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第17号 「曇のち嵐。」

今行くから...今すぐに。

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 徐々に顔へと近づけられるスタンガンを、必死に手で押さえつけている亜衣希の顔からは、苦痛に耐えているせいか、額からはすごい冷や汗が出ていた。
 「...琉架...琉架!!!今すぐに...今行くから...待ってろ...琉架っ!!!」
 亜衣希は、目の前で狂気に歪んだ目をしている礼美の背後にある...それはそれは真っ白な...白い光に向かって必死に叫んでいた。
 そんな亜衣希に礼美は、軽く作り出した気味の悪い笑みを亜衣希に向けながら、亜衣希の顔にスタンガンを押し当てた。
 その瞬間、力尽きた亜衣希の頬と口からは、物凄い音とともに鈍い声が漏れた。
「..ぐっ....あぁ!!!!...っ...痛い..けど...琉架を失うことを考えたら...こんなもの、全く痛くない...!!!」
 「...ふん!!何を綺麗事を...。所詮弱虫のお前に一体何が出来るっていうんだ...???...そんな事で本当に琉架を幸せに出来ると思っているのか??」
「...っ???」
 それまで、目の前にいた礼美の顔が...次の瞬間には歪みだし...今度、目の前に現れたのは...なんとビックリ坂沢だった。
 亜衣希は、目を丸くして息を飲み込むと、目の前の坂沢に向かってこう言ったのだった。
「なんで、顔が...。俺は...礼美と話していたはずじゃ...。まぁいい。桃那(とうな)...お前にも言いたいことがある。琉架を、幸せにできるかどうかは...分からない...。それでも...俺には琉架が必要だ!!!何回も同じ過ちを犯して、やっと分かったんだ...。悔しいけど...桃那(とうな)に気付かされたんだ...。琉架のことを、真剣に思っている桃那の言葉で、俺は目が覚めたんだ...!!!だから、お前には感謝している。...でも、そんな気持ちに気づいた俺は...お前に琉架を渡す訳にはいかない。...頼む...白い光の方に俺を行かせてくれ!!!」
 いつの間にか、礼美の持っていたスタンガンは消え失せ、スタンガンの痛みが無くなった頬には...代わりとして、坂沢の強く握られた拳が当てられた。
 そう...亜衣希は次の瞬間、目の前の坂沢が作った拳により、派手に殴られていたのだ。
 坂沢は、1発...また1発と亜衣希の頬に、遠慮などサラサラなく、拳を突き立てるとこう叫んだ。
「...琉架のことを幸せに...大切にするって約束できるのなら、俺と琉架を賭けた喧嘩をしようぜ???前も言っただろ...???お前の根性をとくと見せてみろよ!!!俺は...先に行って待っているから...お前も早く来い。...俺と正々堂々と勝負しろ...。」
 坂沢は、最後に1発...亜衣希の顔に拳を入れると、ふっと笑みを零し、挑発的な態度で目の前の亜衣希に喧嘩を売ると、サッと白い光の方に消えていった...。
 亜衣希は、殴られたことで顔の色を青黒く変え...じっと坂沢の消えていった方を見つめていた。 
 暫くそうしていたが、ふと何かを決心するとすぐさま立ち上がり、再び暗闇に包まれた空間を...目の前の白い光だけを追い求め、走り出すのだった。
 「...もう少しだ...。もう少しで、琉架に会える。...琉架に...琉架に会いたい...。一刻でも早く...琉架に会いたいんだ...!!」
 息を切らしながら、すでに礼美と坂沢から受けた制裁により、意識は朦朧としていたが、それでも亜衣希は、ただひたすらに白い光...琉架の声がする方へと、何を考えるでもなく足を進めていたのだった。
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