上 下
40 / 147
第7号 「琉架の気持ち。」

虎雅&るか。

しおりを挟む
 やっとの事で、翔真との撮影が終わり...完全に疲れきっている琉架にアシスタントは、満面の笑みで容赦なく声をかけた。
「はい!では、最後にリーダー虎雅さんとお願いします!!」
「...はっ...はい。(汗)(まだあるのか...どっかの誰かさんが調子に乗るから、俺のライフはゼロを通り越してマイナス軸まで落ち込んでるよ...くそっ...これも...これも、亜衣希さんのため...そうだ...うん、亜衣希さんの...。(汗))」
 目の前にいる笑顔のアシスタントに対して内心、盛大にため息をついて、必死に何かと葛藤している琉架の元に、困り果てた顔をした虎雅がやってきた。
「...姫崎さん...大丈夫ですか??ほんとに...うちのものが大変失礼を...。(汗)『いえいえ!とんでもないですよ...!!!(よかった!!この人は、唯一大人な対応をしてくれそうだ!!)皆さん...とても明るくて愉快な方達ばかりで、撮影していてとても楽しかったです!!(...ってんなこと死んでも思うかよ...。ファンタジアのお兄さん達って、アイドルになった時から、こんなだったっけ??(汗)...いや、思春期に何かあったな...。うん...例えば、女子から告白されるのが、日課だったとか...??...って、俺は何を考えているんだ...!!(汗))』...??姫崎さん??どうかしましたか??」
 琉架に申し訳なさそうな顔で話しかけた虎雅は、琉架の必死の引きつった笑顔に苦笑いしていたが、ふいに何かを考え込むように一点を見つめる琉架を不思議に思い、首をかしげていた。
 そんな虎雅に琉架は、首を横にふるふると振って、今自分の考えていたことをサッと頭の中から吹き飛ばした。
 こんな様子の2人にカメラマンは、先程同様に声をかけた。
「...はい!!じゃあ、最後は...バックハグでいこうか!!その後は...虎雅くんに任せるね!!こういうの、虎雅くんの方がセンスあると思うから!!(笑)じゃあ、よろしくぅ~!」
 カメラマンの声に振り返った虎雅は、ニコッと微笑むと再度、琉架の方に向き直った。
「...じゃあ、お願いします。...っ...えっ!?」
 こう言うと、虎雅は、琉架を背後からぎゅっと抱きしめた。琉架を抱きしめた瞬間に、ある違和感を感じた虎雅は、周りには聞こえない声で、そっと琉架に話しかけた。
「...ねぇ??姫崎...くん??君...男の子だよね...??『...!??...あっ...その...えっと...(何故バレた!?(汗))このこと...誰にも言わないでください...。(汗)俺のマネージャー以外...ここにいるスタッフさん...全員、俺のこと女だと思ってるんで...。(汗)』...うん、大丈夫だよ。俺は、そこまで酷いことはしない...けど、理由は聞きたいかな??面白そうだし。(笑)...なんで女の子のかっこしてるのかなって...別に言いたくなかったら、無理して言わなくてもいいけどね??(笑)」
 虎雅は、琉架に意地悪そうな顔を向けていた。そんな虎雅に琉架は、困った顔をして、ふぅっと息を吐くと観念して話し出したのだった。
 全ての理由を聞いた虎雅は、少し驚いた顔をしていたが、途端に納得したように頷くと笑顔を作った。
「...へぇ。じゃあ、琉架のお兄ちゃんって...翔真なんだ...。あっ!ということは、あの時...ほら!SINさんにあった時に、翔真についてきていたあの可愛い男の子の正体は...琉架くんだったんだ...!!(笑)うわ~、おっきくなったねぇ~!!(笑)」
 一人で納得している虎雅に琉架は、もうこれ以上喋らないでという顔で、虎雅に訴えていた。顔を真っ赤にしていた琉架の様子に気がついた虎雅は、ニコッと微笑むと、次の瞬間、琉架の腰に手を回し背中を反らせると、顔を近づけた。
「...ごめんね。ちょっと、深く聞きすぎた...。(笑)でも、安心して...?絶対に口外はしないから。...それよりも、これまでよくバレなかったね...。(笑)まぁ...俺でよかったら、いつでも相談に乗るから...一人の良い先輩としてね!何か困ったことがあったら...遠慮なく頼ってね...るかちゃん??(笑)」
 こう言うと虎雅は、軽く琉架の頬にキスをしてニコッと微笑みを浮かべた。そんな虎雅の行動に、琉架が赤面するよりも早く、スタジオにいた女性スタッフから黄色い声が発せられた。
「えっ...(なんか喋らないといけないよな...この状況...!(汗))なんかすみません...。(汗)(...って、ちょっとまてぇー!!(汗)いやいやいやいや...ちょっと待てよ!!!えっ!?えー!!...いや、冷静に考えろよ俺!!!(怒)...何がどうしてこんな状況になってるんだよ!!!(怒)さっきの状況からして、キスするタイミングなんでどこにもなかっただろ!?????(汗)...虎雅さんって、もしかして...もしかしなくても、俺と同じお仲間か!???(怒)いや、でもな!?仮にも俺には、亜衣希さんというそれはそれは素晴らしいお方が...。とりあえず、そっちがその気なら、俺も仕返しぐらいしてもいいよな???いや、もうこの際どうにでもなれ!!(怒))でも、虎雅さんが味方なら、俺少し楽に仕事が出来そうです。(笑)これから...よろしくお願いしますね???(笑)」
こう言うと琉架は、虎雅のネクタイを手で引っ張ると、虎雅の額に軽くキスをして、いたずらっぽく微笑んだ。
 そんな琉架の行動に、唖然とした虎雅だったが、カメラマンの声で我に返り、撮影に意識を戻したのだった。
 行動を取っていた時の琉架は、ほぼ人格は機能しておらず、完全フル仕事モードに入ってしまっていた事には、この会場の誰も知らないのであった。
 そんな琉架の目の前で、呆気にとられていた虎雅は脳内で撮影中、こんなことを考えていた。
「...えっ...琉架くん??...君は、もしかして...もしかしなくても...海外か宇宙にでも、今まで滞在していたのか????(いや、何故そうなったんだ...根拠は!?(笑)by作者)俺の軽いキスに、ちゃんと返してくれるなんて...いやぁ~、翔真には勿体ないぐらいの可愛い女...いやいやいや、男だろ!相手は、お・と・こ!!!(汗)...俺は、一体何を考えているんだ!!(汗)あー、とにかく今は撮影に集中だ!!!(汗)」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

【BL】国民的アイドルグループ内でBLなんて勘弁してください。

白猫
BL
国民的アイドルグループ【kasis】のメンバーである、片桐悠真(18)は悩んでいた。 最近どうも自分がおかしい。まさに悪い夢のようだ。ノーマルだったはずのこの自分が。 (同じグループにいる王子様系アイドルに恋をしてしまったかもしれないなんて……!) (勘違いだよな? そうに決まってる!) 気のせいであることを確認しようとすればするほどドツボにハマっていき……。

たとえ性別が変わっても

てと
BL
ある日。親友の性別が変わって──。 ※TS要素を含むBL作品です。

オトナの玩具

希京
BL
12歳のカオルは塾に行く途中、自転車がパンクしてしまい、立ち往生しているとき車から女に声をかけられる。 塾まで送ると言ってカオルを車に乗せた女は人身売買組織の人間だった。 売られてしまったカオルは薬漬けにされて快楽を与えられているうちに親や教師に怒られるという強迫観念がだんだん消えて自我が無くなっていく。

穴奴隷調教ショー

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 穴奴隷調教済の捜査官が怪しい店で見世物になって陵辱される話です。

さがしもの

猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員 (山岡 央歌)✕(森 里葉) 〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です 読んでいなくても大丈夫です。 家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々…… そんな中で出会った彼…… 切なさを目指して書きたいです。 予定ではR18要素は少ないです。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

思春期のボーイズラブ

ポコたん
BL
この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。 作品説明:幼馴染の二人の男の子に愛が芽生える  

処理中です...