上 下
79 / 147
第12号 「琉架と亜衣希に起こった悲劇。」

歪み出した日々。

しおりを挟む
 竹下から亜衣希と距離をおくよう言われてから、1週間がたったある日...琉架の携帯に亜衣希から電話がかかってきた。
「ん??...あっ、亜衣希さん...からだ...。(汗)...でも、ここで電話に出る訳には...。亜衣希さんが大切だから...危険に晒す訳には...。ごめん、亜衣希さん...。(俺もホントは...亜衣希さんに写真を撮ってもらいに行きたい...。(汗)...けどダメなんだ...ゴメンね、亜衣希さん...。)」
 こう独り寂しい部屋で呟くと、バイブ音が鳴り響く携帯の電源を名残惜しそうに落とした琉架なのであった。
 その頃...亜衣希の方は、焦っていた。
「くそっ!!(汗)なんで琉架と連絡が取れないんだ...!(汗)まさか...琉架に何かあったんじゃ...。(汗)どうしよう...そうだ、琉架の家に行けば...!」
メイドアリスでいつも通り女性モデルの写真を撮り終えて、休憩スペースでこれで何本目かというタバコに火をつけ、琉架に電話を掛けていた亜衣希だったが、その表情には余裕という言葉は、似つかわしくないほど険しかった。
 琉架の携帯に何回掛けても繋がらないため、亜衣希は琉架の家を訪ねてみようと考え、まだ一口も吸っていないタバコの火をサッと消すと椅子から立ちあがった。そんな亜衣希の元に携帯のコール音が鳴り響いた。
「...!??琉架!!...じゃない...。誰だ...この番号...???(汗)...はい、もしもし......っ!!(汗)何故貴方が...俺の携帯番号を...??(汗)えっ!...分かりました...。すぐ行きます...!!(汗)」
 亜衣希は、見たこともない携帯の番号に恐る恐る電話に出ると、声の主の話を聞いて慌てて自分の荷物を事務所に取りに行き、急いである場所へと向かった。

「あっ、一体...あなたから呼び出されるなんて...どういう...『そんなことはどうでもいいの...。まずは、そこの席に座って...私の話を聞いてちょうだい。(汗)』...分かりました...。もしかして、それは琉架の話...ですか...??(汗)」
 亜衣希は、タクシーで街の一角にあるカフェに来ていた。
 店内に入ると先に来ていた呼び出し主が手を挙げて亜衣希を呼んだ。
 亜衣希は目の前の人物に、警戒心丸だしで質問を投げかけようとしたが、相手は亜衣希の言葉よりも先に声を発したため、亜衣希は仕方なく席に着いたのだった。
 そうして全てを聞き終えた亜衣希は、目を丸くしてただ悔しそうに自らの膝に拳を打ち付けた。
「...そんな...!!(汗)だって琉架は、そんな顔一回も...。琉架...なんでこんなに近くにいる俺に相談してくれなかったんだ...『...こんなに近くにいたからこそ相談できなかったのではないかしら...。(汗)悔しいし言いたいこと山ほどあるけど...でも琉架は八神さんが近くにいて、とても大切で傷つけたくないから...。だから琉架は、あなたに何も言わなかったんだと思うわ...。(汗)』...くそっ!それで竹下さん...琉架は、今どこに...???(汗)」
こういって目の前で不満そうな顔をしている竹下から琉架の居場所を聞くと亜衣希は机にお金を置くのが早いのか、お礼を言うとサッとお店を出ていった。
 その様子に1人店に残された竹下は、苦笑いを浮かべていた。
「...全く...何だか、琉架に似ているわね...。(笑)まぁ、せいぜい琉架を裏切るようなことだけはしないでね...八神さん...あの子の為にも...。(汗)」
 こう言うと、竹下はカップに残っている少し冷めたコーヒーに口をつけるのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

思春期のボーイズラブ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:幼馴染の二人の男の子に愛が芽生える  

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

処理中です...