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第18号 「嵐のち雨上がり。」

今日は...待ちに待った!!

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 雪が降り出し...一気に秋の雰囲気は、消え去った東京の街に琉架は、モデルの仕事を終えて、ひとり商店街を歩いていた。
 キラキラと光るお店をキョロキョロと見渡して、ある一角のお店で足を止めると、琉架はおもむろに中へと入っていった。
 暫くして、小さな紙袋を手に店をでてきた琉架は、少し緊張した面持ちで亜衣希の家へと向かっていた。
「...亜衣希さん...喜んでくれるかな??」
琉架は、落ち着かないと言った顔で亜衣希の家の前まで来ると、家のインターフォンを押した。
 だが、しばらくしても中から亜衣希のいる気配がせず、琉架は首を傾げ「まだ、帰ってきてないのかな??」と呟くと、その場にしゃがみこんで、亜衣希の帰りを待っていた。
 一方その頃...亜衣希は、仕事に追われていた。
「...んー...ごめんね...。何回も何回も...でも...これじゃあ、少し背景が暗い気がする...。申し訳ないんだけど...あと一回だけ取り直してもいいかな??」
「...はい...。」
「...はぁ...亜衣希...。いい加減にしないか??確かに...綺麗な写真を撮ることは大切だし...会社としても嬉しいんだが...。今日はクリスマ『兄さん...俺にとって仕事は、どんな仕事でさえ常に100パーセントの力でやりたいんだ。だから、止められたところで俺は聞かない...。』...っ...たく。...分かったよ、あと一回だけだからな...。」
  亜衣希は、真剣な表情で目の前のモデルの写真を、かれこれ10回以上も撮り直していた。
 本来ならば、お昼頃には完成して今日は、さっさと事務所を閉めることになっていたのだが...亜衣希の仕事魂に火がついてしまったせいで、時刻は夜の10時を回ろうとしていた。
 そんな亜衣希に痺れを切らした大樹は、ため息をひとつつくと、カメラを構える亜衣希の隣にいき、亜衣希を一喝した。
 だが亜衣希は、完全仕事モードに入ってしまっているせいで、大樹の言っている言葉を最後まで聞く前に、大反論して大樹の言葉を遮った。
 そんな亜衣希に、困った表情をしていた大樹は、やれやれといった様子で事務所の社長室へと戻っていった。
 大樹は、内心「亜衣希のやつ...今日がクリスマスだってこと分かっているのか...??きっと琉架くんが...家の前で待ってたり......だとしたら、連絡してあげた方が...いや、琉架くんなら、しばらく来なかったら、諦めて家に帰るだろう...。きっとそうだ...俺が心配するほどのことじゃない...。」と考えて、咄嗟に首を左右に振り自分の考えを捨て去った。
「亜衣希さん...遅いな...。」
 その頃...寒空の中琉架は、亜衣希が家に帰ってくるのを、今か今かと心待ちにして待っていた。
 そうして...やっと撮影が終わったのは、時計の針が23時を回った頃だった。
 亜衣希は、肩の力を抜くと、ふぅっと息を吐き、事務室にいる大樹へと声をかけに向かった。
「兄さん??待たせてごめん...。やっと、納得のいく撮影が...『馬鹿!!!阿呆!!!!この...すっとこどっこいてんてん丸が...!!!!お前...今日が何の日か知ってて、仕事を選んだのか!??』...って...なんでそんなに怒っているんだよ??...今日が...って、今日って何日だっけ???ええっと...カレンダーは.........えっ...今日...25日??25日!!?まずい...琉架と約束してたんだった...!!!...兄さん!!ごめん...!!!説教なら、明日縁側でお茶を飲みながら...ゆっくり聞くから今日は見逃してくれ!!!」
 亜衣希は、疲れた顔をしながら近くにかけられていたカレンダーを確認すると、途端に顔色を変えて、目の前の大樹に早口で、要件だけを伝えると慌ただしく、メイドアリスの事務所を出ていった。
 残された大樹は、眉間にシワを寄せると独りこう呟いたのだった...。
「全く...亜衣希のやつは...。昔から変わらないんだから...。まぁ、仕方ないか...。雪...強くなってきたなぁ...琉架くん...大丈夫かな...??」
 こういった大樹は、雪も本降りになってきた外を、くりもガラスから見据えると不安そうな表情をしていた。
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