な問題に頭を悩ませることを、今の私はまだ知る由もないのである。
私は、こう言うと目の前に佇んでいる部長クラスの方々に深くお辞儀をし、自分の席へと戻った。
今日は、入社式の日だ。
これから研修期間を経て、自分の所属部署と直属の上司が決まる。
私は胸をドキドキさせながら、これから体験する仕事を楽しみに、社長を含めたお偉い方々の話へと軽く耳を傾けていた。
研修期間は、実に充実していた。
そうそう、まだ説明はしていなかったけど、私が入社した会社は、食品関係の会社だ。
入社のきっかけはなんと言っても、この会社が出している、あるお菓子に感動をうけたからで…つまりは、この会社に入れば、そのお菓子が食べ放題だと思ったからである。
まぁ、それ目当てということは、面接の際、口が裂けても言えなかったが…。
そんなことはさておき、研修期間では、お菓子を実際に作っている工場を見学しに行ったり、新作のお菓子を開発している部署の見学に行ったりと、私の心をときめかせるものばかりであった。
楽しい楽しい研修期間は、あっという間に終わりを告げ、気がつけば入社から3ヶ月が経とうとしていた。
人間関係には、恵まれているところがあり、研修期間中には、友達と呼べる子を2人作ることが出来た。
研修期間中は、みんなでどの部署に行きたいかを話したり、仕事終わりにご飯を食べに行ったりと、こちらの方も実に充実していた。
こんな楽しい日々が、ずっと続くと思っていた。
そう…あの日が来るまでは…。
「はじめまして。本日からこの商品開発部署でお世話になります。鈴風 青花と申します。分からないことだらけですが、精一杯頑張りたいと考えていますので、これからよろしくお願いいたします。」
「はい、こちらこそよろしくね。私は部長の中島と言います。みんな優しいから、分からないことは、近くの人に気軽に聞いてね。」
中島と名乗った部長に対して、私は軽く頷き、「はい!」と短く返事をすると、部長の次の言葉を待った。
部長も、私が考えていることがわかったのか、薄く微笑むと
「じゃあ、早速だけど君の上司を紹介するね。…おーい、橘(たちばな)~!!ちょっといいかぁ!!」
と部署全体に響く声でこう言うと、しばらくして駆け足で、こちらに向かってくる男の人が見えた。
お世辞にも、カッコイイとは言えない人が、徐々にこちらへと足を進めてくる。
この人が私の上司なのか…。
私の気分が、ジェットコースターのごとく急降下したのも、目の前の男の容姿を見れば、納得がいくだろう。
フレームが壊れたメガネをかけ、背は盛っても170cmないと思われ、極めつけは服が酷くよれているのだ…。
部長と何かを話して、数回頷くヨレヨレ男をじっと見つめながら、大きくため息を吐きたくなるのを、必死にこらえていると……。
何故か、ヨレヨレ男は部長に軽く笑いかけ、私に
「新入社員の子だね、名前は鈴風さんだっけ???大変だと思うけど、これから頑張ってね。」
と声をかけ、ポカンとする私を置き去りにして、そのまま自分の席に戻っていった。
私は不思議に思い、じっとヨレヨレ男のことを見ていた部長に
「あのぉ…私の上司は……」
と恐る恐る話しかけると、部長はハッとした顔をして、
「あっ、ごめんね。…なんか橘は、今お手洗いに行っているらしくてね。多分、すぐ帰ってくると思うんだけど……あっ、そうそう、さっきの人は課長の山上(やまがみ)さんだよ!見た目はアレだけど、仕事はバリバリだから、何かわからないことがあれば、聞くといいよ。」
と言い、私に笑いかけてきた。
私は、部長に合わせて軽く微笑むと、先ほど山上さんに思ったことを、申し訳なく思い、心の中でこっそり謝ったのだった。
そうして数分後……遠くから、駆け足でこちらに向かってくる男の人が目に入った。
遠目に分かったが、あれは選ばれし人間だと思った。
何故かと言うと…身長は180cm越え、少し筋肉質で、鼻筋はすっと通った整った顔をしていたからだ。
もしやもしやこの人が…と思っていると、案の定目の前にいる部長が待ちくたびれたとばかりに
「はぁ…橘さん、新入社員の鈴風さんがお待ちかねだよ???全く、綺麗好きなのはいい事だけど、人を待たせるのはよくないよ???」
とこう声をかけた。
声をかけられた男の人は、薄く微笑みを浮かべると
「すみません、部長。一生懸命、我慢はしているのですが…なかなか…。……あっ、この子が私の部下になる子かな???」
と言い、部長に数回頭を下げると、隣で事の行く末を見守っていた私に気が付き、嬉しそうに笑顔を向けてきた。
私が、どう接したら良いのか分からず、困っていると、部長は
「そうだよ、君の部下になる鈴風 青花さんだ。あまり困らせないように気をつけるんだぞ?」
と軽く釘を刺すと、部長があとは2人でと男の人に声をかけ、会議があるとの事で、部屋を出ていった。
残された私は、隣に佇んでいる男の人に目を向け、言葉を待っていると
「ったく、部長はぁ。……あっ、ごめんね、今の忘れて。(笑)自己紹介が遅くなりました。私は主任の橘 琥珀(たちばな こはく)と言います。これから色々大変だと思うけど、よろしくね。」
と橘さんは自己紹介をしてきた。
私は慌てて頭を下げると、
「こちらこそ、挨拶が遅くなりました。鈴風 青花です。よろしくお願いします。」
と改めて自分の名前を名乗ったのだった。
このイケメン上司との仕事を楽しみにしていた私だが……それは最初の頃だけで、これから起こる様々な問題に頭を悩ませることを、今の私はまだ知る由もないのである。
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