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第7号 「琉架の気持ち。」

過去の話。その3

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 竹下に全てを話したSINは、ニコッと諦めた笑顔をしていた。
「...今まで...ありがとうございました、竹下さん...。あと...それから、竹下さんにお願いがあります。この間、アイドルになったばかりの、ファンタジアの冬月聖真の弟...あの子を、クロジカルでスカウトしてあげてください。あの子には...才能があります...!それに...約束しましたし...。(笑)」
 こういってSINは、肩にかけているカバンについている、くまのキーホルダーをじっと愛おしそうに見つめていた。
 そんなSINに竹下は、まだ納得のいっていない表情を浮かべていたが、最後には竹下が折れて渋々、了承した。
「...分かったわ。あなたが言うんだもの。...きっと、その子をこの会社で...立派なモデルにしてみせるわ!(笑)...それが...あなたにできる唯一の、償いな気がするもの!(泣)」
「...では、私は...これで。」
 こう竹下に告げると、SINはそのまま店を出ていった...。
 その後ろ姿が見えなくなっても、じっとドアの方から目が離せず、ぐっと唇を噛み締めて涙をこらえる、竹下なのであった。
 それから半年後...竹下は、ふらふらと街を歩いていた。SINとの約束のことを、ずっと考えながら...。
 曲がり角を曲がり、ふと前を見ると、そう...ファンタジアのメンバーの一人である、冬月聖真の姿を目に捉えた。まさかと思い、聖真の横に目を移すと、やはり予想は的中し、その横にいる女の子...いいや、男の子だ。こう思った竹下は、考えるよりも先に歩き出していた。
 琉架たちに近づくと、声をかけ...これが、琉架と竹下の出会いだった。
「はい...おーしまい!(笑)...ど~お??竹下さんの過去話~!(笑)」
「はははっ、もうちょっと、苦しんでくれてもよかったけど...でも、あんな完璧そうな人が、仕えてるモデルひとりも守れないとか~、はっきりいって失格じゃん??(笑)よく、あんな偉そうに出来るよねぇ~!(笑)」
「うん、やっぱりそうだよね~!(笑)...はぁ、じゃあ、約束通り帰りのご飯代おごりね!!(笑)...さて、そろそろ休憩終わりだし??戻ろっか!(笑)」
「あー、そうだったぁ~...。(汗)...まぁ、いいわ??面白い話も聞けたし、という事で...おさき~!(笑)」
 それまで自販機の前で話していた女の人2人が、話を終えて琉架の方に歩いてきた。
 その様子に気がついた琉架は、咄嗟に今来ました風を装って、自販機のある方に歩いていった。
 運良く、立ち聞きしていたことはバレずに、そのまま素通りされ、琉架は、女の人が去っていった後に、深い安堵のため息をついた。琉架は、自販機にお金を入れながら、さっき聞いた話を思い返して、ぐっと拳を握っていた。
「竹下さんは...確かに、分かってくれないこともあるけど...でも、あの女の人達には...あの女の人達だけには、馬鹿にされたくない!!(怒)...くそっ!あっ、まずい...ここ、事務所の中だった...。(汗)...誰も見てなかったよな...ホッ。...下手な言動や行動は慎まないと...俺も、さっきの話のSINさんみたいに...。(汗)何だか、鳥肌立ってきた...。早くスタジオに戻ろ。(汗)」
 琉架は、何か嫌な感じがしたが、気のせいだと自分に言い聞かせ、もうすぐ撮影ということもあり、急いでスタジオに戻るのだった。
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